「アナタハ…イッタイ…」
「何だお前、喋れるのか!ちょっと興味が湧いてきたのだ!」
「ゴォォン!」
圧倒的なオーラを恐れたゆえの凶行か、自分ならこの少女を倒せるという傲慢か。
そのどちらか、もしかしたらそれ以外か。そうだったとしても、ゴローンの運命は変わることはない、
地面から襲いかかってくる【マグニチュード】を真正面から受けた。その姿に傷跡はない。土汚れさえもついていない。
俺たちとあの少女とでは比べることさえも烏滸がましい差が、ある。
「今度は私の番なのだ!」
体を前に傾けた。それだけだった、俺が見えた景色は。次の瞬間、ゴローンは爆散していた。
アレを化け物と言わずして、なんと言うのだろうか。俺はそれを知らない。
「アナタは…」
「そう震えるでない。私はお前を取って食おうなどと思ったりはしていないのだ。どちらかと言うとだな……私は、新しくて面白いお前を鍛えたい」
…完璧にロックオンされたな。どうにか逃してもらえないかを考えていたが、これじゃあ無理そうだ。
俺のココドラ生、どうなったものか。
「鍛エル…?」
「うむ!私が鍛えるのだ!最古の魔王であり、天災と呼ばれる私がな!」
「……ドウモ」
魔王ミリム・ナーヴァ。彼女に鍛えてもらうのは悪いことではない。強くなるため、早く進化するためならば最高の近道も良いところだ。
だからと言って、彼女を信用できるかは別問題。何か怪しい企みを企てているのかもしれない。
まあ、そんなこと言っても俺にどうにか出来るわけがないのだが。あそこまで苦戦していたゴローンを一方的に倒してみせた。
その時点で俺が戦闘において付け入る隙など皆無に等しい。
何とかなるを祈って縋るしかないな。
「お前、名はあるか?」
「イエ、アリマセン。生マレテカラ1日モ経ッテイナイ故」
「ふむ。ならば私が名をつけよう。お前の名をヴェスタ。強くなることを心から願っているぞ」
『ヴェスタ』
その名を与えられた瞬間、肉体に与えられるは強烈な熱。体を覆う鋼鉄の装甲すらも溶かすのではないか、そう思わずにはいられない熱量が体の芯から浮き出る。
体が作り変わるような。存在が変貌してしまうような恐怖が熱にはある。
分からない。そんな疑問を積み重ね、変化は続く。
白の装甲は更に濃く、
右の瞳には緑へと変色したのちに赤い線が
新たな力が肉体に与えられている。そう感じ取るのに必要な時間は多くはなかった。
〈個体名ヴェスタは種族[
〈[
種族のルビに変わりはない。ココドラというポケモンからヨーギラスになるという可笑しな事態には陥っていない。
だが、ココドラを形容する名が変わっている。"妖魔"ではなく、"竜魔"。とんでもないほどに格が底上げされたのは見るだけで分かる。
実際、体の奥底から湧き出るエネルギーは格段に向上している。このパワーは、きっとゴローン相手に一方的に勝てるほど。
何がどうなってるんだ、この変化は。
「お前、私の因子を食ったな?」
「因子を?ぁ、普通に出るようになってる」
「私の種族は
おいまてこの災いとんでもない事言わなかったか今。
え、なに。
そういうスキルなのか?だとしたらぶっ壊れにもほどがあるでしょうが。
どれだけ種族として優秀すぎるからってそれは酷くないか?
「進化が完了した。次は鍛錬に入るのだ!さあヴェスタ、人間態になるのだ!」
「え、なんすか人間態って。俺、この姿以外はなれませんよ?」
「む?お前には自分を分解できるスキルと再構築するスキルがあるではないか。それでどんな姿にも化けれるであろう?」
「んな馬鹿な。知らないですけど、俺そんな力」
「何故……あぁ、生まれたばかりだからか。仕方ない、私が直々に教えてやるのだ。体をバラバラにして、もう一度作り上げるイメージを持つのだ!」
体を全部分解して、もう一度構築するイメージ。
ココドラの肉体を青白い粒子に変え、人間の姿をイメージする感じで……どうだ!
「うむ、上出来!これならば教えやすいのだ!ヴェスタ、防御を構えるのだ」
何故だか分からない。分からないが、全身に[金剛化]を行い、【かたくなる】を積む。
次の瞬間、前世、今世。その全てを含めた中での最悪の痛みが走る。
咄嗟に反応し、前に出した両腕は砕けている。
勢いよく吹き飛ばされた体は洞窟の岩に激突し、大きな穴を開けている。
[鋼鉄再生]と[
「60点、及第点も良いところ。ヴェスタ、やっぱりお前は自身のスキルの扱い方を理解していないのだな。吸い込めるのなら足場を崩したら良いし、再生するのならそれに相応しい演算と理想が必要。進化してから獲得したスキルの肉体強化を用いてはいない。それはあまりにも勿体ないのだぞ?」
勿体ない。
それは少女にとっては本音でしかない言葉。
魔王という立場により出会した戦と経験。それから齎される圧倒的までの引き出しの量。
追いつくのは厳しいのではないか。そう思ってしまうほどの差が俺とミリムにはある。
当たり前すぎる現実に挫けそうになっている自分を視認しつつ、言われた通りにスキルを発動する。
[
砕け散った装甲には加工された鉱物を用いて直すイメージで。
新しく獲得した[
ミリムのように強く、猛々しいドラゴンを。そう、俺はドラゴン。ミリムの因子が混ざったドラゴンなのだ。
「…ッ!」
「ほう…やるようになったではないか!戦い方はまだ粗削りだが、悪くはないぞ!」
「そりゃどうも…っ!【ジュエルダスト】!」
ほのかな光が舞い、爆散する。それはゴローンに行った時と比べると威力は少しだけ上がった一撃。
……もしかして人間態になると威力が低くなるのか。
さっきよりも威力は上がっているけど、それは少しだけ。俺が[
つまりこの人間態だとポケモンの技の威力が低くなるってことか。
技巧を使って戦うか、相手にやり過ぎないための形態、みたいなもんか。
まあ、今はこれで丁度いいかもしんないけど。
ココドラの姿だとリーチが足りなすぎる。一応【いわおとし】っていう技の選択肢もないわけじゃないが、それでもダメだ。
きっと今の俺の最善手は[
「うむ!悪くはない…が、私にはダメージは与えれんな!」
「誰がアンタにダメージ与えれるんだよ!」
「もっと上のスキルを使えば与えれるのではないか?」
「もっと上、じゃあ今の俺では無理か。……
[|竜魔之系列]に内包されている竜の因子を持ち出し、エネルギー弾として放つ。
「…今のは良かったのだ!お返しに…
太陽を思わせる煌々とした光が身を襲う。それは、意識を飛ばすには十分なほどの威力だった。
ヴェスタが無意識に発動させた
肉体強化、
なんだこのぶっ壊れスキル()