『ケイ君ー。調子はどうだい?』
「良くなってきたよ。再来週には退院出来るって」
『そう、それは重畳』
タツミ君(インクルシオ)と戦って死にかけてから、一週間が経った。骨が折れていたみたいだが、ミソギ君のオールフィクションである程度直してもらえた。ある程度、と言うのはタツミ君の放った攻撃が強い想いのこもったものだったのでオールフィクションでもなかったことに仕切れなかったのだ。なので細かい部分までは一般治療に頼る事となった。
『いやー、ケイ君がいないとやっぱり任務に苦労するよ。』
「むしろやりやすいんじゃない?」
僕がいないことで仕事がはかどることは間違いない。ムカエちゃんもいい感じに成長してきたし。戦力としては上々だろう。
『いやいや、殺しにくいったらありゃしない。みんな心配してるからさっさと治しちゃいなよ』
「そうだね。ここにいると殺意の発散場所がなくてね」
武器を持ってないと落ち着かない落ち着かない。
『ふふふ、…ん?ケイ君何読んでるの?』
「…あぁ、ベットで横になるだけじゃ暇でね。図書館から本を借りてきたんだ」
『へえ…勤勉だなぁ。僕は〈友情・努力・勝利〉をキャッチコピーにした週刊誌しか読まないからなぁ。活字だと眠くなっちゃって』
「僕たちは禁書の棚のも読めるんだから…読まなきゃ損だよ?」
帝都の上級官吏にもなると帝都中央図書館地下の禁書の棚にある本が閲覧可能となる。ナイアーラトテップやイェ―ガ―ズともなれば、それを借りることも可能だ。因みにここにあるのははカルマちゃんにかりてきてもらった。
『ふーん……何々……?〈帝国史・研究用3・帝国周辺の国々〉?何?ケイ君、この腐った国の歴史のことなんて調べて楽しいの?しかも研究用…』
「いや、一般に出回ってる帝国史には不明瞭な部分も多くてね」
幼い皇帝に変な知識を植え付けないように大臣が根回ししているからなんだが。
「この研究用ともなるとほぼ史実通りにかいてあるんだ」
本当ならこれらも大臣に処分されてしまいそうだが、何分これは歴代の皇帝も制作に携わっている。処分するにもブドー大将軍がそれを許さないだろう。本当、ブドー様様だ。
「昔、今の帝国から西に位置する国に大犯罪者がいたんだってさ」
『君みたいな?』
「いや彼は人殺しはあまりしなかったらしい。ただ話術に長けていたそうだ。だから詐欺師に近いんじゃないかな?」
だからどっちかと言ったら君みたいな人だよ。言わないけどさ。
『へぇ……まぁいても不思議じゃないんじゃない?それがどうしたの?』
「それが………って……興味あるのかい?」
『全然』
「じゃあいいよ……。無駄だし」
本当、君を見てると止めどなく殺意が湧いてくるよ。いつも以上にね。
「チィース。お見舞いに来たぜー。お、ミソギの旦那も一緒か」
「カルマちゃん」
『あ、果物だ!美味しそう!』
「あんたのじゃねぇよ。………ん?なんだケイの旦那、私が借りてきた本、もうそんなに読んでるのか。そんな小難しい本よく読めるな」
「君たちはもう少し活字を読んだほうがいい。頭の回転も速くなるから戦場でも有利に働くよ」
『はいはい、今度ね』
「気が向いたらな」
絶対読まないな君たち……はぁ、ムカエちゃんなら真面目に読んでくれるのに。あとイートちゃんも。
「何々…?……………現帝国の西にいたと言われる大犯罪者?…………それって」
『え?カルマちゃん知ってるの?』
「私は西の異民族とのハーフなんだけど……そんなような絵本があったぞ。母さんがよく読み聞かせてくれたなぁ。何度も読み聞かされたから覚えちまったぜ。へぇ、それって実話だったのか」
へぇ……西の国では有名なのか。
『おぉーじゃあ僕たちに読み聞かせてよ。ケイ君の話は難しすぎて意味不明だから』
……………何がいいかな。斬殺でいいかな。
「えぇ!?……まぁ……いいけど……」
『パチパチ~』
「じゃあ……いくぞ?……んんっ!」
【うそつきジャック】
むかしむかしあるところに”ジャック”というおとこがいました。
そのおとこはひとをだますのがとくいで、ひとをだましておかねをかせぐ”さぎし”というわるいひとでした。
だましたにんげんが1000にんをこえたころ、おとこのあくみょうはじごくにまでとどくようになりました。
じごくのおうさま、”えんま”はぶかのあくまにいいました。
「こんなわるいにんげんはみたことがない。おい、あくまよ。まだじゅみょうがのこっているがころしてじごくにつれてこい」
「わかりました。えんまさま」
しばらくしてあくまは”にいげんかい”にあらわれて”ジャック”にいいました。
「おいジャック。 おまえのあくぎょうはじごくでもひょうばんになっている。おまえはここでしに、じごくでつみをつぐなってもらう」
”ジャック”はこたえます。
「あぁ、きみがえんまさまのつかいですか。おまちしておりました。えんまさまからおはなしはきいています。わたしもやりすぎだとかんじていたところです、いさぎよくじぶんの”し”をうけいれます」
あくまはおどろきました。あくまがおもっているよりもずっといいにんげんのようにおもえたからです。あくまはこのままころしてしまうのがかわいそうになってきました。
「おいジャック。さいごにやりのこしたことはあるか?かんたんなことならそれをやる”ゆうよ”をやろう」
”ジャック”はなきながらこたえます。
「なんとじひぶかい…。ではおことばにあまえさせていただきます。たいしたことではありません。じぶんの”し”はじぶんのいえでむかえたいのです。なのでころすのはわたしのいえでおねがいします」
あくまはまたまたおどろきました。めのまえにいるおとこがほんとうにはんせいしているのだとかくしんしました。
「よしわかった。ではおまえのいえへむかおう」
こうしてジャックとあくまはジャックのいえへむかうこととなりました。
「ここです」
あんないされたいえはとてもおおきないえでした。
「へんないえだな。それになにかきぶんがわるくなってくる」
「どうぞおはいりください」
あくまはいわれたとおりなかへはいります。なかはまっくらでした。あくまがいえのおくまではいると、とびらがしまりました。
「おい、ジャック。なにもみえないぞ。あかりはないのか?」
”ジャック”はこたえます。
「いまつけますので、おまちください」
そのしゅんかん、あくまのたっているゆかがひかりだしました。
「うぐ………これは……」
くつくつとわらいながら、ジャックはこたえます。
「それは”じゅうじか”のけっかいだ。おまえたちあくまにはけっしてぬけられない」
あくまはおこりました。
「どういうことだ!」
ジャックはこたえます。
「おれはじごくにいくきなんてない」
あくまはさらにおこります。
「ふざけるな!」
「じゅみょうもきてないのに、しんでたまるか。だからおまえをとらえたんだ」
ジャックは”にやり”とわらい、つづけます。
「ここは”もときょうかい”でね。おまえたちあくまをくるしめるばしょだ。そしてそのけっかいにとらわれたいじょう、おまえはえいえんにそこからでることはできない」
あくまはあおざめました。
「なんだって……」
「だしてほしければおれのじごくいきをとりけせ、もちろんじゅみょうがきてほんとうにしんだあともな」
あくまはこのおとこのおそろしさをみをもってしりました。こわくなったあくまはしぶしぶジャックのじごくいきをとりけし、じごくにいかなくてもすむ”けいやくしょ"かかされました。
こうしてジャックはえいえんにじごくにいくことはなくなったのです。
しばらくしてジャックにもじゅみょうがきてしぬこととなりました。”しにがみ”がきて、かれを”あのよ”へつれていこうとします。
しにがみはいいました。
「おまえはあくまをだましてじごくいきではなくなった、そうだな」
ジャックはこたえます。
「そうだ、てんごくにつれていけ」
「わかった、ではこっちだ」
しにがみはジャックをてんごくへあんないします。
「ここだ、あとはてんごくのもんばんにきくといい」
そういうとしにがみはきえてしまいました。
ジャックはてんごくのもんをくぐろうとします。しかし
「おいおまえ、なにものだ」
もんばんにとめられてしまいます。
「しんだからてんごくにきただけだ」
「なまえは?」
「ジャックだ」
もんばんはきいたしゅんかん、あおざめました。
「ジャック…?あの”さぎし”のか!?」
ジャックはおどろきます。まさかてんごくにまでじぶんの”な”がしれわたっているとはおもいもしなかったからです。
「むかし、あるあくまがいっていた。『ジャックというなのさぎしがてんごくにくるはずだ。そいつはだけはぜったいにてんごくにいれてはならない』と」
ジャックはきづきました。むかし”けいやくしょをかかせたあくまがじぶんをてんごくにいれないようにねまわしをしていたことに。
「おまえをてんごくにいれるわけにはいかない。じごくへおちろ」
もんばんのことばとともにジャックのあしもとがひらき、じごくのいりぐちまでまっさかさま。
「うわあああああ」
ジャックもこれにはたまりません。
きがつくとジャックはいかついもんのまえでたおれていました。そう、じごくのもんです。
「ひさしぶりだな」
めのまえにいたのはあのときのあくまでした。
「おちてきたしょうげきでしばらくはしゃべれないだろう。そのままきくといい。
さて、おまえはてんごくに、はいれなかったわけだがおれがかいた”けいやくしょ”のせいでじごくにもはいれない。これからどうなるとおもう?
おまえはたましいのまま、えいえんに”このよ”をさまようのだ。えいえんにじごくにもてんごくにもいけない。それがおまえへの”ばつ”だ。よくはんせいするのだな。
………まぁ、はんせいしたところでもうどうにもならないのだが。
せんべつだ。そのカボチャでできたランタンにじごくのほのおをともしてある。よるはそれをあかりにするといい。
さ、これでさよならだ。えいえんにさまよう”ばつ”をせいいっぱいたんのうするといい。
こうして、ジャックはたましいのまま、いまでもこのよをさまよっているそうです。もしそうぐうしてもはなしかけてはいけません。はなしかけるとたましいをランタンにすわれてもやされてしまうからです。
よいこのみんなはけっしてうそをつかないように。でないとジャックのようにえいえいんに”このよ”をさまようことになってしまいますよ?
「………これが俺っちの人間だった頃のお話。聞いたことあるかい?」
「えぇ………昔パパが読んでくれたわ……」
まさか子供の頃読んだ絵本に出てきた男がパンプキンだったなんて………。昔、パパによく言われたっけ、『嘘ばかりついてると、ジャックのようになってしまうぞ』って。正直驚きが隠せないわね………。
「………ってゆうか!パンプキン!あなた!危険種って言ったわよね!人間は危険種じゃないでしょ!」
「そんなことないさ。あんなに醜悪で劣悪で凶悪な生物、他にはいないよ?危険な種族。略して危険種だ」
………ぶん殴りたい………!…まぁ危険種になったのはその後のようだから、人を襲うゴースト、って意味ではギリギリ危険種なのか……な?
「まぁ、いいじゃないか。俺っちとマインちゃんの絆は守られた!俺っちはマインちゃんを信じていたしね」
「よく言うわよ…」
………ティータイムの時の雑談。あれはパンプキンがくれた、最大限のヒントだったのだろう。あれがなかったら答えられなかったし。
あの時こいつは『特にキャンディやチョコレートは大好物』、『食べるのが久しぶり』と言っていた。これは人間でないと出てこないセリフだ。あいつなりに気を使ってくれたのだろう。
「さ、これで俺っちとマインちゃんは完全なパートナーだ。もうじき安心院さんが現実世界に戻してくれるだろう」
「やっとね……」
長かった………本当、帰るのが久しぶりに感じるわ。一カ月ぶりくらいに。
「最後になにか質問はあるかい?」
そうね……じゃあせっかくだし……。
「………あなたは彷徨える霊になってから帝具になったのよね?」
「そうだね」
「つまりあなたは始皇帝に討伐されて帝具になったの?」
ゴーストを不明瞭なもの、どうやって捕獲したのかしら……。
「………………」
「………………?」
「ま、結果的にはそうかな?」
「なによ、その言い方」
「ふふ、いずれ分かる日が来るんじゃないかなぁ」
「………?ま、いいわ。もう疲れた。早く帰りたい………」
「お、夢の世界が終わりそうだよ?じゃあまたあとでね。バイビー」
あ、本当だ……目の前が……くら……く………
「ふぅ……これでマインちゃんの方も終わったね。いやー疲れた疲れた。さて、次はっと………あー……エスデスちゃんとタツミくんのデートか………これは原作通りでいいかなぁ…。……んーどうしよっかなぁ………」
お話は有名なハロウィンのジャックオーランタンを題材にしてます。少し変えてますが。ハロウィンのカボチャって最初はカブだったんだってね。