また、そのうちに何かの名前募集するかもです。
「ウェイブ殿!稽古をつけてください!」
コイちゃんはイェーガーズのメンバー全員を尊敬している。それは自己紹介の時のあの興奮の仕方からも見て取れる。ランやボルスさんにはよく話しかけているし、女子組では一緒に買い物にも行くらしい。クロメに至っては歳も近いためか呼び捨てし合うようになり友達のような関係性を築いている。
もちろん俺も例外ではない。今日だって稽古をつけてくれと殊勝な考えで俺に懐いてくれている。ただ……
「終わったら新しくできたケーキ屋へ行きましょう!もちろん2人で!」
何だろう……他の男子組とは何か違う気が……
「構わないけど……2人で?ケーキ屋ならクロメも一緒に…」
「私はいい。今日は予定があるから」
む、そうなのか。コイちゃんはそれをわかっていたのか?あとのメンバーは?
「お二人様限定メニューなるものがあるのです。断腸の思いではありますが、今回は他の皆さんにはご遠慮願いたく存じます!」
「うん、構わないよ。いってらっしゃい」
と、ボルスさん。マスクでよくわからないがちょっと楽しそうな気がする。
「まぁ、みんながいいならご好意に甘えて……よし、とりあえず稽古だ!帝都の郊外に行こう。あそこなら人気もないし暴れても大丈夫だからな」
「人気が……ない……?………ウ、ウェイブ殿?それは…」
「ん?何だ赤くなって。ほら行くぞ?」
「り、了解であります!」
「……天然……」
「タラシ」
「女泣かせ」
「なにが!?」
「うし、今日はこのくらいにしよう」
コイちゃんと稽古をしてかれこれ5時間ってとこか?もちろん途中に休憩もいれたが、だいぶヘトヘトだ。
「お、お疲れ様でした……」
コイちゃんも同じようだな。
「しっかしやっぱ帝具って不思議だなぁ。俺のグランシャリオも大概だが、お前のは訳がわからん。使ったことのある銃なら、何にでも変形可能なんだろ?」
「はい…ハァ…私の帝具…ゲホッ……ぁあ…『二超拳銃オルトロス』は……オエッ!」
「後ででいいよ!聞いた俺が悪かった!」
疲れすぎだろ!辛いなら言ってくれよ!バリバリやっちまったじゃねぇか!
と、言うわけでケーキ屋さんに到着。結局ここまで俺がおぶってきた。まぁやりすぎた感はあったしな。その詫びの意味でも。
「いやーどれも美味しそうですな!疲れた時には甘いものであります!」
めっちゃ元気だし……まぁいいか。
お二人様限定メニューのケーキセットを頼み、ケーキがくるまでさっきの話の続きをする事にした。
「さっきの話の続きだけどよ。使ったことのある銃なら何にでもなるんだろ?その拳銃」
「はい。あ、いえ、正確には使ったことのある銃でさらに構造を知っている銃、ということになりますね。まぁ私はかなりの銃マニアなので使ったことのある銃は必ず分解しますから、ほぼ同義ですね」
「ほーん。でも見たことのねぇ銃もあったぞ?あれはなんだ?」
「あれはDr.スタイリッシュ殿が作ったものです。宮殿の武器庫にはウェイブ殿が見たことのない武器がまだまだありますよ?」
「そうなんだ…」
まぁ、セリューの十王の裁きも大概だしなぁ。本当惜しい人を亡くしたな。この仇はとってやらないと。
「お、ウェイブ殿きましたよ?美味しそうですなぁ〜」
運ばれてきたプレートには苺のたっぷり入ったタルトケーキとオリジナルブレンドの紅茶。うん、確かに美味しそうだ。
「じゃあ食べるか。いただきま…ッ!コイちゃん!」
「え?」
大口を開けて食べようとするコイちゃんに後ろから斬りかかろうとする男が!いつからそこに!全く気配を感じなかった…!
「くっ!」
グランシャリオを装備する余裕はなかったのでグランシャリオの鍵を剣としてそのまま使い、男の刀を防ぐ。
「うーん、ダメか。やっぱり」
「何者だ!テメェ!」
俺と刀を持った男のやりとりに驚き、悲鳴をあげて逃げる客たち。店員は店内に逃げたようだ。ありがたい。これで心置き無く暴れられる。
「邪魔しないでくれないかな。僕はこいつを殺したいだけなんだ」
「はぁ!?いきなりなんだ!こいつは普通の女の子だぞ!」
「僕にとっては違う。なぁ、コイ」
「あ、あなたは……!」
知り合いなのか?でも俺もこいつどこかで…………
「……父上!」
「!!」
「………」
えぇ!?父上って……えぇ!?若っ!!てかこいつケイじゃねぇか!隊長も話してたあいつだよな!それが父上って……ええええ…!!
「あ、間違えた。兄上」
「ズコー!!」
お前!このシリアスな感じにボケ入れてくんじゃねぇよ!色々台無しだろうが!
「………相変わらず抜けてるね。コイ。用件は言わずともわかるよね?」
「私を……殺すおつもりでしょう」
出鼻をくじかれた感はあるが、やはりそうか。でもなんでコイちゃんを?
「なんで妹を殺すんだよ!兄妹なんだろ!?」
「そうだよ。だから殺すんだ」
ダメだ、話が通じない。話すだけ無駄か?でも一応もう一押し。
「…恨みでもあるのか?」
「いや?殺したいから殺すんだよ。身内なんて殺すのにも限りがあるからね。殺しのスペシャリストとしてこんな美味しい獲物を殺さない訳にはいかないよ」
……噂通りのシリアルキラーか。まだ生きていたことに驚きだが。国中死んだって噂でいっぱいだったしな。
「むしろ恨みがあるのはコイの方じゃないのかな?」
「え?」
「………………」
「僕はそいつの、というか僕のでもあるんだけど、両親を殺したからね」
「な!」
「………………」
悲痛な表情になるコイちゃん。まさか、本当に……!
「あの人達が僕に殺しの素晴らしさを教えてくれたんだ。知ってるか?人は殺したら本当に死ぬんだぜ?それを実感させてくれたのが僕たちの両親だったんだ。懐かしいなぁ」
「…………狂ってやがる」
「よく言われる」
コイちゃんが顔を歪める。トラウマなんだろう。自分の兄が自分の親を殺してるんだ。当然といったら当然か。
と、思ったら意を決したようにコイちゃんが喋り出す。
「兄上!それは!」
「口を開くな。殺すぞ」
有無を言わさず黙らされるコイちゃん。
「テメェ、これ以上俺の仲間を傷つけてみろ。ぶっ殺すからな!」
「ウェイブ殿……」
「ウェイブ……そうか、君が……ふぅん……なかなか強そうだね。ねぇ、ウェイブ君。僕はコイを殺したいだけで君を殺す気なんてないんだけど。大人しくコイをこっちに渡してくれないかな?」
「ほざけ。テメェは俺にぶちのめされてエスデス隊長の拷問を受けるんだよ! ーーーグランシャリオォォ!!」
俺は叫び、戦闘態勢に入る。
「はぁ、ダメか。君を殺すと怒られるから本当に殺したくないんだけどなぁ。ーーだから殺す」
そういうとケイは5メートルはあった距離を一瞬でつめてきた。日本刀で俺に斬りかかる。
が、グランシャリオの強度をなめてもらっちゃ困る。そんな程度の武器じゃ傷一つつかねぇぜ!
「今度はこっちの番だ!」
俺はケイに海軍時代にしごかれた格闘術を叩き込む。
が、全て避けられてしまう。やはり一筋縄ではいかないか。
「なかなかやるね」
「そりゃどうも!」
両者一歩も引かない攻防戦。とは言っても俺の攻撃全て避けられてるがケイの攻撃は全て当たっている。悔しいがこいつ俺より戦闘能力は上だ……が、ダメージを与えられなきゃ同じだぜ!このまま持久戦に……
「ふぅん、そうかこれじゃあ君の命は殺せないんだね……ならこれだ」
両手の日本刀が消えたと思ったらすぐに新しい武器が!あれは…ハンマーか!マズイ!
「死ね」
おおよそハンマーを持った動きとは思えない敏捷性で俺に接近。そしてハンマーのラッシュ。
「ぐぅぅ!」
グランシャリオは鎧の帝具であらゆる攻撃を防ぐ。だがこんな重い攻撃を受け続けると!
「君の鎧は一定ダメージで解除されるんだろ?インクルシオと同じだね」
こいつ……詳しい…!ヤベェ!もうもたな…
「終わりだ」
ケイがハンマーを思いっきり振りかぶり、俺に叩きつける。
「ぐあぁ!」
グランシャリオは解け、俺は壁に叩きつけられる。
「ウェイブど「動くな」」
ケイがコイちゃんの首元に刀を!クソッ体が動かねぇ!やばい!!
「死ね」
コイちゃん!!
「待って!ムナカタ!」
「………クロメちゃん…」
クロメ!?なんだ?知り合いかなのか……?
「隊長から聞いたよ。ムナカタもう正式に軍に入るんでしょ?だったらイェーガーズのメンバーを殺すのはマズイって!ね?ここは私の顔を立ててよ。お願い……ムナカタ。私は知ってるよ。ムナカタは本当は優しいこと……!」
「……………」
ケイが刀を収めた。助かった……のか?
「………しばらくはクロメちゃんの顔を立てて殺さないでおいてやる。でもいずれ殺しに行くからな。コイ」
「兄上!待っ!」
一瞬。一瞬でケイは俺たちの前から姿を消した。
「助かった。クロメ。……事情、聞かせてもらえるか?」
「うん。それは宮殿に帰ってから…というか隊長から直々に話があると思う」
「隊長から?」
なんだか大事になっちまったな…
「コイちゃん。大丈夫か?」
「はい……」
そのあと、俺はクロメとコイちゃんに肩を貸してもらって宮殿にまで戻ったのだった。
オルトロスってケルベロスの弟分らしいですよ?頭は二つなんだって(e_e)