なんか転生者掲示板あるけどこれって誰かの念だよな?   作:家葉 テイク

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No.006/本題

「それじゃあ早速本題に入るが」

 

 

 船内に入ったシンドは、そう言って他三人に視線を向ける。

 いくらか広めの船内とはいえ、四人が入るとなるとボートの中はやや手狭だったが、うち二人が幼い少女だからか、そこまで窮屈感はなかった。シンドが話を切り出そうとしたタイミングで、サイアイが手を挙げた。

 

 

「その前に。話し合いを進めるにあたって超確認したいことがあるんですが、いいですか?」

 

「ああ。なんだ?」

 

「シンドにではなく、超お二人に」

 

 

 サイアイはダリィとクロトに視線を向け、

 

 

「"掲示板"で提示された日時に素直にやってきたのは何故ですか?」

 

「…………?」

 

「まぁそこは気になるわよね」

 

 

 サイアイの問いに対し、反応は対照的だった。

 クロトは意図が分からないといった調子で首を傾げ、ダリィは予想通りとばかりに頷く。意図があっての行動と判断して、サイアイはまずダリィの方に視線を集中させる。

 

 

「理由は2つ。1つはそっちのスタンスの確認ね。「裏の意図」を読んで当然、そうでない者は仲間から弾くっていう「目的第一」の集まりなのか、そうではない者でも仲間に加える「目的は勿論大事だが、仲間作りも重視する」集まりなのか確認しておきたくって」

 

「………………」

 

「その点で言えば、どうやらシンドくんは仲間作りも大事派みたいね?」

 

「そこはお察しの通りだが」

 

 

 ウインクしたダリィに、シンドは肩を竦めて応えた。

 「シンドは」とわざわざ言ったあたり、ダリィの発言に含むところがあったのを感じたからだ。ただ、この場でそれを制しても潜在的な不和の種が残るだけ。シンドはあえてその場では何も言わずに見守ることにした。

 

 

「もう1つの理由は、パワーバランスの調整ね。具体的な日時が提示されて、それが告知日からある程度離れている時点で、()()()()()()()()()()()()()()前乗りして組織内での基盤固めをしようとする人が出て来るのは想像に難くなかった。当日合流組の方が発言力が低くなるのは目に見えていたし、私がそっちに入ることで勢力内で孤立する人が出ないようにしようと思ったってわけ。…………今の様にね」

 

 

 じろり、と。

 ダリィが、サイアイに対して視線を向ける。

 

 ――本題に入ると言ったシンドを制して、当日合流の2人に対して行動理由を尋ねる行為。これは「質問し、答えさせる」構造を作った時点で、サイアイの方が2人に対して上に立つ形になる振る舞いだ。

 実際にサイアイは2人よりもシンド(つまりグループの中心人物)と数日だが付き合いが長く、信頼も得ている。サイアイがそれを意図するしないに拘わらず、2人を審査する形をとることで、2人よりもグループ内で上の地位につこうという格付けの意味合いが強い言動だったから、ダリィはそれに対して牽制を仕掛けているのだ。

 

 そして当然、そんな風に己の行動を論われてはサイアイも愉快な気持ちはしない。

 

 

「超人聞きが悪いですよ。要するに、喧嘩を売ってグループ内に不和を持ち込む為にわざわざ当日乗り込んだってことです? とんだ超サークルクラッシャーですね」

 

「不和を持ち込んでるのはどっちかしら? 意図していないならアナタが問題視しているであろう「考えなしの当日合流」と同じくらいには迂闊な言動じゃない?」

 

「私は超危機感を持ってもらいたかっただけですよ。当日合流の選択肢を考えなしで選んだのなら、考えが浅いのは超事実です。それを早い段階で指摘する方が超グループの為だと思いますけどね」

 

「その方法が叱責(まが)いの詰問じゃあ萎縮効果しか生まないでしょう。自分のやっていることが「政治」になっている自覚はある?」

 

「軋轢を恐れては超何も言えなくなるじゃないですか。そもそも政治の何が悪いんです? 集団の運営に必要な努力を捨ててなぁなぁの馴れ合いごっこをして共倒れなんて私は超御免ですね」

 

「集団の目的も考えられないの? 営利のための集まりじゃないのよこれは。人の情も考慮に入れられないで政治なんてちゃんちゃらおかしいわ」

 

 

 そこまで会話のやりとりがあって、2人は同時に沈黙した。

 やや気まずい空気がその場を支配したが、やがてクロトが口を開こうとする。

 

 

「あ、あの……ちょちょちょ、ちょっと」

 

「まぁ待て。仲裁はオレの役割だ」

 

 

 クロトが慌てるのも無理はなかった。

 何せ、クロト自身はこの場で誰からも「考えの浅い参加者」であることは否定されていないのだ。彼は何が問題視されているのかすら理解できていないが、自分の考えが浅いことが原因で何か揉めていることくらいは分かる。

 ただ、シンドはこの件で誰も悪いとは考えていない。だからこそ、クロトが自分を下げる形で2人を仲裁することだけは止めるべきだと考えていた。……逆に言えば、それ以外の衝突は()()()()()()止めるつもりがなかったというのもあるが。

 

 

「お前達、……………………」

 

「…………シンド?」

 

 

 突然言葉の途中で止まったシンドに、クロトが怪訝な視線を向ける。

 同じ流れを経験しているサイアイだけが、はっとした表情を浮かべていた。

 

 

「あー、制約に引っかかったっぽい。今の最新スレ見てくれ」

 

 

 

 言われて、クロト達はみな目を瞑り"掲示板"を確認する。

 この8日間で動きの止まったシンドの立てたスレはdat落ち*1していたが、適当なクソスレに書き込みがされてageられて*2いた。

 そして――その最新レスにはこんな投稿がされていた。

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

【雑談】フィンクスって腕を一兆回回したら爆発すると思う?

443:名無しの転生者さん 1999/11/20 13:20:04

カッツォもいないんだからその辺にしておけよ。

 

444:名無しの転生者さん 1999/11/20 13:20:07

スレ間違えてんぞハゲ

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

「…………?」

 

「……あぁ……」

 

 

 首を傾げたのはクロト。何となく気まずそうな声を上げたのはサイアイだった。ダリィは口元を抑えて俯いている。

 

 ――カッツォというのは、"ハンターハンター"の原作最序盤に登場した船乗りである。

 嵐によって吹っ飛ばされたカッツォは、決闘の真っ最中だったクラピカとレオリオ、それと様子を見ていたゴンによって助け出される――という一幕。キャラクター名自体はマイナー知識だが、原作知識整理スレによってまとめられているので、そこを確認している者ならすぐに思い至れるキーワードというわけだ。

 カッツォもいない――つまり、仲直りのきっかけがないということ。暗に自分達の争いをクラピカとレオリオの衝突になぞらえられた――そして今の構図がまさに「集まった仲間達がキャラ紹介とばかりに怒りを見せた形」であることを指摘され、恥ずかしくなったというわけだ。

 2人が少しトーンダウンしたのを認めたシンドは、その間隙を縫うように口を開く。

 

 

「どっちかに肩入れするって訳じゃないが、サイアイの気が立ってる点については許してくれ。……実は一昨日、オレの目的を止めたいってヤツがオレのことを襲ってきてな。オレはそいつを殺した」

 

「!! シンド……!」

 

 

 虚偽の告白。それに対し、サイアイが目を見開いた。

 サイアイはシンドに対し、殺人を犯したことを侮蔑されることを恐れるそぶりを見せていた。だからこそ、2人から向けられるかもしれないその感情を肩代わりするかのような告白に対して驚愕したのだ。

 サイアイが言葉に詰まったタイミングで、シンドはさらに続ける。

 

 

「既に人が1人死んでる。だから、覚悟を問いたかったってのもあるんだろう。本来それはオレの役割なのにな。損な性分なんだよ、コイツは」

 

 

 説明を終える頃には、クロトとダリィは驚愕した表情でシンドのことを見ていた。

 直後、耐えきれないとばかりに、サイアイが声を上げる。

 

 

「違います! 殺したのは超私です!」

 

 

 突然の告白を受けて、2人の視線がサイアイに集まった。

 

 

「……その判断について後悔は一切していません。また同じ選択を迫られても超躊躇はしないでしょう。ただ、その選択を選べるのがグループで超私だけとなったら……それは、辛いなと思って……。……だから危機感を共有…………いや……超煽ろうとしていました。……すみません」

 

「アナタは間違ってないわ」

 

 

 俯くサイアイの手をすぐさまとったのは、ダリィだった。

 ダリィの目は、今にも涙が零れんばかりに潤んでいた。――つい先ほどまで苛烈に言い争っていた相手の苦しみを思って涙を流せるほど、今はもう彼女はサイアイの心に寄り添っていた。それを見て、サイアイは少しだけ虚を突かれたような表情を浮かべる。

 

 

「そんなことがあったなんて知らずに……。……いや、考えておくべきだった。無思慮で、無神経だったわ。ごめんなさい。安心して……とは言えないけど、これでもわたしも修羅場は幾らか潜り抜けているの。もし同じ選択の場面が来たとしても、その場に居合わせたなら、絶対にアナタだけには背負わせたりしない」

 

「その点についてはオレも同じだが」

 

 

 互いに見つめ合うような雰囲気のサイアイとダリィに割って入るような形で、シンドは言う。

 

 

「……話が飛躍してて悪いな、クロト。多分どういうことか理解できていないだろうが……簡単に説明すると、"掲示板"の開発者を突き止めさせたくないってヤツらがいて、そいつらはオレ達を殺す気で妨害してくるってことだ。当然、命がけになる。……気付いてなかったんならこの先は強制できん。どうする?」

 

 

 問いかけられたクロトは、すぐには回答できなかった。

 何せ、あまりにも会話が先を行き過ぎているのだ。ここまで揉めて和解した根本の原因である「殺す気で妨害してくる連中がいる」という事実自体、クロトはシンドに言われて初めて理解できた。なのに他の3人は、そんなことは当たり前の前提として扱った上で、その先にあるもののことでここまで議論を深めている。この時点で、知力については大きな開きがあるといっていい。

 自分が加わったところで、何ができるのか? 足手纏いになるだけじゃないか? いない方が3人の為じゃないか? そういう思考が、クロトの中を巡る。

 

 クロトは、自分の掌に視線を落としながら口を開いた。

 

 

「…………オレは、特質系だ」

 

 

 突然の告白。

 その場の面々が意図を掴みかねているうちに、クロトの両腕には黒い鋼で出来た手甲が具現化されていた。

 

 

「…………"千変万化の手並み(コピーキャットコンプレックス)"。能力は、ざっくり言うと「掴んだ者の能力を模倣すること」だ。もちろん相応の制約はあるけど」

 

 

 鋼の拳を握りしめながら、

 

 

「……オレには、これを使いこなすだけの頭がない。戦闘能力も、多分そんなにないだろうし。だから、みんながオレを使()()()くれ。みんなの決断なら、オレはその結果がどんな形になろうと自分で背負うよ。……それが今のオレにできる覚悟だ」

 

 

 視線を上げ、クロトはこう言って締めくくった。

 

 

「スレを見てさ。スゲェって思ったんだ。オレなんか、開発者なんて考えもしなかった。考察を見ても、そこに苦しんでいる人がいるかもしれないなんて全く思いつかなかった。それを……いるかも分からない人を助けたいって断言する人がいるなんてって。……助けたいって思ったんだ。だからオレも、仲間に入れてくれ」

 

 

 何も気付いていなかったが、思慮が浅いことは誰の目からも明白だったが、しかし、全てを知ってもなお、誰かの為に動きたいと願った。力がないという現実から目を逸らさず。しかし己が果たせる最大限の責任を見極めて、意志を発した。

 そんなクロトの想いを聞いて、シンドは改めて他の2人に視線を向ける。

 念能力の告白。それは、たとえ仲間相手だったとしても心理的ハードルのある行為だ。たとえば幻影旅団ですら、メンバーは他のメンバーに己の能力の一部を隠しているほど。その札を切っての告白は、相応に重い。

 

 

「2人は、どう思う?」

 

「私は超審判を下す立場じゃないですよ。でも…………仲間としては超大歓迎ですね」

 

「といっても、弱いまんまじゃダメよ! 念の修行ならビシバシ見てあげるから」

 

「さっきと言ってることが逆だな、2人とも」

 

 

 排他的だったサイアイがクロトのことを受け入れ、擁護的だったダリィがクロトに対し発破をかける。表面上の態度は入れ替わっているかのような構図だったが、しかしその奥にある感情には、既にしっかりと信頼があるように見えた。

 

 

「ともあれ、これで意思統一は済んだ。多少遠回りはしたが……」

 

「っていうか、なんでシンドは終始そんなクールなんだよ!? 今の、けっこう修羅場じゃなかったか!?」

 

「言うほどクールだったか?」

 

 

 思わずと言った調子で問いかけるクロトに、シンドはぼやきつつ続ける。

 何故かと問われること自体が心外だと言わんばかりの調子で、シンドは肩を竦めた。

 

 

「何でも何も……心配するような事態はどこにもなかったからな」

 

 

 シンドが、サイアイとダリィの対立をクラピカとレオリオの衝突になぞらえた理由を考えれば、シンドの余裕は自明だ。

 クラピカとレオリオの衝突は、お互いに譲れないモノのために起きていた。どちらかに対して悪意を向けたことが原因ではない。対してサイアイとダリィの対立も同じだ。サイアイは外部からの危険によって集団が傷つくのを恐れ、ダリィは内部で生まれる軋轢によって集団が傷つくのを恐れた。その根底にあるのは、仲間達に対する優しさである。……つまり、2人とも()()()()なのだ。

 

 

「そもそもの話だよ。顔も名前も知らないヤツが苦しんでる()()()()()()ってだけでわざわざ名乗りを上げて此処まで来れるヤツら同士だぞ。多少言い争ったところで、分かり合えない訳ないだろ?」

 

 

 いっそ呆れるような調子のシンドに、サイアイとダリィは照れ臭そうにそっぽを向く。

 4人の心の準備が整ったのを見て、シンドはいよいよ話を切り出した。

 

 

「さて、改めて本題に入るか。オレ達は、"掲示板"……"リンカー×リンカー"の開発者を突き止める。その為の、知恵と力を貸してくれ」

*1
過去ログ送りとなり書き込み不能になること。

*2
スレの表示順が上になること。




 主要人物の精神年齢は、シンド>サイアイ≧ダリィ>>>>>クロトという感じです。
 (※前世との合算年齢とは必ずしも一致しない)
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