枯れた樹海と殺し屋たち   作:リンゴ丸12

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遅くなりました……すみません忙しくて…
あ、あとなんかマインを、酷い目に合わせたらお気に入り数が爆発的に増えました。やったぁ^_^
これから困ったらあの子をひどい目に合わせよう。


そんな存在

ミソギの事を形容しろ、と言われる事ほど難しいものはない。見た目は華奢で、いつもニコニコしている。そんな話を聞くだけならば感じの良い好青年と受け取られてもおかしくない。そう、話を聞くだけならば。

実際に対面して見ると、そのイメージは一瞬にして崩れ去る。万人が抱く第一印象は気持ち悪さだろう。性格がとか、言動がとか、理由を挙げろと言われたらきりがない。

でもそういうことじゃない。ミソギの気持ち悪さは理屈じゃない。彼の気持ち悪さに理由をつけること自体が間違いなのだ。

 

 

こんな話がある。人の形を模した人形。古来より呪術の道具として使われたり、一方で玩具として子供に扱われるものでもある。それらに求められる性質は前者は畏怖、後者は愛らしさ、だろうか。

呪術で扱われる場合その姿は神聖なものであり、また神として扱われる場合は見る者に神々しさを与えなくてはならない。要は近づき難い姿形でなければならないのだ。

玩具として扱われる場合は言うまでもなく愛くるしくてはならない。愛くるしく、可愛がられ、過多な愛情を込められる事すらある。

同じ人形でも真逆と言っていいほど性質が異なる。ではこの違いは何からくるのか?それは如何に人間の姿に近しいか、というところにあるらしい。

人間は人の形を模した者、人間の姿であるにもかかわらず人間ではない者、そういったものがあまりにも人間に近しい姿形をしていると、気持ち悪さを抱くそうだ。つまり呪術で扱われる人形が怖れられるのは人間に似た姿で作られるから、逆に玩具としての人形が愛されるのはデフォルメされた姿で顕現されているからなのだ。

この境界は曖昧な上になぜ人間がこう感じるのかは、いまひとつわかっていないらしい。

まぁ、俺から言わせればこんな事は考えるまでもない。要は人間でない者が人間であろうとするのが怖いだけなのだ。玩具としての人形は人間と呼ぶにはあまりにもお粗末だ。だから怖がられない。それは人間じゃないから。

 

長くなってしまったが、話を戻そう。ミソギの話に。俺が思うにあいつは人形なのだ。この世で最も精巧に作られた人形。人間のように喋り、人間のように呼吸をし、人間のように食事をする。そんな奇跡みたいな人形。

だけど人形だから心がない。心がないから人を傷つけてもなんとも思わないし、悪い事と善いことの区別ができない。人形だから死なない。死んだように見えてもそれは壊れただけであって、すぐに作り直せば元どおり。人形だから意思がない。やりたいことなんてなくて向上心もなければ情熱もない。そんな存在。

そして人間に近すぎるがゆえに、どんな人形よりも気持ち悪い。

人間の本能で感じる気持ち悪さ。その究極系がこのミソギということになるのだろう。

まぁもちろん、あくまで俺の解釈だ。賛否両論あるだろう。だがこうでもしてミソギの存在に理由をつけなければ精神がイカれてしまう。

実際にこうやって前に立つだけで心が折れそうになっている。ミソギの強みはこうやって対面してみないとわからないものなのだ。

 

 

ーー強さではなくて弱さなのだが。

 

 

 

 

 

 

『じゃ、僕たちも始める?』

「あぁ、そうだな」

 

ミソギの能力によってマインちゃんと分断されてしまった。糸をかけようにも、かけた瞬間になかったことにされてしまう。なんとかこいつに能力を解除させるしかない。

 

『時にラバ君、君は育ちは良さそうだけどなんでナイトレイドに?』

 

「……なんで育ちがいいって分かる」

 

『服の着こなしとか足運びとか、それ貴族のもんだぜ?ダメだよ、そういうとこも隠さなきゃ。殺し屋とならさ』

 

こいつ……そういうところは目ざといな…。それを活かした職に就けなかったのか?探偵とか。まぁ俺なら絶対に依頼しないけど。

 

「俺の家にナジェンダさんが来たことがあってな。彼女の志に感動してついていくことにしたんだ」

 

嘘だ。志ではなく美貌に、だ。だからナジェンダさんが悪の道に走っていたら俺も悪人だったかもしれない。まぁナジェンダさんがそんな人だったら惚れてないけどな。

思えばあの時ナジェンダさんに会っていなかったら俺はあの家で腐ってたかもな。そしたら、マインちゃんやアカメちゃんに殺されてたりして………笑えねぇ。

 

 

『ふーん、そっか。ナジェンダさんねぇ』

 

「あ?」

 

『いやいやなんでもないよ。さぁ始めようか』

 

「あぁ。いや違うな、もう終わりだよ」

 

そう言うと、俺はミソギに糸を飛ばし巻きつけ拘束する。さっきみたいにいきなり首を飛ばしてもすぐに生き返るみたいだからな。今回は工夫させてもらうぜ?

 

『……む?拘束?こんな物すぐになかったことに…………あれ?できない…?』

 

「お前の帝具、想いのこもったものはなかった事に出来ないんだろ?その糸は界断糸っつってな。帝具の元になった危険種の急所を守ってた大事な繊維なんだ。やっぱりなかったことにはできないみたいだな」

 

正直賭けだったけどな。界断糸をなかったことにされたらやばかった。クローステールの実用性が限られてくる。

 

『ふーん、で?確かにこれで僕は何もできないけど、どうするの?拷問かな?』

 

「お前は革命が終わるまでうちの捕虜になってもらう。その際帝国の情報を聞くと思うが、その時に黙秘するなら拷問も覚悟しろ」

 

『…はーい』

 

ふぅ、とりあえずこいつは大丈夫。問題はマインちゃんの方だが…。まぁあの子の帝具はピンチをチャンスに変えるような帝具だ。滅多なことがなければ負けないだろう。

 

「さて、まずは俺が話を聞かせてもらう。お前とケイ、ピンク髪の女の子、そして今マインちゃんと戦っている赤髪の女の子、帝国が新たに組織したチームか何かか?」

 

『お?カルマちゃんを一撃で女の子だって見抜けたんだ?凄いねぇ、僕ですら分かんなかったのに』

 

「質問に答えろ」

 

俺は糸の縛り方を強くする。

 

『ぐ…そ、そうだよ、僕たちは大臣直属の暗殺部隊、ナイアーラトテップだ』

 

大臣直属の暗殺部隊…あの野郎、イェーガーズだけでなくこんな奴らまで……俺たちを本気で狩りにきてるってことか…

 

「他に仲間は?」

 

『いない』

 

「それぞれの帝具を教えろ」

 

『い、いいけど、その前にちょっと糸を緩めてくれない?苦しいよ』

 

「口答えするな、絞め殺すぞ」

 

『むぅ…』

 

こいつはこの程度じゃ死なねぇだろう。まぁ死んでもいいし。多少無理はさせてもらう。

 

「早く答えろ、死なない分、余計に苦しくなるぞ」

 

『……僕とケイ君のは省略するよ。奥の手もないし。ムカエちゃんのは「万物腐朽ラフラフレシア」触れたものを有機物であれ無機物であれ腐らせる帝具だ。奥の手はない』

 

万物腐朽ラフラフレシアか……厄介だな。あの帝具普通じゃ腐らないものも腐るからな。防御がしにくい…対策を立てなければ…

 

「もう一人、今マインちゃんと戦ってる赤髪の女の子の帝具はなんだ」

 

『……「月光麗舞シャムシール」真空の刃を飛ばす刀の帝具。奥の手は月齢で帝具のポテンシャルが変わること。満月のときが最高だよ』

 

……ふむ、なるほど確かに腰に剣と銃が装備してあったな。シャムシールはそんなに厄介な帝具ではない。油断さえしなければマインちゃん1人でも大丈夫だろう。2対1になってマインちゃんのパンプキンの威力が下がっても困るし。

 

「…イェーガーズと面識は?」

 

『無いね。僕達は結構法的にヤバいこともしてるからね。表向きは警察とは仲良くできないさ。存在すらあやふやじゃないかな?まぁ君達がいるってなら話は別なんだろうけどさ』

 

まぁそうだろうな。ケイとかは元犯罪者なんだし。大臣の保護下で自由にできてるって感じか?

質問はこんなとこか。にしてもマインちゃん遅くないか?何気に手こずってる?手伝いに行くか。

 

「おい、ミソギ。この螺子の柵を外せ。マインちゃんとそろそろ帰らないといけないからな。イェーガーズもくるし」

 

『?なんで?』

 

「いや、だからマインちゃんを手伝いに行くんだよ。まぁ1人でも大丈夫だとは思うがな。あんな可愛い子を殺すのは忍びないけど、まぁ殺し屋の因果だと思ってくれ」

 

『いやー、ラバ君。その必要はないんじゃないかなぁ』

 

「?何言って……」

 

 

 

 

 

「ああぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」

 

 

「 !!マインちゃん!?」

 

『よかったー、間に合ったみたいだね。いやー焦った焦った。まぁカルマちゃんが負けるなんて全然考えてなかったけど』

 

「何!?おい、あの赤髪の子そんなに強いのか!?」

 

『うん、ナイアーラトテップ内ではケイ君の次に強いよ。ナイトレイドではアカメちゃんと張るんじゃない?』

 

くそ!!実力を見誤った!マインちゃんが苦戦するなんて!いや……待て?あの絶叫……まさか…拷問されてる!?そうだ!この目を使って!

 

『お?欲視力(パラサイトシーイング)を使ってるね?本当便利だなぁそれ』

 

パラサイトシーイング?なんだそりゃ?いや、今はそんなことよりマインちゃんだ。よし、見えてきた。

!!マインちゃん!血まみれだ!!それにすごい苦しんでる…!

 

「おい!ミソギ!あの子はマインちゃんに何をしてるんだ!?」

 

『?帝具を使ってるんじゃないの?』

 

「は!?あの子の帝具はシャムシールだろ!?そんな拷問的な能力じゃないだろう!」

 

『シャムシール?なにそれ?異国の料理かな?美味しそうだねぇ』

 

くっ……こいつ……!どこまでも…!

 

「テメェ!あの子の能力はなんだ!」

 

『そう怒鳴るなよ。短気は損気だよ?彼女の帝具は「致死武器スカーデッド」さ』

 

くっ……聞いたことねぇ。文献にないタイプの奴か…!

 

「だからなんの能力だ!」

 

『スカーデッドは帝具の中でも攻撃力は随一だ。一度発動すれば誰にも避けられない。なにせ新たに傷つけるわけじゃあない。古傷を開くんだからね』

 

古傷を……開く…?

 

『人生の中で受けてきた傷、擦り傷や打撲はもちろん筋肉痛すらも強制的に再発させるんだ。どんなに昔の傷でもね。君達みたいな生傷の絶えない職業には天敵だろうねぇ』

 

「くそっ、じゃあマインちゃんは今までの傷を一気に!」

 

いや、でも流石に無傷とはいかなくてもマインちゃんは遠距離タイプの殺し屋だ。あんなに悲鳴をあげるほどのダメージがあるとは思えない……

 

『まぁあの悲鳴を聞くに今回は多分奥の手を使ったのかな?』

 

「奥の手!?そんなものまであるのか!?」

 

『うん、えげつないのがね』

 

「なんだ!なんの能力だ!」

 

『普通のスカーデッドは肉体的古傷を開くんだけどね?奥の手は精神的古傷を開くんだ』

 

精神的……?………ッ!まさか!

 

『つまりトラウマを強制的に再発させるんだ。一気にね』

 

くそ!ヤバい!マインちゃんは子供時代に多大なトラウマがある…。それが一気に開かれたとなると…。

 

「マインちゃん!」

 

俺はたまらず螺子の柵を叩き出す。クソッ!ビクともしない!

 

『これで彼女は終わったかな?よしんば助かったとしても廃人は免れないね』

 

「テメェ!」

 

俺は怒りに任せて糸を締め付ける。

 

『ぐ…あ…』

 

クソ!クソ!とりあえずこいつを殺して螺子を消さなくては!

 

 

 

パァン!

 

 

!!

 

『ふ……ふ……あーあ、死んじゃった。僕と違って生き返らないねぇ……』

 

「黙れ!」

 

俺はミソギの体に糸を入れ心臓を切り刻む。

 

『グフ!』

 

よし、とりあえず柵は消えた。マインちゃん!

 

ッ!

 

 

 

 

 

「あ……あ…」

 

 

 

そこには血まみれになってピクリとも動かなくなったマインちゃんがうつ伏せに倒れていた。




序盤に出てきたのは「不気味の谷」を自分なりに改造したものです。本来の「不気味の谷」とは大枠しか合ってません。本来はロボットの話だし。ご了承ください^_^;
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