『こんにちはー!大臣お久しぶりです!僕ですよ。』
宮殿に入って早々そんな事を言い始めるミソギ。なんなんだろう、こいつの胡散臭さは。なんとも形容しがたい。
「おぉ、久しぶりですね、ミソギ君。流石はケイ、君ならきっと連れてきてくれると信じてました。」
「…ありがとうございます。」
『で、大臣?なんの用ですか?僕もう眠いんですけど。』
「相変わらずですねぇ、その性格。いえ何てことはありません。最近ナイトレイドという殺し屋集団が調子づいていましてね。ナイトレイド自体はエスデス達に任せればいいんですが、警備が手薄になるのでねぇ。どうです?また働いてみませんか?」
大臣、ナイトレイドをそこまで重く見ているのか?僕やイェーガーズ(エスデス将軍の組織する特殊警察の名前だそうだ。宮殿に入るとき近衛兵が噂していた。)だけでなく、こいつにも依頼するなんて。
『嫌ですよ、それって要はナイトレイドが侵入してきたら戦わなくちゃいけないんでしょ?死んじゃったらどうするんですか。』
「…あなたは殺されても大丈夫でしょうに。帝具、『現実虚構オールフィクション』の使い手の貴方ならば。」
「!!」
げ…『現実虚構オールフィクション』……嘘だろ…幻の帝具じゃないか。
「ミソギ君…本当なのか?」
『え、うん、まあね。でもまぁそんなにいいもんでもないよ?これ。』
「何を言ってるのですか。帝国の歴史上、誰も適合者が居なかった幻の帝具なんですよ?少しはその自覚を持ってくださいよ。」
『…はーい。』
「どんな能力なんですか。」
「言っても構いませんか?ミソギ君。」
『どうぞどうぞ、ケイ君は僕と同じ過負荷(マイナス)候補ですからね。もう仲間同然ですよ。』
「僕は異常(アブノーマル)だよ。なんだい過負荷(マイナス)って。」
『……ま、今は分かんなくていいよ。それじゃあ大臣、説明お願いします!』
「…ミソギ君の帝具『現実虚構オールフィクション』は現実を虚構に、つまり」
ーー全てを無かったことにする帝具です。
絶句、だった。それってつまり……
「死んだ者も……生き返る……?」
『理論的にはね。あくまで理論的にだけど。』
「そんな……因果関係がめちゃくちゃになるんじゃ……」
『これは因果律そのものに対する叛逆だ!とか言ってー。そう、僕のオールフィクションは因果律に干渉する帝具だ。その気になれば世界そのものを無かったことにできる。』
屈託のない笑顔で彼は答える。そんなのどうやって対処するんだ。
「まぁでも、唯一の弱点というかなんというか…適合者に関する条件が厳しすぎるんですよねぇ。」
「と、言うと?」
「この帝具の使用者になるにはコアとなる螺子を胸に差し込む必要があるんですが、適合者に相応しくないと見なされるとその人物は存在が無かったことにされるんですよ。この世からね。」
「それはまた…ミソギ君、よく試そうと思ったね。」
『いやいや、強制だったんだよ。オールフィクションに適合しそうな人を帝国中から集めてきてね。僕の前にも試した人はいたっぽいけど…なかっことにされるから僕が実質の最初の被験者だね。』
本当に腐ってるなぁ、この国は…
「ヌフフ、ミソギ君ならきっと適合してくれると信じてましたよ。」
『…ありがとうございまーす。』
いつもヘラヘラしていて表情が分からないミソギ君だが、この時ばかりはなんとなく考えていることがわかった。殺すなよ、ミソギ君。僕も殺したくてしかたないんだから。
それにしても……ミソギ君は殺しても死なないのか………ふぅん……。
「適合者になり得る基準みたいのはないんですか?流石に適当に被験者を集めたわけではないでしょう?」
「えぇ、言い伝えによるとオールフィクションを使えるのは世界で一番弱い人間だそうですよ?」
「は?」
『僕は生まれてこのかたどんな勝負にも勝ったこともないんだ。ケンカはもちろん、勉強、スポーツ、じゃんけんにも勝ったことないなぁ。』
「それは確かに…誰も適合しそうにありませんね。」
というか、そんな人間が今までこの帝都で生き残ってこれたのが驚きだよ。
「でも誰にも勝てないんじゃあ戦いには向いてないのでは?」
「そうですね、討伐では少し荷が重いでしょうね。しかし、彼の本質はそこではありません。彼は勝負の勝ち負けを度外視してめちゃくちゃにするのが得意なんですよ。
いいも悪いもいっしょくたにかき混ぜて全てを一瞬で台無しにする。
並の人間でもミソギ君には勝てるでしょうけど、心はズタズタです。革命軍の士気を潰すのにこれほどの適任はいませんよ。」
へぇ、とことんタチが悪いね。
「で、どうです?また働いてくれませんかねぇ。報酬は弾みますよ。」
『うーん、どうしようかなぁ。……あ、じゃあじゃあ!報酬としてもし革命軍を根絶やしにして帝国が平和になったらー』
「「なったら?」」
『宮殿で働く人の制服は次の日から裸エプロンにして下さい!!』
「…………わかりました。ではそれで。」
この国はホントにもうダメかもしれない。
『という訳で、これからよろしくね!ケイ君!』
「こちらこそ、君とはいい友達になれそうだよ。ミソギ君。」
僕たちは手を握り合う。
……何としてもクロメちゃんの裸エプロンだけは阻止せねば……。
俺の名前はウェイブ。帝国海軍に所属していた。先日、帝都への転勤が決まり、晴れてエスデス将軍の組織する特殊警察イェーガーズに所属することが出来た。栄転って奴だな。
イェーガーズのメンバーはみんな個性的な奴らばっかりだが、いい奴ばかりだった。これならナイトレイド討伐もあっという間だな。
今日は昨日の結成パーティーから一転、早速仕事に取り掛かるようだ。会議室に召集がかかっている。
しかし、早く来すぎたか?まだ流石に誰も来ては……ん?ドアが少し開いてる。もう誰かいるのか?誰だろ?
俺はドアを開けようとドアノブに手を伸ばす。その時部屋から声が。……クロメか?
「ふふ。ふへへ。ムナカタ、ふへへ。まさかイェーガーズにDr.がいるなんてね。貴重なムナカタの寝顔写真をこんなに簡単にゲットできるなんて……うぅ、カッコいいなぁ。ムナカタ……ふふ♪」
「ムナカタって何だ?」
ガン!クロメが頭をテーブルに打ち付け、慌てて写真を隠す。うわ、顔真っ赤。なんだアイツ。
「う、ウェイブ!?いつからそこに!?」
「…ムナカタがどうたらこうたら、らへん。」
「…う、う、うわぁぁぁ!!!誰にも言わないで!!誰にも言わないで!!お願いします!!」
昨日のクールな態度から一変。テンパりすぎだろ……
「はぁ?な…何をだ?俺まだ状況がよく理解できてないんだけど……」
「ふぇ?」
「なんだ?ムナカタって?新しいお菓子の名前か?お前なぁ…お菓子ばっか食ってっと病気になるぞ?もっと海産物をだな……」
「………そ、そう。そうだね。その通りだね!うん!気をつけるよ。」
「おう、今度うまい魚料理を振舞ってやるよ。」
「うん…ありがとう。」
「しかし、お前本当にお菓子が好きなんだなぁ。ムナカタだっけ?あ、新発売のお菓子でなかなか手に入らないとか?じゃあみんなに協力してもらって……」
「そ、それはダメ!自分で手に入れてこそだから!この事は誰にも言っちゃだめだからね!」
「お、おう…」
「そう、自分で手に入れてこそなんだ……」
クロメは自分で言い聞かせるようにそう言った。
く…クロメが変態に!でもこれはこれで……