「ここが……噂の集落。人に化けているとは聞いていたが、まさかここまで精度が高いなんて……」
「我らは人には化けていない。この肉体も、真の姿には変わりない」
パゼルの言葉に、少しの疑問がヘルメスには生じる。
それは自身の上司であるミッドレイとクライルが戦ったとき、クライルは確かに「本気を出す」と言って魔物の姿になった。
それでは些か道理が通らないのではないのか。
「む……クライルのやつ、本能顕現をしたのか。……我らの肉体は他の魔物とは違う、所謂“特別”というものだ。ゆえに、生まれた体から人間態に移行するとパワーが控えめになるのだ」
「そのパワーを解放するための技が本能顕現ってことか…いや、アンタ人間態でもまあまあ強くないか?」
竜の民である自分が中々苦戦した相手を意図も容易く目の前で屠った魔人が控えめ状態と公言し、冷や汗が出る。
信じたくない思いで質問をかけたのだが、それはヘルメスにとって苦笑いを浮かばせる答えでしかなかった。
「……我らにとって、大きな弱点は間違いなく【人間態】だ。敵に不足を取らないためには人間態は不要だが、我らが主人は人間と関係を持つことを望んでいる。そのためには、緊急時以外は人間態である必要が出てくる。だから鍛えているのだ」
だからと言ってそこまで強くなるのだろうか。きっと、普通の魔物であるのならそこまで強くはならないだろう。
しかし、パゼルたちはヴェスタの配下だ。魔王ミリムにも認められ、たった3ヶ月で生き残れるほど強くなった魔人の配下。
それは分かっているし、頭の中で理解をしている。しかし、理解している内容がそのまま納得できるかと聞けば別の話になってくる。
自身の主人であるミリムの言う通り、ヴェスタは魔王になれる可能性を秘めている。そもそも、ただの一介の配下である自分の頭で理解しようと思うことが間違いなのかもしれない。
「覚悟をしておくがいい。我らが主人は、何もしない者を許さない。一等星のように輝くあの方は、怠慢を焼き焦がす」
「……?それは、どういう」
「あの戦い、我が手を出さなければ貴殿が勝ったいたとはいえ、押されていたのは事実。そして、それを貴殿は歯痒く思っている。元々自身の弱さを体感していたのかは知らないが、今回で強くなろうとは考えた。この考えは異なるか?」
「…ッ!そう、ですね」
「幸か不幸か。近くにいる限り、何かをしなければと思う。動かなければ、体が内側から壊されそうになる。会ってはいないが、ミリム様という御人は観察眼が鋭いようだ」
「随分な高評価だな?お前にはもう少し低く見られていると思っていてが?」
「そんなまさか……!!」
_______小柄だ
パゼルたちの長であり、推定ヴェスタは、小さい。
身長で言えば魔王ミリムと同じか、それよりも少し高い程度。人間の少年と称しても疑問ないほどだ。
魔王ミリムは小さい体ながら、その中身には大きな魔素を含ませている。しかし、ヴェスタは静かだ。本当に主人なのかと疑うほどに魔素を感じない。
白髪の髪を揺らし、瞳孔に刻まれているクロスがこちらを覗く。見た目だけならば害がないと断じても構わないだろう。
嗚呼……見た目だけならば。魔素を表に出していないのに、威圧感も感じていないというのに。ヴェスタからは、底知れないオーラを感じる。
舐めてはいけない、と…。対応を間違えれば転がっているのは自身の肉体だ、と……。強制的にイメージ付けられる感覚がヘルメスにはあった。
「私はミリム様を主とする竜仰の一人であり、神官ミッドレイ様の側近のヘルメスです」
「やっぱりキミがヘルメスか。あまり歓迎ができていなくてすまない。俺たちは街を作っている最中でな、あまり良い出迎えはできん」
「私は招かれた客の身。贅沢は求めません」
「……ふむ、それはできないな。立派な迎えはできずとも、ある程度の歓迎はしたいと考えている。遠慮するな。遠慮したら俺がミリムにどやされる」
「…では、ありがたくいただきます」
「あぁ、それでいい。……パゼル、俺はこれから俺はポケラボに行かなくちゃならないから、案内役は頼んだ」
「はっ!」
【ポケラボ】なる施設に疑問を感じていると、パゼルが答えてくれた。
「ポケラボとは、ヴェスタ様率いる研究チームが主に実験する場所だ」
研究所という言葉に、少し驚いてしまう。現在の集落の設備は間違いなく人間の街には届かない。
しかし、技術を探求する研究所というものは、間違いなくこの集落に存在していた。
「この森、やっぱり魔素が濃いんだってよ」
「アァイ……元々ハリヴァスから魔素の事情は聞いていたとは言え、やはり課題は大きいデスネェ」
影を触媒とし、俺の背後から出てくるのは紫色の肉体を持ち、ポットの鎧を持つポケモン。
種族名でポットデス。名付けた名前は「ゴーシュ」。この集落の中ではほとんど人間態になっておらず、俺の影に潜んでいる。
人間態になるのが嫌いなのかと思ったが、そこまで嫌いじゃないらしい。不思議なポットさんだこと。
「人間たちにとっては、と思っていたからな。まさかヘルメスまで濃いと断言するとは」
「コレは早急に魔素問題を解決しなけれバァ……人間を招き入れ、街をさらに発展させるなど夢物語デスヨォ」
「だが、この魔素を低レベルにまで落とすとなると、
「スプレー……我々に住まう共通因子、ポケ因子を利用したものデスネ。ポケ因子が魔素に作用し、本来多すぎると毒になる効果を無効化したまま空気として役割を保つ優れモノ。ヴェスタ様がいて漸く齎されるものデス、ありがたいカギリ」
「そこが問題なんだよなあ……俺がいなきゃ作れない」
スプレーを作るためのポケ因子は現状、俺が[
別に大した負担ではないが、俺がこの集落を離れたら一気に機能を失ってしまう恐れがある。
それを改善するために研究所をフル活用して試しているんだ。バタフリー博士こと「ベリス」とモジャンボ博士こと「グルーツ」が原理を調べている。
しかし、未だ原理解明の兆しはない。この話は焦っても解決できる話でもないんだが……どうしたものか。
「その話なんデスガ、解決の兆しが見えてきたかも知れませんヨォ。先日ヴェスタ様が名付けを行ったフシギソウの「ベーシュ」デスケド、生まれながらにユニークスキルを持っていたじゃないデスカ」
「[
「ハイ、そうデス。[
「なるほど。原理解明が確実に行える、とまでは言えないが、解決のヒントになるかもしれない……か。ふふ、進展しそうだな」
「エェ、期待していてもいいも思いマスヨ」