いやこれくらいが普通なのかな?
「「はあぁぁぁあ!?」」
叫んだのはラバとマイン。アカメと姐さんは様子を伺ってるようだ。俺もラバたちと叫びたかったけれど、声が出なかった。
「いや、意味わかんねーし!!お前大量殺人のシリアルキラーだろうが!?信用できるわけねーだろ!」
「ラバの言う通りよ!どうせ一般人では飽き足らず、殺し屋のアタシ達まで標的にしたとかそんな理由でしょ!?」
「確かに信用できないな、ラバの結界やアタシの嗅覚にもヒットしなかった。私達を殺しに来たんじゃないなら警戒する必要はない。怪しすぎるよ、お前。」
「…どうやったら信じて貰えるかな。僕はホントに君たちの仲間になりたいだけなんだ。」
「…目的はなんだ。」
「アカメちゃんは僕の話をちゃんと聞いてくれるんだね。君とはいい友達になれそうだよ。ーーだから…」
「?…だから?」
「あぁ、いや、なんでもない。仲間に入りたい理由だっけ?それはね、帝国への復讐だよ。」
帝国への復讐?じゃあこいつもしかして嫌々殺しを?みんなは警戒しているようだけど、俺はこいつが俺たちを殺しに来たとは思えない。丸腰だし、コートの下にも怪しい膨らみは見えない。
それになんだろこいつ…、苦しんでるように見える。
「お前、好きに人を殺しまくってる殺人鬼なんだろ?そんなお前が帝国に苦しめられるなんてことはないと思うけど…。」
「ちょっとタツミ!何、普通に会話してんのよ!」
「そうだけど、話を聞くくらいいいだろ?こいつがやったことは許せないけど、でも改心して革命のために働いてくれるなら、もしかしたらすごい戦力になってくれるかもしれないじゃないか。」
「ありがとう。えーと…タツミくん?」
「でも、殺人鬼でしょ?殺しの素質は十分だろうけど殺しを楽しんでるやつなんか仲間にできないわよ」
マインが愚痴る。まぁ、そうだけど…。
「みんな、僕が理由なき殺人鬼と思ってるようだけど、それがまず勘違いなんだ。全て帝国からの指令だったんだよ。」
「!、お前、軍人だったのか…」
「ますますきな臭くなってきたね。本当はお前、帝国からの刺客じゃねえの?」
「いや、僕は帝国から離反した身でね。もう帝国には戻れない。ここで断られたら死ぬしかないんだ。」
「…武器は持っていないというのは本当か?」
「あぁ、もちろん。」
「タツミ、ラバ、服を脱がせて調べてくれ。ケイ、いいな?」
「それで信じて貰えるならね。」
「少しでも変な動きを見せたら撃ち抜くからね!」
マインが脅迫する。が、あまり怖くない。姐さんがやったほうが効果的だったろうに。
俺とラバはコートを脱がせた後で、ボディチェック。ペタペタ、パンパンと。が、ホントに武器を持っていない。
「信じて貰えたかな?」
「こいつホントに何も持ってねぇ…。アカメちゃん、まだ信用はできないけど、とりあえず交戦の意思はないっぽいよ。」
「…わかった。とりあえず、詳しい話を聞こう。」
「ちょっと、アカメ!?」
「とりあえず、武器を持ってはいないようだしな。それ本当に仲間になってくれるなら、こんなに心強い味方はいないだろう。」
「ありがとう。アカメちゃん。じゃあ詳しい話をしようかな。」
そしてケイは、自分がなぜ帝国暗殺部隊に入り、そして裏切ったのかを話し始めた。なんでも、類稀なる身体能力を買われて帝都暗殺部隊に推挙されたそうだ。両親と妹を人質に取られていたため、拒否権はなかったらしい。
それに、信用されるためだろうか、彼はエスデスが組織するという特殊警察のメンバーとその使用している帝具の情報まで教えてくれた。
「クロメ…帝都に戻ってきていたのか…。」
「セリュー…あいつもメンバーの一人なのね。アタシが撃ち抜いてやるわ!」
アカメの妹、クロメやシェーレの仇、セリューも入っているようだ。
「マスティマ、ルビカンテ、八房、グランシャリオ、ヘカトンケイル、それにパーフェクターか。パーフェクターが向こうにあるのは厄介だな、ルビカンテは有名だけど対策が難しい…」
ラバはメモを取っている。なんだかんだ言って、みんなケイを信じ始めている。
まあ、丸腰で殺し屋のアジトに来るような奴が敵なわけないもんなぁ。
「…これが僕の持ってる情報の全てだよ。信じて貰えたかな?」
「”帝都・血の建国日”はなんだったんだ?」
「あれは、プロの100人の暗殺者が行ったんだ。殺されたのは革命軍に通じている疑いのある奴ら。一人が殺したって事実のほうが恐怖を煽るからね。だから僕が犯人に仕立てられ上げられたんだ。」
「そうか…辛かったな…」
「じゃあ帝具持ちってのもデマなのか?」
「そうだね。あの人数の人間を一人で殺したってことだからそんな噂が立っちゃったのかな?」
ーー僕はもう平和な世界で殺しとは無縁の世界に生きたいんだ。と、呟くケイに嘘をついている様子は見られなかった。
「そうか…なぁ、アカメ。ケイはナイトレイドに入れてもいいんじゃないか?」
「…私はボス代行だから、許可はできない。それを決めるのはボスだから。だが一応信用は出来ると判断した。ボスが帰ってくるまで、アジトにいることは許可する。みんなもいいか?」
「まぁ、いいんじゃない?帝国側の帝具情報も信頼出来るし。」
「まぁ、役に立つからボスが帰ってくるまでは置いといていんじゃない?あくまでボスが帰ってくるまでだからね!ボスがダメって言ったらダメだからね!」
「あぁ、よろしくなケイ!一緒にこの国を変えようぜ!」
「レオーネはどうだ?」
「………」
「レオーネ?」
「ん…あぁ…まぁとりあえずはいいかな…」
「ありがとう、みんな。」
「よし、それじゃあ、アジトの中を案内する。ついてきてくれ。」
アカメが先頭に立ち、アジトへと向かう。その後ろにラバ、俺、レオーネ、マインと続き、一番後ろにケイだ。
あ、そうだ。ケイは帝具を持っていない。急いでボスに連絡して三獣士の帝具を持って帰ってきてもらってケイに合うか確認するのはどうだろう。とレオーネさんに相談しようと振り返った。
「なぁ、姐さん。ケイに三獣士の帝具を…」
そこまで言った俺に信じられない光景が目に入った。
日本刀を持ったケイがマインの頸動脈を狙っていた。
「マイン!!」
スパン、と何かが綺麗に切れる音がする。切れたのは…
マインのツインテールだった。
「ーーーーーーッッ!!」
「あれれ、避けられちゃった。不意をついたつもりだったけど。」
「姐さん!!」
「やっぱり、隙を狙ってたか…てっきりアジトに入ってからだと思ったが、やっと本性を出したな、殺人鬼。」
マインは切られる寸前まで気付いていなかった。姐さんが人間離れした反射神経で、マインを押し倒したのだ。
「やっぱり、レオーネさんは騙せてなかったか…。殺気は出してなかったと思うんだけど。」
「殺気は出てなかったが、アタシの野生の勘があんたは敵だって言ってたんだ。」
「非論理的だなぁ。いや、その帝具の性能かな?」
「何やってんだよ!お前!仲間に入るんじやなかったのかよ!!」
「そんな訳ないだろう?あぁ言った方が殺しやすいと思っただけだよ。」
「マイン。大丈夫か?」
「えぇ…ありがとう…。」
マインはまだ顔が真っ青だ。無理もない。姐さんが助けてなければ確実に死んでいた。
「なんで、武器を持ってんだ!?俺とタツミが確認した時には何もなかったのに……!」
「……帝具か…」
「ご名答。流石アカメちゃん」
「いや、だから何が武器なんだ?あんな刀をしまう場所なんて……」
「そういう帝具ってことだろ。見えない刀、というか姿を消せる刀とでもいうのかな。」
「俺のインクルシオの透明化みたいなものか?」
「いや、インクルシオは透明になっても実体はある。あいつの帝具は帝具を消して好きな時に実体化出来る、ってとこか?違うか?」
「…どうだろうね。」
「お前、もう誰も殺さなくていい平和な世界に生きたいって言ってたじゃねえか。それも嘘なのかよ…。」
俺は悔しかった。こいつはやらされて殺しをやってるだけで心根はとても優しいやつなんだって。一緒に帝国を変えられるって……!信じてたのに!
「仲間になれるって信じてたのに……」
「タツミくん、会って間もない僕にそこまで感情移入してくれるなんて君はとってもいい人だね。君とは本当にいい友達になれそうだよ。」
ーーだから殺す。
その言葉とともにケイが俺との間合いを一瞬で詰めてくる。しまった!油断した!
ギィン!という音がしたと思ったら、アカメの村雨とケイの日本刀が交わっていた。
「アカメ!」
「油断するなタツミ。もうこいつは敵だ。全員でかかるぞ。」
見るとみんな戦闘準備が整っている。マインもだ。そうだ、俺は殺し屋だ。割り切らなきゃ。もう誰も殺させやしない。
「インクルシオォォォォ!!」
俺もインクルシオを身につけて戦闘準備万端。皆でケイを取り囲む。
「……フフ、やっと殺せる。やっぱりこうでなくっちゃあ、ね!」
本日初の笑み(さっきからにこりともしなかった)を浮かべたケイが最初に狙ったのはマイン。さっき殺せそうだったことをみて甘く見たのかもしれない。
「さっきは油断したけど…もう騙されないわ。パンプキンをなめんじゃないわよ!」
マインがパンプキンを連射。が、ケイは全て避けて間合いを詰めてくる。
「くっ!(5対1の分だけ威力も速度もイマイチね…)」
「それ帝具?にしては威力弱すぎでしょ。だから君は殺されるんだ。」
ケイがマインに斬りかかる。が、そこにまたもや姐さんが介入。日本刀を真剣白刃取り(スゲェ、初めて見た)
「またあなたですか。刀、離してくださいよ。」
「や、だ、ね!」
バキッ!と姐さんが刀をへし折った(凄ッ!)無残にもケイの手には折られた刀の柄だけが残っている。勝機!背中ががら空きだ!アカメと俺が一斉に襲いかかる。
「葬る!」
「ウオォォ!」
よし、俺たちの勝ちだ!多分アカメもそう思っていた。だがアカメの村雨と俺の剣がケイの背を斬りかかる直前、
「甘いよ」
突然、ケイの背から10本以上の日本刀が飛び出してきた。
「「ーーッ!」」
突然の出来事に俺とアカメは対応しきれない。俺はインクルシオが防いでくれたがアカメは肩から血を流している。
「アカメ!大丈夫か!」
「…あぁ、問題ない。しかし…」
言いたいことはわかる。あいつ、刀を何本も消せるのか?
「俺もいることを忘れないでくれ?」
今度はラバが糸で作った槍をぶん投げる。が、ヒョイっと避けられてしまう。(いつの間にか背中の刀は消えている。)
「喰らえ!」
そのあと、死角からの姐さんの頭を狙った横蹴り。が、これまた避けられて距離を取られてしまう。しまった、取り囲みの体型が崩れてしまった。
「ふぅ、やっぱり殺しのプロ集団なだけあって一筋縄ではいかないか。」
「くっ…強いな…」
「アカメちゃん、怪我は大丈夫?」
「あぁ…それよりあいつの帝具の力がわかったぞ。」
「本当かよ、アカメ!」
「え、分かっちゃったの?へぇ聞かせてほしいな君の推理を。」
「帝具を武器だと考えるのがまずかったんだ。ザンクが持っていたスペクテッドのような補助型の帝具もあるのにな。あいつが手品のように刀を出すから、その刀そのものが帝具だと思い込んだ。」
「えーと、つまり?」
「奴の帝具の能力、それはズバリ『収納』だ」
「収納?あぁ!そうか!武器をあらかじめその帝具にしまっておいて出し入れしているってことか!」
「そうだ、これなら奴と戦った奴らの武器情報に食い違いがでても納得がいく。どうだ?間違っているか?」
「…流石だね。ご名答、僕の帝具は『無限殺法トエテシュレーガ』暗器の帝具だよ。この通り体のあちこちから武器を取り出せる。」
そう言うとケイの服の隙間から刀が数十本ごっそり出てきた。そしてすぐにしまわれる。
「もちろん刀以外の武器も入っている。まぁ見せるのはまたの機会かな。流石にプロの暗殺集団を5人まとめて相手にするのは流石に骨だ。出直させてもらうよ。」
「またの機会?お前生きて帰れると思っているのか?」
「もちろん、秘策もあるしね。最後に何か質問はあるかい?同じ殺しを生業とする者なんだ。なんでも聞いてくれ。」
「…私たちに教えた情報は全てフェイクだったんだな。」
「いや?殺しを嫌々やっているってこと以外は大体本当のことだよ?エスデス将軍が組織する特殊警察の情報もね。まぁ、信じられないなら、信じなくてもいいけどさ。」
「…お前はなぜ人を殺す。やはり快楽のためなのか。」
「はぁ…僕と殺し合った人はみんな同じことを言う。僕をその辺の理由なき殺人鬼と一緒にしないでくれ。僕は理由ありきの殺人鬼だ。」
君たちは帝都から殺害命令があったーーだから殺す。
人を殺すのが大好きだーーだから殺す。
帝国が平和になってほしいーーだから殺す。
君たちに与えた情報は本物だーーだから殺す。
タツミくんとはいい友達になれそうだーーだから殺す。
お昼ご飯が美味しかったーーだから殺す。
今日はいい天気だーーだから殺す。
昨日はいい夢を見たーーだから殺す。
特に何もないーーだから殺す。
「この世の森羅万象全ての事象が僕には殺しに繋がるんだよ。ただそれだけだ。」
「……狂ってる…」
マインが呟く。だが気持ちはみんな同じだろう。
「そうだね、僕は異常(アブノーマル)だからね。」
「それならばここで葬る。」
アカメが村雨を構える。俺たちもそれぞれの武器を構える。
「悪いけどもう帰るよ。アジトの場所は帝国側の人間に伝えるけど、タツミくんやレオーネさん、ラバックくんの顔は秘密にしといてあげるから安心して。」
「信じるとでも?」
「嫌われたなぁ、まぁいいや。今度は少人数で来てよ。その時にまた殺し合おう。」
そこまで言うとケイは両手にかなり大きな銃を出現させた。なんじゃありゃ!
「バイバイ」
そういうとケイは引き金を引き、弾が飛び出す。あれはまさか…爆弾か!?
「みんな、伏せろ!!」
凄まじい爆音と爆風に辺りは包まれる。凄まじい威力だ。帝都にはあんな武器もあるのか…。
「くそっ、取り逃がしたか…」
「それにここがばれちゃったわよ。急いでボスを呼び戻してアジトを移しましょう。」
「そうだな。ラバ、頼めるか?」
「りょーかい。」
「よし、私達は急いで荷造りだ。」
アカメの指示でみんなが動き始める。こうしてナイトレイドと殺人鬼ケイとの邂逅に幕が閉じられたのだった。
サブタイトルにもなってる『森羅万象全ての事象が』の部分、本当は原作通り『全て道がローマに通ずるように』にしたかった…。でもアカメの世界、ローマないしね…