虎杖悠仁のヒーローアカデミア 作:雨天
只管に鍛錬と勉強の日々を送り、遂に2月26日を迎えた。
俺は雄英の門の前に立って、校舎の大きさに感嘆の声を上げる。
「凄ぇー…こんだけデカいと迷いそうだな」
流石は国立最難関。普通科でも入るのは厳しいらしいからな。
俺の残念な頭でついて行くのはかなり難しそうだ。
元は高専生だったとはいえ、かなり緩い呪術高専の出だからな。5年制ですらなかったし。
入学してからでも気は抜けない。
「考えてる場合じゃないな。さっさと指定された部屋に向かおう」
そうして俺は雄英の門を潜った。
◇
「今日は俺のライヴにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!」
試験官の1人であるプロヒーロープレゼントマイクが受験生に呼び掛けるも誰も言葉を返さない。
俺も昔なら元気良く返してたかな。今はそんな若さはないわ。
そしてプレゼントマイクが実技試験の概要を説明する。
「入試要項通り!リスナーにはこの後!10分間の模擬市街地演習を行って貰うぜ!持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!!」
プリントには演習場の指定があった。
俺はそれを確認して説明に耳を傾ける。
「演習場には仮想
「……質問よろしいでしょうか!?プリントには四種の敵が記載されております!誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!!我々受験者は規範となるヒーローの指導を求めてこの場に座しているのです!ついでにそこの縮毛の君!先程からボソボソと…気が散る!物見遊山のつもりなら即刻雄英から去りたまえ!」
「すみません…」
まだ説明も済んでないのに、気が早い奴だな。
全員のプリントに四種記載されてるなら何かあるだろうに。
「オーケーオーケー、受験番号7111君、ナイスなお便りサンキューな。四種目の敵は0P!そいつは言わばお邪魔虫!スーパーマリオブラザーズやったことあるか!?レトロゲーの!あれのドッスンみたいなもんさ!各会場に一体!所狭しと大暴れしているギミックよ!」
「ありがとうございます!失礼致しました!」
「俺からは以上だ!最後にリスナーへ我が校校訓をプレゼントしよう!かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者、と!
そうして説明会は終わった。
更に向こうへ、か。良い言葉だ。
◇
「広っ…演習場が街なんですけど」
辿り着いた演習場Eは街と言って差し支えない広さを誇っていた。
この中で仮想敵と戦い、ポイントを稼ぐ訳だ。
俺は軽く準備運動をする。いきなり体動かすとアキレス腱断裂するからな。流石にそんなことに反転は使いたくない。
俺はふと、同じ演習場の受験生達を見る。
僅かながら呪力が肉体に宿っている。しかし漏れ出ることはない。
この世界の人間全員がそうだ。つまり、この世界では呪霊は生まれない。
「ハイスタートー!」
俺が思考していると唐突に試験が開始された。
予告とかねえのか。いつ始まるか分からない。そんな緊張感を演出してるのだろう。
「どうしたぁ!?実戦じゃカウントなんざねえんだよ!!走れ走れぇ!!賽は投げられてんぞ!!?」
「出遅れたな…」
俺は演習場に向かって走っていく。
中では既に仮想敵と受験生との戦いが始まっていた。
俺は迷わず中心に向かっていき、演習場のど真ん中に立つと手を叩いた。
仮想敵がわらわらと寄って来る。
俺は解を全方位に飛ばして仮想敵を薙ぎ払う。
音を聞きつけて更に仮想敵が現れる。
俺は解を飛ばし続けて仮想敵を集めながら破壊していく。
「ん?地鳴り?」
仮想敵の数も大幅に減って来た頃、唐突に地鳴りが鳴り響いた。
俺は音の方向へ顔を向ける。
そこにはプリントに記載のあった四種目の仮想敵、ギミックと称されたデカブツが立っていた。
ビル程の大きさを誇り、窮屈そうにしながら演習場を練り歩いている。
本来なら、無視するべきギミックだ。
だが、俺は0P仮想敵の足元に倒れている受験生を見つけてしまった。
オレンジ色の髪をサイドテールに纏めた女子だ。瓦礫が足を潰しており、逃げ出すのは不可能に思える。
だから、俺は0Pに立ち向かうことにした。
そもそもヒーロー科志望なら敵を前に逃げるなんて真似は許されない。
俺は0Pの前に立ちはだかる。
オレンジ髪の女子が苦しそうにしながらも口を開いた。
「アンタ……早く逃げないと……」
「大丈夫」
解で切り裂くとバラバラになった破片が落ちて来て危ないだろうから、黒閃で倒そう。
俺は空間を蹴って空へ飛び上がり、0Pの顔面に迫る。
そしてタイミングを合わせて拳を放った。
黒い火花が咲き乱れ、0Pの顔面を粉砕する。
0Pは背後に倒れて動かなくなった。
「さて、後はお前の怪我治さないとな」
「治せるの?」
「あぁ。反転術式って言ってな。結構難易度高いんだ」
俺は倒れている女子の足を潰している瓦礫を退かして足に触れる。
反転術式をアウトプットして怪我を治す。
この世界の人間は他人の呪力が流れ込む際の拒絶反応がないから治し易いな。
反転の効率が良いから呪力消費も少なくて済む。
「ホントに治った…」
「立てるか?」
「うん。ありがと」
「終了〜!!!」
プレゼントマイクの終了を伝える声が演習場に響く。
Pはどれだけ稼いだか多すぎて数えていないが、多分合格ラインだろう。
俺がそう考えていると助けた女子が話し掛けて来た。
「アンタ、名前は?私は拳藤一佳」
「俺は虎杖悠仁。よろしく」
「入学できたらまた会おうね」
拳藤はそう言って走って去って行った。
俺も戻らないとな。
そうして実技試験を終え、問題の筆記試験に向かうのだった。
◇
一週間後、俺は雄英からの合否の結果の書かれた紙が入った封筒を受け取っていた。
部屋で1人、深呼吸しながら封筒を開ける。
筆記は自己採点でかなりギリギリだったから受かってるか滅茶苦茶心配だ。
と、不安に駆られながら封筒の中身を取り出すと、入っていたのは小さな機械であった。
機械を机の上に置くと空中に映像が映し出された。空中ディスプレイの機械だったようだ。
「私が投映された!!」
「オールマイト!?」
映像にはオールマイトが映っていた。雄英からだよな?
「虎杖悠仁少年!筆記はかなりギリギリだが、合格だ!実技試験はダントツトップ!二位と二倍差を付けての合格だ!歓迎しよう、ようこそ雄英高校ヒーロー科へ!!」
俺は思わず拳を固く握り締める。
こっからだ。こっから先、様々な試練を乗り越えてヒーローへとなるのだ。
それでも、一つ目の困難を乗り越えた。その実感が胸を埋め尽くす。
「気合入れてかねえとな」
俺はそう言って未だにオールマイトを映す機械をしまった。
これは大事に取っておこう。後で母ちゃん達にも見せたいし、兎に角先ずは合格を報告しないとな。
俺はウキウキで部屋を出て母ちゃん達の元へ向かうのだった。
◇
雄英に通うに当たって、通い易いように静岡で一人暮らしをすることになった。
実家から月一で仕送りが来る形だ。
そして、遂に入学式の日を迎えた俺は制服に身を包み鞄を背負って玄関から外へ出た。
すると隣からも人が出て来た。
茶髪で頰が赤い優しそうな女子だ。俺と同じ制服に身を包んでいる。
「もしかして、雄英に受かった人?」
「そうだけど、もしかして貴方も?」
「あぁ。俺もこれから入学式に向かうとこだったんだ」
「わぁ、凄い偶然!私、麗日お茶子!一年A組!よろしくね!」
「一年A組の虎杖悠仁。よろしく」
「クラスも一緒!折角だから一緒に登校しよ!」
俺は麗日の勢いに押されながらも一緒に登校することを了承するのだった。
・ヒロアカ世界の人間について
呪力を内包しているが、外には漏れ出ないようになっている。
また、呪力が極端に少ない為、反転を受けた時の拒絶反応がない。