勇者の引退ライフ   作:かりん2022

3 / 11
自慢

 退魔師の家柄はそもそも学校が無縁の場合が多い。

 僕も学校に行けたのは母の元にいた小学校まで。でも退魔師の家は息が詰まる。

 夏に母の元に帰るのが唯一の癒しである。

 ほら、今もいつから待ち構えていたのか、僕の部屋の前に本家の息子が。

 

「刹那。お前の弟、派手に遊んでいるみたいじゃないか。さすが娼婦の息子だけあるよな」

 

 僕はため息をついた。

 蒼穹はあまりにも面倒臭くなり、誘われれば幻惑魔法を使っているらしい。

 それですぐに誘いに乗ってやらせてくれる男となり、さらに誘われる、と。

 負の循環である。これが心配だったから、僕は幻惑魔法を使わずにどうにか切り抜けている。

 蒼穹はあまりに頻繁に誘われすぎて面倒くさくなり、事後っぽい工作も今ではせずに幻惑魔法をかけて転がしておくと言っていたから、よくバレない物だと思う。身を守るだけの力は手に入れたし面倒くさくなってきたから、もうバレてもいいとは言っていた。でもバレたらバレたで面倒な事になりそうだとは思っている。

 

「別にどうでもいいですよ」

 

 だって幻惑魔法だし。

 

「お前も良く消えるよなぁ。誰かとしけ込んでるんじゃねぇの?」

「一人が好きなので。用があれば電話して貰えば出るようにしますので」

 

 マイエリアで勉強しながらトレーニング、ダンジョンで魔物退治。後は料理である。兄に習って最近は腕が上がってきていた。最近のブームは弁当作りで、兄のブームはキャラ弁当なので、僕のアイテムボックスには弁当の在庫が積み上がっている。

 ちなみに勉強の内容は戦い方とか、敵の能力の事例とか。

 求められているのは退魔師の戦闘員たる事なので、強ければいいのだ。

 まあ、外で作らせた子供の扱いなんてこんなものだ。

 人手が足りず、当主も命懸けの仕事をさせられている現状、そこに文句はない。

 

「溶け込もうとしねぇよなぁ。未だにママのおっぱい吸いに行くしよ。ちょっとはご奉仕とかして機嫌取っといたほうがいいんじゃねぇの? 娼婦の子がよ。蒼穹みたいに一生懸命ご奉仕すれば可愛がってやるのによ」

「僕に勝てないくせによく吠えますね」

 

 間髪入れず殴ってくるのをスッと避けて足を引っ掛ける。

 

「テメェ!」

「散歩に行ってきます」

 

 電話が鳴る。当主様からだった。

 面倒な依頼の予感。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ。嫌われもの同士、よろしく頼むよ」

「まあ無理せず頑張りましょう」

「ははっ そうだね!」

 

 妖と妖術師が手を組んでの大規模犯罪らしい。

 激戦区にたった二人配属された。

 組まされたのは、学生だった。まあ、僕も学校に通えてれば学生なんだけど。

 相当な激戦になりそうなので、互いの切り札は言いふらさないと契約を結ぶ。

 まあでも情報は漏れると思ってる。あくまでも口約束だし。

 切り札はバレない方がいいが、隠したまま死ぬのは馬鹿らしい。

 この状況だと前線基地がないと死ぬ。

 

 戦って、戦って。だんだん疲れてきた。

 

「少し休みませんか? 疲れました」

「どうやって!?」

 

 僕は結界を張った。これでしばらくは大丈夫なはず。

 マイエリアへのゲートを開けて、学生を招き入れた。

 

「これは僕の切り札なのでご内密に」

「空間転移……? いや、異空間を作ってるのか」

「そろそろお昼ですし、お弁当持ってきてます? よければお弁当一つ分けますよ。兄お手製の青汁特製ドリンクもあります。元気が出ますよ。シャワー浴びてきてください。洗濯は5分で終わるので、服も全部洗濯機に突っ込んで大丈夫ですよ。生地は少し痛みますが」

「ありがたくいただくよ」

 

 順番にシャワーを浴びて、洗濯した服を着て髪を乾かし、特製ドリンクをきゅっと飲む。

 

「冷えてて甘くて美味しい! うわ、痛いのが消えてく」

「鎮痛効果と血止め効果を持ってて、通称ポーションって言います」

「本当にポーションだったりしない?」

「ゲームのしすぎでは?」

 

 お弁当を渡す。

 

「可愛い! なんか意外だね。すごく凝ったお弁当。これ、食べていいの? 君が作ったの?」

「最近、兄がキャラ弁ブームで教えてくれる料理が大体キャラ弁なんですよ」

「刹那って料理上手なんだ」

「名前、知ってるんですか?」

「私は桜木 輝羅って言うんだ。よろしく。ん。これ凄く美味しい! 豚でも鳥でも牛でもないね。なんの肉?」

「謎肉」

「怖い!」

 

 麦茶を入れて、お弁当を食べながら打ち合わせする。

 

「最初はやり方教えるのもあって一緒に休憩しましたけど、冷蔵庫にお弁当とドリンクいくつか入れておきましたから、交代で休憩しましょう。冷蔵庫のものは好きに食べて良いですよ。結界はあと30分は大丈夫はなずです」

「わかった」

 

 そこで綺羅の電話が鳴った。

 

「あ。琥珀。気配消えたから心配した? ごめんね。大丈夫だよ。今、刹那からお弁当貰って食べてる。休憩中なんだ。刹那が結界張ってくれて、あと30分してから戦線復帰する予定……。ええ? 刹那。クラスメイトにお弁当一個分けていい?」

 

 電話をして、輝羅が聞いてくる。

 

「良いですよ。結界やマイエリアの事を黙っててくれるなら」

「良いって。でも結界については切り札だから言わないで欲しいって。約束守れる? わかったおいで」

 

 

 

 

「ずりーーーー! 何それ!? 超くつろいでんじゃん! 風呂上がりじゃん! しかもキャラ弁超凝ってる! 可愛い! 美味しそう!! デザートはアイスかよ! 豪華だし!」

「だって冷凍庫にあったから」

「特製アイスを冷凍庫に入れたの忘れてて、冷蔵庫のなんでも食べて良いって言っちゃったんですよ」

「サッと汗ながして来る? 洗濯物、服痛むけど5分で乾くよ」

「流してくる! アイス俺の分もとってて!」

「結界そろそろ心配なので、僕は仕事に戻ってますね」

 

 仕事は数日掛かった。最終的に蒼穹も合流し、四人の財布に入ってた現金全部献上して兄さんを召喚して倒してもらった。なお、綺羅の同級生らしい琥珀は蒼穹のことを洗脳術式の使い手として知ってた。

 一回蒼穹が幻惑魔法を掛けたのを見てたらしい。

 

 一番の激戦区を任されていたが、終わってみたら一番ピンピンしていた。

 堂々と戦場で帰宅してたんだから、それはそう。

 

 キャラ弁のやり取りは蒼穹とはしてなかったらしく、蒼穹はブチ切れた。

 このような不平等はあってはならぬと大騒ぎしたが、蒼穹は蒼穹で色々小物を作って貰っていたらしい。

 兄さんには平等に早急にキャラ弁、僕に小物を送ってもらう事で話はついた。

 兄さんの負担だけ増えてる気がするけど気のせい。

 

 格好良くて、料理上手で、色々作ってくれて、献上品が必要とはいえピンチの時に助けに来てくれて、めちゃくちゃ兄さんを羨ましがられた。それに僕のマイエリアや料理上手な事も羨まれた。正直、めちゃくちゃに気分がいい。家族を褒められて嬉しくない人間なんていない。

 

 調理師免許を兄が持っていることを話すと、卒業と同時に行われる、琥珀の当主就任の宴の料理をお願いできないか聞かれた。輝羅も琥珀の当主祝いのプレゼントがしたいということで、頼られてしまった。任せろと胸を叩いてしまったので、兄に泣きつこうと思う。




マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
返信不要の場合は返信不要と書いておいてください。


https://odaibako.net/u/karin2022v
リクエスト、返信不要の匿名感想はこちらにお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。