なんか転生者掲示板あるけどこれって誰かの発だよな? 作:家葉 テイク
「ちなみに、わざわざ現場まで行く必要はないぞ。オレの能力なら、カメラを"
この手の異能にしては珍しく、オーラは映像媒体に映り込む。
それも、"隠"を使用したオーラでさえも技術さえあれば肉眼同様に目視確認できるほど鮮明にだ。つまり、念能力者をカメラ撮影した場合、被写体が纏っているオーラも鮮明に把握できる。
そして、シンドの"
たとえば使い捨てカメラを破壊した場合、撮影機能を有した"
しかも、"
ただし、そこでシンドは付け加えるようにして、
「まぁ、連中もオレ達と同じようにオーラ偽装していれば、決め手には欠けてしまうが……」
「それについては問題ないと思うわ」
シンドの懸念に、ダリィは明るい声色で答える。
「わたしは調査スレへの協力とかでそこそこ転生者と会う機会があるんだけど、転生者にも大体2つのパターンがあるのよ」
ダリィは得意げに、指を2本立てる。
「1つは、あくまで日常を謳歌することを目的とするタイプ。わたしみたいな魔法少女が主に守らなくちゃいけないタイプの人達ね」
「いやそれは知らないが……」
「もう1つは、己の能力を活用して
ダリィは手を下ろして、
「前者はほぼ間違いなく"湧"を使えるけど、後者の場合は意外と"湧"を使えないのよ。っていうか、全然使えないと言ってもいい。わたしもそうだけどね」
ダリィの説明に、シンドは納得したように頷く。
「かなりの高等技術な上に、用途が限定的だからな……。何しろ非念能力者に擬態できるだけで、別に防御力や攻撃力が変わるわけでもない。"円"のような索敵効果があるわけでもない。戦闘能力に乏しい人間が擬態する為に使う技術と言っても過言じゃないだろう。普通の念能力者なら、修行するだけ無駄だろうな」
「それに、下手に念能力の修行過程で修行してしまうと、難しさゆえに予期せず発の発動条件になってしまいそうで怖いですしね……」
これは実際、原作において
そして、実は転生者あるあるでもあった。
たとえばシンドの能力"
同じように、サイアイが"
なお、少なくない転生者がこうした"ミス"を冒しているが、一応"転生者掲示板"にはこうしたものも注意事項の一つとして記載はされており、シンドやサイアイのように「のっぴきならない事情」を抱えていなかった転生者達は推奨通り発の修行の前に基本の四大行とその応用を習得している。
「そういうわけだから、保存派の連中はほぼ間違いなく"湧"を使えないと見ていいわ。逆に言えば、"湧"を使いながらであれば、わたし達が直接保存派を探し出すのもアリじゃない? シンドくんにばっかり負担がかかっちゃうし」
「イヤ……だとしてもその判断は保留にしておこう。"湧"の精度は試験中の死活問題だからな。保存派が試験官に成り代わっていないという確証が得られない限り、修行優先で長時間の観察は避けた方がいい」
ダリィの申し出に、シンドはそう答え、
「……監視対象が決まったら、皆にも協力してもらう。だからそれまでに、"湧"を完璧に仕上げることを考えてくれ」
「おーけー☆」
「超了解です」
「分かった! 任せとけ!」
シンドの呼びかけに、三人は三者三様に快諾する。
こうして四人の転生者達は、目的に向けて確かな一歩を踏みしめていた──。
◆ ◆ ◆
大部分の転生者は、ハンターやそれに類する職業になろうという意志を持つことなく、ただ念能力の修行だけをして、念能力を持った民間人として善良な一般市民の中に混ざって「+αの日常」を享受する結論に至っていく。
何不自由ない社会で、念能力による身体能力のバフを受けつつ追加で発を構築することによるメリットを享受し続ける人生。それは、非日常の中に身を置くよりもよっぽど「安定した成功」に近しいルートだからだ。
そうでない者達は、超常と隣り合わせの人生に憧れ、あるいはのっぴきならない事情から脱する為に、ハンターやそれに近しい領域へと踏み込んでいく。
ただし。
ある種の────ごく少数の転生者については、今挙げた両者のいずれとも異なる、全く別の事実に着目する。
つまり。
「原作の内容」に対して、多くの転生者が
これは、考えてみれば当然の話だ。
保存派、改善派、利用派、あるいはそれら以外の諸派にとって原作が今どういう状態か──概ね変わらないのか、ある程度変化しているのか、致命的にズレているのか──は、各々の派閥の存在意義に関わる重要情報。
日和見派にしてみても、アンタッチャブルとしているのは「面倒事に巻き込まれたくない」という実利的な問題ゆえであり、彼らが元々「ハンターハンター」の読者である以上、原作が今どういう状況か興味がない訳がない。そして自分の意に沿わない要因で知りたいものを知ることができない場合、その「知ることができない情報」は知りたくなるのが人情というものである。
また、
そうした状況を鑑みれば、そのインセンティブを満たす形で、「
"掲示板"において"
これはつまり、遠洋漁業の漁師が生活する島に住むとある少年や、高山に住まう伝説的な暗殺一家の三男の動向を監視することができることを意味する。
重要なのは、
もちろんそうした者も絶無ではない。中には、本気で所属派閥の目的に共鳴して己の能力を使うような者も存在する。ただ、彼らは前提として提示された各勢力を俯瞰して「そこにあるニーズ」を嗅ぎ取る嗅覚を持ち、その需要を満たそうと判断できる精神性を持っている。
ゆえに大概がかなりドライな価値観を持っていることが多い。
そして彼らは大半が「情報を売る」ことを目的として各派閥に接触する。あくまでもビジネスライクな関係を築いているし、各派閥もそれでいいと割り切っていた。
――ミルナ=アクティオもまた、そうした"
ミルナは、クカンユ王国の一般家庭出身の転生者である。
クカンユ王国では貴族制が廃止されて久しいが、彼女は元を辿れば田舎貴族の末裔であり、裕福というほどではないが貧困を知らないまま育った。ゆえに念能力も四大行や"湧"の修行を経て、じっくりと考察する時間があった。
貧困を知らないまま──と言ったが、それではミルナという人格が貧しさへの恐れを持っていなかったかと言えば、そうではない。
ミルナ=アクティオは現在23歳だが、彼女の人格が連続した期間で言えば51年である。前世で20代後半まで生きた彼女は、自分の老後の社会保障について漠然とした不安を抱えるという経験を既にしている。つまり、「今は大丈夫でもいつかは大丈夫ではなくなる」という強固なイメージを持ち、それゆえに「若いうちに蓄えられるだけ蓄える」ことを人生の優先目標としていた。
そんな彼女が"
――――ザバン市。
保存派に貸し与えられた高級ホテルの一室で、ミルナは確信する。己こそが、転生者の中で最も賢い生き方を選択していると。
(……念を手に入れたからって舞い上がっているバカどもとは違う! 間違いなく、ミルナの立ち位置が全転生者の中で一番「安泰」……! 保存派は他のグループを含めても"
壁一面の窓から下界を見下ろしながら、ミルナはせせら笑う。
(念なんて、健康法の一種って扱いで十分よ! 保存派に恩を売って大金をせしめて一生分遊んで暮らせる金を得る! それ以上深入りはしない! 此処が命を懸けないで最大の利益を得ることができるギリギリのライン……!!
眼下では、転生者同士の戦闘と思しき喧騒によって、路地裏から土煙が這い出ている。
あらゆる思惑が交錯しながら────ハンター試験、その前哨戦が始まろうとしていた。