ハッサムとの戦闘。そして勝敗の決着が済んでから2〜3時間経った頃だろう。
ボスが倒れたことを説明しなければならないかと考えていたのだが、意外にも戦闘員メンバーは納得してくれた。
彼らが言うには「本来縄張り全域に広がっていた覇気が消え去った」ということらしい。
……それはどういうことなの?俺ちゃんよく分かんない。
そんなわけで。勝者かつ、この縄張りの新しい王者は俺に決まった。
新王になった俺の初仕事は全員の回復。生かすつもりで攻撃していたわけではないが、全員が生きていた(瀕死のやつもいたりしたが)ので[
もちろん、元ボスのハッサムもな。
クライルからは猛反対を受けたが、ハッサムを倒したのは俺ということもあり、渋々許可してもらえた。ありがとう、我が友よ。
んでだ。ハッサム治療をする中で一番課題だったのは俺が壊した右腕だ。グチャグチャに壊しちまったもんだから、どうやって治すかに苦労した。
他連中が20分ぐらいで治せたのに対し、ハッサムだけ2時間ぐらいかかった。六倍ぐらいかかってるんだけど。何をしているんだ俺。
……んなくだらない事考えてたら目が覚めたみたいだな。
「お前は……そうか、私は負けたのだな。とても強かった……死ぬ前にあのような素晴らしい戦いができて私は満足だ」
「アホか。俺は死なせないために治したんだぞ。右腕、治っているだろ?」
「……確かに、治っている。…分からないな、どうして私を治したんだ?また敵に回るかもしれない」
「かもな」
「ならば……」
「俺はな、悔しかったんだ。強くなったつもりで、まだ及ばない世界があることを知った。遠くは知っていたが、近くても及ばない世界があることを知らなかった。それを教えてくれたのがお前だから、今度は真正面から超えてみたい。だから生かす。その果てに勝負で負けてしまうのなら、致し方なし」
「どこが致し方なしなのか……。仕方ない、お前が私のことを超えられるまで側にいよう。しかし、見るに堪えない王であるのなら、分かるな?」
「あぁ、安心して俺の首を奪いに来い」
俺とハッサムの約束は、転生する前の俺であれば不安を覚えるような、そんか歪な約束。
けれど、俺は。俺たちはもうそう生きると決めたから。心を支配するのは不安感などではなく、安心。
同じ目線で立ってくれている者がいることへの幸せだ。いつからこんなに変わったのか、分かんねえなぁ。
「……そういえば、ハッサムたちって名前ないよな?」
「…何を当たり前のことを言っているんだ?名付けとは本来、とっておきの策。そう易々と行っていい行為では…」
「お前はリューゼルな。名付けタイム、楽しみだなぁ!」
体からゴッソリ魔素が消える気配がする。うん、大体全体の3割ちょっとってところか?
ハッサムと戦ったときのことを考慮したらもっと減るかと思ったんだが……ふむ、思ったよりも減らないな。
確かにクライルたちに行った名付けと比べたら多いが、それでもまだ許容範囲に収まっている。
俺が魔素量の割に技術が追いついていないのはあると思うが……そんなんで納得できるほどの理由じゃないしな。
ポケモンに対して名付けを行うのは通常よりも使う魔素が少なく済むのかもしれないな。
機会があるのなら探究してみたいものだ。
「ぐっ……!これ、は……っ!」
「進化の熱だ。ちょっとだけ手伝ってやるよ」
あまりの熱に蹲ってるハッサム……いや、リューゼルには慈悲を与えることにした。
俺も進化の熱による辛さは分かっているからな。代理人として受け入れることはできないが、少しだけ楽にすることはできる。
[分解]と[構築]で進化のエネルギーを負荷が出ないように再構築を行い、演算をフル活用して体と齟齬が出ないように調整する。
むむ……?なんだこの部分、俺は知らないぞ。
……なるほど。そういうことか。とっても面白いじゃないか。俺がミリムの因子を喰ったように、コイツも…。
そいつは苦しいわけだ。であれば、ココをこうして、あぁ、アレがそうなれば面白いな。おぉ、コレもできるのか。ならばコレとソレを組み合わせて……うん、やっぱりそうなったか。
実に面白い。これは俺が新王になったことによる天の恵みか?
「実に趣があるな…。しかし、知らなかったな。全くの予想外だった……まさかリューゼルが女だったとは」
「知っているからこの姿にしたのではないのか…?」
「それに関しては知らないよ。まあ?嫌いとは言わないが?」
彼女が[
その人間態なのだが……赤と黒のドレスで華恋と綺麗を併せ持つ素晴らしい女性となっている。
そして、何よりも、一番注目してしまうのは胸部だろう。男としては理想としか言い難いバイン、ボインである。
俺はデカいのだけが好き、それ以外はカスなんて言うつもりはないが、デカいのって良いよね。
やっぱり、こうね……ロマンがあるよね。うん、最高。
「前のハッサムの姿ってなれるの?」
「感覚的に分かる。間違いなくなれる。まあ、変身する際にエネルギーを使うみたいだけど」
「……変身する原理は俺と同じだと思うんだが。そんなにエネルギー使うっけ」
「ヴェスタと一緒にしないでくれるか?お前のバカ魔素とは量が違うのだ」
「バカ魔素とは酷いじゃないか。俺はただ、成長をし続けているだけだというのに」
「別に酷いことはないと思うが……。私に名付けを行い、3割しか魔素量が減らない者を称する方法はバカ魔素以外知らんな」
まあ、否定はできないか。俺とて、自身の魔素量は異次元だと認識しているが。出会った中で、今の俺以上の魔素を保有しているヤツは見たことがない。(ミリムは除いて)
これから、まだまだ成長していくんだろうな。私、ボスゴドラになったらどのくらい強くなるのか楽しみです!!
「ぁ……そうだ。リューゼル、手貸してくれ」
「構わないが…何をするつもりだ?」
「ちょっと参考にしようかなって」
[
確かクライルやペクスたちの因子を吸収しても技を覚える以外に効果はなかったが、今回はどうなるのか。
同じ鋼タイプだし、何らかのシンパシーが起こるのではないかと期待しているのだが。新しいスキルを獲得できたら嬉しいんだけど。
〈[
〈因子吸収により、
むむ、進化と獲得か。[超金属]に関しては[金剛化]の強化版なんだろうが、[鉄蟲支配]はなんだ?
リューゼルが鋼と虫の複合タイプだから獲得したスキルだとは思うんだが、あまりにも俺の知識にない能力すぎる。
言葉通りに解釈するのなら鋼の虫を生み出したり動かすスキルってことだよな?特性とか設定できるのかな。できたら面白そうだが。
これは後々研究しなければだな。
「どうかしたか?」
「ん、何でもないよ。他連中に名付けを行おうと思っただけだ」
「まだやるのか……」
「まだまだやるさ」
魔王は見届ける。生まれて初めての弟子を。
魔王は見届けた。激戦を勝ち抜いた瞬間を。
魔王は目を背ける。発展していく未来を想像しながら。
魔王はマントを揺らす。弟子との契を胸に置いて。
魔王は微笑む。戦う以外の楽しさを教えてくれた弟子に区切りをつけて。
「ヴェスタ。お前は見違えるほど強くなった。だが、まだだ。私の隣に並ぶなら、全てを乗り越えろ。苦難も、絶望も。全て呑み込んで覚醒するのだ」
また会うとき。その一瞬に期待を寄せ、魔王ミリムは飛び立った。
様々なものを復元する
死んだばかりの魂ならスキルを用いて反魂の秘術が可能である。一定時間経過したものには魂の演算が必要になってくる。
実は再生対象はアレも含まれているとか……。