打撃
弾道:4
ミート:A
パワー:A
走力:C
肩力:A
守備:C
投球
球速:158km/h
コントロール:A
スタミナ:S
球種:直球・カーブ・スライダー・スプリット・チェンジアップ(すべて実戦レベル)
秋季近畿大会で準優勝という結果を引っさげ、淡海学院は年明け早々にセンバツ出場の内定を受けた。二年連続となる選抜出場は、もはや「番狂わせ」でも「快挙」でもなく、一つの強豪校の当然の歩みとして報じられるようになっていた。地元紙の扱いも一年目・二年目とは明らかに違い、「連覇候補、淡海学院」という見出しが当たり前のように紙面に並んだ。
冬の間、颯太が取り組んだのは、二年目に痛感した二つの敗戦――夏の滋賀大会での彦根工業戦、そして国際大会決勝での敗北――から逆算した練習メニューだった。担当コーチの証言によれば、この時期の颯太は「打たせない投球」というテーマをより具体的な数値目標に落とし込み、変化球ごとの空振り率をブルペン担当者に記録させていたという。
「カットで球数稼ぎ、はもう通用させへん」――この時期に颯太が漏らしたとされる一言が、当時の練習日誌の余白に書き残されている。
並行して、チームとしての改革も本格的に動き出していた。二年目の敗戦で表面化した「颯太一人に依存する脆さ」を解消するため、監督は二番手・三番手投手の育成に明確な優先順位を与え、守備陣にも専門コーチを新たに招聘している。二年秋の時点で颯太以外の投手陣の底上げは緒に就いたばかりだったが、この冬でその取り組みはさらに加速した。
航もまた、颯太の投球スタイルの変化に合わせてリードの引き出しを増やす作業を続けており、オフの自主練習では颯太のブルペンにほぼ毎日付き合っていたと、当時のチームメイトは証言している。二人のバッテリーとしての意思疎通は、この時点ですでに「阿吽の呼吸」と評されるまでの領域に達していた。
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なんJ実況スレ(淡海学院・三年目始動)より
1: 名無しさん@実況
淡海学院、三年目もセンバツ内定か
もう強豪校のそれやん
9: 名無しさん@実況
龍崎、冬の間も変化球の空振り率とか数値で管理しとるらしいで
ストイックすぎる
15: 名無しさん@実況
二番手投手の育成にもガチで力入れてるらしいな
去年の彦根工業戦の教訓生きとる
20: 名無しさん@実況
一年目は個人の才能、二年目は選抜優勝と挫折
三年目はどうなるんや
26: 名無しさん@実況
球速158まで伸びとるらしいで
去年から5キロ近く上がっとるやん
31: 名無しさん@実況
もう化け物通り越して規格外やろこれ
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春季滋賀県大会
四月、春季滋賀県大会が開幕した。三年目を迎えた淡海学院は、初戦から明確な余裕を見せる試合運びだった。颯太は五回途中まで無安打投球を続け、打者としては初回から本塁打を放つなど、圧倒的な内容で快勝している。
二回戦では、監督の判断で颯太を五回までの登板にとどめ、六回以降は二番手投手に託すという采配が取られた。これは前年までには見られなかった試みであり、地元メディアもこの采配を「颯太依存からの脱却を意識した布石」と報じている。二番手投手は緊張しながらも要所を締め、リードを守り切って勝利に貢献した。この一戦は、チームが「颯太一人の力に頼らずとも勝てる」ことを証明した象徴的な試合として、後年たびたび言及されることになる。
準々決勝・準決勝も危なげなく突破し、迎えた決勝の相手は県内中堅校だった。颯太は打者として複数本塁打を記録する一方、投手としても危なげない内容で完投勝利。三年目にして初めて、春季大会での完全優勝を達成した。
大会を通じて、颯太のコントロールには前年とは明らかに異なる精度が備わっており、四球の数はほとんど記録されていない。打撃面でも、オフのトレーニングで向上したパワーが裏付けられる形で、長打率は大会を通じて高水準を維持した。
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なんJ実況スレ(春季滋賀県大会・淡海学院優勝)より
1: 名無しさん@実況
淡海学院、春季大会は完全優勝や
8: 名無しさん@実況
二回戦で龍崎五回で降ろして二番手に任せる采配してたな
14: 名無しさん@実況
それで普通に勝ちきったのがすごいわ
去年までなら考えられんかった
19: 名無しさん@実況
龍崎依存から脱却しつつあるチームって感じやな
24: 名無しさん@実況
そもそも龍崎自身も制球ほぼ完璧やったしな
打つ方も相変わらずの化け物っぷりやし
29: 名無しさん@実況
これセンバツも普通に連覇するやろ
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春の選抜大会
三月、選抜高等学校野球大会が開幕した。淡海学院にとって甲子園は三度目、選抜は二度目の舞台であり、連覇がかかった優勝候補の筆頭として大会前から注目を集めていた。
初戦、颯太は五回まで完全投球を続け、打者としても初回から本塁打を放つ圧巻の内容で快勝した。二回戦も投打で相手を圧倒し、危なげなく勝ち上がっている。この時点で颯太のコントロールには、前年の同時期とは比較にならないほどの安定感が備わっており、変化球で三振を積み重ねる場面が目立って増えていた。
準々決勝では、前評判で優勝候補の一角とされていた東海地方の強豪校と対戦。序盤は互いに一歩も譲らない投手戦となったが、六回に淡海学院の下位打線から出た連打をきっかけに颯太自身が勝ち越しタイムリーを放ち、七回には駄目押しの本塁打を追加。投げては八回を無失点に抑え、九回は二番手投手に継投し、危なげなく逃げ切っている。
準決勝の相手は、中国地方屈指の伝統校だった。颯太は初回から圧倒的な投球を見せ、七回まで無安打投球を続ける。八回にヒットを一本許したものの、動じることなく完投。打者としても本塁打を含む複数安打を記録し、決勝進出を決めた。
迎えた決勝の相手は、これまで春・夏・秋と三度対戦してきた近江振徳高校だった。滋賀県内の実力校同士が、全国の舞台である選抜の決勝で相まみえるのは初めてのことであり、県内メディアはこの一戦を「県内因縁の完全決着」として大々的に報じている。
近江振徳にとっても、これまでの三度の対戦――春季大会での勝利、夏の滋賀大会・秋季大会での敗北――を踏まえ、この決勝に懸ける思いは並々ならぬものがあったと、試合前の同校監督のコメントから読み取れる。「今度こそ、全国の舞台で決着をつけたい」という趣旨の発言が、大会プログラムに残された監督インタビューに記録されている。
試合は序盤から緊迫した展開となった。近江振徳の先発投手は好投を続け、五回まで淡海学院打線を無失点に抑える。颯太も譲らず、五回までゼロ行進を続けていたが、六回、颯太自身の一振りが試合を動かした。カウント2―2からの直球を完璧に捉え、先制の本塁打を叩き込んでいる。
七回、近江振徳は反撃を試みるも、颯太の変化球の前に手が出ず、三者凡退に打ち取られた。八回には淡海学院打線がさらに追加点を挙げ、リードを広げる。九回、颯太は最後の打者を空振り三振に仕留め、試合終了。淡海学院の選抜二連覇が決定した。
三度の対戦を経て迎えたこの決着は、県内メディアにとっても特別な意味を持つ一戦となった。地元紙は「宿命の対決、ついに全国の頂で決着」という見出しでこの試合を報じている。颯太は試合後の取材に対し、近江振徳について問われると「向こうがおったから、俺らもここまで来れた」とだけ短く語ったと記録されている。
颯太個人は二年連続で大会MVPに選出された。表彰式後のコメントでは、「去年は『まだ半分』言うたけど、今年はどうなんかな」と記者団に問われ、少し間を置いてから「夏、獲ってへんから、まだ半分は変わらへん」と答えたとされ、この発言は春夏連覇への強い意欲の表れとして、大会後も繰り返し引用されることになった。
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なんJ実況スレ(選抜決勝・淡海学院vs近江振徳)より
1: 名無しさん@実況
選抜決勝、まさかの淡海学院vs近江振徳や
県内対決を全国の決勝でやるとかできすぎやろ
15: 名無しさん@実況
近江振徳、これまで一勝二敗で負け越しとるからな
今度こそって気合入っとるやろ
34: 名無しさん@実況
六回、龍崎の一発で試合動いたな
52: 名無しさん@実況
七回三者凡退、変化球エグすぎる
70: 名無しさん@実況
試合終了ー
淡海学院、選抜連覇や
71: 名無しさん@実況
近江振徳、また龍崎に阻まれたんか
相性悪すぎるやろ
75: 名無しさん@実況
これで通算対戦成績、淡海学院の圧勝ってことになるな
80: 名無しさん@実況
「向こうがおったから、俺らもここまで来れた」で草
ちゃんとリスペクトしとるやん
85: 名無しさん@実況
MVPも当然二年連続か
もう規格外すぎるわ
90: 名無しさん@実況
「夏、獲ってへんから、まだ半分は変わらへん」
こいつまじで夏獲る気しかないな
95: 名無しさん@実況
これもう夏の甲子園、県勢初優勝の期待背負ってるレベルやろ
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夏に向けて・彦根工業との因縁
選抜連覇という結果は、淡海学院という学校の立ち位置をさらに一段階押し上げることになった。もはや「番狂わせを起こしうる新興校」ではなく、「打倒すべき絶対王者」として、県内のすべての高校から明確に照準を合わせられる存在になっていたのである。
とりわけ、前年の夏の滋賀大会で淡海学院を準々決勝で下した彦根工業高校は、この一年、淡海学院対策により深く力を注いでいたとされる。県内高校野球関係者の間では「彦根工業は今年も龍崎対策を仕込んでくるはずだ」という見方が、大会前から半ば公然と語られていた。
一方の淡海学院も、前年の敗戦を教訓として、明確な変化を遂げていた。守備陣の連携ミスは春の時点でほとんど見られなくなっており、二番手・三番手投手の実戦経験も着実に積み上がっている。「颯太が投げれば勝てる」という一年前・二年前の空気は、この三年目にはほとんど残っていなかったと、当時の部員は振り返っている。
航のリード面での成長も著しかった。二年目の国際大会での経験、そしてオフの間に颯太と重ねてきた意思疎通の積み重ねにより、際どいコースを徹底して見送られる展開への対応策――あえて速球でカウントを整えたうえで、ここぞという場面で高精度の変化球を投じる組み立て――が、この時期にはすでにチームの共通戦術として浸透していた。
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なんJ実況スレ(夏の滋賀大会・組み合わせ発表)より
1: 名無しさん@実況
夏の滋賀大会、組み合わせ出たで
淡海学院は順当に行けば準決勝で彦根工業とやな
11: 名無しさん@実況
去年の借りやんけ
これは見もんやな
18: 名無しさん@実況
彦根工業側もこの一年、淡海学院対策に相当力入れてきたらしいで
24: 名無しさん@実況
淡海学院側も去年の教訓生かして守備も継投も整えてきとるからな
今年はどっちが上手か
29: 名無しさん@実況
選抜は連覇したけど、夏はさすがに滋賀県勢初やろ
今年こそ獲ってほしいわ
35: 名無しさん@実況
夏の甲子園、滋賀県勢まだ一回も獲ったことないんよな
そろそろ来てほしい
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夏の滋賀大会
七月、全国高等学校野球選手権滋賀大会が開幕した。
連覇候補の筆頭としてシード校となった淡海学院は、初戦から圧倒的な内容で勝ち上がりを見せる。颯太は五回コールドに近い内容で試合を決定づけ、打者としても本塁打を含む複数安打を記録した。
二回戦・三回戦も同様に危なげなく突破している。この三試合を通じて、颯太の投球には前年までとは明らかに異なる余裕が備わっており、変化球主体の組み立てで球数を抑えながら試合を作る内容が目立った。
迎えた準決勝、相手は前評判どおり彦根工業高校だった。同校は前年と同様、颯太との真っ向勝負を避ける方針を継続しており、際どいコースへの投球を徹底して見送る戦術を序盤から貫いてきた。
しかし、この日の淡海学院の対応は前年とは明確に異なっていた。颯太は際どい球で無理に空振りを狙うのではなく、あえてストライクゾーンの甘めのコースにも速球を投げ込み、早いカウントで打者を追い込む組み立てに切り替えている。彦根工業打線がファウルで粘る展開になっても、颯太の球威と変化球の精度は前年を大きく上回っており、球数を大きく削られることなく試合を進めることができた。
打者としての颯太に対しても、彦根工業は前年同様、勝負を避け続ける采配を敷いたが、ここで機能したのが下位打線の成長だった。颯太が四球で歩かされる場面でも、後続の打者が確実に長打で応え、得点を重ねていく。前年は「颯太を封じれば試合を封じられる」という前提が成り立っていたが、この試合ではその前提そのものが崩れていた。
七回、颯太に球威の陰りが見え始めたところで、監督はためらわず継投を選択した。前年、経験不足から逆転を許した二番手投手は、この一年で確実に力をつけており、落ち着いた投球で後続を無失点に抑えている。八回・九回も危なげなく試合を締め、淡海学院は前年の雪辱を果たす形で決勝進出を決めた。
試合後、彦根工業の主将は「去年よりさらに強くなっていた。付け入る隙がどこにもなかった」と取材に語っている。この言葉は、淡海学院が単なる個人の力に頼るチームから、隙のない総合力を備えたチームへと変貌を遂げたことを、対戦相手の口から裏付ける証言となった。
決勝は県内中堅校が相手となり、淡海学院は序盤から圧倒的な内容で試合を進め、コールド勝ちに近い大差で1年ぶりの夏の滋賀大会優勝を果たしている。
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なんJ実況スレ(夏の滋賀大会準決勝・淡海学院vs彦根工業)より
1: 名無しさん@実況
リベンジマッチ、淡海学院vs彦根工業や
14: 名無しさん@実況
彦根工業また際どい球見送り作戦きたか
20: 名無しさん@実況
でも龍崎、今年は甘い球も普通に投げ込んどるな
去年より変化球がエグい
28: 名無しさん@実況
下位打線もちゃんと得点しとるやん
龍崎封じても試合封じられへんくなっとる
36: 名無しさん@実況
七回で継投したな
去年のトラウマ克服しとるやん
44: 名無しさん@実況
二番手投手めちゃくちゃ落ち着いとる
一年でここまで成長するんか
52: 名無しさん@実況
試合終了ー
淡海学院、決勝進出や
53: 名無しさん@実況
去年の借り、しっかり返したな
58: 名無しさん@実況
彦根工業の主将のコメント、完全に負けを認めとるな
「付け入る隙がどこにもなかった」て
64: 名無しさん@実況
このチーム、去年より確実に強くなっとるわ
夏の甲子園も期待できそうやな
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夏の甲子園
創部からわずか四年、淡海学院にとって三度目の夏の甲子園出場が決まった。大会前、メディアの論調は明確だった。選抜での二連覇という実績を引っさげながら、淡海学院はもちろん、滋賀県勢そのものが、夏の甲子園において一度も頂点に立ったことがない――この事実が、大会前の特集記事のほぼすべてで取り上げられている。
「選抜は二連覇したが、真の意味で価値が重いとされる夏はまだ」という論調は、地元紙のみならず全国紙にも共通していた。県内の高校野球OBの一人は取材に対し、「滋賀県はこれまで、あと一歩のところで夏の頂点を逃し続けてきた。今年の淡海学院には、その悲願を背負ってほしい」と語っている。
大会が開幕すると、淡海学院はその期待に応える戦いを見せた。初戦、颯太は東北地方の強豪校を相手に、初回から力強い直球で相手打線を封じ込み、六回までパーフェクトピッチングを継続。七回に一本のヒットを許したものの、そのまま完投勝利を収めている。打者としても複数安打を記録し、投打両面での存在感を大会序盤から示した。
二回戦・三回戦も、颯太は投打で相手を圧倒し、危なげなく突破している。この時点で颯太の投球には、二年前の初出場時とは比較にならない安定感が備わっており、変化球を軸とした組み立てで三振を積み重ねる場面が目立った。
準々決勝の相手は、前評判で優勝候補の一角とされていた四国地方の強豪校だった。序盤は互いに得点を許さない緊迫した投手戦となり、七回まで淡海学院は無得点に抑え込まれる苦しい展開が続く。だが八回、下位打線からの粘りの攻撃が実を結び、一挙に逆転。颯太自身もこの回、勝負を決める一打を放っている。投げては九回、危なげなく最後の打者を打ち取り、逃げ切り勝利をつかんだ。この一戦は、大会を通じて最も苦しい試合として、後年たびたび言及されることになる。
準決勝では、関東地方の強豪校を相手に、颯太が初回から圧巻の投球を披露。七回まで無安打投球を続け、打者としても本塁打を放つなど、危なげなく決勝進出を決めている。
迎えた決勝の相手は、全国優勝経験を複数回持つ名門・帝都学園だった。東京都内屈指の伝統校であり、選手層の厚さ、投手陣の完成度ともに、この夏の大会でも最有力の優勝候補と目されていたチームである。
決勝を前にした県内の空気は、これまでの三年間とは明らかに異なるものだった。選抜連覇という実績を持つチームでありながら、なお「夏はまだ」という文脈で語られ続けてきた淡海学院にとって、この決勝は単なる一試合ではなく、県としての長年の悲願そのものを背負う舞台になっていた。地元紙は決勝前日の紙面を丸ごとこの一戦に割き、県内のOB・関係者からのコメントを多数掲載している。あるOBは「滋賀県は甲子園の歴史の中で、いつも『あと一歩』だった。その一歩を、今度こそ超えてほしい」と語った。
試合は決勝という舞台にふさわしい緊迫した内容となった。帝都学園の先発投手は好投を続け、五回まで淡海学院打線を無失点に抑える。颯太も譲らず、五回までゼロ行進を続けた。均衡が破れたのは六回だった。颯太が自ら放った一振りが、右中間を深々と割る先制の三塁打となり、続く打者の犠牲フライで先制点をもぎ取っている。
七回、帝都学園も反撃を試みるが、颯太の変化球の前にことごとく手が出ず、三者凡退に抑えられた。八回、淡海学院打線がさらに追加点を挙げ、リードを二点に広げる。
九回表、帝都学園は一発逆転を狙って上位打線をぶつけてきたが、颯太は冷静に投球を組み立て、最後の打者を空振り三振に仕留めた。その瞬間、甲子園のスタンドから割れんばかりの歓声が上がり、淡海学院の夏の甲子園初優勝、そして滋賀県勢としても悲願の初優勝が同時に決定した。
選抜と合わせた春夏連覇の達成は、全国的にも大きな話題となった。全国紙のスポーツ面には「悲願、ついに」「白紙のキャンバスから頂点、そして頂点へ」といった見出しが並び、テレビの情報番組でも特集が組まれている。地元・野洲市では、選抜優勝時を上回る規模の優勝パレードが企画され、沿道には市内外から多くの人々が詰めかけたと当時の地元紙が伝えている。
颯太個人は、この大会でも大会MVPに選出された。選抜・選手権の二冠、そして二年連続でのMVP獲得という、高校野球史上でも類を見ない実績を打ち立てたことになる。表彰式後の取材で、颯太は「これで、やっと『半分』が終わった」と語り、続けて「でも、これで満足するつもりはない」と付け加えたと記録されている。この発言は、颯太の視線がすでに次のステージ――プロの世界――へと向けられていたことをうかがわせるものとして、後年たびたび引用されることになる。
――――――――――
なんJ実況スレ(夏の甲子園決勝・淡海学院vs帝都学園)より
1: 名無しさん@実況
決勝、淡海学院vs帝都学園やな
滋賀県勢、悲願の夏制覇なるか
45: 名無しさん@実況
六回、龍崎の三塁打で先制やんけ
52: 名無しさん@実況
犠牲フライで先制点入ったな
70: 名無しさん@実況
七回三者凡退、変化球でねじ伏せとるな
88: 名無しさん@実況
八回追加点で二点差か
これは行けるんちゃうか
99: 名無しさん@実況
九回表、帝都学園上位打線ぶつけてきたで
最後の山場や
110: 名無しさん@実況
三振ー!!!
111: 名無しさん@実況
試合終了ー
淡海学院、夏の甲子園初優勝やあああああ
112: 名無しさん@実況
滋賀県勢、悲願の夏制覇やああああ
待ちに待ったこの瞬間や
115: 名無しさん@実況
春夏連覇も同時達成か
これもう歴史に残る快挙やろ
120: 名無しさん@実況
龍崎、二年連続MVPとか意味わからん記録作っとるな
125: 名無しさん@実況
「これで、やっと『半分』が終わった」で泣いた
128: 名無しさん@実況
「でも、これで満足するつもりはない」
まだ上見とるのかこいつ
133: 名無しさん@実況
滋賀県民、今日ばかりは全員野球ファンやろこれ
138: 名無しさん@実況
無名の新設校が四年で日本の頂点に立った瞬間、リアルタイムで見れて幸せやったわ
――――――――――
日本代表選出・国際大会優勝
夏の甲子園優勝の余韻も冷めやらぬ中、颯太のもとには中学時代から三度目となる高校日本代表候補としての招集がかかった。春夏連覇という実績、そして二年連続でのMVP獲得という記録が高く評価された形であり、航もまた三度目の代表選出を果たしている。
代表合宿では、全国から集まった同世代の強豪選手たちと肩を並べることになったが、颯太の投打両面でのデータは、合宿参加メンバーの中でも群を抜いていたと記録されている。二年前の合宿では「実力は上位だが、一人で圧倒しきる絶対的な支配力にはまだ届いていない」という評価だったが、この年の評価は明確に異なるものだった。担当コーチの一人は「投打ともに、もはや同世代の中では別格の存在」と評している。
国際大会本番、颯太は開幕から圧倒的な内容を見せた。初戦・二回戦を投打で圧倒し、コールド勝ちに近い内容で危なげなく突破している。
準決勝の相手は、二年前に颯太たちを苦しめた、際どい球を徹底して見送る戦術を得意とする強豪国だった。序盤、相手打線は二年前と同様の戦術を仕掛けてきたが、颯太はこれを冷静に打ち破る投球を披露する。前年の彦根工業戦、そして夏の滋賀大会での彦根工業リベンジ戦で培った「対策への対策」がここでも機能し、要所で高精度の変化球を織り交ぜながら、七回を無失点に抑える快投を見せた。試合後、颯太は「あの手の対策には、もう慣れた」と短く語ったとされる。
迎えた決勝の相手は、大会を通じて圧倒的な強さを見せていた優勝候補筆頭の強豪国代表だった。二年前、颯太たちはこの舞台の決勝で敗れており、雪辱を懸けた再戦という形になる。
決勝、颯太は序盤から力の入った投球を披露した。相手打線を五回まで無失点に抑え込み、打者としても三回に先制の本塁打を放っている。二年前は六回に一挙に失点を重ねて主導権を渡す展開となったが、この年は違った。六回、相手打線が反撃を試みるも、颯太の変化球の精度がそれを上回り、三者凡退に打ち取っている。
七回以降も颯太の投球は揺るがず、打者としても追加点を記録。九回、最後の打者を三振に仕留めた瞬間、高校日本代表の優勝が決定した。颯太は大会MVPにも選出され、投打両面での圧倒的な実績が、この大会でも証明される結果となった。
この優勝は、颯太にとって中学時代の国際大会以来となる、代表チームでの頂点だった。試合後の取材で、颯太は「中学の時は『打たれる気がしなかった』って言うたけど、あの感覚がやっと戻ってきた気がする」と語っており、この発言は、二年間の挫折と成長を経て、颯太が投打両面で完成の域に近づいたことを象徴するものとして、後年たびたび引用されることになる。
航にとってもこの大会は特別な意味を持つものとなった。決勝終了後、颯太と航がグラウンドで短く言葉を交わす場面があったと、当時のチームメイトが証言している。航が「今日の投球、完璧やったな」と声をかけると、颯太は「お前が組み立ててくれたからや」とだけ返したとされる。中学時代から積み重ねてきたバッテリーとしての信頼関係が、この場面で一つの完成形として結実したことをうかがわせるエピソードである。
――――――――――
なんJ実況スレ(高校日本代表・国際大会決勝速報)より
1: 名無しさん@実況
高校日本代表決勝、二年前のリベンジマッチや
30: 名無しさん@実況
龍崎三回に先制ホームランやんけ
55: 名無しさん@実況
六回三者凡退、二年前と全然違うやん
70: 名無しさん@実況
七回以降も危なげないな
別人みたいに安定しとる
95: 名無しさん@実況
試合終了ー
高校日本代表、優勝やああ
96: 名無しさん@実況
二年前のリベンジ完全に果たしたな
100: 名無しさん@実況
「打たれる気がしなかった感覚が戻ってきた」で鳥肌立ったわ
104: 名無しさん@実況
榊原とのやり取りも良すぎるやろ
「お前が組み立ててくれたからや」で泣いた
108: 名無しさん@実況
選抜連覇、夏の甲子園悲願の初優勝、そして代表でも優勝MVPて
もう手が付けられんレベルやな
112: 名無しさん@実況
これでいよいよドラフトか
どこが指名するんやろ
――――――――――
三年目・総括、そして高校篇の終わり
三年目のシーズンは、颯太にとってもチームにとっても、これまでの二年間で積み上げてきたすべてが結実する一年となった。春季滋賀県大会・選抜大会・夏の滋賀大会・夏の甲子園・秋の代表活動――そのすべてで頂点に立つという、高校野球史上でも類を見ない結果を残している。
――――――――――
三年目・主要成績まとめ
- 春季滋賀県大会:優勝
- 春の選抜大会:優勝(選抜二連覇)、二年連続大会MVP
- 夏の滋賀大会:優勝
- 夏の甲子園:初優勝(滋賀県勢として悲願の初優勝、春夏連覇達成)、大会MVP
- 高校日本代表:選出、国際大会優勝、大会MVP
颯太個人成績
- 投手成績:年間を通じて防御率0点台を維持。夏の甲子園・国際大会という最大の舞台でも安定した投球を披露し、「打たせない投球」がほぼ完成の域に達したと評価される
- 打撃成績:年間を通じて打率5割前後を維持しつつ、パワーの向上により長打率もさらに上昇。勝負を避けられる場面でも確実に結果を残す打撃技術を確立
- 主要タイトル(三年目単年):春季大会優勝、選抜優勝・大会MVP、夏の滋賀大会優勝、夏の甲子園優勝・大会MVP、日本代表優勝・大会MVP
――――――――――
創部からわずか四年での春夏連覇、そして滋賀県勢としての夏の甲子園悲願の初優勝という結果は、淡海学院というチームの立ち位置を決定的に変えることになった。一年目、練習試合の申し込みすら断られていた無名の新設校は、この三年間で、県内はおろか全国区の強豪校として完全に定着していたのである。
淡海学院の躍進は、颯太たちの代だけの現象では終わらなかった。三年間で整備された指導体制、そして颯太自身が中学時代から一貫して見せてきた「チーム全体の底上げに口を出す」姿勢は、下級生たちにも確実に受け継がれていた。颯太たちが二年生・三年生だった時期にベンチ入りしていた下級生の中には、すでに県内トップクラスの評価を受ける選手も複数おり、地元紙は「淡海学院に、颯太世代なき後の不安はほとんど見当たらない」と評している。
担当コーチの一人は、颯太たちの卒業を前にした取材に対し、「颯太たちが作ったのは、一時的な強いチームじゃない。個人の力に頼らない野球、データを自分で管理する姿勢、そういうものを含めた『文化』そのものを、この三年間でこの学校に根付かせてくれた」と語っている。
かつて練習試合の申し込みすら断られていた近江振徳・彦根工業といった県内の伝統校も、この三年間の対戦を経て、淡海学院を明確に「同格、あるいはそれ以上の存在」として認める姿勢に変わっていた。県内の高校野球関係者の間では、颯太たちの卒業後も、淡海学院・近江振徳・彦根工業の三校が県内の勢力図を形成していくだろうという見方が、大会後の総括記事で繰り返し示されている。白紙のキャンバスから始まったこの学校は、四年という短い期間で、滋賀県における新たな野球の中心地の一つへと姿を変えていた。
卒業・進路を控えた颯太のもとには、プロ野球のスカウトが連日のように視察に訪れていたと、当時の学校関係者は証言している。投打両面で完成度を高めた颯太に対する評価は、ドラフト解禁を待たずしてすでに「文句なしの一位候補」でほぼ一致していたと、複数の球団関係者が後年のインタビューで振り返っている。
卒業式を控えたある日、後輩部員たちに向けて颯太が残した言葉が、当時の部内記録として残っている。
「実績がないなら、これから作ればいい――中学の時、俺はそう言ってこの学校を選んだ。お前らはもう、実績のある学校の後輩や。今度はお前らが、その実績を守って、超えていく番や」
短いが、颯太らしい直接的な言葉だった。それまでビッグマウスと評されてきた颯太の発言の中でも、この一言は、後輩たちへの餞として、部内で長く語り継がれることになる。
こうして、無名の新設校を舞台に始まった颯太の高校三年間は、春夏連覇・県勢悲願の夏制覇・日本代表優勝という、これ以上ないほどの結果をもって幕を閉じた。白紙のキャンバスに描かれたこの三年間の軌跡は、颯太個人の物語であると同時に、一つの高校、そして一つの県の野球史そのものを塗り替えた記録として、これから先も長く語り継がれていくことになる。
そして颯太の物語は、次のステージへと進んでいく。
(第四章 了)