(思いっきり削れろ、【メタルクロー】!!)
「ラッシャイ!!」
突如、イシツブテの体が丸くなり、【メタルクロー】が滑る。ダメージを与えることが出来なかったにしては、あまりにも不自然。
あんまり信じたくないけど、この世界はポケモン世界じゃない。既存の戦術じゃ通用しないのは間違いない。
だから、多分だけどアレは【まるくなる】だ。ゴツゴツとした石の表面を丸い形状かつ滑らかにする事で【メタルクロー】を滑らせた。
とは言っても、常時アレじゃない。【まるくなる】で防御を高めるあの一瞬、あの一瞬のみ滑りやすい球体になる。
現に今は滑りやすい球体じゃなくてゴツゴツとした石だ。
なら、やりようは幾らでもあるってものだ。
「キオン!」
「…ラッシャイ!」
さっきと同じで【メタルクロー】を構え、イシツブテは【まるくなる】を選択する。
お前があんまり頭の良いポケモンじゃなくて助かったよ。まあ、頭が良いポケモンだったら即効やられてるか。
発動した【メタルクロー】を地面に突き刺し、技を使い果たす。
目の前で待っているのは【まるくなる】を使い、攻撃手段を持たない哀れなポケモンのみ。
まあ、吹き飛べよ。
「キオン!(とくと喰らえ、【ほえる】だ!!)」
……この技を獲得したとき、疑問だった。ポケモンの戦闘システムがないこの世界では【ほえる】はどんな効果をもたらすのか。
そして、その答えはイシツブテが答えてくれた。この世界でのポケモンの技はゲームにあらず。
その全ては〈現実にあったのならこういう風になっている〉と化けているのだ。
だからこの技も、【ほえる】も。ゲームとは違い、化けているはずだ。
…ほら、吹き飛んだ。
「…ラッシャイ!」
迫り来る衝撃を止めるため、地面に【たいあたり】をぶつける。
だからまあ、他への注意なんて向けれるわけがない。
俺にとっても、イシツブテにとっても完全未知な技…【ジュエルダスト】。
だが、コイツが特殊技なのは分かる。ただ、それだけ。
だから今回で試させてもらうぞ。この技が如何なる特性を持った技なのかをな。
「ラッシャイ!?」
宝石のようなキラキラとした粒子がイシツブテの周りに舞う。赤色だったり、青色だったり。様々な色を保持しているそれは、爆ぜた。
周囲のエネルギーすらも用いて、イシツブテに攻撃を与える。
こちらにでも爆風が飛んでくるような強烈な爆発だ。直撃したイシツブテに並じゃないダメージが入ったのは想像に難くない。
……だけどまあ、それでもこちらに対して戦闘続行の意思を向けているのは流石ポケモンと言ったところか。
爆発によって散らばった体の破片……石ころが地面に転がっている。それでもイシツブテは立ち上がった。
唯一生えている四肢…いや、二肢を用いて戦闘態勢を整えている。
生き残っても、何かの奇跡で俺に勝っても。その未来にお前の生は無いってのが分からないのが。
いや、分かっているのか。分かった上で選択しているのは野生の維持か、それとも…。
(…そこは、今はいらない思考だな。とにかく今は勝とう)
全身に力を入れ、【かたくなる】を積む。全身を包み込んでいる白い装甲に力を入れ、硬度をあげる。
それを止めようと、怪我した体で走るけども。万全な肉体ではない状態では止めることは叶わない。
…攻撃を避けながら3回ほど積んだ。状態の差、手札の幅。それを色々と含んで、俺はコイツには負けない。
「……イシツブテ。同じ岩タイプのよしみだ。最後は真っ向勝負で終わらせてやるよ」
万全な肉体で【かたくなる】を3回積んだ体と、傷だらけで【まるくなる】を2回積んだ体がぶつかる。
鋼鉄と岩石の【たいあたり】に拮抗はなく、鋼鉄の完全勝利で終結する。
【レベル・14
・どろあそび
・まるくなる
・アイアンバースト】
…イシツブテ、俺は強くなるよ。お前たちの分まで、ちゃんと背負って。
だー!おかしいだろ!!ここ魔境か!
イシツブテを倒したと思ったら、またイシツブテが出てきやがる!
強さがあんまり変わんないから経験値的には美味くない!最悪かこれ!
つっても、技の習熟度上げにはもってこいだがな。
気分的には今にも突っ切りたいとこなんだけど、そうする訳にはいかない。
多分だが、奥にボスポケモンが待ち構えている。イシツブテが多いところを見るにボスはゴローンか?
ゴローンはレベル25で進化するポケモン。進化したてだとしても、俺よりレベルが上だ。10レベルぐらい。
そのためにレベル上げをしたくても、イシツブテじゃ経験値がよくない。
よっくない悪循環に入ってますよこれ。
「キオン!(とりあえず、ぶっとべ!!【アイアンバースト】!)」
自分の装甲を代償に周囲の鋼の槍を突き刺す技。幸いなこと、俺には[鋼鉄再生]があるから大した問題にはならない。
倒して得た経験値から得たレベルは2。覚えた技は【ずつき】。あとは
人間にとっては戦闘での役割を持たない雑魚かもしれないが、俺にとってはベストをあげたいぐらいのスキルだ。
別に人間と敵対したいわけじゃないし、話せるのならそれが一番だ。まあ、人間と話すにはここを脱出しなきゃいけないわけだが。
「アァー、アァー。ウム、発声デキテイルナ。少シ片言ダガ、話せるだけ悪くない」
一人のときは無性に独り言を言いたくなるのに、その独り言さえも封じられたら寂しくなるというものだ。
発声を続けていって違和感のないぐらいまで成りたいところだ。
そんなこんなを考えていれば、奥から岩が落ちるような音が響き渡る。
何なのか、それは見なくても分かる。きっと、ボスポケモン……ゴローンだ。
配下を殺しまくる俺の姿は見るに堪えなかったようだ。懐に憎悪と怒りを携え、殺意を持ってこちらを認識している。
この巨岩に勝てるイメージは6割もない。良くて4.5割。最悪、1割を下回るかもしれない。
とは言っても、レベルアップ要因であるイシツブテは全員倒してしまった(多分)から、残りは鉱物だけ。
それでゴローンを圧倒できるほど強くなれるとは思えないし、手札のためにそれは残しておきたい。
つまり、このボス戦を今の状態で乗り切らなくてはいけない。
「ゴォォン!」
ゴローンの腕が地面に触れ、微細な振動が起き……吹き飛ばされた。
なんだ、今何された。あの小さな振動で吹き飛ばされた?ノーマル技か!?
いや、違う!このナカにまで響くこの感じ、弱点だ!それも4倍!
ということは……【マグニチュード】か、【じしん】か。
【じしん】はないな。タイプ一致4倍弱点高火力【じしん】を真正面かつレベルが圧倒的に低い状態で受けて生きてますって状況が不自然だ。
覚えているのか、覚えていないのか分からないが、とりあえずは生き延びた。
ここからどうやって挽回するかだが……いや、マジどうしよう。
とりあえずで【かたくなる】と[鋼鉄化]を積んでいるが、【マグニチュード】を連発されたら耐え切れるかが分からない。
最大まで【かたくなる】を積みたいところだが、それを許してくれないのがゴローンさん。
さっきから【いわおとし】を打ってきた邪魔をしてくる。
地面技じゃないだけ良心的だが、それでもレベル差はヤバい。
[
だからポケセンよりは食べ残しによる回復に近い。
どうせなら再生力をもっと高くしてほしかったよ!食べ残しより少し多いぐらいにさ!
「…ドウシタモノカ」
言葉通り、どうしたら良いか分からない。分からないので、とりあえずは【ジュエルダスト】を放つことにした。
「【ジュエルダス…】」
俺とゴローンの攻防の最中、彼女は突如として現れた。
黒いマントを羽織り、ピンクの髪をツインテールにしている彼女。
圧倒的なオーラを発しながら現れた彼女。
それは、災いだった。自由気ままに歩き、自由気ままに台風の目となる。
彼女を例えるのなら、きっとこれしかない。『決して人間には避けることが叶わない災い、天災』と。
「わーはっはっは!なんだお前たちの技!面白いな!」
魔王ミリム・ナーヴァ。この出会いが世界を揺るがす大事件に繋がることをまだ誰も知らない。
・吸収者
捕食者よりも一定の魔物と因子吸収に特化している能力。
一定の魔物(定義はポケモン)には全ての魔素を吸収できるかつ、能力コピー・技コピーを可能としているが、他の魔物には1割の魔素吸収で限界である。