「ラミリスは、ウルグレイシア共和国の端にいるのだ」
そうミリムに言われ、来訪したウルグレイシア共和国。辺境に位置する村の奥で、扉がついている大樹を発見した。
きっとここが魔王ラミリスが住まう精霊の棲家だ。精霊を紹介してもらうには圧倒的な力を示す必要がある……と。
今の俺でどこまで通用するのか……分からないな。
「っ!ここは……」
扉を開けた先に待ち受けるのは廊下。先の見えない道が永遠に続いている。分かっていたことだが、外の大きさと中の大きさが比例していない。
なんてすげぇんだ……
『くすくす』『くすくす』『くすくす』
『バカな人間がきちゃった』『きちゃった!』
「アナタは
『しょうがないなぁ』『いいよ』『けど』
『試練を突破してからね?』
「元よりそのつもりだ」
突如、無限に続く廊下が断ち切られ、広大な広場が目の前に広がる。
そして、試練の敵として立ち塞がるのは白が散らされている黒の人形。見た目で言うのなら強そうに思えないが、発される魔素は別格。
単純な魔素だけで言うのならゴーリキーよりも多い。けど、魔素と戦闘力はイコールじゃない。
「行きます」
「どうぞ」
「暗転・黒淵」
特に俺たちのようなポケモンは。同じポケモンなら技次第で弱点突かれるが、シンプルな敵なら別。
[物理攻撃耐性]と[魔法攻撃耐性]がある限り、普通に戦えば結構しぶといタイプだと思う。
だから魔法っぽいのが混ぜてある発勁も少ないダメージでやり過ごすことができた。
「面白い技だ!ならこちらも……!
[
両腕にドラゴンの装甲を具現化させることで打撃攻撃の攻撃力アップを狙うことができる。
一発屋の【
もう一度発勁を叩き込もうとする腕を叩き落とし、人形の腹部に思いっきり打撃を与える。
「その手はさっきみた。悪いが、天丼ネタは刈り取っちまいたくなるんだよ」
「客は黙って見ておくのが礼儀ですよ!」
「なにその考え。頭凝り固まった作者かよ」
「
今回は肉弾戦は切り離し、撃ち放つのは闇の魔法。悍ましくも煌びやかな黒い津波が襲いかかる。
範囲広いな。これじゃあ天井付近まで飛んでも当たる。雑魚狩りにはちょうど良い技だこと。
でぇもぉ。同格相手に使う技じゃねえよなぁ!真正面からぶっ飛ばしてやるよ!!
俺の体を統べる鋼鉄を[分解]で切り離し、空中に浮かばせる。
うん、これだったらあの【
「アイアンバースト」
「うおっ、けむてぇ」
【
目では視認できなくなっても、俺には[
とくせい【ヘヴィメタル】を発動させて体重を倍加させつつ、両拳には冷気をまとわせる。
「っ!」
「れいとうパンチ・多!」
ほんのり残った[
視認阻害+いきなり飛び出たことによる驚き。それらを利用した超連撃【れいとうパンチ】の奇襲。
こいつが耐久性高いことは知っているが、それでも限度はある。【れいとうパンチ】の奇襲は【
だいぶキツいだろ、精霊さん。
「それはっ!」
左腕にスキルを発動させ、強化を施す。それに気づいたのか、精霊は直撃地点に全力で防御を構える。
左腕が精霊に直撃した直後、密かに構えていた右腕で【
「どう……して」
「左腕はブラフだった。アンタ、優秀な精霊っぽいからさ。他の精霊だったら気づかない小さなことでも、アンタは気づく。だからこそ、俺は左腕に[金剛化]を混ぜ、それに全力防御を取らせたタイミングで右腕の
ゴーリキーたちに比べれば楽に勝てたが、少しでも気を抜いたら負けてたな。
あと……ポケモンの技。完全未知なものばっかりだったから、慣れられてたら不味かった。
まあ?技に慣れられても、こっちも魔法に慣れる自信はありますけどもね?
「それでだ。
「うん、合格だよ。でも……まさか倒すなんて思ってもみなかったけどね!その子、闇の上位精霊だから結構強いんだけどなぁ」
「っ、は……申し訳ありません。ラミリス様」
「はぁ……絶対に勝てるなんて保証誰にもないから!アンタは気に病まないの!」
これが……
でも……違う。この人が魔王に君臨している理由はそんな小さなことじゃない。
……おそらく、この迷宮を作り上げているのはこの妖精。ここまでの広さを作り上げるスキルなんて、俺が持っていても扱いに困るだろう。
並大抵ではない制御能力と強力無比なスキル。それがきっとこの人を魔王たらしめている要因…!
「んで、アンタは精霊を得たいって言ってたよね?まあいいけど、強い精霊をゲットできるかは完璧運よ?」
「覚悟の上だ」
「なら案内して「待ってください!」キルケちゃん?」
「ラミリス様……身勝手と分かっているのですが…どうか、どうか私にこの方を主とさせていただけないでしょうか」
「それは……分かった。精霊女王として、闇の上位精霊キルケに慈悲を与えます。彼の者を主人としなさい。離反することは許しません」
「ありがとうございます…!」
「いやいやいや!!ちょい待て!待って!キルケを俺のとこに寄越したらラミリスの守護者がいなくなるだろ!」
「それは、そうだけど…」
この人がキルケの親代わりみたいなものだとしたら……もしラミリスが死んでしまった場合、元々守護していた人に会えなくなるかも。
そうなった場合、俺は強い後悔を抱えるだろうな。だから、そのためにも絶対に成功しなくては。
「キルケ。ちょっと指合わせて」
「はい…?」
うし。これでキルケの因子は吸収できた。精霊の因子を吸収し、理解したことで精霊魔法が使えるようになっているはず……うん、なってる!
では。俺の体内に保管してある鉱物を[鉱物加工]で組み立てる。そして精霊魔法で色々と行えば……うし!
自立型でラミリスの命令で死地へも向かう精霊魔道兵士の完成だ!多分キルケがいた人形と同じくらいの力のはず。
「アンタ結構やるのね!今アタシ感激してるよ!」
「そりゃ魔王ミリムの弟子だからな!」
「ぇ、えぇ!?アンタミリムの弟子なの!?」
「ありゃ?ミリムの事知ってんのか」
「いや知ってるも何も……あの子が暴走した時に落ち着かせた中の一人なんだからね!?私は!」
ミリムが暴走したのを落ち着かせた…!?あの歩く天災とも言えるあのミリム・ナーヴァを落ち着かせたって……。
全盛期はどんな強さしてたんだよ…。
「その反動でその魔素量と体に?」
「いや違うわよ。アタシは転生を繰り返す魔王。今はただ子供なだけ」
子供だから力が出せない…。そんなオチだったとは……。予想外だったぜ。
しっかし、子供状態でこんなバカげたスキルを扱ってるのか。ひえぇ、大人になったときを想像したら怖いぜぇ。
「あの……主」
「あぁ、悪い。ほったらかしにして。キルケって種族名だよな?じゃあ名付けをしよう」
「は?」「え?」
「キルケはそうだなぁ……アンジュでいこう」
〈個体名アンジュが[
ロードか。うん、イカすな。
んで、ゴーリキーたちに名付けしたときよりもゴリッと削れたな……。さすが魔素だけで言ったら完全格上なだけあるな。キルケ……いや、アンジュ。
まあ、うん……でも[
戦闘以外は[
減った魔素量もほら元通り。
……やっぱりおかしいよなぁ。貯蔵できるとしても、俺ってこんな貯蔵してたっけ。そこまでやってた記憶ないんだけど。
竜魔の因子がとんでもなさすぎるってことなのかな。多分そうなんだろ。
「うし。じゃあ来い!ばっちこーい!」
「はい……行きます!」
〈個体名ヴェスタが[
〈
この世界ではポケモンは白いキャンバスのようなもので、何か影響力のあるものを加えるとすぐ色が付いてしまうようなもの。そんなものに因子吸収に特化した