虎杖悠仁のヒーローアカデミア   作:雨天

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第一話 転生

 

 

 

 寂れた街並みが眼下に広がっている。

 それは俺の生まれ故郷の景色で、実在しない心象風景だ。

 俺は今、呪物として高専に保管されている。

 つまり俺は現在、生得領域の中で暇を持て余しているという訳だ。

 

 適当なビルの縁に座り、足をぷらぷらさせる。

 本当に暇である。眠ることさえ許されないのはかなりの地獄ではないかと思う。

 懐かしい仙台の景色を眺めて暇を潰すのも、もう数十年やってることだ。

 自分で呪物になったから後悔はないとはいえ、暇は暇。

 やることもないままに数十年ぼっーとしてる。

 宿儺はこれを千年も続けたらしいからな。俺もそれくらい長く呪物のままでいる可能性は高い。

 

 とはいえ、平和はいつまでも持つ訳じゃない。いつか、戦争とかに持ち出される可能性はある。

 人間同士の争いに加担するのはどうかと思うが、懇願されたらやるしかねえよな。

 流石に祖国の日本は守りたい。それくらいの愛国心はある。

 

 でも人殺すのやだなぁ。殺さない程度の負傷者で済ませるのが適切かな。

 負傷者ばかりになればいつか病院はパンクして抱えきれなくなるだろうし、そうなれば相手方も諦めてくれる、と思いたい。

 そもそも特級術師が出張って来たら諦めろよという話ではある。

 単独で国家転覆が可能なんだから、争うだけ無駄だろ。

 

 そんなことをぐだぐだ考える。

 暇過ぎて最近はどうでも良いことを考えてる気がする。

 前は呪霊以外の脅威が現れることや、仮想敵をゴジラとして何処まで被害を少なくできるかとか考えていた。

 今では最早仮想の戦争の話とか考え出す始末である。

 

 流石に考えるのにも疲れて来た。

 一旦横になって目を瞑ろう。そうすればもしかしたら受肉の時まで眠れる可能性もある。

 

 俺はビルの屋上で大の字になって目を瞑る。

 結構な間そうしてぼっーと何も考えない時間が過ぎ、不意に目を開けた。

 そうすれば、目の前には見知った部屋が広がっていた。

 

 仙台にいた頃に住んでいた家の居間である。

 俺は居間の座布団に胡座をかいていた。

 気が付いたらテレポートしてた件。訳分からん。

 っていうか、テレビが勝手についてる。

 生得領域内のテレビは何も映さない筈なのに、今日のニュースをやっている。

 

 内容は仙台市の宝石店を襲ったヴィランをヒーローが捕まえたとのことだ。

 ヴィランにヒーロー?マーベルか?

 マーベル世界観の日本に転移?したのか?

 

 いや、体にも違和感がある。いつもより短くなってる気がする。

 となると転移じゃないのか?

 一体何が起きてる。何か途轍もなくヤバいことが起こってるのは分かる。

 

 俺が困惑していると背後から唐突に声が掛かった。

 

「悠仁?そろそろ家出ないと学校に遅刻するわよ?」

 

 振り返ると、そこにはかつて夢の中で見た自分の母親がいた。

 エプロンを付けて此方に優しげな顔を向けている。

 

 その時、俺の頭に一気に見知らぬ記憶が流れ込んだ。

 それはこの世界に生まれ、中学三年生の春まで生きた記憶だ。

 唐突な記憶の流入に頭痛がする。思わず頭を押さえる。

 

「悠仁、大丈夫?」

「あ、あぁ。大丈夫だよ。母ちゃん」

 

 俺は咄嗟にそう答えて難を逃れる。

 そして記憶を頼りに自分の部屋に行き、一息吐く。

 先ず安心したのは母ちゃんの額に縫い目がなかったこと。中身が羂索に入れ替わってるということはない。

 父ちゃんもバリバリ生きてるし、爺ちゃんは前世と同じように病院に入院している。

 

 この世界は前世の世界とは違い、ヒーローが実在し、個性という超常の力が存在する世界のようだ。

 そしてヴィランも同じように蔓延っている。呪術は存在していない。呪術師もだ。

 俺は今の時代には珍しく無個性だったようだ。

 

 しかし感覚で分かるのだが俺には前世と同じ御厨子と赤血操術が備わっている。

 試しにノートのページを一枚切り取り、解で切り刻む。

 術式は無事に前世と全く同じ練度で発動した。

 

 術式は問題なく使える。

 これは前世の記憶が覚醒したからなのか?

 個性というよりは前世と同じ呪術という感覚がある。

 しかしこの世界では後から個性が発現する場合もあるので、国にはそうやって伝えた方が良いだろう。

 あくまで御厨子も赤血も個性として扱うことにする。

 

 それにしても、全然違う世界なのに若干差異があるとはいえ爺ちゃん達が存在するのには驚いた。

 名前も一緒なのは運命という奴なのか。

 分からんが、そうしておいた方がかっこいいからそうしておく。

 

 さて、取り敢えず記憶の整理と能力の確認が終わったところで学校である。

 俺は仙台市の西中学校に通っている。そして前世と同じく渾名は西中の虎である。とても恥ずかしいのでやめて欲しいと思っている。

 

 学校に行けばそこそこ仲の良い友達が声を掛けて来たり、普通に授業が始まったりと普通の学校生活を送っている。

 今日は進路希望の提出日だったらしく、俺は慌てて進路希望の紙を取り出した。

 そこには雄英高校ヒーロー科とだけ書かれていた。

 

 書いてあって一安心である。

 俺は何も考えずにそれを先生に提出した。

 

 そして席に戻ってから雄英高校ヒーロー科とはどんな所なのか記憶を探り始めた。

 ふむふむ。国立の学校で、No.1ヒーローオールマイトやNo.2ヒーローエンデヴァーなどの複数のスーパーヒーローを輩出した名門中の名門。

 そんで、今年の偏差値は79という驚異の数字を誇り、倍率は例年300を超えるというマンモス校……

 

 俺無謀過ぎねえか…?

 幾らヒーローを目指したいからって成績も良くない俺が雄英とか無理難題だろ。

 筆記試験で落とされて終わりだ。

 

 まあ、今の俺なら可能性は僅かに残されているが。

 実技試験は問題なく通るだろう。問題は筆記試験だ。

 偏差値79とか半端じゃねえ。難関も難関だ。

 俺の頭でこの世界の知識を一年で詰め込む必要がある。ある程度は似た歴史を辿ってるだろうから前世で勉強した分が活躍してくれるだろう。

 

 帰ったら速攻勉強しよう。

 そう決意して俺は授業を真面目に受けるのだった。

 

 

 

 

 その日の夕飯の席でのこと。

 父ちゃんと母ちゃんが揃ったタイミングで俺は進路を話すことにした。

 

「父ちゃん、母ちゃん。俺、雄英目指すわ」

「雄英……普通科でも倍率は高いぞ?」

「いや、ヒーロー科」

 

 その瞬間、世界が止まったような気がした。

 母ちゃんが驚愕しながらも口を開く。

 

「でも、悠仁は無個性じゃない……無謀よ!」

「個性が発現したんだ。それも戦闘向きな個性」

「それでも、いつ死ぬか分からないのよ!?」

「香織、悠仁がヒーローに憧れていたのは知っていたじゃないか。そんな悠仁に個性が発現するなんて素晴らしいことだ。雄英は厳しいかもしれないが、俺は応援するよ」

「貴方……」

「正直、死ぬのは怖い。死ぬこと自体が怖いんじゃなくて、死んだことで父ちゃん達を悲しませるのが怖い。それでもやっぱり、俺は人を救いたい」

「……分かった。私も応援するわ」

 

 母ちゃんは苦渋の末に答えを出した。

 

「ありがとう…!」

 

 俺は認められたという事実を噛み締める。

 そしてこれからについて考える。

 

 肉体の鍛錬は勿論必須だ。それ以上に勉強が重要だ。

 俺は頭の良い方ではない。だから、誰よりも努力する必要がある。

 それは長く苦しい戦いになるだろう。それでも、俺は諦めるつもりはない。

 俺は俺のやるべきことから目を背けない。

 

 必ず雄英に入る。その後は厳しい試練の数々を乗り越えてプロヒーローになるのだ。

 そして大勢の人間を救う。前世でもそうしたようにそれが俺の全うすべき役割だから。

 

 俺は新たな目標に向かって突き進む。

 勉強も鍛錬も限界まで行い、入試の日である2月26日に備えるのだった。

 

 

 





・虎杖悠仁
モジュロを終えてから数百年経って更に呪術や戦闘技術が洗練された。
具体的には空間を面で捉えられるようになったし、反転の精度も桁違いに上がった。
赤血操術では超新星を覚えた。

・世界観について
呪術キャラも偶に混じってるけど別人。小沢とかいる。
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