超エッジランナー!/cyberpunk princess kaguya! 作:徳明
初めて投稿したのですが、お気に入り17件もいただいたので、続きを投下
この小説はプロット段階で全13ACT+おまけでやっていくのですが、
ストックなしで描写やセリフ回しを思いつくままチャッピーと相談しながら書いているので、投降ペースは乱れがちです。
9/18の復刻上映までには終わらせる腹積もりですが、実際どうなるかはわかりません。
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◆2030/7/5
ロサンゼルス空港から羽田まで14時間、エコノミークラス症候群と戦いながらも、預け入れした手荷物をベルトコンベアから引っ張る。
到着ロビーでホスト先の人物を探していると、向こうから声がかかってきた。
「よう来たなぁデイビッド、実際にお会いするのは初めましてやな……改めまして、ホストの岡田和香子いいます、短い間だけどよろしゅうな」
大きなラウンド型の老眼鏡に白髪を後ろで束ねた、小柄な老婦人。
だが背筋だけは驚くほど真っ直ぐ伸びていた。
だが、頭のどこかにある「存在しない記憶」は、目の前の老婦人をジャパンタウンの大物フィクサーだと告げていた。
「デイビットです……よろしくお願いします。」
「知ってはいたんやけど日本語上手やねぇ……積もる話もあるさかい、タクシーでゆっくり話そか」
タクシーに乗って羽田第三ターミナルを離れ、首都高湾岸線に入る。
立川までの道のりの間、岡田さんからホスト先としての宿泊ルールを伺う。
「何ぞ、うちに聞きたいことでもおますのん?」
「……昔どこかであったことないですか?」
「デイビット……不思議なこと言わはりますなぁ。仕事でアメリカへ行ったことはおますけど、カリフォルニア州には一度も行ったことあらしまへん。どなたかとお間違えやおへんやろか?」
「そうかな……そうかも」
「ほんまにおもろい子、何年も留学生をお迎えしてきましたけど、そないな質問されたんは初めてどす」
そう言って岡田さんは笑った。
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◆2030/7/6
もうすぐ、日時が変わろうとしている。
スマホに登録しているモロベイの時刻は午前7時になろうとしていた。
一応昨日メールしたとはいえ、あわただしい準備は終わったし、母さんに電話をかける、2コール目で電話がつながった。
「おはようデイビッド」
「あぁ、おはよう母さん、ただこっちはもう日付が変わりそうだよ」
「海一つまだぐだけで、結構時差があるのね……お母さんが連絡するときも注意しておくわ」
「それにホストファミリーの家、すごい高級マンションでさ!滅茶苦茶景色がいいんだ」
「あらそうなの!私も見てみたいから、写真撮ってよ」
「今度送っとくよ」
他にも母さんとは取り留めのない話をした。
留学先の高校に行って、制服を借りたこと。
2週間ほど授業を受けること、夏休みはコッチで過ごすこと
そして、9/1の航空便で帰ること
「急に日本に行きたいなんて言い出した時はびっくりしたけど……元気そうで安心したわ」
「そう?モロベイにいた時と変わらないと思うけど」
「最近のこと覚えてないの?急に泣き出したかと思えば、猫みたいに壁の1点を見つめて動かなくなったり……心配したわ」
「覚えてないな……分かった気を付けておく」
「ホスト先にも失礼のないようにね……おばあちゃんとは聞いていたけど、どんな人なの?」
これは今日1番驚いたことだが、高校からの帰り道で岡田さんと合流した時……
「デイビッド、今日は3万負けよった!店員が遠隔操作してはる……間違いない!」
グリーンスプリングスという大きな商業施設の隣にあるサンサンロードという道を歩いている間、ずっとパチンコ店の文句を言っていた。
こんなでも元弁護士、有名なゲーム会社と専属契約して海外訴訟案件をバリバリやっていたらしい。
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◆2030/7/7
今日は七夕だからという理由で、岡田さんが笹を買ってきた。
日本の風習に習い、短冊に願い事を書きこむ。
「シリコンバレーの頂点に立つとか、ホンマ面白い子やなあ」
「母さんの夢というか、期待されていてさ……父さんは物心つく前からいなかったし、貧乏で公共料金の支払いもスムーズにいかなくて、だから本当は俺も学校辞めて働きに出た方がいいと思うけど、母さんを裏切りたくなくて……だから必死に特待生の枠を勝ち取った」
ナイトシティの俺もモロベイの俺も、家庭環境自体はそんなに変わらなかった。
とはいえモロベイはナイトシティと比べてかなり治安がいい、前世のようにギャングの襲撃に巻き込まれて死ぬというのはないだろう。
「………あんたさん自身、やりたいことはないんか?」
「やりたいこと?」
「まだ2日目やけど、確かに優秀で、素直で……ええ子なのは分かる。せやけどなぁ、子供は大人に迷惑をかけなきゃ、成長できまへん!」
「身の丈に合わない荷物を背負って、破滅する子は多い……確かにうちの経験上、京大の法学部に通いながら弟妹を養った例外もおる。せやけど、それはほんまに例外どす」
身の丈に合わない荷物……前世で死ぬ寸前「生きる伝説」に同じことを言われたことを思い出した。
あの時の俺らはキーウィに騙され、フィクサーに攫われたルーシーを助けるためにサイバースケルトンなるものに手を出した。
磁力に反重力、凄まじい力をもった兵器を使ったとしても、結局奴には勝てなかった。
「そこで貝のように黙ってしまうあたり、図星やろ……せっかくの短期留学さかい、あんたさんがほんまにやりたいことを見つけるんが、一番大事なことやと思います」
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岡田さんと会話した後、与えられた自室で俺はツクヨミにログインしていた。
ワトソン地区のリトルチャイナやジャパンタウンのジグジグストリート、シティセンターのダウンタウン……やはり見覚えのある地域、ナイトシティの面影を感じる。
ここにもナイトシティの企業やギャング達はいないけれど目に映る世界が、
風景が、大脳皮質に刻まれたナイトシティであると、
俺の魂の場所が現実ではなく、ここにあるのだと訴えてくる。
「やりたいことね……」
頭の中で、岡田さんに言われたことが反芻する。
ナイトシティでの俺は、最後の最後にやりたいこと……ルーシーを生かして返すことができた。
だから今度の俺は前世でできなかったことを、襲撃をかけてアラサカタワーの頂点に立つとかじゃなくて、もっと正攻法にシリコンバレーに行こうと考えていた。
いっそのこと、俺の頭の中にだけ存在する支離滅裂なナイトシティという町を、何かの作品にしてしまうのもありかもしれない。
明日から高校に行くことになっているが、体力が有り余っており寝れる気がしなかった。
……あの頃のように、外を少し走ってくるか
岡田さんに一声かけた後、俺は立川の夜の街に駆け出した。
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◆2030/7/7
昔の私はネットランナーだったけれども、今の私は美容系インフルエンサーをしている。
美容系インフルエンサーになったのは、ママの影響が大きい。
昔、令和ギャルをしていたママは低身長がコンプレックスだったけれども、うまく身長が高いお父さんを捕まえたらしい。
「せっかくあーしらのいいとこどりで産まれてきたんだから、可愛くしなきゃじゃんね!」
そう言ってギャルママの英才教育を受けて、今に至る。
日本の夏は暑い、まだ七月上旬だというのに紫外線と熱波が降り注いでいる。
そんなわけで、 体型維持の為にも真夜中に外を走っている。
「芦花ぁ!きをつけて!」
「わかったよママ、行ってきます」
立川は繁華街のイメージが強いけれど、駅から離れると閑静な住宅街が広がっている。
いつものように多摩モノレールに沿って、上北台の方に向かって走る。
雲1つない快晴で普段よりも天の川がよく見える、天気予報では22度としばらく雨が降っていないにしては過ごしやすい気温だった。
ナイトシティではよく排ガスでスモッグが発生することはあったけど、そんな心配とは無縁の世界。
時折、短冊が付いた笹飾りを見かける
そういえば今日は七夕だった。
あまり考えないようにしていたけれど、私は七夕というイベントが嫌いだった。
短冊に書けば願い事が叶うなんて、そんなことはあり得ない。
彦星と織姫だって、たった1年我慢すれば……また会えるのだから
私が2076年まで生きていたとしても、そのころにはすっかり定年のおばさんになっている。
そもそも、ただ単純に昔の時代に生まれ変わったわけじゃない、1998年にはナイトシティが存在しているし、色々と歴史が違う。
並行世界なんじゃないかな、だからデイビッドが産まれてこない可能性だってある。
それでも、最期に分かれた時から二度と会うことができないとわかっていても、彼の後を追い求めてしまう。
それに気が付いたら、目的地の上北台駅に着いた。
最近瑞穂町の方までモノレールは延伸したけれど、明日の準備もあるしUターンして家に帰る。
途中にある佼成霊園の近くで、後ろから走ってきた男性に追い抜かれた。
暗くてよく見えなかったけれど、同年代くらいの黒い髪をした男の人、もしかしたら同い年かもしれない。
だから明日、この男の人の顔を確認しておけば良かったなぁと後悔することになったんだ。
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◆2030/7/8
「さて、前から話があったように今日から短期留学生がうちのクラスに入るから、歓迎してくれ」
担任の立花先生が入ってきて、一言声をかけると、
昨日ランニングで後ろから追い抜いてきた男の子が立っていた。
しかもその顔つきは…………見知った顔だった。
「自己紹介をどうぞ」
「デイビット・マルティネスです、放課後や土日はよくツクヨミにログインしてます。日常会話レベルなら日本語話せるから、よろしくお願いします。」
白いチョークでがりがりとカタカナで名前を書きながら、デイビッドは自己紹介をした。
……脳内に広がる、かつての記憶
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◆2076/10/14
「ファルコ!戻って!」
「だめだ!」
ファルコが強い剣幕で否定する。
片腕を吹き飛ばされたファルコは、残った左腕でハンドルを強く握りしめながら、アクセルをさらに強く踏む。
「デイビッドに頼まれた……今戻ったらデイビットが犬死にだ!」
レベッカはアダムスマッシャーに踏みつぶされた。
私たちが逃げてしまったら、あの場所に味方なんていない…… デイビットを一人置いてけぼりにして、車はコーポ・プラザを後にする。
「今回の仕事の報酬を預かっている、それと伝言だ……「月、一緒にいけなくてごめんな」だとよ」
近くにあったデイビッドのEMTジャケットをつかむ、ポケットにはエディーの入っているチップと、何個か札束が輪ゴムで縛られていた。
首筋のあたりから、彼が来ていた時の残り匂がする。
それの持ち主とはもう二度と会うことはできないと、
気が付いてしまった私は……後部座席で蹲ることしかできなかった。
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◆2030/7/8
私の意識が、ナイトシティから現実世界へと戻っていく
「席は吉村の隣が開いてるから、そこに座ってくれ」
デイビットは私の席の隣を通って、最後尾の席まで移動する。
一声かけようとしてたけど……できなかった。
前世の知り合いですなんて、言える訳ない。
「以上で朝礼は終わりだ、デイビットとは仲良くやってくれ」
朝礼が終わった瞬間、クラスメートたちはデイビットの席に殺到した。
「カリフォルニアってすごい有名なところじゃん!夢の国とかすごいんでしょ?」
「あー悪い、俺そんなにモロベイの外に行ったことないんだ。」
「あ、そうなんだ……でもばり日本語上手いやん!どこで覚えた?」
「新世紀とか機動戦士のアニメとか見ていたら、自然と話せるようになったぜ」
「いやいや、俺達ハリウッド映画をみたからって英語できないから!こんなんアメリカン酒寄じゃん」
「酒寄って?」
「この学校のスーパー優等生、ほらほら彩葉、こっち来なって」
「ええっと、酒寄彩葉です……よろしく」
「私は諌山真実、真実って呼んで?それで……あれ?芦花?」
「ちょっと待って、今行く」
ろくに覚悟ができていないまま親友の真実に呼ばれ、クラスメートの波をかき分けていく
「……芦花よ」
なんだかそっけない態度を取った私の手を
「ん、デイビッドだ」
デイビットは、初めてあった時のように握り返した。