「聞いて驚け!泣き叫べ!我が叡智こそ究極なのだぁ!」
「……なぁに言ってんだお前」
話があるって急に呼び出されたと思ったらバカなことを叫ばれた。リューゼルに揉まれているのは知っていたが、まさかここまで深刻化しているとは知らなかった。
同じ転生者として同情するぞ。マジカワイソス。んじゃ俺は仕事あるから帰りますねえ。
「待て待て待て!!!ちょっと面白いモノあるから見ていけよ」
ハリヴァスが取り出したのはゴツゴツとした装飾が多いベルト。鍵穴のような物が複数個あるが、なんの……っ!まさか!!
『ミスター・レディ………オン!!』
「特撮じゃねえぞ。リアルの仮面ライダーだ!」
『メタルロック……リリース!!』
取り出すのは、鉄の鍵。たくさん練習したのだろう、ノールックで鍵穴に差し込む。
待機音のような音声が鳴り響く中、レバーを下げる。
『開け、鉄ノ扉。挟めギロチン、鋼鉄の
「仮面ライダークレス。…さあ、派手にぶち開けるか!」
「面白い。俺の竜とお前の叡智、どっちが強いか競争だな」
「
「いいや、違う。完全新規の方さ。
「こンの!!大馬鹿モノ!」
仮面ライダーに変身し、身体能力が上がったハリヴァスの体が吹き飛ばされる。
……さすがアンジュさん。[
あと、普通に実体化できてる。我が相棒ながら、なんて怖い成長能力だこと。
「夢のため、そしてマスターの力になるという約束で共に開発したクレスドライバーの最初の相手がマスターとはどういうことですか!!!」
……あぁ、やっぱりあのドライバーはアンジュが携わっていたのか。将来的に進化するメタグロスがスーパーコンピューター並みの知能と言えども、今のハリヴァスには編み出さないだろう。
精霊としてのシンプルな知識、そして精霊の力を使った精霊工学。さすがこの世界の先輩はレベルが違いますわ。
「マスターもマスターですよ!
「そんな大袈裟な」
「扱えてたら大袈裟でしたよ!でも、未だ剣人融合を扱えていないマスターが扱えるわけがないでしょう!操作できなくなった魔素の行き着く先は破滅です。マスターも、そして周りも!」
「うぐっ!」
「…自覚、少しはあったんですね?」
鋭い視線とともにゲシゲシと足を蹴るアンジュだが、そんな彼女を落ち着かせる言葉を俺は知らない。
彼女の言葉はほんとだし、俺はあのままでは皆を殺していた。少しは王らしくなってきたと思ったんだが、油断するとすぐこれだ。
俺の肉体も魔素も他の皆にとっては脅威。それを忘れないように心がけても、すぐには直らない。まったく、困った王様だ。
…みんなには苦労ばかりをかけるな。もっとちゃんとしなくては。
「いつつつ、姐さんの蹴りはいつも凄いな」
「あなたが馬鹿なことをしなければ蹴らないで済むのですが」
「果たしてそれは俺と言えますか?こんな馬鹿なことをしてこそ俺、ハリヴァスですから」
「はぁ……行動を全て否定するつもりはありませんが、少しは大人びた対応というのを身につけてください。マスターの配下が品格を落とすような真似をすれば、マスターの品格も落ちます。また、その逆も然り。マスターもハリヴァスもしっかりしてください。これから大切な時期になってくるんですから」
……大切な時期。それは、ミリムの配下であるヘルメスの来訪。ヘルメスへの対応で俺たちがどう思われるのかが決まる大切なときだ。
幸いまだ時間はあるが、緊張で激しく動く心臓を止めることはできない。
ミリムの配下だから戦闘系だろうし、そこまで気にはしないと思うんだが……最善を尽くしておいて不足はない。
「ヘルメスという方はミリム様の配下ですよ?まだ時間はあると断言するのは危ういと思いますよ。もしかしたら超スピードで迫ってくるかもしれません」
「やめて、そんな恐ろしいこと言うの」
アンジュの推測は当たっていた。ヴェスタたちの想像を絶する速度でヘルメスは向かってきていた。
そしてヘルメスは驚愕する。多すぎる魔素の量と……そこに存在するだけで肌を気色悪くなぞるような悍ましいオーラ。
ここで生活するなど、どんなに気の狂った者でも行いたくないと叫び声をあげることだろう。
…だが、だからこそ思う。このような過酷な環境で生活できる魔物は強くなるだろうと。
クライルがあそこまで強くなれたのにも納得が行く。このような環境下で自分よりも上の存在がいるのであれば、それ相応に強くなるだろう。
「シャァァァァ!!」
「蛇…!デカいな!そりゃこんなバカ魔素を喰らってたら大きくもなるか。竜の民の実力、見せてやる!」
ヘルメスが地を駆けると同時に、蛇もまた口を膨らませる。蛇という固定概念から吐き出すものは「毒」として判断していたが、その実は全く違う。
煌々と燃える炎が木々を燃やしながら突き進む。
強化した肉体でブレスを打ち上げたものの、接した拳が火傷+正体不明の痛みに襲われる。
「竜式無手・空烈拳」
竜式無手……ヘルメスが幼少期の頃に考え、ミリムに鍛えられたことで生まれ変わった独自武術。
その威力は空気が裂け、触れておらずとも当たるほどの攻撃。
【竜式無手・空烈拳】は顔に直接当たり、怯みこそしたが、空いた尻尾で吹き飛ばされる。
そのタフさは流石の巨体とでも言うべきか。思っていた数倍の魔物の強さに辟易しつつ、立ち上がる。
口元から流れる血を拭いつつ、竜の民の
「…手助けは必要か?」
「アンタは……誰っすか?もしかしてヴェスタさんの配下?」
「あぁ、我はパゼル。ヴェスタ様の配下であり、王直属護衛隊の一人だ。貴殿は?」
「俺はヘルメス。ミリム様の配下です」
「貴殿が例の……貴殿には死なれては困る。ここは我が相手をしよう」
「……っ、確かにそうですね。任せます」
「勘違いしないでほしい。貴殿は弱くはない。ただ、主人の恩人の配下である貴殿に傷を増やしたくはないだけだ」
「そうかい。確か、ミリム様はヴェスタさんの師匠だったな」
「あぁ、そうらしい」
パゼルはヘルメスを守るように背を向け、地を抉る。ただ立っているだけなのに、その存在感は自然を慄かせ、恐怖させる。
その証明とばかりに、パゼルが立っている場所から歩くほど、自然はパゼルを避ける。
青白いオーラをまといつつ、走り出す。
「ゴシャッ!?!?」
「あのお方は我を『波動の英雄』と言った。一度敵対し、砕け散るはずだった我の命。今度は仲間を守る英雄として目の前に立ちたい。ゆえに、我は貴様なぞに負けるわけにはいかん」
「……あぁ、言い忘れていた。バレットパンチ」
蛇の肉体に遅れてやってくる鋼の連撃パンチ。威力は低いが、【バレットパンチ】を発動する際には高速移動が可能になる。
もっとも、この蛇には必要ないようだが。
「ふむ、これで倒れないか……安心した、用意した策が無駄にならないようで…波動連弾」
木々に潜ませていた【かげぶんしん】が【はどうだん】を放ち、蛇の巨体を完全に吹き飛ばす。
「我が同類を傷つけた罪、波動を以て償え」
「ふぅ……さて、客人。我らが集落に案内するぞ」
波動之瞳
『波動』を持つ者以外には、不可視不干渉の瞳を空気中に展開するスキル。使用者の『波動』レベルによっては魔素量やスキルの数、種類、能力の詳細まで詳しく把握することができる。