赤いチップの山が、机の向こうにいるディーラーに回収される。
背後に立つ二人組の黒服が、私の隣に座る白ブリーフ姿のMr.teacher(注・シャーレの先生を指す)の両脇を抱え、引き摺るように何処かへと連れて行った。
私は振り返らない。
「あと1回、私は服を脱げる!」
Mr.teacherの声が部屋全体に虚しく木霊した。
ここは、カイザーコーポレーション系列が経営している、馬鹿共が集まる夢の跡地。天国を見る者も居れば、先程の情け無い悲鳴を上げる者も居る。そんな煉獄で、今日も私は『遊び』をしていた。
目の前のディーラーが、私に問いかける。
「次はお嬢さんの番さ。どれに賭ける?」
「黒の13番」
私は間髪入れずに答え、白のチップ13枚を机に書かれた、黒の13番の上に置く。
私の賭け事を見ていた聴衆が騒ぎ出す。全くこの程度で驚く、低レベルな連中だと心の中でほくそ笑む。
目の前のディーラーは馬鹿か?こいつと、いう目で見てきたが、私の目には勝利しか写らないのだ。
退屈そうに、ディーラーはルーレットの軸を掴み、回した。ルーレットが回転するたびに、緩やかに銀の球が縁を走る。
数秒が経ち、コトンと、音が鳴る。
入った数字は黒の3だった。
ディーラーが私の掛けたチップを回収した。
私は何も言わずに、手元のチップを数える。
白が六枚。赤が一枚。カイザーコーポレーションのロゴが彫られた虹色が一枚。
私は、ディーラーに問いかけた。
「ここで虹色のチップを賭けたらどうなると思いますか?」
「さてね。次も賭けるのか?」
私がさらに賭けようとした時、隣に裸の男が座った。
その男の名前はMr.teacher。白ブリーフは履いておらず、謎の極光に光るバリアが股間部を隠していた。
私は男に問いかける。
「Mr.teacher。白ブリーフは何処に置いてきたんですか?」
「未来にくれてやった」
そう答えた男の瞳は、らんらんと輝いてディーラーを真っ直ぐに見つめていた。
私はこのカジノが顧客から剥ぎ取った品物を、ネットオークションで売るのを知っている。嵐の前の静けさを感じて、一回だけ身震いをした。
男は白ブリーフの対価として持っていた、青のチップ、一枚を無言で赤が書かれた場所に置き、天に祈る様に両指を重ねている。
私は内心、この男大丈夫か?と、思ったが口には出さない。
いつのまにか、さらに他の客達が集まって来ていた。隣の男の姿をジロジロ値踏みしている奴も居て、Mr.teacherの裸体はお前らの見せ物じゃないと、言いかけたがやめた。
閑話休題。
男の自信に私も乗る事にした。
虹色のチップ以外の白六枚と赤一枚。
そして、宣言する。
「赤に賭けます」
ディーラーは何も言わずに、ルーレットを回し始めた。
廻る、廻る、欲望が廻る。
そして、銀の玉がーー。
私は愛銃であるマリ・ガンをベルトで肩に固定しながら歩く。その隣を、白い西洋仕立ての洋服を着ている男が並ぶ。
「私はもうギャンブルはこりごりだよ」
「にははは!今回は先生も勝てたんだから次も勝てますって!」
私はそう言って男の背中を軽めに叩く。
男は西に傾いた太陽を見つめながら、そうかなぁと、ため息混じりに呟いて笑った。
私は西日で照らされた男の顔が見れなくて、視線を逸らし、そうですよ!と、言葉を重ねた。
金が貯まりつつある。
次の計画は失敗しないようにしなければならない。私たち以外の学園の計画よりも早く、隣で歩く男を送り出すのだ。
そう思いながら、ポケットに詰め込んだ、十三枚の虹に輝くチップに想いを馳せる。