俺救2   作:ネネネノノ

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第1章 『全ての始まり』
1話『秘めた力』


夕暮れの西校舎は、いつも通り静かだった。どこからか聞こえる吹奏楽部の音。廊下を走る足音。それが、私、まいと、幼なじみのたくま、そして友人のきいとの、ありふれた日常だった。「ねえ、たくま、また数学の宿題忘れたでしょ」「しょうがねえだろ、昨日ゲームのイベントだったんだよ」前髪をいじりながら笑うたくまの横顔を、私は呆れながら見つめていた。その隣で、きいはいつも通りの無邪気な笑顔で私たちのやり取りを眺めていた。そんな当たり前の毎日が、永遠に続くのだと信じて疑わなかった。異変は、放課後の教室で起きた。夕日が赤黒く教室を染めた瞬間、世界から一切の音が消えた。ドクン、と心臓が跳ねる。教室の扉の前に立っていたきいが、ゆっくりと振り返った。その瞳は完全に濁り、底知れない黒い呪力をまとっている。「ねえ、まい。たくま。人間の形って、もっと自由でいいと思わない?」きいが狂気に満ちた笑みを浮かべ、近くを通りかかった女子大生・あかねの腕を掴んだ。あかねの悲鳴が上がる間もなく、彼女の身体は骨の軋む音を立てて引き延ばされ、鋭利な「一本の長剣」へと変貌した。きいこそが、この街で多発していた人間消失事件の黒幕だったのだ。「ひっ……あ、あかねさん……!? きい、お前何して……!」たくまがきいの元へ駆け出そうとした。だが、きいの視線がたくまに向く。「次は、たくまの番ね」きいの呪力の刃がたくまに迫る。このままでは、たくまも肉体を弄ばれ、化け物にされてしまう。その瞬間、私の頭の中で何かが弾けた。眠っていた「呪術」の才能が、恐怖と絶望によって強制的に開花したのだ。(たくまを渡さない。きいに触れさせるくらいなら、私が——!)「——術式展開。式神創造」私は叫び、たくまの身体に自分の全呪力を流し込んだ。きいに変形させられる前に、私の「道具」として、私の支配下に置くことで彼を守るために。「え……まい……? 体が、動か……な……」たくまの身体が、ドロドロとした漆黒の闇に包まれていく。彼の前髪は完全に消え去り、黒い塊から剥き出しになった顔だけが突き出た。体は巨大な「天秤」の姿へと変形し、自分で動かすことのできない、異形にして完璧な私の式神「ジャッジマン」へと生まれ変わった。「あはは! 自分で幼なじみをそんな姿にしちゃうんだ! 面白いね、まい!」きいは、長剣に変えたあかねを構えて笑う。私は、完全に意志を失い、私の呪力だけで動くたくまの背に飛び乗った。涙を拭い、目の前の親友だった「敵」を見据える。「いくよ、たくま。……きいを、絶対に許さない」前髪のないたくまの顔が、私の命令に従って一斉にきいへと飛び出した。血と肉の弾ける、最悪の放課後が幕を開ける。

 

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