「クライルさんたち、周り見えてないよね……」
「うんうん、絶対に見えてない」
「しょーがないんじゃね?あの二人、殺し合いは嫌いだけど戦いは大好きだからさ。そりゃ邪魔されたら怒るでしょ。まあ……ヴェスタ様がいるなら無事に戻ってこれるだろ」
「……なんでペクスはヴェスタのことを様をつけて呼んでるの?」
「お前らは、分かってねえよな。あの人のこと」
あの人の怖いところは、切り替え。生きていたら助けたいとは思うけど、生きていなければ「しょうがない」と割り切れる恐ろしさ。
そりゃ魔物の世界は弱肉強食だから死や敗北は仕方のないものだ。けど、あの人の根本に弱肉強食は備わっていない。
だからこそ。あの人のしょうがないは心の底からの言葉。聞いたこともねえし、見たこともねえよ。素がそうなってる人なんてよ。
誰よりも命を大切にしているようで、きっと誰よりも命に対して無関心なのがあの人だ。
はー、こわこわ。絶対、なにがなんでも相手したくねえや。
「ここか」
「あぁ。どうする?中央を突破するのは幾つかルートがあるが」
「そりゃ真正面でしょ」
色々と後々から邪魔されたら面倒くさい。ボスと戦っている時に邪魔されたら勝てる勝負も勝てなくなるかもしれない。
そのための正面突破。さすがに全部ぶっ飛ばすのは時間が足りないから中央だけだがな。
そして、その中央に行くために魔法を扱う。アンジュと契約したことで手に入れた闇の精霊魔法は転移魔法も含まれている。
なんとも便利なこと。俺とクライルを闇の中に包み込むことで自由に移動することが可能となっている。
うん。ラミリスのところに先行ってきて良かったな。
んで、たどり着いた中央は豪邸……。ふむ、文明的には結構しっかりしているんだな。
魔王がいる国とかは発展しているのだと思っていたが、それ以外でもちゃんと発展しているとは。おみそれした。
「敵襲ー!敵襲ー!」
「あら。出来上がってんねえ、ここの兵士」
「俺の親父が鍛えているからな。そらそうだ」
槍や武器を持ち、こちらに突撃してくるポケモン幾多。レベルもそんなに低くないし、ちゃんと鍛錬されている。
俺がミリムと出会わなければ速攻負けてしまうような、そんな素晴らしい出来の兵士たちだ。
だが、俺の運命はミリムと出会ったことで変わった。まあ、そんなわけでさ。悪いけど、蹂躙させてもらうよ。
【
うん、全力で打ちはなったけど、死にそうではないな。あくまで瀕死で死にかけってだけだ。
ポケモンって瀕死でも秘伝技要因で使えたりするし、まあ何とかなるでしょ。
それに……瀕死だからって治してる余裕はないしね。あの目の前の、ルカリオ。アイツはヤバい。
他の有象無象とは格が違う。魔素もそうだが、ポケモンとしての存在が強く訴えかけている。
だが、こいつなら。ボスと戦う前に進化できるかもしれない。
「随分と暴れているな、人間」
「悪いが、俺はココドラだ。お前らと同じ同類だ」
「知ったことではない。人間でも、同類でも。我らを害するのなら徹底的に叩き潰す」
「そりゃ残念」
金属音と騒音が鳴り響く中、俺とルカリオの視線は交差する。いつでも戦闘に入れるよう、臨戦態勢を整える。
三秒ほと経ったあと、ルカリオの爪に白銀の光が落ちる。その光景は見たことがある。俺も何度も行った技の一つだ。
なら、同じ技で対抗するとしますか。どちらが上の鋼タイプか、白黒つけさせてやるよ。
「「メタルクロー!!」」
白銀に輝く鋼の爪が混じり合う。一つは竜の因子が混ざった竜腕の鋼爪。一つは波動を背負った勇者の爪。
高い金属音が鳴り、次手でとてつもない衝撃派が周囲を覆う。周りの奴らは吹き飛んでいるが、どうやらこのルカリオさんは気にしている暇はないようだ。
「アンジュ!!」
『わかってます!!』
「『闇王纏付・ダークネスメタルクロー!』」
「っ!波動一爪!」
闇のメタルクローと波動のメタルクロー。先ほどよりも威力が強く変化した爪撃がぶつかり合い、爆発が生じる。
大量の煙が発生し、多くの動きが止まる中、二つの動きは止まらなかった。
相手のいる場所を察知し、パンチを叩き込む。
「バレットパンチ!」
他の攻撃よりも断然速い連続パンチが体を覆い尽くす。攻撃が早すぎて一見こっちが攻撃する隙がないように見えるけど、違う。
いける、反撃できる。だったら、とびっきりの攻撃を喰らわせるんだ。
さっきのメタルクローを、右腕全体に纏わせるイメージで。竜と、鋼で誰よりも硬い物質へとなり変わる。
目の前で、全力で。立ち塞がる障害をぶちのめす!!
「メタルパンチ!」
「ぐっ……確かに強いが、折れてしまうほどではない!しんくうは!」
見えない空気の弾丸が腹部に直撃する。ヒリヒリと痛むが、ぬるい。クライルから【リベンジ】を受けた時の方が万倍効いた。
その程度の攻撃で俺を刺激したとて、ただ闘志が爆上がりするだけなんだよなぁ!
さっきの【しんくうは】でわざと装甲を散らし、深刻なダメージを受けたと思わせる。
そして、俺の狙い通りに勘違いしているアイツは、これから起きることを想像してない。
ざまぁみろ。存分に……目玉飛び出してみせろ。
「アイアン……バースト!!」
「なっ!?」
散った装甲から発動する鋼の光線。勢いよく発射されたビームはルカリオを押し、壁へと激突させる。
多分モロに受けたろうけど……アレで倒れてはないよな。俺にとっても、アイツにとっても。これはただのウォーミングアップだ。
こっからが。こっからこそが本気の領域。
「アンジュ。力を貸してくれ」
『マスター。私はいつでもアナタの味方ですよ』
「……ありがとう。
[
ゴツゴツとした黒の鎧が竜の証明なら、精霊の証明は白のタキシードに純白のマント。腰に刀を差すのは、竜剣エクスカリバーとは相対をなす霊剣デュランダル。
ぶっちゃけ、単純なフィジカルなら圧倒的に[
一応魔法制御がしやすくなるって恩恵はあるが、この形態の一番はそんなところじゃない。
[
そして、利点もう一つ。俺が[
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精霊の力を完全に借りることによって初めて使用可能となる強化術。あまりの強度に肉と骨が嘆いているが、そんなのは些細な問題。
痛むそばから治していけば無問題だ。
「……なんて悍ましい気配だ。貴様、誇りを捨てたか」
「弱肉強食の上に誇りなんて置いてもゴミになるだけだろ?同類」
「思ってもいないことをツラツラと。吹き飛ばしてくれる……!」
ルカリオの両手に青い球が浮かび上がる。大量のエネルギーが込められているそれは、直撃したら重傷だろうな。
アレを受けて動けるのなら、俺は未来の俺を褒め称えるとみた。
まあ、直撃したら、だがな?
「闇王一刀・時捌き。……どうした?顔がアホ面に変わってんぞ?」
『マスター!煽らないでくださいよ!アレだって私がサポートしたから切れたんですよ?調子に乗らないでください!』
へいへい、分かってますよ。お前がいるおかげで戦えてる、ありがとな。
『……それは、はい、うぅ…』
「まだ、まだぁ……!つるぎのまい!!」
ルカリオは舞う。手元に剣はなく、無手である。しかし、その踊りは華麗なものであり、つい見惚れてしまうような素晴らしいものだ。
その踊りが果たされたことによる効果は一つ。物理攻撃へのダメージ上昇。
「きしかいせい!」
「闇王一刀・水瓶」
【きしかいせい】を【
瀕死にまでは追いやってないが、気絶までは追い込んだ。しばらくしたら目が覚めるだろうな。
その前にボスを叩き潰す。
〈個体名ヴェスタが[
「……ん、進化か。うん、背が伸びたな。パワーや魔素量も上がってる。これならボスとも戦えるかも……だな」
精霊と身体を一致させるという完全契約を成したのち、初めて体得できる
今はアンジュが出力を抑えているかつ、
そりゃ(進化したばっかりでこんな負荷高いスキル使おうとするなら)そうよ。
ちなみにクライルくんは親父と戦ってます。うける。