「私は三人欲しいな。女の子がふたり、男の子がひとりね。名前はウェイブ君が決めてあげて。私ってあんまりネーミングセンスないから。えへへ、どっちに似ると思う? 私とウェイブ君の子供だったら、きっと男の子でも女の子でも可愛いよね。あ、でも…こんな事言うのも恥ずかしいんだけど…私、その…処女なんだ…。だから子供はしばらく先になっちゃうかも。まずは二人で愛し合うことから始めないとね。できちゃった婚も憧れるけど無計画な子供作りは子供にも迷惑かけちゃうもん。そうと決まれば家を見つけなくっちゃね。最初は小さくてもいいわ。帝都には安くてもいい部屋いっぱいあるから大丈夫。お城みたいな家に住んでウェイブ君と愛を育むのも憧れるけどちゃんと現実を見ないとね。私、常識はある方だから。 そうだ、ウェイブ君ってどんな食べ物が好きなの?どうしてそんなことを聞くのかって思うかもしれないけれど、やだ明日から私がずっとウェイブ君のご飯を作ることになるんだから当然でしょ?目玉焼きは醤油派?塩コショウ派?あ、もしかしてソースとか?私は塩コショウ派なんだけどウェイブ君が他のがいいって言うならそれに合わせるわ。こういう小さなことも油断しちゃダメよ?これがきっかけでケンカになることだってあるんだから。でもウェイブ君に喜んで貰うことのほうが私には大切だから。遠慮しなくてもいいんだよ。うふふ。嫌いなものはある?好き嫌いはよくないけれど、でも喜んでほしいって気持ちも本当だもんね。最初くらいはウェイブ君の好きなメニューで揃えたいって思うんだ。お礼なんていいのよ妻が旦那さんにご飯を作るなんて当たり前のことなんだから。でもひとつだけお願い。私『あーん』ってするの、昔から憧れだったんだ。だからウェイブ君、今日の夕ごはんには『あーん』ってさせてね。照れて逃げないでね。そんなことをされたら私傷ついちゃうもん。きっと立ち直れないわ。ショックでウェイブ君を殺しちゃうかも。なーんて。 それでねウェイブ君、怒らないで聞いてほしいんだけど私、昔気になる男の子がいたんだ。ううん浮気とかじゃないのよ、ウェイブ君以外に好きな男の子なんて一人もいないわ。ただ単にその子とはウェイブ君と出会う前に知り合ったというだけで、それに何もなかったんだから。今から思えばくだらない男だったわ。喋ったこともないし。喋らなくてよかったと本当に思うわ。だけどやっぱりこういうことは最初にちゃんと言っておかないと誤解を招くかもしれないじゃない。そういうのってとても悲しいと思うわ。食べ物とは違ってこういうのは取り返しがつかないんだから。愛し合う二人が勘違いで喧嘩になっちゃうなんてのは小説の世界だけで十分よ。もっとも私とウェイブ君は絶対にその後仲直りできるに決まってるけど、それでもね。ウェイブ君はどう?今まで好きになった女の子とかいる?イェーガーズの女性メンバーは美人揃いだって言うじゃない?エスデス将軍とかね。いてもいいんだよ全然責めるつもりなんかないもん。確かにちょっとはやだけど我慢するよそれくらい。だってそれは私と出会う前の話だもんね?私と出会っちゃった今となっては他の女子なんてウェイブ君からすればその辺の石ころと何も変わらないに決まってるんだし。ウェイブ君を私なんかが独り占めしちゃうなんて他の女子に申し訳ない気もするけれどそれは仕方ないよね。恋愛ってそういうものだもん。ウェイブ君が私を選んでくれたんだからそれはもうそういう運命なのよ決まりごとなのよ。他の女の子のためにも私は幸せにならなくちゃいけないわ。うんでもあまり堅いことは言わずウェイブ君も少しくらいは他の女の子の相手をしてあげてもいいのよ。だからイェーガーズの同僚の女性にだって3分くらいなら面と向かって話すことを許すわ。だって可哀想だもんね私ばっかり幸せになったら。ウェイブ君もそう思うでしょう?」
「うんっ!そうだなっ!」
じゃねーよ!俺!なんだこの子!すっげえ危ねえ!デンジャラス!
ヤンデレってクロメみたいな子のことを言うのかと思ってたけど舐めてた!これは病院に行ったほうがいいレベルだ!とにかくここから逃げないと……
「あっと…ムカエさん?俺、仕事があるからこれで……」
と、その時足に激痛が。なんだ!?
見ると右足に包丁が突き刺さってる!
「な…!」
「なんで逃げるのよ…私に手を差し伸べてくれたじゃない……それって私が好きだってことでしょ?そうよね?そうに決まってるわ。だったらそんなかけがえのない私をほっといてどこに行くのよ。ウェイブ君もしかして家庭より仕事を優先させるタイプ?ダメよ。許さない。何よりも私を優先させて。誰よりも。何よりも。だって私達愛し合ってるんだからそのくらい当然でしょ?」
「ひ…うわぁぁぁ!!!」
怖すぎてつい足が出てしまった。マズイ、彼女は一般市民なのに!
「ああ!悪いムカエさん!怪我は……」
「大丈夫だよ?心配してくれるなんて優しいんだね、ウェイブ君。惚れ直しちゃった。でもムカエさんなんてよそよそしい呼び方はやめてよ。ちゃんずけか、何なら呼び捨てでもいいよ。あ、夫婦なんだから『お前』でもいいなぁ。そしたら私も『あなた』って呼ぶからさ」
「……ッ!」
こいつやばすぎる。どうにかしないと…
そう思っていたその時。
「ウェイブ?何をしてるんです?」
「セリュー!いいところに!」
「女の子をナンパですか?汚らわしいですね。やりすぎないでくださいよ?断罪対象になりま…す…ってウェイブ!どうしたんですかその足!」
「この子をなんとかしてくれ!」
「!………そうか、襲われていたのはウェイブの方ですか……私の仲間を…許せない!」
怖い怖い、セリューさん目が据わりすぎ!殺すなよ?この子は愛情表現が異常なだけなんだから。
「何、あなた?ウェイブ君のなんなの?私とウェイブ君の相思相愛超運命的フォーエバー&トゥルーラブハッピーエンド超絶ラブラブカップルに難癖つけようってんですか?許さないわよ。私とウェイブ君は夫婦なんだから」
「ほざけ……トンファガン!」
おい!殺すなよ!?と思ったらムカエが銃弾を手で防ごうと!危ない!
………え?
「な…弾丸が溶けただと?」
いや、この匂い……弾が……腐ってる?
「そんな武器じゃ私は殺せないよ」
「ッ!帝具か……」
この子も帝具持ち!?どんな能力だ?
「っていうか、セリュー!コロは?」
「Dr.にメンテナンスをしてもらってます……こんな時に…」
「ふふ……じゃあ今度は私から!」
ムカエがセリューに飛びかかった!セリューの義手を掴むと……!まただ!腐敗してる!
「な!」
「あら?義手なの?運がよかったわね。でもまぁ、その両腕はもう使えないけど」
「くっ!」
「仕上げだよ」
ムカエがセリューの顔の前に手を出した?なんだ?
「?………!!ぐ、がぁ!」
「セリュー!?」
急に倒れこんだ!何をされたんだ?
「空気を腐らせました。彼女の周りの空気はほぼ毒です」
「な!」
「さ!ウェイブ君。一緒に家を探しに行こ?私は寛大だから、今回の浮気は不問にしてあげる。まさか抵抗しないよね?ウェイブ君が反省するって言うならこの子、殺さないであげてもいいんだよ?
さぁウェイブくん、結婚しようよ結婚してして結婚するべき結婚しやがれ結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚レッツマリッジ!」
「……ッ!」
万事休すか…
「私の部下に何をする」
突如、ムカエの手が凍りついた。この技は!
「た、隊長!」
そう、我らがリーダー、エスデス隊長だ!よし、これであいつは帝具の能力を使えない!
「次から次へと……」
「隊長、なぜここに?」
「部下のピンチに駆けつけない私ではない。決して帝都のメインストリートにタツミがいるかなぁ、なんて考えていたわけではない」
……さいで…。
「さて、お前私の部下に手を出しておいてただで済むと思うなよ?拷問室まで案内しよう」
「……多勢に無勢とか……根性……腐ってんじゃないですかぁ?」
そう言うとムカエの手の氷がグズグズに!あいつの帝具氷も腐らせるのか!?そんなめちゃくちゃな!
「私、拷問されても貴方なんかに屈しませんよ?私、腐っても過負荷(マイナス)ですから」
「ほう、それは楽しみだ。どこまでその威勢が続くかな?」
「……とはいえ、エスデスさんは流石にキツイかな?という訳でぇ…………即逃げる!」
!あいつ!地面を腐らせて下水道に逃げ込みやがった!
「逃がさん!」
「隊長!まずはセリューをDr.に!」
「……チッ!」
セリューは急いでDr.のところに連れて行った。命に別状はないようだ。
その後俺はエスデス隊長から色々質問された。
「あいつは何者だ?」
「わかりません、急に結婚とか言い出して……やんわり断ったら足を包丁で刺されました……」
「………お前も大変だな…」
エスデス隊長も軽くひいてる。全くだ。最近嫌なことしか起きてない。
「帝具の能力は見たか?」
「えぇ、見た感じでは触れたものを腐らせるって感じでした。エスデス隊長も見たと思いますが隊長の氷をグズグズにしたのもその能力だと思われます。セリューはその能力で腐らせた空気にやられました」
「………万物腐朽『ラフラフレシア』か」
「知ってるんですか?」
「一応文献にのっているぞ?詳しい能力や奥の手は不明だが腐らせる、というならばそれしかないだろう」
「…………触れたものを腐らせる帝具、ですか?」
恐ろしい帝具だな……
「あぁ、しかし帝具の形となるものがわかっていない。もしかしたら、私と同じ形を持たない帝具なのかもしれん」
それは厄介だな……奪取はもちろん、破壊もできない。
……殺すしかないのか……
「他には何か情報はあるか?」
「いえ……あ、隊長。あいつが言ってた過負荷(マイナス)っていういうのは」
「さぁな。異常(アブノーマル)なら知ってるが」
「異常(アブノーマル)?なんすかそれは?」
初耳だ、田舎にいたからか?
「ん?そうか、お前は田舎者だったな」
……はい、まぁ。
「異常(アブノーマル)っていうのは、科学で解明できていないような異常な才能のことだ。詳しくは私も知らんがな。Dr.は詳しいだろうが厳しい箝口令が敷かれているからな。教えてはくれないだろう」
「異常な才能……」
「一時期帝都を騒がせたケイという殺人鬼がいたんだが、そいつの異常(アブノーマル)は『殺人衝動』あいつは人を見たら殺すことしか考えられなかったそうだぞ?」
「そんな奴が……」
やっぱり帝都の治安は乱れているんだな。俺達がしっかりしなくては。
「過負荷(マイナス)もそれに類似する何かかもしれん。今回は私がいたから助かったが…今まで以上に気を引き締めることだな」
「……はい」
「よし、今日はもう休め。疲れただろう。明日からまた、働いてもらうからな」
「………失礼しました」
過負荷(マイナス)……恐ろしい奴だったぜ。俺のせいでセリューは……もっと強くならなくては。仲間を守れるように。女の子だったから躊躇っちまったが、ムカエ。次は殺す気でいくからな!
「イッターい………下水道に逃げ込んだはいいけどまさか水が通ってないとは……まぁ地面を腐らせてクッションにしたからあんまりダメージはないけど。
それにしてもとんだ邪魔が入ったものね。私とウェイブ君の仲を裂こうなんて、無粋な奴ら。でも無駄だから。私とウェイブ君は赤い糸で結ばれてるんだから。ウェイブ君は私に手を差し伸べてくれたんだから。運命なんだから。運命なんだから。運命なんだから。誰にも邪魔させやしない」
『へえーウェイブ君は君に手を差し伸べてくれたんだ』
「!!ミソギさん!」
しまった、はぐれたままだった……私に親切にしてくれた恩人をこんな形で裏切るなんて……嫌われる……
「すみません…ミソギさん。私、こんなとこで、その……」
『気にしてないよ、ムカエちゃん。まずはその怪我を直そうよ』
「だ、ダメです。ミソギさん!」
ミソギさんが私の手を取ろうとする。でもダメだ。私の帝具、万物腐朽『ラフラフレシア』は手に触れたものを腐らせる帝具だか、使い勝手が非常にわるい。なにせオンオフが効かないのだ。だから触ったものは問答無用で腐らせてしまう。
『なんだい?ムカエちゃん。ウェイブ君の手は取れても僕の手は取れないっていうのかい?
大丈夫。安心して?君がどんなに悪いことをしても僕がぜーんぶなかったことにしてあげるから!』
そう言ってミソギさんは私の手を取るばかりか、その手を自分の顔にくっつけた。
「う、ミソギさん……うぅ……」
ミソギさんは私に手を差し伸べてくれるだけでなく、私の手を取ってくれるんだ……
初めてだった。人に手を握ってもらうのは。あったかいな……
「うぅ……うぅうぅ……」
涙が溢れてくる。こんな優しさに触れたのは生まれて初めてだ。
『大丈夫。ムカエちゃん。君は悪くない。だからもうあんな男に引っかかっちゃダメだよ?』
グズグズになった顔でミソギさんは私に笑いかけてくれる。そこに恐ろしさなんてこれっぽっちも感じなかった。
エスデスの登場シーン、めだかの原作に基づいてウェイブの母ちゃん出そうかと本気で考えました。まぁ流石にそれはないよね☆
あと一つ、多分この作品に出番が無いであろう、私がめだかボックスで好きなキャラの口癖をひっそり入れたんですが……気づいてくれるかな?