俺が抑えて、俺がホームラン打てばいいじゃん   作:大浦泉

3 / 5
龍崎颯太 二年目シーズン開始時ステータス

打撃
弾道:3
ミート:A
パワー:A
走力:C
肩力:A
守備:C

投球
球速:153km/h
コントロール:B
スタミナ:A
球種:直球・カーブ・スライダー(実戦レベル)/ スプリット・チェンジアップ(実戦投入開始)


第三章 高校篇・二年目

秋季近畿大会を準決勝で終えた淡海学院に、年が明けてすぐ選抜出場の内定が届いた。創部からわずか数年、しかも主力のほとんどが一年生というチームでの選抜出場は、地元紙だけでなく全国紙のスポーツ面でも大きく扱われることになった。

 

見出しには「無名の一年生集団、聖地再び」の文字が躍り、颯太個人の名前も見出しの一部として全国的に浸透しつつあった。

 

冬の間、颯太が費やした時間の大半はコントロールの矯正に注がれた。担当コーチが残した指導記録によれば、この時期の颯太はブルペンでの投球一球ごとに着弾点を記録させ、自ら数値として管理することを求めたという。

 

「勘で投げるのはもう卒業する」――この時期に颯太が口にしたとされる一言が、部内の記録として残っている。

 

並行してスプリットとチェンジアップの実戦投入にも取り組み、変化球の引き出しは一年目終盤からさらに広がっていった。打撃面では、すでに完成の域にあったミート技術に加えて、オフのウエイトトレーニングでパワーが明確に向上しており、打球の飛距離は一年時と比べて一回り大きくなっていたと記録されている。

 

――――――――――

なんJ実況スレ(淡海学院・センバツ出場決定)より

 

1: 名無しさん@実況

淡海学院、センバツ出場決定や

 

8: 名無しさん@実況

創部数年でセンバツとかもう普通の強豪校の歩みちゃうやろ

 

14: 名無しさん@実況

龍崎、冬の間ずっとコントロールの数値管理しとったらしいな

 

19: 名無しさん@実況

「勘で投げるのはもう卒業する」で草

ストイックすぎるやろ

 

25: 名無しさん@実況

パワーもさらに上がっとるらしいで

ただでさえ化け物やったのに

 

30: 名無しさん@実況

これもう優勝候補って言われても驚かんわ

――――――――――

 

春の選抜大会

 

三月、選抜高等学校野球大会が開幕した。淡海学院にとって甲子園そのものは二度目の舞台だったが、選抜出場は初めての経験であり、開会式の入場行進から全国的な注目を集めることになった。

 

初戦、颯太は五回まで無失点に抑える投球を見せ、打者としても初回から本塁打を放つなど、一年目の甲子園を経験した落ち着きを感じさせる内容で快勝した。二回戦・三回戦も投打で相手を圧倒し、危なげなく勝ち上がっている。

 

この時点で颯太のコントロールには、一年目の同時期とは明らかに異なる安定感が備わっており、四球の数は大会を通じて大幅に減少していた。

 

準々決勝では、前評判で優勝候補の一角とされていた四国地方の強豪校と対戦。序盤は互いに得点を許さない緊迫した投手戦となったが、六回に颯太自身の適時二塁打で先制すると、七回には駄目押しの本塁打を放ち、試合の趨勢を決定づけた。

 

投げては八回を無失点に抑え、九回は継投で逃げ切り勝利をつかんでいる。

 

準決勝の相手は、関東地方屈指の伝統校だった。この試合、相手先発投手との息詰まる投げ合いとなり、七回まで両チーム無得点という展開が続いたが、八回に颯太が勝負を決める一打を放ち、九回を三者凡退に抑えて完封勝利。決勝進出を決めている。

 

迎えた決勝の相手は、九州地方の名門・福岡実践高校だった。全国優勝経験を持つ強豪であり、颯太たちにとっては一年目の甲子園では対戦することのなかった、初めて相見える格上の相手ということになる。

 

試合前から「実績のない新設校がどこまでやれるか」という論調がメディアには少なからずあったが、颯太自身はこの雰囲気について特にコメントを残していない。

 

決勝、颯太は序盤から圧巻の投球を披露した。相手打線を七回まで無安打に抑え込み、打者としても五回に先制の本塁打を放っている。八回にヒットを一本許したものの、動じることなく完投。

 

九回、最後の打者を三振に打ち取った瞬間、淡海学院の選抜初出場・初優勝が決定した。颯太個人も大会MVPに選出され、これが高校入学後、公式記録として初めて刻まれるタイトルとなった。

 

優勝旗が初めて甲子園を離れ、滋賀県、しかも創部わずか数年の新設校に渡るというこの出来事は、全国的な話題として大きく取り上げられた。全国紙のスポーツ面では「白紙のキャンバスから頂点へ」という見出しでこの快挙が報じられ、テレビの情報番組でも特集が組まれている。

 

地元・野洲市では優勝パレードが企画され、颯太たちの母校である野洲市立中央中学校の後輩たちも沿道に列をなしたと当時の地元紙が伝えている。

 

表彰式後の取材で、颯太は「まだ半分」とだけ短くコメントを残しており、この発言はセンバツ優勝という結果に浮かれることなく、あくまで夏の甲子園、そして「日本一」という当初からの目標を見据えていたことの表れとして、後年たびたび引用されることになる。

 

――――――――――

なんJ実況スレ(選抜決勝・速報)より

 

1: 名無しさん@実況

淡海学院vs福岡実践、決勝はじまるで

 

45: 名無しさん@実況

龍崎五回に先制ホームランやんけ

 

67: 名無しさん@実況

七回まで無安打とか嘘やろ

福岡実践相手にこれは異常や

 

89: 名無しさん@実況

試合終了ー

淡海学院、選抜初優勝や

 

90: 名無しさん@実況

創部数年でセンバツ優勝は歴史的すぎるやろ

 

93: 名無しさん@実況

龍崎大会MVPも当然やな

投打両方で決勝壊しとる

 

97: 名無しさん@実況

「日本一獲りに行く」の宣言、半分達成やんけ

 

101: 名無しさん@実況

これもう夏も獲る流れやろ

史上初の春夏連覇いけるんちゃう

 

105: 名無しさん@実況

無名校が全国区の頂点に立った瞬間見てもうたわ

 

108: 名無しさん@実況

優勝旗が甲子園出るとかいつぶりや

しかも創部数年の新設校とか歴史的すぎる

 

112: 名無しさん@実況

表彰式後のコメントが「まだ半分」で草

優勝しても全然満足しとらんやん

 

116: 名無しさん@実況

夏も獲る気満々やな、こいつ

――――――――――

 

夏に向けて

 

選抜優勝という結果は、淡海学院という学校の立ち位置を根本から変えることになった。一年前は練習試合の申し込みすら断られていた新設校が、この夏はシード校として、しかも「打倒すべき王者」として周囲から見られる存在に一変していたのである。

 

他府県の強豪校からも視察や情報収集の申し込みが相次いだと、当時の学校関係者は証言している。地元紙は選抜優勝を受けて特集記事を組み、「淡海学院包囲網」という言葉が県内の高校野球関係者の間で使われ始めたのも、この時期のことだった。

 

チーム内にも変化があった。選抜優勝の直後、練習量そのものが一時的に緩んだ時期があったとコーチ陣が後年振り返っており、颯太自身もこの時期についてインタビューで「気持ちがどこかで緩んでたんは事実やと思う」と率直に語っている。

 

五月に行われた練習試合では、格下と目されていた県内の中堅校を相手に接戦を強いられる場面があり、この試合を機に監督が全体ミーティングを開いたという記録も残っている。

 

ミーティングの席で颯太自身が「センバツ獲ったんは去年の結果や。今年はまだ何もしてへん」とチームメイトに向けて発言したと、当時の部員が証言しており、この発言をきっかけに練習の空気は再び引き締まっていったとされる。

 

とはいえ、この五月の一件で完全に危機感が浸透したわけではなかった。淡海学院は依然として「颯太が投げれば勝てる」という空気を拭いきれておらず、守備陣の集中力や、颯太以外の投手陣の底上げといった課題は、表面化しないまま夏を迎えることになる。

 

この積み残された課題が、後に大きな代償を伴って表面化することを、この時点ではまだ誰も予想していなかった。

 

夏の滋賀大会・まさかの敗退

 

七月、全国高等学校野球選手権滋賀大会が開幕した。シード校として臨んだ淡海学院は、初戦、県立の中堅校を相手に序盤から圧倒的な内容を見せる。颯太は五回コールドに近い内容で試合を決定づけ、打者としても本塁打を含む複数安打を記録した。

 

二回戦の相手は前年に一度対戦経験のある学校だったが、こちらも危なげなく突破している。この二試合について、颯太のコントロールには選抜大会からさらに磨きがかかっている様子がうかがえ、四球の数はほとんど記録されていない。

 

三回戦、淡海学院は県内でも打撃力に定評のある学校と対戦した。この試合、颯太は序盤にやや制球を乱す場面があったものの、五回以降は立て直し、最終的には危なげなく完投勝利を収めている。打者としても勝負どころでの一打を放ち、チームを準々決勝へと導いた。

 

ここまでの三試合、淡海学院は依然として「颯太が投げれば負けない」という一年前からの成功体験をそのまま体現するような戦いぶりを見せており、周囲の評価も「このまま夏連覇へ突き進むだろう」という論調が大勢を占めていた。

 

風向きが変わったのは準々決勝だった。相手は県内屈指の伝統校・彦根工業高校。この学校は選抜での淡海学院の躍進を徹底的に研究しており、試合前から「龍崎との真っ向勝負を極力避ける」という明確な方針を掲げていたことが、試合後の相手校監督のコメントから明らかになっている。

 

実際の試合展開は、事前の分析通りに進んだ。彦根工業は際どいコースへの投球を徹底して見送り、四球を選ぶことを厭わない姿勢を貫いた。

 

颯太が得意とする速球についても、事前の対策が徹底されており、初速こそ捉えられずとも、際どい球に食らいついてファウルで粘るという戦術が繰り返された。一球一球にじりじりと投球数を削られる展開が続き、五回を終えた時点で颯太の投球数はすでに大会通算の平均を大きく上回っていた。

 

打者としての颯太に対しても、同様の対策が徹底されていた。甘い球は絶対に投げず、際どいコースへの投球と、明確なボール球を織り交ぜた配球で勝負を避け続ける采配が九回まで貫かれている。

 

この試合、颯太の打席には四球による出塁が複数回記録されており、「打たせて抑える」のではなく「そもそも打たせない」という方針が投打両面で徹底されていたことがうかがえる。

 

試合後、彦根工業の主将は取材に対し「うちの練習時間の半分近くを、この一試合のための対策に費やした」と語っており、一校がこれほどまでに一人の選手を意識した準備を行ったこと自体が、颯太の存在の大きさを裏付ける結果ともなった。

 

七回、颯太の球威にわずかな陰りが見え始めたところを突かれ、連続長打を浴びて同点に追いつかれる。八回、颯太はベンチの判断で降板し、二番手投手が緊急登板したが、経験の浅さもあってか制球が定まらず、この回に逆転を許してしまう。

 

打線も相手の巧みな継投を前に反撃しきれず、そのまま逃げ切られる形で試合終了となった。

 

センバツ優勝校のまさかの準々決勝敗退は、大会を通じて最大級の番狂わせとして報じられることになった。試合後、颯太は多くを語らなかったが、後年のインタビューで当時を振り返り、「一人で勝ち続けられると、どっかで本気で思っとったんやと思う。あの試合で、それが甘かったって思い知らされた」と語っている。

 

この敗戦を境に、颯太は体力面・球威面・変化球の精度という三つの要素を同時に伸ばす必要性を強く自覚し、以降の練習メニューを自ら大幅に見直したと記録されている。

 

――――――――――

なんJ実況スレ(夏の滋賀大会・淡海学院まさかの敗退)より

 

1: 名無しさん@実況

センバツ王者、まさかの準々決勝敗退や

 

12: 名無しさん@実況

彦根工業、徹底的に龍崎との勝負避けてきたな

 

18: 名無しさん@実況

際どい球全部ファウルで粘られて球数エグいことになっとったわ

 

25: 名無しさん@実況

二番手が打たれて逆転されたんが痛すぎる

 

31: 名無しさん@実況

これが対策された龍崎なんか

去年までとは別ゲーやったな

 

38: 名無しさん@実況

一人で投げ切る前提のチームやったから

継投になった瞬間もろさが出た感じやな

 

44: 名無しさん@実況

彦根工業の監督、試合後のコメントで

「真っ向勝負したら普通に負けるから避けた」って言い切ってて草

 

50: 名無しさん@実況

センバツ優勝からのこれは反動デカいやろな

夏の甲子園見れんのは普通に残念や

 

56: 名無しさん@実況

でもこれで龍崎がどう変わってくるかやな

去年も負けてから化けとるし

 

61: 名無しさん@実況

彦根工業の主将、練習時間の半分近くこの一戦のために使ったって言うとるやん

 

67: 名無しさん@実況

一人の選手のためにそこまでするとかどんだけ警戒されてんねん

 

73: 名無しさん@実況

逆に言うたらそれだけ徹底的に対策せんと勝てん相手やったってことやろ

 

79: 名無しさん@実況

それでも負けたんは事実やからな

夏はこれで終わりか、悔しいな

――――――――――

 

日本代表選出・国際大会

 

夏の悔しさを引きずる間もなく、颯太のもとには高校日本代表候補としての招集がかかった。選抜優勝と、シーズンを通じての安定した成績が評価された形であり、航もまた捕手としてこの代表チームに選出されている。

 

代表合宿では、全国から集まった同世代の強豪選手たちと肩を並べることになったが、颯太の打撃データは合宿参加メンバーの中でも頭一つ抜けていたと記録されている。

 

一方で投手としての評価は、「実力は間違いなく上位だが、一人で相手打線を圧倒しきる絶対的な支配力という点では、まだ突き抜けた存在ではない」というものだった。この評価は、夏の滋賀大会での敗戦とも符合するものであり、颯太自身もこの時期、投手としての自分の立ち位置を冷静に見つめ直していたとされる。

 

国際大会本番、颯太は投打の両面で存在感を発揮した。打者としては大会を通じて打率5割近い数字を残し、要所での長打も目立った。ただし勝ち上がるにつれて、相手チームが颯太との勝負を明確に避ける場面が増えていったことも記録されている。

 

初戦、格下と目されていた国を相手に、颯太は投打の両面で圧倒的な数字を残し、コールド勝ちに近い内容で快勝した。この試合については、夏の滋賀大会で見せた対策とは無縁の、いわば「実力差がそのまま結果になる」試合として記録されている。

 

二回戦の相手は、地力のあるチームだった。颯太は先発として七回を投げ、要所を締める投球で失点を最小限に抑えた。打者としても勝負どころで長打を放ち、チームの勝利に大きく貢献している。

 

この試合の後半、相手チームが颯太との真っ向勝負を避け始める兆候がすでに見られ、際どいコースを突く投球や、あえて四球を選ばせる場面が増えていったと記録されている。

 

準決勝では格上と目される国の強力打線を相手に苦しい投球となり、要所でしぶとく粘られる展開が続いた。相手打線は颯太の速球を研究してきており、際どい球にも食らいついてファウルで粘る戦術を徹底していた。

 

夏の滋賀大会で経験したのと似た展開に苦しめられながらも、颯太は七回を三失点に抑える粘りの投球でチームを勝利に導き、決勝進出を果たしている。この準決勝について、颯太は後年「彦根工業戦の悪夢がもう一回来たかと思った」と振り返っており、夏の敗戦の記憶が実際にこの場面での投球判断に影響を与えていたことをうかがわせる。

 

決勝の相手は、大会を通じて圧倒的な強さを見せていた強豪国代表だった。颯太は先発として五回まで互角の投げ合いを演じたが、六回に一挙に失点を重ね、試合の主導権を渡してしまう。打者としては要所で長打を放ち反撃を試みたものの、及ばず敗戦。大会は準優勝という結果に終わった。

 

この敗戦は、颯太にとって中学時代の「打たれる気がしなかった」という感覚とは対照的な経験として、後年関係者の間でたびたび言及されることになる。個人としての実力は疑いようもなく高い水準にあったが、「一人の力だけで格上を圧倒する」という段階には、まだ届いていないことを本人が明確に自覚した大会として位置づけられている。

 

一方で、この大会は航にとっても収穫の多い経験となった。全国から集まったトップレベルの投手陣のボールを受ける中で、リード面での引き出しは着実に増えていったと、当時の代表コーチは評価している。

 

決勝戦の敗戦後、航が颯太に対して「今日の配球、後半は俺のミスもあった」と率直に伝えたというエピソードが、当時のチームメイトの証言として残っている。颯太はこれに対して特に反論することなく、「次までにもっと精度上げとく」とだけ返したとされ、二人の関係が単なる腐れ縁ではなく、互いに実力で高め合う関係として機能していたことがうかがえる一幕である。

 

――――――――――

なんJ実況スレ(高校日本代表・国際大会準決勝突破)より

 

1: 名無しさん@実況

龍崎、準決勝も粘って勝ち上がったか

 

10: 名無しさん@実況

夏の彦根工業戦みたいな展開やったらしいな

 

16: 名無しさん@実況

際どい球ファウルで粘られまくって球数エグかったって

 

22: 名無しさん@実況

それでも7回3失点で切り抜けたんは普通にすごいけどな

 

28: 名無しさん@実況

本人的にはトラウマ試合と被って生きた心地せんかったやろな

 

34: 名無しさん@実況

決勝は正真正銘の格上らしいで

どうなるか楽しみや

 

38: 名無しさん@実況

夏の教訓が生きてるのか生きてないのか微妙なところやな

 

42: 名無しさん@実況

それでも勝ち上がってるのはさすがやわ

――――――――――

 

――――――――――

なんJ実況スレ(高校日本代表・国際大会決勝敗退)より

 

1: 名無しさん@実況

高校日本代表、決勝で負けて準優勝か

 

9: 名無しさん@実況

龍崎個人の打撃成績はやばいけどな

打率5割近いんちゃうか

 

15: 名無しさん@実況

投手としては六回に一気に持ってかれた感じやな

 

22: 名無しさん@実況

やっぱ投手として一人で格上圧倒するのはまだ厳しいんかな

 

28: 名無しさん@実況

とはいえ打者としては相変わらず化け物やし

これで投打両方これだけのレベルは他におらんやろ

 

34: 名無しさん@実況

勝ち上がるほど勝負避けられとったのも印象的やったな

向こうも警戒しとるってことやし

 

40: 名無しさん@実況

中学の頃は「打たれる気がしなかった」やったのに

今回は普通に打たれとるからな

成長痛みたいなもんなんかな

 

46: 名無しさん@実況

それでも準優勝は普通にすごいけどな

悔しがってるのは龍崎だけかもしれん

 

52: 名無しさん@実況

これで三年目どう化けるか楽しみになってきたわ

――――――――――

 

秋季滋賀県大会・秋季近畿大会

 

国際大会からの帰国後、間を置かずに秋季滋賀県大会が始まった。颯太は夏の滋賀大会・国際大会という二つの敗戦から得た教訓をすでにこの時点で戦いぶりに反映させており、変化球の制球には明らかな精度向上が見られたと担当コーチは評している。守備陣についても、颯太以外の投手陣の底上げという課題を意識した練習の成果が表れ始めており、失策の数は夏までと比べて明確に減少していた。

 

秋季滋賀県大会では、初戦から決勝まで危なげない内容が続いた。颯太は毎試合で安定した投球を披露し、打者としても長打を量産。決勝でも危なげなく快勝し、秋季滋賀県大会での優勝を果たしている。

 

続く秋季近畿大会でも、淡海学院は他府県の強豪校を相手に上位進出を続けた。初戦・二回戦・準々決勝を突破し、一年目のベスト4を上回る準決勝進出を決めると、そのまま接戦を制して決勝まで勝ち上がった。決勝では近畿地方屈指の古豪と対戦し、颯太自身は要所を締める投球で試合をリードしたが、終盤に一枚上手の継投を敷かれ惜敗。準優勝という結果に終わったが、一年目の成績を明確に上回るこの内容は、翌春の選抜大会出場に向けた選考において極めて有力な材料となった。

 

――――――――――

なんJ実況スレ(秋季近畿大会・淡海学院準優勝)より

 

1: 名無しさん@実況

淡海学院、近畿大会準優勝まで来たか

 

10: 名無しさん@実況

去年のベスト4超えてきたやん

着実に強くなっとるな

 

18: 名無しさん@実況

龍崎の変化球、もう完全に武器になっとるやろこれ

 

25: 名無しさん@実況

守備も夏までと比べたら別チームやん

彦根工業戦の教訓ちゃんと生きとるな

 

33: 名無しさん@実況

これもうセンバツ確実やろ

来年また選抜獲れるんちゃう

 

40: 名無しさん@実況

去年は個人の力、今年はチームで来とる感じあるな

 

47: 名無しさん@実況

三年目、ほんまにどこまで化けるか楽しみすぎるわ

――――――――――

 

二年目・総括

 

帰国後、颯太は夏の滋賀大会での敗戦、そして国際大会決勝での敗戦という、二つの明確な悔しさを抱えたまま秋季大会に臨んでいた。結果としては秋季滋賀県大会優勝・秋季近畿大会準優勝という、一年目を上回る内容を残したが、担当コーチによれば、この時期の颯太は「打たせない投球」という明確なテーマを自ら掲げ、変化球の精度とキレをさらに磨き上げる方向へ練習内容を大きく転換したという。

 

彦根工業戦で見せつけられた「際どい球を徹底的に見送られ、粘られる」という展開への対策として、空振りを奪える質の高い変化球の獲得が急務であると颯太自身が結論づけたことが、当時の練習日誌からうかがえる。

 

打撃面についても、颯太は新たな課題を自覚していた。勝ち上がるにつれて勝負を避けられる場面が増えるという現実を踏まえ、多少ボールゾーンに掛かる際どい球でも確実に対応できる打撃技術と、甘い球を確実に長打に変える精度を、これまで以上に高いレベルで両立させる必要があるという方針を、この時期に自らのうちで固めたとされている。

 

担当の打撃コーチによれば、この時期の颯太は「際どい球をどう仕留めるか」というテーマに特化した特別メニューを自ら申し出て取り組んでおり、ボールゾーンぎりぎりの投球にもバットを止めずに芯で捉える技術の習得に多くの時間を費やしたという。

 

投手としての練習内容にも明確な変化が見られた。従来は球速と力任せの投球を軸にしていたスタイルから、変化球の質そのものを高め、空振りを積極的に奪う投球への転換が図られている。

 

担当コーチは当時を振り返り、「あの二つの敗戦がなければ、颯太はまだ『速い球を投げれば勝てる』という発想から抜け出せていなかったかもしれない」と評しており、二年目に経験した二つの挫折が、三年目以降の飛躍にとって不可欠な転換点になったという見方を示している。

 

航もまた、颯太の投球スタイルの変化に合わせてリードの引き出しを増やす必要に迫られ、オフの間、二人でバッテリーとしての意思疎通を一から見直す作業に多くの時間を費やしたと記録されている。

 

――――――――――

二年目・主要成績まとめ

 

- 春の選抜大会:優勝(創部初の全国タイトル、決勝で福岡実践を撃破)、颯太は大会MVP獲得

- 夏の滋賀大会:準々決勝敗退(対彦根工業、徹底したマークと継投失敗が響く)

- 高校日本代表:選出、国際大会準優勝(決勝で強豪国代表に敗戦)

- 秋季滋賀県大会:優勝

- 秋季近畿大会:準優勝(一年目のベスト4を上回る成績、翌春の選抜出場を確実にする内容)

 

颯太個人成績

- 投手成績:選抜大会時点で防御率0点台を記録するなど安定した内容を披露。夏の滋賀大会では相手の対策により制球以前に「勝負を避けられる」展開に苦しみ、投球数がかさむ試合が増加

- 打撃成績:年間を通じて打率5割前後を維持。国際大会でも高い打率を残すが、勝ち上がるほど四球による出塁が増加傾向

- 課題認識:体力・速球の質・変化球の精度、いずれもさらなる向上が必要と本人が明確に自覚。特に「打たせない投球」の獲得を三年目に向けた最優先課題として設定

――――――――――

 

オフシーズンに入って間もない頃、練習後のグラウンドで颯太が短く漏らした言葉が、当時の部員の記憶として残っている。

 

「圧倒できひんかったら、意味ない」

 

短いが、それまでの颯太の発言の中でも、もっとも本人の内面に踏み込んだ言葉の一つとして、この一言は関係者の記憶に残ることになった。

 

一年目終盤の「来年は、日本一獲りに行く」という宣言は、この二年目シーズンにおいて選抜優勝という形で半分だけ実現し、同時に夏の敗戦と国際大会での敗北という二つの壁によって、道半ばであることを本人に突きつける結果ともなった。

 

この二年目シーズンについて、地元紙のスポーツ担当記者は年末の特集記事の中で「一年目は勢いと才能でねじ伏せる野球、二年目は選抜優勝という成功体験の中で慢心と壁の両方を経験した野球だった」と総括している。

 

特に彦根工業戦での敗北は、それまで「颯太個人の力でどうにかなる」という前提で成り立っていたチーム作りそのものに疑問符を突きつける結果となり、監督・コーチ陣にとっても、来る三年目に向けたチーム改革の必要性を痛感させる契機になったと記事は結んでいる。

 

この年末、航が当時の部内記録係に語ったとされる言葉も残っている。「あいつ、去年までは『打たれる気がしなかった』とか言うとったけど、今年は普通に打たれとるからな。それでもまだ諦めてへんのがあいつらしいわ」

 

颯太のもっとも近くでボールを受け続けてきた航の視点からも、この二年目という一年が、颯太にとって単なる足踏みではなく、次の段階への明確な布石になっていたことがうかがえる証言である。

 

こうして二年目のシーズンは、栄光と挫折が交互に訪れる、颯太にとってこれまでで最も濃密な一年として幕を閉じた。

 

淡海学院というチーム全体にとっても、この年は大きな意味を持つ一年だった。選抜優勝という頂点を経験し、同時に「一人のエースに依存する脆さ」を痛感させられたことで、二番手投手の育成や守備力の底上げといった課題が、初めてチーム全体の共通認識として明確に浮かび上がることになったのである。

 

この課題への取り組みが、三年目のシーズンにどのような形で結実するかは、まだ誰にも分からなかった。だが、この悔しさこそが、翌年――颯太が真の意味で「圧倒的な二刀流」へと変貌を遂げる三年目への、確かな布石になっていく。

 

(第三章 了)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。