妖術師の邪悪な企み。
街が大変だというのに、内ゲバや足の引っ張り合い。
親友は激戦区へと配置された。心配だが、俺だって余裕がない。
気配が消えて、でもすぐには駆けつけられなくて。
無駄だと思いつつも、ボロボロの体を引きずり、祈るように電話した。
普通に出た。
『あ。琥珀』
「気配消えたから心配した! 無事なのか!?」
『気配消えたから心配した? ごめんね。大丈夫だよ。今、刹那からお弁当貰って食べてる。休憩中なんだ。刹那が結界張ってくれて、あと30分してから戦線復帰する予定』
刹那。闇沼家の傍系の血筋の子だ。母は娼婦。
それなりに強いが、いや、強いからこそ本家筋の者たちに警戒され、毛嫌いされているという。どうやら、刹那は噂より強く、お弁当を分けるぐらいの余裕があるらしい。あの激戦区で、結界を30分持たせるのがもう凄い。
ついでにこの状況で休む気満々の輝羅達もすごい。長丁場になりそうだから、休むのは大事なんだけど。それでも。
「ずりぃ、俺もお腹減った!」
『ええ? 刹那。クラスメイトにお弁当一個分けていい?』
「俺の分もあるの? 食べていいの?」
『良いって。でも結界については切り札だから言わないで欲しいって。約束守れる? わかったおいで』
なんだか向こうの方が安全そうだ。綺羅の声には余裕があった。激戦区に行く分には文句は言われないだろうし、お腹も減った。移動しない理由はなかった。
結界の中で、輝羅は待っていた。風呂上がりだった。
「来たね。うわ、ボロボロ。お疲れ様」
俺が結界に触れると、普通にすり抜けた。
そのまま、綺羅は手を引いてなんか普通に立ってるドアを開ける。
中では刹那がポテトチップスを食べていた。
テーブルの上には空の弁当箱と、すげー可愛い手付かずのお弁当、輝羅が食べていたのだろうアイスがある。アイスはキャラクターの形のチョコなどがあり、めちゃくちゃ豪華だ。
「ずりーーーー! 何それ!? 超くつろいでんじゃん! 風呂上がりじゃん! しかもキャラ弁超凝ってる! 可愛い! 美味しそう!! デザートはアイスかよ! 豪華だし!」
「だって冷凍庫にあったから」
「特製アイスを冷凍庫に入れたの忘れてて、冷蔵庫のなんでも食べて良いって言っちゃったんですよ」
問題はそこじゃないだろ! 刹那は冷えた麦茶を入れてくれる。
「サッと汗ながして来る? 洗濯物、服痛むけど5分で乾くよ」
洗濯までしてんのかよ! 確かに服が綺麗だわ!
「流してくる! アイス俺の分もとってて!」
「結界そろそろ心配なので、僕は仕事に戻ってますね」
シャワーで汗を流し、洗濯してよく乾いた服を着て、髪を乾かす。
「これ、お風呂上がりにキュッとやると最高だよ」
渡されたものを飲むと、すーっと痛みや疲労が消えていく。なにこれ。
麦茶を飲んでキャラ弁当を食べる。俺でも知ってる有名アニメのキャラクターのキャラ弁で、めちゃくちゃ美味しかった。よく知らない材料が結構入ってるけどめちゃくちゃ美味しい。食後はアイスで締めた。
こんな贅沢、戦闘中にいいのかよ。
「じゃあ、そろそろ私も行くよ。ちょっと食休みしてからおいでよ」
「ありなのかよそれ」
「長丁場になりそうだからね。無理はしないようにしないと」
「そうだけどさぁ」
それから交代で戦った。
刹那が鍵を出せるようになって、その鍵で部屋に入れるようになってからばらけて移動して戦闘も可能になった。
夜は交代して寝る事になった。普通に布団が用意された。驚愕した。
夕食を輝羅と食べていると、蒼穹が来た。洗脳術式の使い手で、色んな奴と寝てるって噂の奴。ちょっと警戒した。蒼穹は、青ざめて震えた。
「それ、まさか……兄さんの作ったお弁当?」
「ううん。お兄さん、キャラ弁作りがブームで、刹那はそれを習ってるんだって。これは刹那が作ったもののはずだよ」
そこで刹那が入ってきた。
「兄さんが作ったの食べたいの? いっぱいあるよ、どれにする?」
刹那がテーブルにキャラ弁を並べていく。
蒼穹はブルブルと震えた。
「蒼穹はお弁当貰ってない……なんで……?」
「えっ でも獲物送るとキャラ弁になって帰ってきませんか?」
「アクセサリーやぬいぐるみやコートや毛皮のラグしか帰ってこないもん!」
「なにそれ、僕知らない。なんで僕にはコートとかラグがないのですか……?」
「刹那ばっかりずるい。ひどい!」
「蒼穹ばかりずるいです! なんでそんなひどい事を!?」
半分しか血が繋がってなくても兄弟だなぁ……。ていうか獲物ってなんだ。
喧嘩を始めた二人は年齢以上に子供で、俺は安心した。
蒼穹はこの鉄火場でも家のものが盛り始めてきてウザいため避難してきたらしい。
「最前線に避難かよ」
「別に問題ない。刹那のところに行くって言えば変じゃないし危険な場所に追ってこれない」
「まあ、マイエリアがありますし。危険になったら避難すればいいので」
「チートじゃん」
それから、まとまって行動した。
年齢が近いこともあり、合宿みたいで楽しかった。
楽しめる余裕があった。
美味しくて可愛い弁当、シャワー、寝る場所。休める場所、美味しくて元気の出る飲み物、交代要員、余裕を持って回せた。体の調子がいつも以上に、異様なまでに良かった。
でも敵が多すぎてキリがないので、俺達で平定できないかって話になった。
奥に偵察に行く。恐ろしい妖魔がいた。
そーっと隠れながら撤退する。
「あれは無理」
「ちょっと無謀だよね」
「でも倒さないと終わりません」
「魔王には勇者」
蒼穹が言った。
「いけますか? 妖魔ですよ? 霊力ないと倒せないですよ?」
「兄さん凄いからきっとなんとかなる」
「なりますかね……。召喚すればすぐ来てもらえますけど、代価が前払いなんですよね」
「あいつ推定いくらくらい?」
「ちょっと査定します。……大体これくらい? 難易度的には大丈夫そう」
刹那と蒼穹がこそこそ話す。そして俺たちに向き直った。
「今から召喚術式を使います。代価を捧げて、援軍を呼ぶ術式です」
「召喚術式」
刹那が結界系、蒼穹が洗脳系だと思ったけど。二つ術式を持ってるってこと?
マイエリアと召喚術式は違う気がする。
「召喚術式のいいところは、お願いする事を事前に査定できる事です。そしてその金額から、難易度がわかるんです。ただ、あの妖魔を倒す依頼の金額がお高めで。今、琥珀と輝羅、現金どれくらい持ってます?」
「それ、査定の時点で凄くない? いくらぐらい?」
「これ経費で出るの? 赤字にならない? っていうか、四人揃ってもあいつ倒せるだけの金額が出せるとは思えないよ」
「これくらい。あと、あんまり知られたくないから経費は困ります」
「「安っ」いやでも、今あるかって言われると困るな」
俺達は金額を出し合った。
「足りた!」
「じゃあ、召喚しますよ? いいですか」
「大丈夫。討伐ボーナス出させるから」
「召喚します! 兄さん!」
「「兄さん!?」」
床に西洋の魔法陣っぽいものが輝き、青年が現れた。
「なんか化け物倒してくれって話だけど」
「そう、あいつ死なないとおうち帰れない」
「場所案内するので、どうにかなりませんか?」
「依頼料もらったから、それは倒すよ」
そうして、隠れて妖魔のところへ移動した。
「んー。わかった倒す」
明らかに神々しい剣を虚空から出して、お兄さんはぶった斬った。
一緒にいた妖術師が動揺する。
「ごめんな、これ以上戦うと追加料金発生するからあとは見守ってる。困ったら力を貸すから、自分でやってみてくれ」
「これぐらいならできます」
「琥珀、輝羅、あっちは自分達で倒す」
「わかったよ」
「マジで? 二人のおにーさんすげーな」
召喚される術式だろうか。めちゃくちゃチートの匂いがする。
妖術師を片付けると、お兄さんは消えていった。
刹那。蒼穹。おにーさん。
おもしれー奴らである。
それから、一ヶ月後。
俺は輝羅と二人、いい汗をタオルで拭きながら厨房へと向かっていた。
「魚河さん。今日の試作品ある? ちょっと貰っていい?」
「すみません、ちょっとじゃなくていっぱい欲しいです」
「今日は煮付けが美味しいですよ。すぐご用意しますので、まず汗を流してきてくださいな」
「やった。ねー輪廻さん。ダンジョンでまた狩りしてきたから、捌いといて。マンモスみたいなのも倒せたから、宴に使えるかな?」
「それは素晴らしいです!」
「私も頑張ったんだよ。魔石だけ取り出したんだけど、輪廻に贈る腕輪には小さいね。私はもっと大きいのイケるよ」
「魔石だけじゃなくて、血抜きまで出来るようになってくれ……。今解体に行く。毛皮はどうする?」
「会場に敷く! あの大きさならいけると思う」
「毛皮処理どんだけ大変だと思ってんだ」
「がんばれー」
輪廻さんは料理人。蒼穹はお婿さん。輝羅は当家と契約してくれるそうだし、あとは刹那を取り込めばフルコンプリートである。
妹が二人いたら良かったんだけど、傍系の女の子だと引き抜きしづらいのである。向こうにも面子があるので。それに刹那は強いってもうバレてる。当主も馬鹿じゃないから中々引き抜きさせてくれない。
蒼穹は馬鹿にされている今のうちに確保できて本当に良かった。
なんか良い方法ないかなー。手段は選ぶつもりはない。ただし、仲間の好感度が下がらない方法に限る。
薔薇色の未来には強い仲間が必要不可欠なので頑張る。
強くて面白くて有能で最高のメンバーだ。確保しない方が馬鹿である。
どうすれば輪廻さん宴のあとも定着してくれるかなー。
引き抜きってどうしてこう楽しいんだろう。ワクワクである。
マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
返信不要の場合は返信不要と書いておいてください。
https://odaibako.net/u/karin2022v
リクエスト、返信不要の匿名感想はこちらにお願いします。