序文ー
凄惨、混濁、阿鼻叫喚の地獄絵図。
俺は今何を見てる?
俺は今…赤を見てる?
朱を見てる?
紅を見てる?
世界に色がない…
あぁ、あったよ、あった。血の色が。
無色の世界に血の赤色だけがハッキリと見える。
ああ、弟が寝てるよ。
足が右に、手が左向いてる。
碧偉、相変わらず寝相悪いなぁ、風邪引くぞ。
そんなんだから頭が別の所に落ちてるんだよ。
はは、たく、しゃーねーな、心優しい兄ちゃんが拾ってやるよ。
だから、朝になったらちゃんと
目を覚ますんだぞ?
…お願いだから…
他のみんなも目を、覚ませよ。
俺をからかってるんだろ?
タイミング合わせて、みんなで起き上がって、ビックリさせる気だろ?
その手にゃのらねぇよ?俺もうわかっちったから。
だから、早く俺をビックリさせてくれよ…
なぁ、瑠璃?
誰も起きねぇんだよ。
もっと大声出せば起きるかな?
ダメだ、声、出ねぇや。
みんな、もうすぐ夜明けだぞ、起きろよ…
あ、俺が寝てるのか。そうなのか。そうだ。きっとそうだ。
早く目、覚めねぇかな。
明日はみんなでどっか行くんだよな。
何処がいいだろう?ははっ、楽しくなってきやがった。
なぁ、瑠璃?
早く、明日に、してくれよ……
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1.
「おはよー!!マイエンジェルぅぅぅ!!」
AM7:00ジャスト。俺、王流朱兎は弟、王流碧偉の布団にヘッドダイブした。
「うきゃっ!!??」
弟の可愛らしい悲鳴。うむ、流石天使だ…
「ちょ、ちょっと、何、なんで泣いてるの!!?」
弟か若干引き気味でいらっしゃる。「引かないで、マイエンジェル、僕のハートビートだけをひいてくれ☆」
「きm…うん、朝から何言ってるんだよ」
今なんか酷いこといいそうになんなかったかい?マイエンジェ…
「危ない、危うくキモいっていいそうになった」
「ぐはっ!その心の声は出しちゃダメ!!にぃにの心がブレイクしちゃう!」
「うわぁ、キモっ」
放ちました!いま、碧偉選手が渾身の右ストレートを放ちました!!朱兎選手立ち上がれない!!
「もう、下らないことやってないで早く行くよ、朱兎」
「(ジーー〜〜〜〜ーー)」
「な、なんだよ、寝癖でもついてるのか?僕」
「いや、今日も小さいなぁ、って思ってなww」
あ、あっ、朱兎なんてキライだあぁぁぁー!!」
我が家の日常風景である。
「まぁまぁ、悪かったって、マイエンジェルっ♪」
「絶対悪いって思ってないよね⁉︎その呼び方止めてって100億回ぐらい言ってるよね⁈」
「いや、まだ9855201923回だな」
「数えてんのかよ!このバカ兄がっ!」
ポコっ。
「あぁ、神よ、我に祝福をありがとう…」
「すいません‼︎ここに弟に殴られてカンジテル変態兄がいます‼︎‼︎」
やっぱりさ、弟に殴られるって、すごい光栄だと思うんだよね、背が小ちゃくて全然頭に届いてないし。
「いま、小さいって思ったでしょ」
なん…だと…この俺の「どの俺だよ」思考を「丸分かりだよ」読むだと⁉︎
「声に出てるから‼︎」
俺、王流朱兎は自他共に深く頷き過ぎてヘドバンしちゃうぐらいのブラコンだ。だってさ、あんな可愛いんだよ?これでブラコンにならないなんて、そんなの人と認めない!!
「男だから可愛いなんて言われたくないよ!」
おっと、また声が出ていたようだ。
弟の王流碧偉は、俺と同じ高校一年生…なのだが、何故かめっちゃ小さい、俺と並ぶと30cmぐらい違う。同じ双子の、それも一卵性双生児なのに何故なのだろう?これは人類最大のなz…
「もういいよ!絶対に大きくなってやる!朱兎よりも10cmも!!」
「それは困る!マイエンジェルはそのままでいてよ!」
「だから、その呼び方は…」
その時、風が吹いた。
春にしては少し強めの風が吹いた。
その風が起こした桜吹雪の向こうに君がいた。
学校の前の長い桜並木の丘の上に、君がいた。
「こんにちはっ!」
鈴のような声。
桜の花びらのような唇。
スラリと細く、華奢な手足。
流麗な黒髪。
そして…見てるこっちが眩しくなる輝くような笑顔。
完璧と言う言葉が彼女に失礼と思えるような秀麗な君が、いた。
恋に落ちる音がした。
この時は、気付かなかった。知るわけもなかった。
運命の歯車が廻り始めたことを。その意味を。
なんか、全然シリアス展開に行くのが後になりそうです。