枯れた樹海と殺し屋たち   作:リンゴ丸12

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エスデスさんの告白、&バトルです。


教えてあげただけだよ

都民武芸大会当日。会場には思ったより多くの人が集まっていた。まぁ勝ち抜き戦じゃないし、賞金が貰えるのは五分五分ってことなら参加者も多くなるか。

 

俺の相手はカルビって人らしい。カルビって……どんな人だろう。……人だよな?…一抹の不安が拭いきれない。

 

「なぁ、お前知ってるか?」

「なにが?」

 

ん?何かみんな噂しているな。なんだろ。仲間に教えて貰った殺し屋スキルその1(姐さんから)、『盗み聴き』で俺も話に入る。なになに?

 

「この大会、勝った方に賞金が出るじゃんか?」

「あぁ、相手が弱かったら簡単に金が貰えるからな。死者も出ないようになってるそうだし。こんな美味しい話はないぜ。」

「そうだな。でもな?それだけじゃねぇんだと。」

「と、いうと?」

「なんとな?一番の戦いを見せた奴には更にスペシャルな褒美があるそうだぜ」

「えぇ!マジかよ。更に賞金が貰えるのかよ!」

「あぁ、多分な。相手が弱かったら武力を見せつけるチャンスだぜ!」

 

へぇ、スペシャルな褒美か……金の上乗せなら俺も頑張らなくっちゃな。村への仕送りが更に増やせる。

 

「うし、いっちょ気合い入れて頑張りますか!」

 

この時の俺は理解してなかった。この褒美がどんなに恐ろしい物かを……。

 

 

 

 

 

「エスデス隊長、ラン、どうです?試合は」

 

「つまらん素材らしく、つまらん試合だ……これじゃあ私の恋の相手…もとい帝具使いも見つかりそうにないな…」

 

「今、さらっと本音を言いましたね……」

 

てゆうか本気だったのか。食事の席の冗談かと思ってた。恋をしたいだなんて。

 

「隊長、次が最後の組み合わせです。肉屋カルビと鍛冶屋タツミ。鍛冶屋の方はまだ少年ですね。」

 

「……………」

 

「んーどれどれ?うわ、カルビって奴、皇拳寺の有段者かよ……。大丈夫か?タツミって奴」

 

「始まりますよ」

 

試合のゴングと共にカルビさんがタツミに突っ込んで殴りかかる。それをタツミは簡単に避ける。へぇ、そこそこ強そうだな、アイツ。てゆーかカルビさんは本当に皇拳寺の有段者なのかよ。大振りすぎだろ、全てにおいて。

 

お、タツミがカルビさんの足を払って……一撃!勝負あったな。

 

「中々強いですね、彼」

 

ランが呟く。

 

「あぁ、ありゃ鍛えりゃ相当強くなるぜ。……って隊長?」

 

「見つけたぞ……」

 

「…?あぁ!俺たちの仲間になる帝具使い候補ですね。確かに見込ありですね」

 

しかも、アイツはおそらく常識人。良かった、いい友達になれそうだ。

 

「それもそうだが、もう一つの方だ」

 

「?」

 

エスデス隊長が階段を下りてタツミの所へ向かう。直にスカウトするのか!あの少年ラッキーだなぁ。

「タツミ…といったか?」

 

「はい…」

 

タツミの表情が少し険しい。まぁ帝国最強の将軍に話しかけられちゃ無理もない。

 

「今の勝負見事だった。褒美をやろう」

 

「ありがとうございます」

 

隊長がポケットをゴソゴソ。なんだ?推薦状か何かか?

と、取り出したのは首輪だ。………首輪!?

 

「今からお前を私の物にしてやろう」

 

「えぇ!ちょっ、待っ!」

 

「待たん」

 

隊長が首トン。うわー、首トン初めて見た……

てゆーかどういうつもりだ?帝具使いにするんだからもう少し訳を説明してやれば……あ。

 

もしかして……恋の方か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、ラバー何してんのよー早く来なさいよー」

 

「待ってよマインちゃん、速いって……」

 

全くだらしない。ウチの男どもはどうしてこうナヨナヨしてるのかしら。まぁタツミは最近、男らしくなった来たけど…

 

タツミは今頃大会ね、ラバも行きたがっていたみたいだけど、私と新しいアジトになりそうな場所の発掘仕事があったから行ったのはレオーネだけね。

 

「ここなんて、どうかしら?帝都からの距離も十分だし、何より辺境の地って感じじゃない?」

 

「うーん、まぁ確かにいい場所ではあるっぽいけど、周りに障害物が少ないから結界が張りにくいな……」

 

「んーここもかぁ。中々いい場所無いわねぇ……」

 

全くこれも全てケイって奴のせいだわ。タツミやラバたちの顔をバラす気ないなら、アジトの場所も黙ってなさいよ。

 

「あー疲れたー、休憩にしましょ。ラバ、携帯食料。」

 

「はいはい」

 

何気にこの携帯食料、美味しいのよね。イチゴ味だし。いただきまー……

 

 

 

『わぁ、美味しそうだね!僕にもちょーだい!』

 

「「!!」」

 

いつの間に!まずい、顔を見られた…

 

「あなた、何者?いつからここに……」

 

「てゆーか帝都の軍人か?あんた。警備隊の制服は着てないみたいだけど。」

 

『うん!僕は大臣お抱えの超エリート、ミソギだよ!よろしく仲良くしてください!』

 

ッ!最悪……大臣お抱えって事は少なくとも将軍クラス。あたしとラバだけでなんとかなる……?

 

『あ、君、ナイトレイドのマインちゃん?手配書そっくりー。やっぱりかわいいね。でも君のイチゴパンツは君の100倍かわいいぜ。』

 

「な、なんで知ってるのよ!」

 

「マインちゃん……ブフッ……ごちそうさまです……」

 

…………死体が二体になるわね。

 

「ふざけてんじゃないわよ!」

 

小手調べにパンプキンをぶちかます。パンツの柄を当てられたのがピンチになったのかどうか知らないけど、結構な威力がでた。

 

『ぐ!……がはっ!』

 

え?ちょ、ちょっと?

 

『………』

 

「…………」

 

「…………」

 

……え、えーと?大臣のお抱えの超エリート?なのよね?

 

「マインちゃん……無抵抗の人間を殺しちゃダメだよ……」

 

「ちょ!リアルなドン引きやめなさいよ!だ、だって、こいつ帝国側の人間だって……」

 

「彼なりの冗談だったのかもよ?」

 

「そ、それでも、正体バレちゃったし……敵っぽかったし……」

 

あ、ヤバイ、泣きそう。

 

「あーあ……」

 

「だって、だって、グスッ」

 

「じょ、冗談だよ、暗殺者の前で帝国側の人間だって嘘つかないって。悪かって、ゴメンねマインちゃん」

 

「うぅ……」

 

『全く、女の子を泣かせるなんて君は酷い男だよ、緑髪くん。』

 

「「!!」」

 

嘘……心臓を貫いていたのに……

 

「死んだふり?それは俺の十八番なんだけど」

 

『んー、まぁふりじゃないけどね。まぁいいや。じゃあ始めようか。』

 

瞬間、地面から大量の螺子が飛びて出てきた。そして、あたしとラバが分断される。てゆーか、これは……

 

「ラバ!」

 

『はい、これでOK。緑髪くん、男同士ガチンコでバトろうぜ?』

 

ミソギとかいう男とラバが螺子で出来た檻に囲われてしまった。

 

「戦力の分散が目的か……、あんまりサシの勝負は得意じゃないんだけど…」

 

「こんな檻、すぐに壊してやるわ!」

 

すぐさまパンプキンで攻撃。しかし、

 

「嘘!?傷一つつかない!?」

 

何この螺子、こんなに硬かったの!?

 

『マインちゃん、男同士の決闘に横槍は無粋だよ?じゃあ始めようか緑が……ラバくん?』

 

「……お前みたいな気持ち悪い奴、見ているだけで不快だよ。すぐに終わらせてやる!」

 

ラバが糸を出し始める。クローステールの本領発揮だ。

 

『ふっ…君とはいい戦いが出来そうだよ。』

 

そんなありきたりなセリフを吐き、ミソギとかいう男はどこからともなく螺子を両手に構える。あれがアイツの帝具……

 

「螺子の帝具か…どんな能力なんだ?」

 

『君を螺子伏せる帝具だよ』

 

「……さみぃよ!」

 

ラバの糸が束になり、槍へと変化していく。それを次々に相手に投げつける。しかし避けられてしまう。

『そんな単調な攻撃当たらないって。』

 

今度はミソギがラバに螺子を投げつける。

 

「効かねぇよ」

 

ラバは糸で作った防御結界で螺子を防ぐ。

 

『へぇ、なかなか器用だね。」

 

「そりゃどうも!」

 

両者、共に螺子と槍の投げ合いを続ける。にしてもラバ、なんで槍だけなの?千変万化のクローステールなのに…。

 

両者一歩も譲らず時間だけが過ぎてゆく。

 

 

 

 

 

 

『ふぅ、埒があかないね。ねぇ、ラバくん。大人しく螺子伏せられてくれないかな?』

 

「いいや、もう俺の勝ちだよ」

 

『?何を言って……』

 

その刹那、糸がミソギを縛り上げる。

 

『!!これは……そうか、さっきの槍をほどいたのか……本当に器用だね……』

 

「糸には色んな使い方があるんだよ、さぁ色々尋問させてもらうぜ?まず、何故ここが分かった?答えないならこのまま死んでもらう」

 

『ふっ、流石はラバくん。話に聞いていた通りの強さだ。ナジェンダさんが一目置くだけのことはある。』

 

「!ナジェンダさん!?お前、ナジェンダさんとどんな関係…」

 

「ラバ!油断しないで!まだ終わってないわ!」

 

「え?」

 

ガガガガガ!!ラバが一瞬で螺子で拘束される。

 

「ぐ…あ!」

 

『捕らえたくらいで油断しないでちょうだい。殺し屋のくせに詰めが甘いんじゃない?』

 

「……く…そ!」

 

「ラバ!」

 

なんで?クローステールの糸が絡まったらなかなかほどけないのに…なのになんでアイツは何事もなかったように解放されたの!?

 

『そう不思議そうな顔するなよ、マインちゃん。僕はただ、糸に絡まったという現実を、計算しつくされたラバくんの頑張りを、なかったことにしただけだぜ?』

 

 

 

 

 

『ーーーー全てをなかったことにする。それが僕のオールフィクションだ』

 

 

 

 

 

す…全てをなかったことに…?そんな神様みたいな能力……

 

「惑わされるな、マインちゃん!そんな能力あるわけねぇ!そんな事が可能なら始皇帝が死をなかったことにして生きながらえてるに決まってる!ハッタリだ!」

 

『やれやれ、信じてもらえないのは辛いねぇ。まあ、慣れっこだけどさ。じゃあ証明してあげるよ。この帝具が取り返しのつかない恐ろしいものだってね。』

 

そう言ってミソギはラバへと手を伸ばす。なにする気?まさか…!

 

「やめて!!」

 

『オールフィクション』

 

 

 

「ぐ…ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ラバァ!!」

 

そう叫ぶと目の前の螺子の檻がスッと消えた。あたしはすぐにラバの元へと駆け寄る。

 

「ラバ!大丈夫!?どこも怪我してない!?」

 

「ん……マインちゃん…?」

 

「あんた!ラバに何したの!?」

 

『いや、別に?オールフィクションの能力を教えてあげただけだよ』

 

「マインちゃん?どこ?なんで急に夜に………」

 

「……ラバ?何を言って……!まさか……!」

 

『ラバくんは僕を見ているだけで不快になるそうじゃないか。だからもう僕なんて見なくていいようにしてあげたんだ。つまりーーー』

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー君の視力をなかったことにした。

 

 

「ーーッ!」

 

 

『安心しなよ、ラバくん。それでもまだ地獄は見れると思うから。』




ちなみにミソギの服は学ランです。最初はまずいかなって思ったけど、よく考えたらクロメもセーラーなのでいいよね?
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