枯れた樹海と殺し屋たち   作:リンゴ丸12

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またおいで

ミソギに目を触れられてから目の前が真っ暗になった。視力をなかったことにした?だからどうした、こちとら殺し屋だぞ。命を失う覚悟ですら出来てる。むしろ、あそこで殺しておかなかったことを後悔するんだな。檻も消えて完全な2対1。さぁ第2ラウンドの始まりだ!

 

 

 

 

『……どうしたの、ラバくん。震えてるよ?』

 

 

くそッ!なんでだ!なんで……震えが止まらないんだ!!怖い、アイツが。あんな弱そうな奴が。怖くて仕方ない……!

 

「ラバ!しっかりして!後は私がやるから!下がってて!」

 

マインちゃん………畜生……!

 

『おいおい、止しておきなよ。女の子と戦う趣味はないからさ。』

 

「うるさい!仲間を傷つけられて、黙ってられないわよ!」

 

マインちゃんのパンプキンの音が聞こえる。

 

『ふぅん、その短気な性格……弱点かと思ったけど、帝具の威力が上がってる。怒れば怒るほど強くなるのかな?』

 

「パンプキンはね、私の精神エネルギーで撃ってるの。あんたはあたしを怒らせた、あんたに勝ち目はないわ!」

 

『なっ……はやっ……』

 

「撃ちぬけぇぇぇ!!」

 

マインちゃん、パンプキンのレーザーでの連射を……そこまで怒ってるなんて…

 

『がぁ!う、腕がぁぁ!!』

 

「腕がなくっちゃ螺子が出せないでしょ?さぁもう一方の腕を失いたくなければラバの目を元に戻しなさい!」

 

『ぐうぅ……!』

 

 

 

 

 

「そこまでだ」

 

「「!!」」

 

『ケ…ケイ君』

 

「まったく、勝手にフラフラしないでくれよ。探す身にもなってくれ」

 

さ、最悪だ、実質これで2対1。しかも、一方は帝国屈指の実力者。マインちゃん1人じゃ荷が重い。どうする、どうする俺!

 

「くっ!ケイ!こいつの命が惜しければあたし達への攻撃をやめなさい!」

 

「……殺せば?というか僕も個人的な理由で殺したくてしょうがなかったんだ」

 

『ひ、酷いよ、ケイ君!あれは僕からのプレゼントで……』

 

「だまらっしゃい」

 

ダメだ、マインちゃん。そんな交渉じゃケイは動じない。

 

 

 

………やるしかないか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「早くミソギ君を離してくれ。大臣に怒られる。さもないと……わかるよね?」

 

「くっ!」

 

状況は最悪……逃げるにしたってラバの目が見えないんじゃすぐに捕まっちゃう。目を離した隙にミソギの腕も戻ってる。どうしたら……

 

 

 

 

『うわっ!』

 

何?急にミソギとラバ急接近。まさか、ラバのクローステール!?

 

「念のため、ミソギの体にこっそり絡ませておいてよかったぜ」

 

『くっ、いつの間に……でもこんなの、またなかったことに……』

 

「オールフィクション、まさか伝説上の帝具が存在してるなんてね。あらゆる事象をなかったことに出来る帝具。でもなかったことに出来ない事、あるだろう?」

 

『まさか……!』

 

「強い想いのこもった事象はなかったことに出来ない。文献に書いてあったよ。半信半疑だったけど、お前の反応を見る限り、本当みたいだな」

 

『……死ぬ気か!』

 

「ダメよ!ラバ!」

 

「仲間の為に死ぬんだ、本望だよ。クローステールに猛毒が塗ってある。一緒に地獄めぐりしようぜ?ミソギの旦那」

 

『ケイ君!早く!』

 

「ちっ!面倒な事に…」

 

「遅ぇよ」

 

 

 

『ぐうぅ、があ!』

 

「ガハッ!」

 

 

 

 

「ラバッ!」

 

「マインちゃん……みんなによろしく…ね…」

 

そう言ってラバはクローステールを私に投げつけて動かなくなった。

 

「ラバァァァ!!……クソ!殺す、殺してやる!よくもラバを!」

 

あたしは怒りで訳が分からなくなってる。冷静に考えればかてないことくらいわかるのに。それでも戦わずにはいられなかった。

 

「やめとけよ、君じゃあ僕を殺せない。それにまだ二人とも生きてるよ。早く解毒すれば助かるかもよ。ここはひとつ休戦といこうじゃないか」

 

まだ生きてる?本当に?でもこいつは殺しに関しては私たちより詳しい、何よりここで嘘をつく必要がない………

 

 

「……分かったわ、でも次は殺す」

 

「奇遇だね、僕も同じこと考えてた」

 

そう言ってラバを担いであたしたちは別れた。

……ラバ、絶対助けるからね!死ぬんじゃないわよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さてと、ミソギ君?もういいよ」

 

『……あれ?気づいてたの?』

 

「死んだにしては血色が良すぎる。でも強い想いのこもった事象はなかったことに出来ないんじゃなかったのかい?」

 

『うん、そうだね。だからほら、糸はまだ残ってるでしょ?でも僕を殺すことには想いなんかこもってないよ。僕みたいな気持ち悪い奴に誰も想いなんか込めないって』

 

「……切ないこというね」

 

『過負荷(マイナス)の宿命だよ、まぁラバ君は助からないかな?くらってみてわかったけど、結構ヤバい毒だった。』

 

「ふぅん、まぁいいじゃないか。ナイトレイドは敵なんだから」

 

『うん、そうだね。帝国を震え上がらせ賊を倒したんだ!僕達はいいことをしたんだ!だからラバ君が死んだってーーー』

 

 

 

 

 

 

 

『ーー僕は悪くない』

 

恐ろしい笑顔で彼はそう言った。なるほど、この破綻仕切った性格なら今の帝都でも生き延びられるはずだよ。

僕は二人が逃げていった方向を見ながらそんなことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、帰ってきたかマイン、ラバ。今日はタツミがいないから夕飯の仕込みを手伝って……ッ!ラバ!」

 

「アカメ!急いで解毒の準備を!ラバが死んじゃう!」

 

ラバ、運んでくる最中にドンドン冷たくなっていった……いや……シェーレに続いてあんたまで私のせいで………

 

涙が止まらない……視界がぼやける。クソ!今は一分一秒が惜しいのよ!泣いてる場合じゃ……

 

「解毒の準備出来たぞ!」

 

「傷口にありったけの解毒剤を!」

 

ラバ……お願い、死なないで……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 ん?ここはどこだ?………部屋?」

 

気がつくと俺は変な部屋にいた。その部屋にはいくつもの机と椅子がセットで規則正しく並べられており、その中の一つに俺は座っていた。

 

「俺はなにしてたんだっけ?……あぁ、ミソギの奴と心中したんだっけ……」

 

じゃあここは死後の世界か?殺し屋の俺が天国に行けるはずないし地獄かな?へぇ…ここが……結構地味なんだな地獄って。

 

 

 

 

「いやいや地獄がこんなに綺麗な訳ないだろう?」

 

!誰かいる!振り返ると……かわいい女の子が机の上に座っていた。

 

「ええと……あなたが閻魔大王様?……わりとタイプなんだけど……」

 

「こんなにかわいい閻魔大王がいるかよ。ここも地獄じゃないよ。ここは君の心の中だ」

 

「心の中?今際の際になって自分の心を見直してるとかそんなとこか?」

 

「まぁ、ざっくり言うとね。正確に言うならこのままじゃ君が死んじゃいそうだったから、君の意識を切り離して具現化したんだよ」

 

「へぇ…(いや、訳わかんないけど)でも死ぬのは変わんないんだろ?……はぁ、俺もここまでか……ナジェンダさんに告っとくべきだったなぁ」

 

「……にしても、厄介な毒を使ったもんだねぇ。普通の人には解毒出来ない」

 

「相手を絶対に殺さなきゃだからな。俺が作ったオリジナル猛毒だぜ」

 

「まぁ、ミソギ君は生きてるけどね?」

 

「なに!?なんで!」

 

「君の仲間を助けようとしての特攻は確かに強い想いで、オールフィクションでもなかったことにはできなかった。君の仕込んだ糸は確かに彼を縛り上げたよ。しかしミソギ君への想いは気持ち悪さからくるものだったろう?そんな不純な気持ちじゃあ強い想いとは言えないね。彼はいっぺん死んでから生き返ったよ」

 

「あいつの帝具、死んでからも発動するのか!?」

 

何てことだ……じゃあどうやって殺せば……

 

「現実虚構『オールフィクション』は時間軸じゃなくて因果律に関与する帝具だからね。誰に対して不幸なのか彼は死なないんじゃなくて死ねないんだよ」

 

「じゃあ俺は犬死かよ……」

 

くそ……まぁマインちゃんは助かったかな?だったら意味がないとは言わないけど。

 

「いや?君は死なないよ?だから僕は君をここに呼んだんだよ」

 

「え?」

 

思わず素っ頓狂な声が出てしまう。

 

「本当は毒を抜いて返すだけのつもりだったけど、サービスだ。失った視力に関してもなんとかしてあげよう」

 

「え?俺はもう死ぬんじゃ?」

 

「さっきも言ったろう?死にそうだったから死ぬ前に意識だけを引っ張ってきたんだ。この部屋は時間とも空間とも無縁だよ?」

 

「じゃあ……助けてくれる……のか」

 

「うん、君はまだここで死ぬべきではない。物語の都合上ね」

 

「?」

 

「まぁ、わかんなくていいよ。さぁもう行きなよ。あんまり長居してもなんだろ?」

 

「ちょっ!まだ聞きたいことが!あんた、名前は……!」

 

そこまで言って話を遮られた。

 

「革命が成功したらまたおいで。そこまで生きられたらだけど。もうマインちゃんを悲しませちゃダメだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むにゃ?ここは…?」

 

「!」

「ラバ!」

 

あれ?マインちゃん?アカメちゃんも。俺は何を……なんで生きてんだ?

 

「よかった……よかった……ほんとうに……」

 

マインちゃんが泣いている。そんなに心配してくれたのか。嬉しいな。

 

「今の今までいつ死んでもおかしくなかったのに……どう言うことだ……?」

 

「さぁ……?なんか夢を見ていたような気がするんだけど……あれ?ていうか目が見えてる!」

 

「本当!?」

 

「え?目をやられていたのか!?」

 

驚くアカメちゃん。そりゃそうか、借りにそうならもう俺は戦力になりえないからな。

 

「なんでだ?オールフィクションの誤作動か?」

 

「……あいつがまだ使いこなせてないのかもね……ってあれ?ラバ、あんた……そんな目の色だったっけ?」

 

「え?」

 

鏡で確認。あ、本当だ。俺の目は緑だったのにオレンジ色になってる。オールフィクションの後遺症か?

 

「まぁなんにせよ助かってよかった」

 

「そうね、あんたはしばらく休んでなさい?精神的ショックが大きいでしょ?」

 

それは否定できないな。あんな体験二度とごめんだ。

 

「マイン、お前も泣き疲れただろう?夕飯は私一人で作るからお前も休んでいいぞ?」

 

「な、泣いてないわよ!」

 

「いや、その嘘は嘘になってないよ……」

 

目、真っ赤だし。

 

「う、うるさい!バカ!」

 

「ははは」

 

またこんな風に笑いあえるなんて。生きてるって素晴らしいな。

 

そういえばタツミはどうしたかな?そろそろ賞金をがっぽり儲けて帰ってくるかな?

 

バン!と扉が開く音。あ、レオーネ姐さんが帰ってきた。じゃあタツミも……

 

「あ、おかえりレオーネ。タツミは?」

 

「みんな、大変だ!タツミがエスデスに攫われた!」

 

「「「!!」」」

 

もう…少しは休ませてくれよ………

 




はい、もはや何も言うまい……
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