俺が抑えて、俺がホームラン打てばいいじゃん   作:大浦泉

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龍崎颯太 プロ入団時ステータス
※プロの基準で再計測。高校時代の数値がそのまま引き継がれるわけではなく、一部の能力は「プロレベルで測り直すと発展途上」という扱いで下方修正されている

打撃
弾道:3
ミート:A
パワー:C(高校時代Aから、プロ基準での再評価により大幅下方修正)
走力:C
肩力:A
守備:C

投球
球速:158km/h
コントロール:C(高校時代Aから、プロ基準での再評価により下方修正)
スタミナ:B
球種:
・直球(実戦レベル)
・カーブ(実戦レベル)
・スライダー(高校時代は実戦レベル→プロ基準では発展途上)
・スプリット(高校時代は実戦レベル→プロ基準では発展途上)
・チェンジアップ(高校時代は実戦レベル→プロ基準では発展途上)


第五章 プロ篇・1年目

龍崎颯太の進路は、ドラフト解禁のかなり前から実質的に一本化されていた。投打ともに完成度を高めた颯太に対する評価は、複数球団のスカウト陣の間で「文句なしの一位候補」でほぼ一致しており、その状況は秋のドラフト会議当日まで揺らぐことはなかった。

 

ドラフト会議、颯太の名前は満場一致で最初の一位指名として読み上げられた。競合した球団は複数に上ったが、交渉権を引き当てたのは、長年低迷を続けてきたセ・リーグの古豪・六甲ブレーブスだった。

 

六甲ブレーブスは、かつて日本一の経験を持つ伝統球団でありながら、颯太の入団前の数年間はBクラスに沈む年が続いていた球団である。黄色と黒の縦縞のユニフォーム、応援団が響かせる球団歌、ジェット風船が舞う独特の応援演出――そのすべてにおいて熱狂的なファン層を抱えながらも、「勝てない伝統球団」という不名誉なイメージが定着しつつあった時期だった。地元紙は交渉権獲得を報じる紙面で、「低迷する古豪に、待望のドラフト一位」という見出しを掲げている。

 

――――――――――

 

なんJ実況スレ(ドラフト会議・六甲ブレーブス交渉権獲得)より

 

1: 名無しさん@実況

六甲、龍崎の交渉権引き当てたか

 

9: 名無しさん@実況

あそこ最近ずっとBクラスやったもんな

ワンチャン救世主か

 

15: 名無しさん@実況

高校時代の実績見たら一位競合するのも当然すぎるわ

春夏連覇+日本代表優勝MVPとか化け物すぎる

 

22: 名無しさん@実況

六甲、これで何年ぶりのAクラス期待できるんや

 

30: 名無しさん@実況

交渉権引き当てた瞬間の球団関係者の顔、完全に安堵しとったな

 

――――――――――

 

滋賀県野洲市出身の颯太にとって、六甲ブレーブスは物心ついた頃から馴染みのある球団だった。テレビ中継で目にする黄色と黒の縦縞は、少年時代の颯太にとって特別な存在感を放っていたと、後年の本人のインタビューでも語られている。交渉権が確定した直後の入団会見で、颯太はまずその点に触れた。

 

「小さい頃からずっとこのユニフォーム見て育ってきたんで、それを自分が着られるんは、素直に嬉しいっすね」

 

関西地区の球団に、関西出身の選手が入団する――ある意味では自然な巡り合わせではあったが、それが単なる地元凱旋という以上の重みを持っていたのは、颯太自身の口から語られたこの一言があったからだった。憧れの球団への入団という事実に対して、颯太らしからぬ、素直で控えめな言葉が並んだことに、会見場の記者たちはやや意外そうな反応を見せたという。

 

だが、颯太の会見はそこで終わらなかった。しばらくの沈黙のあと、颯太は続けてこう言い放っている。

 

「ただ、憧れとか懐かしさだけで終わるつもりはないっすから。ずっと勝ってないチームなんは知ってます。それを変えるんが、俺の仕事やと思ってます」

 

そしてお決まりの一言が続いた。

 

「打つのも抑えるのも、俺一人でどうにかできる自信はあります。プロやからって、それが変わるとは思ってないんで」

 

憧れと謙虚さを見せた直後に、いつもの颯太らしい強気な発言で締める――この緩急のある会見は、翌日のスポーツ紙一面を飾ることになった。

 

――――――――――

 

なんJ実況スレ(龍崎颯太・入団会見)より

 

1: 名無しさん@実況

龍崎の入団会見、まず「憧れのユニフォーム着れて嬉しい」からの

 

12: 名無しさん@実況

そこから「勝ってないチーム変えるのが俺の仕事」に繋げるの草

緩急エグすぎる

 

20: 名無しさん@実況

「打つのも抑えるのも俺一人でどうにかできる」

高校の時と同じテンションで草生えるわ

 

27: 名無しさん@実況

地元球団に地元出身の一位指名選手とか

これもう地元民歓喜案件やろ

 

34: 名無しさん@実況

六甲ファン、この会見だけでもう期待値爆上がりしとるやろな

 

41: 名無しさん@実況

プロ相手にどこまで通用するか楽しみやわ

 

――――――――――

 

プロ初先発

 

シーズン開幕を前にしたキャンプ・オープン戦で、颯太は早々にプロという舞台の厳しさを実感することになる。

 

 

 

金属バットから木製バットへの持ち替えは、颯太にとって想像以上に大きな壁だった。バッティングケージで最初の一振りを終えた瞬間、颯太自身、違和感を隠せなかったという。

 

「芯で捉えた感触は、変わらへんはずやのに」

 

打球音は高校時代と何も変わらない。だが、ボールの伸びだけがまるで違った。高校まで軽々とスタンドまで運んでいたはずの打球が、外野フェンス手前で失速していく。バットを見つめる颯太の表情に、これまで見せたことのなかった戸惑いが浮かんでいた。

 

 

 

開幕戦、颯太は先発マウンドに立った。初回、先頭打者への直球は威力十分、簡単に見逃し三振を奪う。だが二人目の打者への二球目、颯太が投げ込んだスライダーに、相手打者は表情ひとつ変えなかった。

 

明らかに、ボールだと分かって見送っている。

 

高校時代なら、コースに決まったこの一球だけで空振りを奪えていたはずだった。だが目の前のベテラン打者は、曲がり幅も落差も、まるで見透かしたように冷静に見切り、ストライクゾーンの外へ抜けるボール球として正確に判定させていた。颯太の中で、何かがかちりと音を立てて組み変わった。

 

――曲がってるだけじゃ、駄目なんか。

 

その一球を境に、颯太は配球を組み立て直した。決め球で勝負するのではなく、直球とカーブだけで丁寧にカウントを整えていく。粗削りな武器しか持っていない、高校一年目に逆戻りしたような投球だったが、それでも力でねじ伏せ、五回を三失点で切り抜けた。

 

 

 

打者としては、この開幕戦で二本のヒットを放っている。だがそのどちらも、長打にはならなかった。ベンチに戻ってきた颯太が、バットを見つめながらぽつりと漏らした一言を、隣にいたチームメイトが覚えている。

 

「ミートだけは、通用するんやな」

 

それは安堵の言葉ではなかった。むしろ、自分に残された武器の少なさを、静かに確認しているような響きだった。

 

――――――――――

 

なんJ実況スレ(龍崎颯太・プロ初先発)より

 

1: 名無しさん@実況

龍崎、プロ初先発どうやった

 

15: 名無しさん@実況

5回3失点で試合は作ったけど、変化球ガンガン見切られとったな

 

23: 名無しさん@実況

打つ方はヒット2本、でも長打なしか

木のバットの壁、思ったよりでかいんかな

 

30: 名無しさん@実況

高校の時とは別人みたいな苦戦っぷりで草

これがプロの洗礼か

 

38: 名無しさん@実況

それでも5回3失点でまとめてくるあたり、地力はやっぱりあるんやろな

 

45: 名無しさん@実況

「ミートだけは、通用するんやな」って言葉、地味に重いな

本人が一番わかっとるんやろこの現実

 

――――――――――

 

このオープン戦・開幕戦での経験を受け、担当の打撃コーチと投手コーチはそれぞれ颯太に率直な評価を伝えている。

 

「コースは悪くない。ただ、その変化球、高校では空振り取れとったかもしれんけど、プロは平気で見送って狙い撃ちしてくるからな」

 

「木のバットになった分、高校の時みたいな本塁打の数はもう期待せん方がええ。まずは体そのものを、プロの規格に作り直すところからやな」

 

颯太はこの二つの評価を、いつもと変わらぬ様子で黙って受け止めたという。その日のうちからブルペンでの投げ込みに変化球の曲がり幅と落差を記録し直す作業を再開し、ウエイトルームで過ごす時間も目に見えて増えていった。

 

四月終了時点、颯太の打率はリーグ上位に位置する水準まで伸びていた一方、本塁打はわずかにとどまっている。「打率は驚異的だが長打が出ない新人」という評価が、この時期のメディアの間で定着しつつあった。投手としても一軍ローテーションに定着し、登板日以外は外野手として出場を続ける、まさに二刀流そのものの起用法が球団によって早々に採用されている。

 

一方、パ・リーグでは博多サンダーズが開幕から独走態勢を築きつつあった。この年、颯太と中学・高校時代を共に過ごしたバッテリー相手・榊原航も同球団に入団していたが、航は開幕を二軍で迎え、夏場にかけてようやく一軍に定着し始めたところだった。この時点で颯太と航が公式戦で相まみえる機会はまだなく、両者の動向はそれぞれ別々の紙面で報じられるにとどまっている。

 

シーズン中盤、打撃コーチとの正式な面談で、颯太のパワー不足という課題が改めて言語化された。「ミートの技術だけならリーグ屈指。ただ、それだけでは超一流にはなれへん」――この一言を機に、颯太はウエイトトレーニングの時間をさらに増やし、まずは体づくりからやり直すという方針を自ら受け入れている。

 

――――――――――

 

クライマックスシリーズ・ファーストステージ

 

颯太の奮闘もあり、六甲ブレーブスは数年ぶりとなるセ・リーグ3位でレギュラーシーズンを終え、クライマックスシリーズ・ファーストステージへの進出を決めた。相手は、リーグ2位に食い込んだ横浜トライトンズ。アドバンテージのない3試合制、上位球団のホームである横浜のトライトンパークでの開催となる。

 

 

 

第一戦、颯太は先発マウンドに立った。シーズン終盤にかけて改善の兆しを見せていたスライダーは、この日も要所で空振りを奪えていた。それでも六回、疲労からわずかに制球が乱れたところを捉えられ、逆転を許して降板する。打者としても結果を残せず、六甲はこの第一戦を落とした。

 

第二戦、颯太が先発しないこの試合を、六甲打線は粘り強く食い下がって勝利。崖っぷちで最終戦に望みをつないだ。

 

 

 

迎えた第三戦、颯太は外野手としてスタメン出場した。四回、際どい変化球を強引にライト前へ運ぶ、シーズンを通じて数少ない見せ場の一つとなる長打を放つ。だが投手陣が終盤で踏ん張りきれず、じりじりと点差を広げられていく。九回、最後の打者が凡退した瞬間、六甲ブレーブスの一年目のシーズンは、ファーストステージ敗退という結果で幕を閉じた。

 

ベンチに戻ってきた颯太は、しばらく黙ったまま整列の輪から少し離れた場所に立っていた。誰かが声をかけるまで、その姿勢は動かなかったという。

 

――――――――――

 

なんJ実況スレ(CSファーストステージ・六甲敗退)より

 

1: 名無しさん@実況

六甲、ファーストステージで散ったか

 

9: 名無しさん@実況

それでも新人一年目でAクラス+CS進出は立派すぎるやろ

 

17: 名無しさん@実況

龍崎、シーズン通してよう頑張った方やと思うわ

 

25: 名無しさん@実況

博多はこのまま日本一までいきそうな勢いやな

 

33: 名無しさん@実況

来年、龍崎がパワーと変化球の課題両方仕上げてきたらどうなるんや

 

40: 名無しさん@実況

1年目からこれだけの土台作れたら十分やろ

来年以降が本当に楽しみやわ

 

――――――――――

 

シーズン終了後、颯太の一年目の成績は次のようにまとめられている。

 

プロ1年目・主要成績まとめ

 

- 六甲ブレーブス:セ・リーグ3位(数年ぶりのAクラス入り)

- クライマックスシリーズ:ファーストステージ敗退(横浜トライトンズに1勝2敗)

- 日本シリーズ:博多サンダーズが優勝

 

颯太個人成績(打者)

- 出場:141試合

- 打率:.326(リーグ2位、新人としては球団史上最高)

- 本塁打:9

- 打点:57

- 長打率:.451

- 課題:木製バットへの適応、パワー不足を補うための体づくりが継続課題

 

颯太個人成績(投手)

- 登板:22試合(すべて先発)

- 投球回:132回

- 防御率:3.58

- 勝敗:11勝8敗

- 奪三振:148

- 四球:49

- 課題:制球自体は大崩れしなかったが、変化球のキレがプロレベルに届かず、シーズン序盤は狙い撃ちされる場面が目立った。シーズン後半にかけてスライダーのキレに改善の兆し

 

主要タイトル

- 新人王を満場一致で獲得。投打二部門でこれだけの数字を同時に残した新人は球団史上はもちろん、リーグ史上でも例がなく、選考は早々に大勢が決していたと選考委員の一人が後年明かしている

 

――――――――――

 

シーズン終了後に発表された新人王には、颯太の名前が満場一致で選出されている。選考委員の一人は後年、「他の候補と比較する段階にすらならなかった。満場一致というのはこういう時のための言葉や」と振り返っている。

 

シーズンオフに入って間もない頃、球団の納会で颯太が短く語った言葉が、当時の球団広報の記録として残っている。

 

「打つ方はまだ半人前、投げる方はもっと半人前。来年は、両方ちゃんと一人前にする」

 

高校時代から一貫している「有言実行のビッグマウス」らしい発言だったが、この年の颯太にとって、それは決して虚勢ではなかった。プロという舞台で初めて味わった「圧倒できない」感覚――木製バットへの適応とパワー不足という打者としての壁、そして変化球のキレがまるで通用しないという投手としての洗礼――は、颯太自身にとって、中学・高校時代とは質の異なる、新しい種類の挫折だった。

 

だが、その挫折への向き合い方だけは、これまでと何一つ変わっていなかった。敗戦や課題に直面するたびに練習量を増やし、数値で自らを管理し、着実に穴を埋めていく――その姿勢は、野洲中央中学校の練習日誌にも、淡海学院の指導記録にも、繰り返し記されてきたものと同じだった。

 

――――――――――

 

なんJ実況スレ(龍崎颯太・プロ1年目総括)より

 

1: 名無しさん@実況

龍崎の1年目、まとめるとどうやったんや

 

8: 名無しさん@実況

打率はリーグトップ級、パワー不足が課題

投げる方は変化球のキレがまだ発展途上

チームは何年ぶりかのAクラス、って感じやな

 

15: 名無しさん@実況

新人王満場一致とか、これは来年以降どうなってまうんや

 

22: 名無しさん@実況

「打つ方も投げる方もまだ半人前」で草

1年目からこれだけの数字残しといて半人前て

 

29: 名無しさん@実況

高校の時からずっと「敗戦→練習量増やす」の繰り返しやからな

このメンタリティはほんまにブレへんわ

 

36: 名無しさん@実況

博多は優勝、六甲はAクラスで着実に前進

榊原も一軍に食い込んできとるし、二人とも順調な滑り出しやな

 

43: 名無しさん@実況

来年、龍崎がパワーと変化球のキレ両方仕上げてきたらどうなるんや

考えただけでわくわくするわ

 

50: 名無しさん@実況

プロの壁にぶつかった1年目、来年どう化けるか楽しみすぎる

 

――――――――――

 

こうして、龍崎颯太のプロ1年目のシーズンは幕を閉じた。高校三年間で積み上げてきたすべての栄光を土台にしながらも、プロの舞台は颯太に対して、初めて「圧倒できない現実」を突きつけた一年だった。打率という武器を早々に手にした一方で、木製バットへの適応とパワー不足という新たな課題、そして変化球のキレというプロの厳しさに苦しんだこの一年は、しかし同時に、六甲ブレーブスという長年低迷を続けてきた古豪に、久方ぶりの光をもたらす一年でもあった。

 

「打つ方も投げる方も、両方ちゃんと一人前にする」――颯太が納会の場で残したこの言葉は、後の球団史を振り返る記事の中で、彼の黄金期の起点として、たびたび引用されることになる。

 

(第五章 了)修正済み)




プロ野球12球団紹介(架空球団設定)

《セ・リーグ》
- 六甲ブレーブス(颯太所属):黄色×黒の縦縞ユニフォーム。本拠地は六甲山麓の「六甲園球場」。過去に日本一経験はあるが長年低迷しBクラス常連だった古豪。颯太入団の年からAクラス復帰
- 東京インペリアルズ:本拠地は都心の大型屋内球場「帝都ドーム」。リーグ最多優勝を誇る名門・金満球団。常にリーグの盟主的存在
- 横浜トライトンズ:本拠地はみなとみらい地区の臨海球場「トライトンパーク」。若手中心の新興勢力、下位〜中位を行き来
- 名古屋シャチホコズ:本拠地は屋内球場「金鯱ドーム」。堅守型、投手力重視のチームカラー
- 広島クリムゾンズ:本拠地は赤基調のスタジアム「クリムゾンフィールド広島」。地元密着・生え抜き重視の育成型球団
- 藍空スカイラークス:本拠地は都内の球場「藍空球場」。機動力野球、中位が定位置

《パ・リーグ》
- 博多サンダーズ(榊原航所属):本拠地は大型ドーム「博多サンダードーム」。資金力豊富な最強軍団、リーグ屈指の常勝チーム
- 千葉オーシャンズ:本拠地は幕張の海沿い球場「オーシャンパーク幕張」。独自路線・下剋上が持ち味の中堅球団
- 所沢グリズリーズ:本拠地は緑豊かな球場「フォレストスタジアム所沢」。育成型・黄金期の記憶を持つ古豪
- 仙台コンドルズ:本拠地は「コンドルスタジアム仙台」。東北初のリーグ優勝経験を持つ新興勢力
- 大阪ジャガーズ:本拠地は屋内球場「浪速ジャガードーム」。関西のもう一方の雄。六甲ブレーブスとは交流戦で毎年注目される関西対決
- 北海道グレイシャーズ:本拠地は「グレイシャードーム北海道」。
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