退魔師協会に行くと、揉め事が起きてるようだった。
どうやら、海外で凶悪な妖魔が出て、日本の退魔師に救援要請が出ているが、凄腕退魔師=大体夕闇家の血筋なので海外渡航禁止らしい。
日本は海外の血統管理を信用しておらず、万が一にも血筋が国外に漏れたら非正規ルートにも一気に広まることを危惧し、一滴も渡さない構えのようだ。
確かに、密入国が容易になるのは問題だ。
しかし、すごいな夕闇家の血、そこまで広まってるのか。
「私が行こう。退魔師協会で維持している、夕闇家の血を引かない退魔師だ」
「駄目だ、マイエリア持ちが欲しいんだ!」
「それは無理ですって」
「婿を探しているのがいたろう!」
あ、危機のふりした婚活ですわ。あっぶなぁ。
「それもう1週間前に婿を見つけて婚約届け出してきてるよ。残念だったね」
「なんだって!」
私は退魔師の皆さんにさりげなく姿が見えないように庇われて、奥の部屋へ行った。
「当主の結婚おめでとう」
「ありがとうございます。結婚式は一年後に二人だけでひっそり行う事になってます。雫は独り占めしたい方みたいで」
「そうか。それで今日は?」
今の退魔師の結婚は大体ひっそりとするかクッソえっちかで、ないことも多い。
えっちなのはあれだ、幻惑魔法で嫌な相手を誤魔化す事が増えたので、確実にえっちしてますって証明をするようになったのだ。つまり、結婚の周知に、えっちな写真か子供のDNA検査が必要になったのだ。なので結婚式は子供を作ってからというカップルも多いし、あえて結婚式はしない事も多い。元々妾文化だしね。普通の結婚式もあるにはあるが、大体子供がすでにいる。
たまに玉の輿に乗った一般出の術師で結婚式は派手にして人をいっぱい呼びたい! などとやってしまい大変な事になる女の子の術師もいるそう。悲劇。
ちなみに退魔師の冠婚葬祭は当主就任式が一番派手で、次に初陣式、次に元服で葬儀はひっそり、婚姻については各々の趣味みたいな感じである。
なので当主に憧れる者は非常に多い。
結婚式を挙げることを夢見る女性並みに、いやそれ以上に当主就任式への憧れは強い。
そんなわけで、雫と水晶もスタンダードに子供を作ってから二人でえっちな結婚式となる模様である。多分雫が送った婚礼衣装が活躍する。
「異能街でお店をオープンするので、割符を配るのと、宣伝に来ました」
「ダンジョンコアを売ると聞いたが」
「はい。ただ、国に責任持ってもらおうと思います。国の許可証とその国の対魔組織、身分証明書がないと売れないようにします。日本政府と退魔師協会にも許可を取ってます。これが各国と各退魔師協会に配る割符です」
「わかった。確かに渡しておく。これの運用がうまく行ったら、順次技術の開示も検討するらしい」
自壊装置をつけてあり、奪われたら即座に破壊するように設定もしてある。
ダンジョンコアは危険だからね。そこはしっかりするのだ。
いくつかの家には先行で売っているが、これからは異能街で売ろうと思う。
「商売も大事だが、本分を忘れるなよ」
「もちろん、妖魔狩りも続けてるし続けるよ」
さて、お店のラインナップである。
異能街の子供コースではもちろんキャラ弁!
異能街では子供が子供コースに入場すると滞在日数に合わせて1キッズチケットと数枚のキッズコインをもらえるようになっている。
そして、必ず1キッズコインで買える物を用意するルールだ。
ちなみに1キッズチケットは服が一揃い用意してもらえる。
意地でも着替えをさせる謎なリゾート地である。
一キッズコインでお水しか買えないイケズな店もあれば、全部1キッズコインで買えるお店もある。
チケットやコインは現地政府に持って行けばお金に変えてくれる。
一キッズコイン、日本円だと1000円になるらしい。
当店ではキャラ弁を一つ1キッズコインで買えるようにしようと思う。
後は無害なお土産。
共同経営なので、方針が違わないかちょっと心配だったが、1キッズコインのスライムの餌と1マギカのスライム、水槽などのペット用品という超良心価格だった。スライムがキッズコインではないのは、魔法生物の売買を異能街の通貨以外で売ると怒られるかららしい。買う方も申請が必要とのこと。
お店をやってるのも戦うのに向かない優しそうな人達で、私たちは安心した。
デザインも優しげかつ楽しげなふんわりした内装で、並べられた水槽と中のスライム、非売品のキラキラ光るスライムなどが目に楽しい。
スペースも十分広げる余裕がある。
「約束だからな。ほら、名前つけて」
そして、非売品と書いた豪華な水槽をヒョイっと取って、水晶にプレゼント。そ、それ、プレゼントしても大丈夫なんです……!? お店の人驚愕してるよ!?
「あ、ありがとう。雫。とっても大事にするよ」
そして水晶が私に合図。わかっておりますとも、当主様!
「こちら、当家からの返礼品となります!」
アイテムボックスから、水槽を非売品ブースにライドオン! スライムガチャ、すでに開けてあるスライムガチャの用品などを出す。
「えっ お前の分は? 大好物じゃん、プチスライム」
「食べたいときは買えばいいし、共同経営するんだから私達はスライム売るわけにはいかないし……」
「それはいいけど、瑠璃。売り物と人のペットは絶対食べないでね?」
「は、はい。お店の方々、こちらお納めください。ほら、これとかキラキラしてますよ!」
「わ、私もこんなに沢山は大丈夫なので、2匹残して返しますね。欲しければ買うので!」
それでお店の人は再起動したらしい。
「こ、これはもしや原種!? なんて純粋で透き通った色……!」
「これはゴールデンスライム!?」
「し、雫様が以前から約束されていたのなら、仕方ありません。スライムくんたちはありがたく頂きます。お店はキャラ弁と展示とお土産販売との事ですが」
「はい」
「キャラ弁はいくつかのアニメの許諾を取って気まぐれに出そうかと思います」
「すでにアニメ会社と話はしていて、在庫も作ってあるよ」
「瑠璃様には及びませんが、どうぞ見てください。試食もどうぞ」
家人がお弁当を並べる。
「とっても可愛くて美味しそうですね!」
「素晴らしいです!」
「美味しい! なんて美味しいの!」
よかったぁ。なんとか空気が良くなった!
「それと展示! すごいぞー!」
「私たちも今初めて見るんだよね」
「瑠璃のいうすごいだから期待してる」
ふふふ、期待の眼差しがくすぐったい! おどろけ!
「展示はこれを出そうと思います!」
プチドラゴンである!
飛べるけど火は吹けないからとっても安全だよ!
プチスライベントはがっつり参加したけど、プチドラの時はお金なくてあんまり参加できなかったんだよね。配れる程なかったし、焼くととっても美味しいからスライムで学習した私は琥珀達にも内緒にしていた。歳を取って濃厚な味のものが食べられなくなって、いつもコンプレックスに塗れて泣いてた孫に内緒だよってあげたら、凄く真剣な顔してマイエリアに隠して、その後一切泣き言やわがままを言わなくなったのが笑えた。その後見違えるように逞しく成長していって先が楽しみだったっけ。思い出の品である。
「ひっ 聖竜」
「えっ 何これ」
「これ、やっぱ輪廻由来だったか」
「プチドラゴン。焼くと美味しいよ」
その場にいた全員がゾワっとした。
「こんなに愛らしい子を食べるのかい!?」
「悪魔! 悪魔!」
「これ1匹1兆って言われてるんだぞ!」
「えっ そんなバカな」
「竜守家に1匹しか現存していない聖なる竜だ」
「いや、スライムと全く同じ出自なんだけど。竜守家ってなんぞ。まさかペットの為に苗字変えたの? どこにも聖の要素ないが?」
「瑠璃様、飢えさせてませんでしょう!? 頑張って料理してますでしょう!? どうして食べてしまうんです!?? そんなに私の料理まずいですか!?」
「いや、魚河さんの料理めちゃくちゃ美味しいです、はい。でもたまにジャンキーなものも食べたくなるっていうか……」
「他になんかあったら今出して欲しいんだけど?」
「うーんうーん」
あったわ。
「プチマンドラゴラセット。生で食べると美味しいよ」
「それ、抜くと死ぬ?」
「プチだから安全。変な言葉ばっかり覚えるから面白い」
「言葉を覚える生物を食うな」
「植物だからセーフ」
「アウト」
私はこれも出した。
勇者時代は全部は食べなかったんだよね。
輪廻の時は忘れていたのもあり、三セット分ある。
他にもあんまり参加しなかったイベントのプチセットが見つかった。
お酒の材料になるプチコカトリス、ジュースの材料になるプチフルーツマシンガン。
これは作るの面倒だったのでそのままだった。
「作ってくれるなら是非食べたい」
「作ってあげないから食べないでね。あ、プチフルーツマシンガンはいいのか? 脅かしてフルーツを収穫するの?」
「ううん。それだと果物が潰れちゃうから、眠らせてキュって締めてゆっくりフルーツ収穫するの」
「やめようね」
雫は、それらのセットを全て私に出させて、整理して、告げた。
「ぜってーこいつら竜守家にやった方が幸せになるから、あとすげー問題になるからこいつらは秘密裏に竜守家に譲るね……。あそこ、力の強い術師が多いから、貸しを作っておくと後々役立つと思うし。あと持ってるとすげーでかい火種になる」
「この数だと竜守家も買うの大変でしょうし、そうなると殺してでも奪うになるでしょうしね……」
「は、早く持って行きましょう、いえ、怖いので取りに来てもらいましょう!」
「お慈悲ー! お慈悲ー!」
「もっと美味しいものを作るとお約束するので……!! というかその飽くなき食欲はなんなんです?」
「プチフルーツマシンガンのミックスジュースなら作ってあげますから……。プチシリーズはそれ以外諦めてください。ペットを食べるのはダメです」
「はい……」
「魚河、食費2倍……いや、瑠璃に関しては10倍にしていいから、絶対変なのに手を出させないようにしてね。あと、健康管理にも気をつけて」
「よろしいのですか」
「一兆円の竜を食われるよりは……」
「愚問でした」
ぐぬぬ。でも食費10倍は正直嬉しい……いやでも絶対太る……。仕事いっぱい入れればいいか。
「待て。ペットモンスターもいる? 絶滅したミニドラとかスライムとか」
「いるよ」
「売るつもりだった? それか展示」
「流石にペットモンスターは繁殖できるほど数がいないので……雑多な種類をいくつかって感じだし。展示にしたら場所とるし、イベントの時ぐらいしか活躍できないかなって……」
「ああうん……どうしよっかな。スライムはショップでお手伝いとして使って、ミニドラは竜守に投げるの確定として、リスト見せて」
「それって瞳導師家は得する?」
「襲撃されなくなるのは大事だろ。あっ 当然焼いたら美味いとか、瑠璃が食べたことあるとか、この場の人間は絶対言うなよ。戦争起きるから絶対言うなよ」
「「「「「はい!!!」」」」」
「瑠璃。サプライズはもうなし。このテナントと大人コースのテナントで何売るか、何するか、予定全部教えて」
それから、雫にしこたま怒られて子供用のオープンは一ヶ月、大人用のオープンは三ヶ月遅れた。
納得いかない!
マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
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