勇者の引退ライフ   作:かりん2022

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最近の瞳導師は飛ぶ鳥を落とす勢いである。

あのクソガキで生意気でお子様な次期当主が辣腕を振るったというがとても信じられない。

 

当主就任の宴は相当派手にやるらしく、かなり手当たり次第に招待状を配っている。

幼児にも配るとか携帯持って来させるとか前代未聞すぎる。若いものの考えることはわからん。

 

当日、屋敷に向かうと玄関に巨大な水槽があった。

河原をもした凝ったデザインに、半透明な色とりどりの丸っこいものがモゾモゾ動いている。

 

「なんだこれは」

 

 思わずじっと見てしまう。

 もののけ……? いや、普通に動物だな。動物? なんだこれ。

 水槽の周りには子供がまとわりついている。

 一人ついていて、野菜クズを子供達に配っている。

 子供は丸っこいのに餌をやったり、それを食べるのを水槽にべったり顔と手をつけてガン見している。

 

「おい、詰まっているぞ」

 

 促されて、ハッとして進む。後でトイレのフリをして見に戻ろう……。

 順調に儀式を終え、食事の時間となった。

 流石に儀式の時は子供達は別室だった。

 子供達が合流し、食事をする場所に移動する。

 大人と子供のメニューは違うらしく、子供は配られたらしい弁当箱を持って合流した。とても楽しそうで、ほおを赤くして笑顔になっている。

 席に着く。

 

「わっせ、わっせ」

 

 何人もの男達が巨大な肉を運んでくる。

 デカすぎだろマンモスか。

 

 まじでマンモス? 誠か?

 

 ざわざわとざわめく。それはそうだ。高さが大人二人分はあるぞ。

 長さは大人三人分。こんなん元の動物が何かも気になるが、火がとおるわけがないだろアホか。

 

 足元には毛皮が敷いてあるが、どんだけでかいんだこの毛皮。

 もふもふしてて手触りがいいが、まじで何なんだ。

 

「アマゾンの奥地で生息してるとても珍しい生き物だ。火を通すの苦労したんだ。美味しいよ」

 

 料理人がでかい包丁で肉を削り切って盛るスタイルらしい。

 何人も出てきてあちこちで肉を削っている。

 

 タレは色々選べるようだ。

 

「しゅげー! しゅげー!」

「静かにしなさい!」

 

 お子様は大興奮である。

 タレがこぼれる。

 

「あっ」

「どんどん汚していいよ、今日使うだけの毛皮だから」

 

 スケールの大きさに唖然とする。

 

ひとしきり肉が行き渡ると、屈強な男達がさいど皿を担いだ。

 

「わっせ、わっせ、わっせ」

 

 肉が撤収されていく。

 あの肉、余ったのどうするんだ。捨てるのか? 捨てるのすら非現実的な大きさだぞ。

 

「わっせ、わっせ、わっせ」

 

 さっきの半透明のプルプルのでかいのが来た。

 これも切ってタレにつけて食べるらしい。

 スッキリしていてプルプルしていてなかなか美味い。

 さっきの肉は年寄りにはやはりきつい。

 子供はと見ると、幼児アニメのキャラ弁を食べている。普通に美味しそうだ。

 

「わっせ、わっせ、わっせ」

 

 またか。次は何がくるんだ。

 

「わしにも弁当をくれ。落ち着いて食えん」

「私にもください」

「種類があるので別室で好きなのをお選びください」

 

 キャラ弁も気になるしさっきの水槽も気になるし今度何が出るのか気になって部屋を出るのも嫌だな。何だこの宴。

 

「わっせ、わっせ、わっせ」

 

 すごい、フルーツの皿がくるのはいいんだが、一つとして知ってる果物がない。

 若いのはワクワクしてるが、食べるもの全部が未知の食材はちょっと……わしもキャラ弁貰いに行こう。

 

 キャラ弁を貰いにいくと、子供の歓声が聞こえて部屋を覗くと、子供の待機室でどう見てもデフォルメされたドラゴンっぽい生物が子守をしていた。

 子供向けアニメに出てくるような可愛らしい感じのドラゴンが子供に乗っかられて翼を掴まれて腕を握られて悲鳴を上げる様を激写されている。

 

 その隣では、大人がベビードラゴンもどきと記念撮影をしていた。

 

 当主が楽しそうにあちこち巡っては挨拶を交わしていく。

 話題には事欠かない。わしのところにも来て、贈り物の礼を言った。

 全部の参加者と祝いの品を覚えているらしい。まあ、これぐらいできなくてはな。

 ただ、挨拶回りの最中もずっと一般出の綺羅とかいう男とずっと一緒なの何なん? 揃いの超巨大な宝石つけた腕輪してるし夫婦に見えるぞ、もう学生じゃないんだからいい加減にしろ。というかその宝石おいくら億円なんだ。

 

 それにしても。

 

「どっから手に入れたのだこれは」

「アマゾン」

「すごいなアマゾン!?」

「うちの家は面白いもの全部取り入れていくよ。これはその決意表明」

「革新派過ぎないか?」

 

 もはや宇宙へ行くレベルだと思うが。というかドラゴンなんなん?

 

 宴の時間はあっという間に過ぎた。いや、本当にあっという間すぎた。

 ツッコミが終わらないうちに時間が来てしまった。

 キャラ弁は普通にとても美味かった。可愛いだけで奇を衒ってない。

 

「ドラゴンちゃんと別れたくないぃぃぃ!!!」

 

 子供がギャン泣きしている。

 

「また遊びに来てな」

 

 当主自らの手でドラゴンのぬいぐるみを渡す。泣いていた子供は黙ったが、それを見た他の子供達が盛大に騒ぎ出した。当主は慌てず騒がず子供達にぬいぐるみを握らせて黙らせていく。

 料理やキャラ弁は言えば包んでもらえた。まあ置いておいても悪くなるしな。

 さらに、全員に風呂上がりに飲むと美味しいジュースが一升瓶で配られた。

 お酒ではないあたりお子様だな。瓶にはひらがなでぽーしょんと書かれていて若ものにウケていた。

 

 ポーションとはゲームに出てくる傷を癒す薬らしい。ふざけすぎじゃないか? やはり学生当主はダメだな。学校で何を教えているんだ。

 

 だが、若者には刺さりまくったらしく、宴が終わる頃には瞳導師琥珀様万歳、新たな時代についていく! などと言っていた。

 

 後日、ぽーしょんがマジもののポーションだということがわかり、どういうことだと家に押しかけたら、輝羅が当主を差し置いて結婚したとか子供を作ったとか騒いで修羅場になっていて追い返された。

 

 なんかすごい時代が来そうである。大丈夫か、わし。




マシュマロ
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