枯れた樹海と殺し屋たち   作:リンゴ丸12

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ボルスさんの奥さんの名前は適当です。


気付いたときには

 

タツミのことは最初はからかいがいのある男の子程度にしか思っていなかった。レオーネやアカメにいいように弄ばれてるし、私自身もそれを楽しんでいた。

いつだったか私がブラートとシェーレを殺し屋失格と言ったことがあった。もちろん馬鹿にしたわけではない。あの頃にはもうすでに私はナイトレイドのみんなを家族のように思っていた。だから多少厳しいようでも殺し屋としてやっていく上で、ナイトレイドの甘さが少し許せなかったのだ。

マインあたりには結構恨まれていたようだけど、それでよかった。恨まれても憎まれてもみんなが無事でいてくれるなら本望だった。

だけどタツミは違った。私の発言をみんなへの愛だと言った。死んでほしくないから厳しいことを言ったんだろ、チェルシーだって甘いじゃないか、と。

正直、タツミは全然殺し屋に向いてないと思っていた。優しすぎるから。でも違った。優しいからこそ仲間を守るためならなんでもできる。そういった覚悟が彼にはあった。そして仲間のことを自分よりも大切にしている。だから私の発言もみんなへの愛情だと気付いてくれた。

 

その頃からだった。タツミを男としてみるようになったのは。体格もかなり良くなってきているし、顔だって幼さは残るものの格好良くなってきた。

それからも私はタツミをからかい続けた。でも意味合いが違ってきていた。気を引きたかったのだ。私をもっと見て欲しかった。もっと話をしたかった。仕事が終わってから褒めて欲しかった。どうタツミ?私すごいでしょ?って。

 

 

気付いたときには私はタツミに惚れていた。一人の男性として、ずっと一緒にいたいと思った。色恋に惑わされる殺し屋は失格というけれど、むしろ絶対生き残ってタツミを振り向かせるという気持ちが強まった。

今回もタツミに褒められたい。だから私は殺す。クロメを、ボルスを。それが善ではないとわかっていても。

 

 

 

 

 

「いた、アカメちゃんだ」

 

アカメちゃんはやっぱりまだボルスと戦っていた。クロメの死体人形も一緒のようだ。2対1で不利のようだがそんなことはない。死体人形の右手は無くなってるし、明らかに疲れているのはボルスの方だ。よし、一気に畳み掛ける!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

強い……流石はクロメちゃんのお姉さん。ウォールさんもいるのに勝てる気がしない……。

 

「葬る!」

 

「ぐっ!」

 

村雨対策も一応したけど……私の帝具は炎の帝具。あんまり服を着れないんだよね。体温が上がりすぎちゃうから。この疲弊しきった体でどこまでもつか……。

 

「このままじゃジリ貧……やるしかないか……」

 

ウォールさんには悪いけど……

 

 

 

「ルビカンテ!奥の手!」

 

「!」

 

奥の手は岩漿錬成(マグマドライブ)だから嘘。警戒されている内に……破壊して爆発させる。火耐性の儀式を受けていない彼女にはひとたまりもないだろう。本当にウォールさんには申し訳ないけど…。

 

 

 

「ボルスさん!」

 

「クロメちゃん!?」

 

どうしてここに……。あ、もしかして……。

 

「うん!他の奴らは倒してきた。あとはナジェンダとその帝具、そしてお姉ちゃんだけ。先にお姉ちゃんを殺そう!」

 

「わかった!」

 

よかった。これで貴重な帝具を破壊せずに済む。

 

「あいつらがやられた……?ふざけたことを言うな!クロッ…………」

 

動揺してる。悪いけど……これもお仕事だから……割り切ってね。

 

「じゃあクロメちゃん、私は右から……クロメちゃん?」

 

 

 

ズプリ、と鈍い音がする。なんの音かと思った。そして首の裏が熱くなる。これは……。

 

「え?」

 

「悪いわね。私はクロメじゃないわ」

 

ナイトレイド……の……しまった……。ウォールさん……は……。

……ダメだ…アカメちゃんに四肢を斬られてる……。

 

死ぬ?こんなところで…………?これが殺しの報い………。

………覚悟は出来ていた。何人も何人も燃やしてきたんだから報いを受けるのは当然だけど…。

 

「はぁ………はぁ………」

 

それでも……ダメだよ……帰らないと………私には…帰る家が………家族が……。

 

「ローグ……リリー……」

 

待ってて……今帰る……か………ら……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまないな。チェルシー」

 

「なんのなんの。私がいなくてもアカメちゃんがすぐ殺してただろうし。ていうか、やっぱりアカメちゃんは気付いてたんだね。間違って殺されたらどうしようかと内心ヒヤヒヤしてたんだけど」

 

「クロメにしては目に殺気がこもっていなかった。今のあいつはもっと危ない目をしている」

 

寂しそうにつぶやくアカメちゃん。……墓穴掘ったかな……。

とりあえずこれで残りはクロメだけ。ボスはラバックを戻せていればだけど……。人形も後2、3体のはず。みんなでかかればいけるはず。

 

「じゃあとりあえずレオーネとタツミのところへ……」

 

「!!」

 

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

 

嘘!こいつ、まだ生きて!

 

「しぶとい……!」

 

「ウオオオォォォォォォォォォォ!!!」

 

その叫び声に思わずすくみあがってしまった。アカメちゃんですらだ。ボルスは今まで顔に似合わず温厚な性格のはずだったと言うのもあり、そのギャップに面を食らった感じだ。まさに魂の叫びといった感じだ。

 

「クロメ……ちゃん……だけで……も……!!」

 

そう言うとボルスはルビカンテを真上に放り投げた。そして懐からスイッチのようなものを。……え?ちょっと……まさか………!

 

「爆破する」

 

 

ズズゥン

 

 

「!!」

 

何!?こんな時に……地震!?マズ……これじゃ逃げられ……。

 

「チェルシー!」

 

 

カチッ

 

 

 

ドゴォオォォォン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今のは、ルビカンテの自爆………となるとボルスさんは………」

 

くっ、まさかブラートとあの金髪女があそこまで強いなんて………。ドーヤとナタラがいて勝てなかった。

特にブラート……はっきり言ってあれは異常だ。…お姉ちゃんと並ぶかもしれない。

 

「でも今の爆音と爆風で逃げられた。ボルスさんに感謝しなきゃ…………っ!」

 

薬がきれてきた……!!早く逃げないと………!

 

「ナタラ……途中までお願い……」

 

早く帰ってお菓子食べなきゃ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん………」

 

生きて……る?

 

「……アカメちゃん?どこ?」

 

……もといた場所から大分吹っ飛ばされたわね……。しかも今私に被さってる布……アカメちゃんの持ってるコートだ。革命軍に渡ったパーフェクターで作られた超防護服……。あの時瞬間で私に被せてくれたんだ。

 

「でもアカメちゃんは………」

 

あの爆発の中ほぼ防具無しみたいなもの…………いや、アカメちゃんだ……そう簡単にくたばらないだろう。

 

「ともかくみんなと合流しないと………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな!無事か!」

 

「スーさんが守ってくれたから…。しかし……何だったの?あの爆発……?」

 

「ルビカンテだろう……自爆だ。と言うことはつまり…」

 

「ボルスは死んだようだな。近くで戦ってたアカメが心配だが……」

 

タツミとレオーネ、チェルシーはクロメの近くにいたからおそらく大丈夫だと思うが………。なんにせよ今回の戦いはここまでだな。

 

 

「みんな!」

 

「タツミ、レオーネ!」

 

崖の上からインクルシオを纏ったタツミがレオーネをお姫様抱っこしながら登場。よかった、無事だったか。

 

「姐さんが足をくじいてるけどその他に目立った外傷はないぜ!」

 

「そうか…大丈夫か?レオーネ」

 

「まぁこんなのすぐに治りますよ。タツミにお姫様抱っこもしてもらえたしね〜」

 

またこいつは……。………あ。

 

「むぅ………」

 

「おやおやぁ〜どうしたのかな?マイン?羨ましいのかなぁ?」

 

「は、はぁ!?意味わかんないんだけど!?お姫様抱っこなんて恥ずかしい真似よくできるわね!タツミも!何デレデレしてんのよ!」

 

「え?いやなんでインクルシオつけてるのにそんなことがわかるんだよ」

 

「あ、いや………その……。…………もう!なんでもないわよ!」

 

「?」

 

「てか!ラバック!洗脳解けたのか!?」

 

「あぁ…心配かけたな」

 

「そっか……よかったよかった。これでみんな揃うな!」

 

本当によかった。これでアカメさえ無事なら……ん?

 

「おい、チェルシーは?」

 

「アカメの方に助っ人に行きましたけど……」

 

「なに……?……無事だろうな………」

 

「まぁ、アカメがいるなら大丈夫でしょ。あいつなら人1人いたところでおぶって逃げられるわ」

 

「だといいんだが………いや、やはり心配だな。ラバック動けるか?」

 

「えぇ、まぁ……」

 

「よし、タツミと一緒にアカメとチェルシーの救助に向かってくれ。いけるか?タツミ?」

 

「オッケーです」

 

「よしじゃあ頼んだぞ!その他のものは直ちに帰還する!」

 

「「「了解」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん」

 

どこだろうここ。森まで吹っ飛ばされるとは思わなかったなぁ。アカメちゃんも心配だし、早く戻らないとなんだけど。

 

「一応、何かに変身しておくかな……」

 

なにがいいかな。動物だと肉食獣に襲われるかもだし……。ん?

 

「あれは…………ッ!……クロメ………!」

 

やっぱり生きてたのね………でも……なんか……疲れてる?人形も出してない……。

 

 

 

「はぁ…………はぁ……………」

 

 

 

……人形出すのに結構体力がいるのかしら……八体を同時に出していたわけだから………それなら!

 

「このチャンスを逃す手はないよね………」

 

アカメちゃんには悪いけど………あいつはここで仕留める……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……?」

 

気がつくと私は真っ白な部屋にいた。机と椅子が規則正しく並べられた部屋だ。規則正しすぎて若干気味が悪い。

 

「えっと……あ……そっか……私死んだんだ……」

 

リリー…ローグ…ゴメンね。お父さん死んじゃった。悲しむよね。ゴメンね。何もしてやれなくて…。

 

「じゃあ……ここは……あの世?天国……には行けないと思うから…地獄?」

 

案外あっさりしてるもんだなぁ。

 

 

「おいおい、ここが地獄なわけないだろう?まぁ教室が地獄って見解には納得するけどさ。………あれ?なんかこれ前にも言った気がするなぁ」

 

 

「…えっと……あなたは……」

 

天使?………あ、死神かな?私の魂をあの世に連れてこうと………?

 

「うーん、まぁ君にはその解釈でいいかな。どうせもう会うこともなさそうだし。ボルス君。残念ながら君はここでリタイアだ」

 

「……うん。まぁ、当然の報いだよね。私は色んな人を燃やしてきたから……」

 

「………まぁ、それは置いといてさ。僕は死神だから君の命をあの世に連れていかなければならない。けどその前に君のやり残した事があるなら叶えてあげようと思ってね」

 

「え?」

 

「ないのかい?やり残した事。君のこれまでの功績を鑑みてのご褒美ってやつだ。なんでもいいぜ?生き返らせてくれ、以外ならね」

 

やり残した事………やり残した事………。

 

「な、なんでもいいの?」

 

「もちろん。安心院さんに不可能はないぜ」

 

「安心……?」

 

「おっと、なんでもないよ。さ、言ってごらん?」

 

「それじゃあ……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇーー!!お人形さん買ってよーーー!!」

 

「もう!あんまりワガママ言うんじゃないの!!いい加減にしないと置いてくわよ!」

 

「うぇーーーん!!!」

 

「……もう…………あ、そうだ。今度、パパに肩叩きをしてあげなさい。それが一週間続いたら買ってあげるわ」

 

「本当!?」

 

「えぇ。パパ、いつもお仕事で大変だから……」

 

「わかった!お父さん早く帰ってこないかなぁ!肩叩き終わったら遊んでもらお!」

 

「今のお仕事が終わったらまとまった休みが取れるって言ってたわ。ふふ、楽しみね!」

 

「うん!」

 

「それまでいい子にしてなさい?」

 

「はーい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまぁ!」

 

「手を洗いなさい!こら!ローグ!」

 

「あ!お人形さんがある!」

 

「え?」

 

「パパ買っといてくれたんだぁ!えへへ!やったぁ!」

 

「え?嘘……あの人いつの間に……全く……甘いんだから……」

 

「えへへ〜!あ、早速……」

 

「その人形が欲しかったの?……もっと可愛いのがいっぱいあったのに?」

 

「これをかぶせて………ほら!」

 

「……あ………もう、ローグったら……」

 

「パパそっくり!」

 

「ふふ、ママのもあるのかしら?」

 

「うん!ローグのもあるよ!」

 

「あら、仲良しね」

 

「えへへ」

 

「帰ってきたらパパにお礼を言うのよ?」

 

「うんうん!早く帰ってこないかなぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんなんでよかったのかい?」

 

「うん、私のこといつまでも覚えて欲しいから……」

 

「ふーん、ま、君が満足ならそれでいいや。じゃ、時間だよ」

 

「うん、ありがとね。死神さん」

 

「なんのなんの。奥さんと子供のアフターケアも万全だから安心して逝ってらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーボルス死亡。イェーガーズ残り6人。

 

 

 

 

 

 

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