生まれたのは貧しい家だった。
母はアイドル崩れの夜の蝶だった。名前は凛。
夕闇 輪廻が私の名前だ。
弟は三人で、刹那と蒼穹と紅蓮。上の二人は、あっという間に父に引き取られていった。
その時に貰ったお金と、紅蓮のお父さんが残してくれた遺産を元手に、母は借金を返し、田舎に農地を買った。紅蓮のお父さんは引退して農家をしたいと常々言っていたのだ。家のお手伝いの合間にコソコソ農地を耕して、ダンジョンで魔物を倒していたけど、紅蓮が中学生になったら、お母さんと紅蓮に話すつもり。その時は私も18歳になってるしね。ちなみに、私が大学一年生18歳の時、刹那は高校1年生の15歳、蒼穹は中学3年生の14歳、紅蓮が中学生一年生で12歳。
刹那と蒼穹は不思議な力を使った途端、引き取られていったのと、紅蓮は不思議な力を使った危険な仕事をさせられていて死んだのを知り、紅蓮は力を隠すことにしたようだ。母もそう。なんか通うとお給料を貰える学校を紹介されたが、紅蓮は第一志望お医者さん、第二志望が起業、第三志望が農家ということで、今から算数を頑張って勉強である。私はコックさんを目指し、調理師免許を取れる高校へ通った。もちろん、女神様には毎日感謝の祈りを捧げている。
刹那と蒼穹には連絡先を知らせ、いつでも帰ってきていいんだよとお母さんが言っていて、一年に一回くらいご飯を食べに来る。ただ、母さんと紅蓮が不思議な力を使えるのは刹那と蒼穹には内緒。
私の力は母さんと紅蓮にも内緒。
そうして、ついに紅蓮が中学生になった。
刹那と蒼穹を呼び、小さなお祝いをする事にした。
「皆にお知らせがある。私の前世は勇者だったので、不思議な力を持ってるんだよね。私を妊娠したお母さんも、その後にお母さんのお腹にいた刹那、蒼穹、紅蓮にも不思議な力がある。多分。今日覚えて欲しいのは、幻惑魔法っていうの」
「幻惑魔法?」
「えっちしたと相手に思わせて、どうしても殴れない相手のナンパから身を守る術。勇者の必需品。皆、お母さんに似て顔がいいのと、勇者パワーでエッチすると妊娠する力があるかもしれないので、教えておくことにした」
「えっ」
「勇者という割にはえっち関係の力しかないのなんなんですか?」
「切実に知りたい」
「は? ふざけんなよ」
「もっと早く知りたかった」
「文句がある人には教えません」
全員黙った。
「よろしい。これは女神様のご加護を借りた術だから、女神様への感謝の祈りを忘れないようにね。あと蒼穹、もうダメだと思ったら即逃げてきていいからね」
それから、私は使い方を教えていく。
「えっ これ本当に何もなかったの。信じられない」
「何もなかった。服とか乱れてないでしょ? その辺、乱用するとバレるから気をつけてね。口止めとか、すぐお風呂入ったふりするとか、できる限りのバレ率下げる工作は忘れないでね」
「わかった」
「全員使えるね。よかった。後、蒼穹がピンチみたいなので、もう少し教えておくね。空間魔法でアイテムボックスとマイエリアっていうのがある。物を亜空間にしまって置ける魔法と、亜空間に自分の部屋を作る魔法。一時的な避難場所にも使える。悪用しないなら教える。出来るかはわからない」
「教えて欲しいです!」
「教えて!」
「教科書持ち帰りが楽になるってこと!?」
「買い物が楽になる!」
「バレないようにしろよ」
広さはバラバラだったけど、無事空間は作れたようだった。
「マイエリアの補助カード、一枚だったらあげるよ」
壁紙カードである。マイルームのものだけ。結構いろんなデザインのを持っている。家具も備え付け。
「これ格好いい!」
「この部屋、トレーニングルーム機能あるんですね」
「これ、本棚いっぱいでいいな。全部中身白紙だけど、ノート買う必要なくなる」
「私はこのオシャレな部屋がいいわー」
こうして、全員、部屋を選んだ。
「私からは以上。解散!」
「勇者なんだから攻撃系のなんかないの?」
「力、美しさ、それぞれ補正付きで生まれてきたじゃん。それで満足しろ」
「それはそうだけど。兄さん、退魔師しないの?」
「勇者として十分過ぎるほど従事したわ。あーでも。マイエリアにダンジョンコアつけとく?」
「ダンジョンコア?」
「亜空間に化け物を召喚してそれを倒す事が出来る。化け物は魔力を持ってるので、倒したり肉を食べたり魔石を握ったりすれば魔力を少し吸収できる。お前らは女神の加護として魔力を使う才能も少しだけ備わってる。化け物は任意召喚できるようにしておくからそんな危険でもないと思う。強いの呼びすぎんなよ。解体に自信がなければアイテムボックスに入れて一年に一度くらいもってこい。いい感じの肉とか毛皮とかアクセサリーとかにしてやるし魔石をとっておいてやる。手数料は素材からもらうけど、量があったり面倒だったりしたらお金も取るぞ」
「俺、欲しい!」
「私はいいわ。お肉だけちょうだい。料理してあげる」
お母さんはそうだよね。
「訓練に良さそうですね。もらいます」
「蒼穹も欲しい」
「もうある魔石とお肉ください。アイテムボックスで一年も保存できるならいっぱいください」
「俺も! 俺も!!」
「蒼穹も欲しい」
「美味しい果物とかある?」
「あるよ。検疫所にぶん殴られるから、流出しないようにね。種もゴミ箱に捨てちゃダメだよ。アイテムボックスにゴミ袋入れて一年に一度私に提出するか、マイルームにプランター置くかコンポスト置くか」
「「「「はーい」」」」
「今日は腕によりをかけて料理するからな。調理師免許取得した男の料理、味わわせてやるよ」
歓声が上がる。そもそもアバターは調理スキルと女神様からいただいた補正を持ってるからね。でないと異世界の魔物なんか解体とかもできなかった。
10歳になってから8年間、家の手伝いと勉強の合間にちまちま狩り溜めてた肉と5歳の時からちまちま栽培してた野菜や果物を使ってパーっとやる。
ゲームアイテムも大放出だ。
刹那も蒼穹もたまの休日に自炊できる一年分の量を用意してやる。
紅蓮はアイテムボックス小さいみたいだけど、同居してるんだからいいだろ。食べたきゃお私が作ってやる。
大っぴらに活動できるようになったし、マイエリアで野菜育ててうちの畑で育てたものですって言って売ろう。食害や盗難がないだけでもチートなんだよな。
ゲームではマイエリアはキャラルーム、アカウントハウス、ファーム、ギルドハウス、シティの五種類あった。
そして前世の空にしたマイエリアと、今世で新たに入手したマイエリアの二つがあるから、ファームも二つなのだ。
新たに入手したファームをゲーム植物、空にした方をこの世界の植物を育てる事にする。出張してた異世界からは何も貰ってないし、まだ報酬の支払いもされてないのでそれは次の転生の時でいいだろう。別にずっと支払われなくてもいい。その期間だけ拉致が行われないのだから。
とにかく、野菜をうちの畑で取れましたと言って嘘ついて売るのだ。
半年で刹那は戻ってきた。アイテムボックスがいっぱいになったのである。
「魔物のお肉は凄いです。食べるほどどんどん調子良くなってきて、どんどん倒せちゃいそうです! でも戻ってくるのが大変ですね。ここ田舎ですし」
「うーん。取引機能やフレンドコール、召喚魔法を応用してなんとか……」
「教えてください!」
どうにかこうにか、物のやり取りや依頼を出来るようになった。一部女神様に徴収されるようだが、全然問題ない。というか女神様に捧げ物ができる事にも気づいた。早速料理をして捧げよう。
私は異世界の奴らと違い、感謝が出来るのだ。
マシュマロ
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