「あ、お帰んなさい。ウェイブさん」
グランシャリオとの対話を終え、意識が現実に戻って最初に目に入ったのがイートちゃんの馬鹿食いしている姿だった。
20人分はありそうな量で、しかもラーメンの隣にショートケーキが置いてあるかと思ったらその横にスイカが置いてある。食べ合わせが悪すぎて、見てるこっちが気持ち悪くなる…。
「あ…あぁただいま」
「成功したみたいですねぇ。ま、ウェイブさんならやってくれるって信じてましたよー」
「そりゃどうも…。ムカエは?」
「とっくにクリアしてますよ。ウェイブさん3日かかってますからね?」
「嘘だろ!?」
そんなに長い間いたとは思えないのだが……。子供の頃読んだ昔話でそんなのあったな。亀に乗ったり、歳をとる箱を貰ったりするあれだ。昔から海が好きでよく読んでいた。
「今、ラフラフレシアの新しい力試しに賊を倒してますよ」
「へぇ……」
「ウェイブさんもどうですか?郊外から離れれば高確率で出くわしますよ?」
「じゃあ……そうするかな。いいか?グランシャリオ?」
《勿論です。ご主人様の命令とあらば何処へでも》
「じゃ、行くか!……グランシャリオォォォォォ!!!」
途端に何処からともなく鎧が現れ、武装される。見た目はあんまり変わってないな。青さがより黒くなったくらいか。
《フライトプロトコルを起動。パルジウムによるエネルギー供給、オールグリーン》
「え?え?」
《ウェイブ様、最初のうちは私がオートで操作しますのでどのような能力があるのかを把握してください》
「…?」
《テイクオフ》
「おぉ!?浮いた」
《いきますよ》
途端、とてつもないスピードで外へ飛び出した。弾丸のようなスピードで面を食らってしまった。
「うぉぉぉ!?速ぇぇぇ!!」
《エネミーサーチ起動。……………南南東に軍の使用許可の下りていない重火器の反応を探知。熱感知により、成人男性3名を確認。急行します》
「………………」
便利過ぎんだろ………。俺何もしてないんだけど……。このままで大丈夫…なんだよな?
「よぉ〜姉ちゃん。ダメじゃな〜い。こんなところ一人で来ちゃあ…」
「これから何されても知らないよぉ?」
もう見るからに悪人オーラバリバリの人達だった。この人達なら別にいいよね。
「ラフラフレシア奥の手」
「んー?どーした、へたり込んで。……土下座かぁ。ダメダメ〜こんなところに一人で来るのが悪………」
「タイプ『マンドラゴラ』」
「な、何だぁ!こりゃあ!!こいつらどっから……!!」
周りから植物の兵隊が現れる。うん、私のイメージ通り。
「殺して」
「ひ…………」
……うん、こんなものかな。マンドラゴラ6体で2人殺すのに10秒くらい。上々でしょ。
《容赦ないな。いいのか?》
「なにが?」
《どっちかって言ったら同じ穴の狢じゃないの?この人達》
「失礼なこと言わないでよ。私達は悪じゃないわ。
《…………そうね》
「そうよ…………私は悪くない」
《…………にしてもよくもまぁここまで操れるようになったよな》
「地面を腐らせ腐葉土を作り強制的に植物の成長を促進させる。まさかラフラフレシアの奥の手が植物を操る力なんてね」
これでもう誰も死なせない。見ててねカルマちゃん。あいつらに復讐してみせるから。
《200メートル先、対象を確認》
「お、おぅ……うぇ……」
酔った……船では全然酔わないのに………。不覚。
「なんだ?ありゃ」
「鳥か?」
「いや……人!?」
ガキン!!
《あなた方、その武器はどこで?》
「あ?どこでもいいだろ?」
あー、よく見ると血痕がひどいな。手入れをしてない証拠だ。ありゃ完全に合法じゃねえな。
《………合法ではないのですね。ウェイブ様、山賊のようです。殺害は?》
「それを聞くか?」
《……愚問でしたね》
「ごちゃごちゃうるせえよ!!テメェ、イェーガーズだろ?なら遠慮はいらねぇ、やっちまえ!!」
山賊が襲いかかってきた途端に肩から小型の銃弾のようなものが発射される。おいおい!殺してんじゃねえがか!!
「グランシャリオ!!お前!!」
《麻酔弾です》
「あ……そう……」
麻酔弾ってDr.が前使ってたな。………本当に未来の技術なんだな。
《運びます。軍の詰所でいいでしょうか?》
「あぁ。よろしく頼む」
いや……マジで俺これいらないんじゃ………。
「あぁ!?テメェ何もんだ!!ここがどこだかわかってんのか!?革命軍の暗殺部隊、ナイトレイドの本拠地だぞ」
「あの人達の本拠地はもっと綺麗だよ。しかもそんなに偉そうじゃない」
「日本刀一本で何ができる!!やっちまえ!!」
「君たちには恨みはないし、ナイアーラトテップも休業中だ。君達がナイトレイドを名乗って近隣の村々を潰してるのになんの憤りも感じない。君たちを襲う理由は何にもない」
ーーだから殺す。
………疲れた。早く帰って寝よう。
「……………む……………」
マズイな。最近殺人衝動の波の感覚が短くなってきた。こいつらでストレスを発散したばかりなのに。このままじゃムカエちゃんやクロメちゃんを殺しかねない。
あぁ……もう…………殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい。
《コロセヨ》
「!?」
なんだ!?どこから声が……!
「誰だ!?」
……………気配はない。幻聴か?ついに俺もそこまできたのか?
「ん、むぅ………」
よく寝た。久しぶりに。タツミのおかげね。さ。今日からは元気にならないとね。……………ん?
「くー」
「なっは!!」
寝ぼけていたせいかよく見えなかったが私の寝室にタツミがいた。いや、いてくれるだけならわかる。だって私が寝付くまでそばにいてほしいと頼んだのだから。一晩中いてくれたなんて逆に愛を感じるほどだ。
しかしこの場合タツミのいた場所に問題があるのだ。普通は側の机にいるものだろう。椅子もあるのだから。百歩譲って私のベットに顔を突っ伏して、というのもわかる。昨日目を閉じてすぐタツミが私の手を握ってくれたし。恥ずかしさと嬉しさで顔が真っ赤になったのを覚えている。だからこれもまぁいい。しかしタツミがいたのは。
「な……なんでベットの中に……」
そうタツミは私のベットの中にいたのだ。つまり私と添い寝している形になる。いや赤ちゃんの子守をするのでもあるまいし、添い寝というか……。
「これじゃあ……まるで………」
「むふふ」
「タツミ!?」
「いい演出でしょ?チェルシーちゃん」
「あ、あなた!インクルシオ!?」
寝ているタツミの意識を奪ったの!?そうか!ベットの中にタツミが入ってるのもこいつのせいか!!
「いやービビったわー!タツミ君イケメンだったねー!チェルシーちゃんも完全に乙女で。『寝付くまで……側にいて……』だなんてー!」
「にゃあーーー!!!!」
そうだった!インクルシオは今自我があるんだ!え、じゃ、じゃあ昨日のキスも………。
「でもキスは少し下手ね。チェルシーちゃんタツミ君より年上なんだからさー。もっと肩の力抜きなよ」
「〜〜〜〜〜〜!!!!!わ、忘れて!!お願いだから!!」
てゆーかタツミもインクルシオは部屋に置いときなさいよ!!
「む!?」
「え?」
「……………チェルシー、なぁいいだろ?もう一回」
「え、何言って……?」
「ほら、力を抜いて……」
「ちょ………あん…変なとこ……触……ぅん…!」
急に脇腹を……なに、急に?
バン!!!
「お、お前たち…………」
「レオーネ!?な、なんでライオネルを装備して………はっ!」
最近レオーネはたまに朝練をしてる。ライオネルを装備しているのはそのためだろう。ライオネルは野生の力を人体に取り入れる帝具。聴覚もよくなっていることだろう。つまり……。
「………チェルシーが元気になってよかった。………けど…………時間帯は選べよ?」
パタン
「……………」
「……………」
「ZZZZZZ」
「い、インクルシオ!こら!出てきなさい!てかタツミもいつまで寝てんのよ!レオーネ違うの!誤解よ!!」
「そうか………二人は恋仲になったのか。なんだよー早く言えよー」
一時間説明してやっとわかってもらえた(いや長すぎでしょ)。その際にもうみんなにはバレてたけど。
「俺には恋愛感情がないので分からんが……まぁおめでとう。仕事に支障が出ないようにな」
「そうだな。特にチェルシーはスサノオに色々教えてもらえ。これからは雑務がお前の大事な仕事なわけだからな」
「……タツミ。ご飯の時にチェルシーの分だけ大盛りにするのはダメだからな」
「……………」
今回の最大の山場。マイン。えっと………。
「……………はぁ。全くバカとバカがくっついたわね。バカップルかしら」
「な、なんだと!お前は祝福してくれないのかよ!」
タツミ!あなたって人は!!
「……………ま、チェルシーが楽になったなら良かったわ」
「……………マイン」
「タツミ!!チェルシーをまた傷付けたら許さないからね!!」
「……………あぁ、俺が一生守り抜くさ」
…………いや、普通に照れる……。
………良かった。マインも祝福してくれてる。
「じゃ、私は修行の準備をしてくるわ。今日は一人でやりたいからアカメはレオーネと組んでちょうだい」
「あぁ、わかった。レオーネいいか?」
「いいよ〜。チェルシー。スーさんに料理教えてもらえよ〜。タツミはお前の作ったご飯を食べたいんだからさ!」
「……な……!!姐さん!!」
ふふ、良かった。みんな久しぶりに笑いあってる。こんな日々が続けば本当に幸せ。
私は今、幸せだ。
……………そう。喜ばしいことなんだから。私の初恋の人と、私の親友が結ばれたんだから。大好きな
………私はとっても……幸せよ。