枯れた樹海と殺し屋たち   作:リンゴ丸12

52 / 54
『白さ』

目を背け、目を逸らし続けてきたのは認める。セリューあたりは族を見つけると、容赦なく殺してきた。俺は捕まえるだけであとは国の考えだと考えていた。その族はその後殺されると分かっていながら。

 

完成された強さ。隊長から言われた時は照れもしたがそれは肉体面の話だ。精神面ではイェーガーズのなかで、もっと言えば帝国の中でも最低レベルだろう。

 

「死」とはなんだろうか?何を持って死となる得るのか。子供の頃、思春期の頃なら誰でも一度は考えてみたことがあるのではないだろうか?

永遠に動かなくなったら「死」?じゃあクロメの八房の人形は生きてる事になるのだろうか?

喋らなくなったら「死」?植物人間は生きていないのか?

思春期の頃は他に楽しい事や、やる事があってすぐに忘れられたけど、ここではそうもいかない。ましてや今回はただの「死」ではない。「殺し」だ。それも仲間の。

グランシャリオは仲間を殺せるか、と聞いてきた。これはいざとなったら仲間を殺してまで貫ける信念あるかどうか、ということなのだろう。その信念をここで固めろということか。

 

 

「………………俺は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……悩んでますね。当然ですが。私を使役するものでこの問いに正解を見つけたものはいません。あまり期待はしないでおきましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭がぐちゃぐちゃしてきた。初心に帰ろう。そもそもなぜ人を殺すことは悪と考えてるんだ?俺は。人殺しが悪ならセリューは完全に悪じゃないか。確かにあいつはやりすぎてしまう節がある。だが俺はあいつが悪だなんてこれっぽっちも思ってない。

なぜならあいつには覚悟がある。「悪を根絶やしにする」という覚悟が。あいつは自分が死ぬ代わりに悪が滅せられるなら喜んで命を投げ出すのだろう。

俺にそんな覚悟があるのか?俺は国を守りたい……のか? 腐敗しきったこの国を?真に人民を守りたいならそれこそ革命軍に入るべきなのでは?

わからない…。俺は…何のために闘っているんだ?

 

 

 

 

 

 

 

……そう…俺は海軍にいたときの恩人に恩返しをしたくてイェーガーズに入ったんだ。そうだ。恩返しのために俺は……。

 

 

 

「恩返しのために人殺し…?」

 

 

 

 

 

馬鹿か俺は。恩返しのために仲間を殺す?それは恩返しとは言わねぇ。…はずだ。だっていくら恩人のためとはいえ、仲間を犠牲にするほどじゃねえだろ?

そうだ……俺は仲間を死なせたくない…そのために闘ってるんだ。国のことは二の次だ。Drやボルスさんを失ったとき気が狂いそうだった。もうあんな思いはしたくねえ。だってそうだろ?

 

 

 

 

 

―――だって俺はみんなが大好きだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グランシャリオ」

 

「答え…でましたか?」

 

「仲間を殺す覚悟、その精神力がなけりゃパワーアップは出来ない。んだろ?」

 

「……」

 

「だったら俺は力なんていらない。もうお前を装備出来なくても構わない」

 

「……よろしいのですか?」

 

「ああ、帝具なしでも俺の仲間は守って見せる。この身が滅びようと」

 

「そこまでするほどの方たちですか」

 

「あぁ。エスデス隊長はドSで怖い人だけどな、部下の俺たちを一番に考えてくれる心は温かい人だ。セリューはやりすぎちまうところはあるけど、それは正義、つまり優しさの裏返しなんだよ。あとあいつ子供が好きでな?あいつが母親になったらその子供はこの国を支える大将軍になれるぜ。ランは物知りで俺にいろんなことを教えてくれる。あいつ教師に向いてるとおもうんだよ。平和な国になったらそれもありだよな。コイは………あいつはホントに馬鹿でよ。俺がいないとホントダメなやつなんだ。手のかかる妹みたいだ。やれやれって感じだろ?そんな可愛い馬鹿を殺すわけにはいかないよな」

 

話しているうちにわかった。俺はあいつらが大好きだ。この国の行く末より仲間の命が第一だ。だから俺は闘ってるんだ。

 

「クロメ……は……クロメは…まあ…危なっかしいんだよ。見てやらないと壊れちまいそうで…でも迂闊に触れるとそれもそれで壊れちまいそうで……よくわかんないけど…あいつはみんな以上に守ってやりてえんだ」

 

 

「……だから……力はいらないと……」

 

「あぁ……悪いな。仲間を殺す覚悟で得る力なら…俺はいらない」

 

「………」

 

あぁ…申し訳ねぇな…。イェーガーズのみんなにもグランシャリオにも。てか俺無事で戻れるのかな。修行は失敗したわけだし。

 

「ウェイブ様」

 

「………………」

 

 

 

 

 

「合格です」

 

 

 

「………………は?」

 

「合格と言ったのです。これからは私の隠された力をフルに使役可能です」

 

「………………いやいや!!話聞いてたか!?俺は仲間を殺す覚悟は……」

 

「仲間を殺す覚悟を決めたら合格なんて誰が言いました?ここで試したのは『変わらない覚悟』です」

 

「変わらない覚悟…?」

 

「力欲しさに自分の志を曲げる者に私は力を貸す気にはならないのですよ。私を使役するには自分の気持ちに正直で、さらにそれを貫き通す覚悟がある人間でなくては」

 

「………………」

 

「あなた様は確かに軍人として甘過ぎるところがあります。ただ、それを貫き通せるならばそれはあなた様の正義なのですよ」

 

俺の………正義……………。

 

「あなたの『白さ』はかけがえのないものです。ただ白は同時に染まりやすくもあります。他人に簡単に染められる白には力を貸せません。あなたのように何にも染まらない白でなくては」

 

「白さ………」

 

「さぁ戻りましょう、ウェイブ様。あなたの力で正義を貫くのです」

 

「お…おぉ!よろしくな!グランシャリオ!!」

 

よかった!これで俺はみんなを守れる……!

 

「ただ、ウェイブ様。あなたは気づかないうちに嘘をついますよ?」

 

「嘘?なんだよ」

 

「それはーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アカメちゃんの容体がだんだん回復してきた頃、私はタツミと久しぶりに暗殺任務に繰り出されることとなった。なんてことはない、いつも通り民を苦しめている領主の暗殺だ。いつも通りやって、帰りにタツミに告白してみせる。

 

そんな意気込みだったのだが。

 

 

 

 

 

「じゃあいつも通り。私が忍び込んで領主を殺すわね。タツミは警備兵達を頼むわ」

 

「ガイアファンデーションがなくても大丈夫か?」

 

「えぇ、私だって基礎戦闘力はあるし、今回は人数もそんなにいないから。いざとなったらあなたに助けを求めるわ」

 

「…気をつけてな」

 

「えぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「何事だ!!」

 

「それが警備兵達が鎧の男に次々やられていって……!」

 

「ええい!使えぬ奴らよ!お前たち!私だけでも逃すのだぞ!!」

 

いた。部屋にはターゲット含めて3人。これなら……。

 

 

パリン!

 

 

「!?何事だ!!」

 

「急に灯りが!!」

 

とった!!

 

 

 

《いや!!死にたくない!!誰かぁ!!助けて!!》

 

 

 

 

「ーーーーッ」

 

手が………震え………。

 

「!!曲者だ!!」

 

やば………。

 

「チェルシー!!」

 

 

 

ドカッ!バキッ!

 

 

 

 

「大丈夫か!?チェルシー!?」

 

「…………………」

 

「お前……震えてるじゃねぇか!!どうしたんだ!!」

 

「ぅ………」

 

死ぬのが恐かった……?いや……こっちが死ぬような状況じゃなかった。つまり…………。

 

「恐い………」

 

「え?」

 

「人を殺すのが………恐い…………」

 

 

 

 

 

 

原因は簡単だった。あの時、クロメの死体人形に殺されかけた時、死にとてつもなく恐怖した。その時から私は命の尊さを植え付けていた、それだけだ。

人を殺すとはどういうことか。死ぬとはどういうことか。殺し屋になる際、捨てたはずのそんなモラルが常人よりもずっと深く、重く、私の心に根付いたのだ。

つまるところ、私は。

 

 

ーーー殺し屋として再起不能となってしまった。

 

 

 

その日からだった。悪夢を見はじめるようになったのは。内容はまちまちだが、どれも命が関わる夢だった。自分が殺される夢。私が殺した相手が恨みを囁いてくる夢。殺される苦しみを永遠に味わう夢。どれも酷いものだった。

 

「あぁぁあぁぁあぁぁあぁ!!!」

 

「チェルシー!!」

 

「はぁ………はぁ………」

 

毎晩、ぐっしょりと汗をかき、飛び起きる。そんな日が続いている。

 

「チェルシー………大丈夫か?」

 

「……大丈夫………はぁ……大丈夫……だから。ありがと、タツミ。はぁ……。ちょっと風に当たってくる………」

 

 

 

 

正直なところ大丈夫じゃなかった。毎晩毎晩あの調子で不眠症気味だし、何よりナイトレイドとして活動ができない。…………私やっぱり…………。

 

 

 

「う……………ぐすっ………やっぱり私、あの時死ぬべきだったんだ………そしたらラバックだって……生き残れたかもしれないし。………ごめんね、ラバ。私なんかが生き残って………」

 

アジトの近くの小さな丘。ラバックの墓の前で私は最近、毎晩のように泣いている。

 

「ぅ…………………あぅ…………」

 

 

「ここにいたのか」

 

 

 

「タツミ…」

 

しまった。泣いてるとこ見られた………。

 

「ごめんね。みっともないよね。えへへ………」

 

「………………」

 

「………私、多分ナイトレイドに復帰は難しいと思う。だから革命軍の方に行って雑用係になるかも。えへへ……お似合いだよね。何もできないし」

 

何言ってんだろ、私。こんなことタツミに言ってどうする気なのよ。困らせるだけじゃない。

 

「…………結局のところ私が一番殺し屋に向いてなかったってことだね。あんだけシェーレやブラートのこと殺し屋失格とか言っといたくせにね。馬鹿みたいだよね」

 

「…………」

 

「…………人の死に対して何も考えてなかったんだ、私。殺すことで幸せになる人が生まれると思ってた。でもね、タツミ知ってた?どんな悪人でも一つの命なんだよ?」

 

本当何言ってんだろ。支離滅裂だし。タツミはこれからもナイトレイドとしてたくさんの命を奪うことになるっていうのに。その弊害となるようなことをペラペラと……。でも………止まらなかった。

 

「悪人が死刑になるのも、善人が強盗に殺されるのも、言っちゃえば同じなのよ。一つの命が終わるんだから。私はそれに気付いちゃった。もうおしまいね。私は二度と人を殺せない」

 

「…………」

 

「だから私はこのまま………革命が終わったら………命を………」

 

ホントにそれしかないと思ってる。この国を変えるまで死にはしないけど、それが終わったら人を殺した私は死ぬしかない、と。て言うかわたしが耐えられない。人の命をのうのうと奪っといて、革命が成功したら幸せに生きるなんて。

 

「人は殺すと死んじゃう。なんでこんなことに気がつかなかったんだろう」

 

 

「チェルシー………」

 

 

今の今まで黙って聞いてくれていたタツミが口を開いた。あぁどうしよう、これでタツミにも殺しに迷いが出てしまったら。

 

などという考えは一瞬にして吹き飛んだ。吹き飛んだと言うか頭が真っ白になった。

 

 

 

 

タツミが私を抱きしめたから。

 

 

 

 

「え…………タツ…………」

 

タツミの匂いが鼻腔をくすぐる。たまらず顔が真っ赤になる。

 

「辛かったな。お前のその気持ち、俺もよく分かってる。俺だって悩んでる。お前は殺されかけてそれが顕著に出ちゃったんだな」

 

「………………」

 

「人殺しは悪だ。そんなことはわかってる。俺たちは殺し屋だ。汚れ仕事だ。チェルシーが正常なんだ。お前はこれから『白く』生きていけばいい。誰もそれを咎めない。けどな俺はお前に革命軍のアジトには戻って欲しくないんだ。俺はお前にナイトレイドに残ってほしい」

 

「なんで……?」

 

「無理にとは言わない。危険も伴うしな。ただ俺は俺たちはお前にいて欲しいんだ。アジトにいてできることをしてくれればいい。怪我したメンバーの治療とか、スーさんの家事の手伝いとか……さ」

 

「な、なんで……そんなのいてもいなくても………」

 

「悲しいこと言うなよ。……俺さ。お前がクロメに殺されそうになってる時、人生で一番恐かったんだ」

 

「え?」

 

「お前が死ぬと思ったら足が震えた。吐きそうになった。もちろん兄貴やシェーレ、ラバの時も悲しみで気が狂いそうだったけど、それとは一線を画してた」

 

「…………………へ?」

 

タツミが私をさらにきつく抱きしめる。けど全然苦しくない。胸以外は。

 

「最初はお前が目の前で殺されそうになってたからだと思った。でも違った。そういうんじゃない。それだったら兄貴の時も同じはずだし、何より、そのあとお前から離れたくなくなったんだ」

 

「………………え?え?」

 

 

「革命が終わったら死ぬ?ふざけんな。そんなの俺が許さない。革命が終わってもずっと一緒にいて欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーチェルシー。愛してる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………ぅ…………あ…………え?」

 

タツミが………私を………え?え?え?

 

「俺の恋人になってくれ。今後辛いことがあっても俺が支えてやる。だから………これからも一緒にこの国を変えていこう」

 

「ちょっ!……え?………本気………?」

 

「当たり前だ。今のお前に冗談なんか言わない」

 

………嘘…タツミが……私に…………?

 

「…………………嫌か?」

 

「滅相もございません!!」

 

なぜか敬語に……。頭が働かない………。

 

「で、返事は……」

 

「……………いいの?私なんかで……。正直、私今何の役にもたたないよ?さっき雑用とかサポートにまわればいいみたいなこと言ってたけど。それだってスーさんがいれば……」

 

「まだわかんないのかよ。俺はお前に側にいて欲しいんだよ。任務から帰ってきたときにお前がいるだけで満足なんだ。俺たちがただの殺し屋集団にならないように、お前の『白さ』で浄化してくれよ」

 

 

 

「う………ぁ…………」

 

顔が熱すぎて燃えてしまいそう………。なにこれ?夢?久しぶりのいい夢?

 

「嫌か?」

 

「ううん………!嬉しい………私も………タツミが……好き…大好き………ずっと前から大好きだった!!」

 

泣きながら私はなんとかその言葉を口にする。

 

「……………チェルシー」

 

「…………………タツ………ん……………」

 

初めてのキスは二人とも緊張して唇が震えてたためロマンチックとは言えなかったけど、それでもとても幸せな気持ちになった。

この感触は夢じゃない……本当に……本当に私は,。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう大丈夫か?」

 

「うん……ありがとう。運んでもらっちゃって」

 

キスの後腰が抜けて、座り込んでしまった。恥ずかしい……。

 

「じゃ……お、おやすみ………」

 

「あ、タツミ……」

 

「ん?」

 

「………あの………一人じゃ寝付けないから……その…………寝付くまで……そこにいてくれない?」

 

「お、おぉ……い、いいぞ」

 

「…ありがとう」

 

 

 

その日から私は悪夢を見なくなった。その代わりに幸せな夢を見た。ナイトレイドのみんなと革命が成功してみんなで旅に出る幸せな夢を。

 

 

 

 

 




ヒロインはチェルシーになりました。ゴメンねマイン。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。