俺救2   作:ネネネノノ

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第11話『助けてくれてありがとう』

「——おいおい。俺たちの可愛い後輩(4級)を、寄ってたかってイジめてんじゃねえよ」空間が爆ぜるような轟音とともに、訓練場の天井が跡形もなく吹き飛んだ。凄まじい呪力の奔流が、クラウンとミラーの圧力を一瞬で相殺する。煙の向こうから現れたのは、二人の青年だった。一人は不敵な笑みを浮かべ、神代すら遥かに凌駕する圧倒的な呪力の密度を誇る、特級上位の呪術師、リント。そしてその隣で、退屈そうに前髪を払いながら、周囲の空間そのものを歪ませるほどの質量を持った呪力を身にまとっているのは、同じく特級上位の優斗(ゆうと)。「チッ……本部のお出ましってわけね。しかも、上層部の懐刀か」ミラーが鏡の破片を背後に収めながら、忌々しげに呟いた。きいもその場から一歩引き、二人を警戒するように目を細める。「神代、下がってろ。……まいたちも、たくまの後ろに隠れてな」リントの指示に、私は激しく怪我を負った神代を支え、動けないたくまの天秤の影へと必死に身を隠した。前髪のないたくまの顔が、特級上位の二人が放つ「規格外の圧」に、戦慄するようにその視線を震わせている。「優斗、いくぞ。ブラックナンバーのお遊びはここまでだ」「あーあ、面倒くさいけど……やるか」リントと優斗が地を蹴った。次の瞬間、訓練場は人間の動体視力を完全に超えた『特級同士の戦場』へと変貌する。リントの放つ全方位への高密度呪力攻撃が、クラウンの狂気的なジャグリングを力技で叩き潰していく。さらに、優斗の空間を捩じ切るような術式が、ミラーの鏡の世界を次々と粉砕した。3対2(きい・クラウン・ミラー vs リント・優斗)の変則的な激突。「あはは! さすがに特級の上位陣は硬いねぇ!」きいが『あかね剣』のレプリカのような呪力の刃を振るうが、優斗の歪んだ空間に触れることすらできずに弾かれる。ドォン!!!リントの拳がクラウンの防御を突き破り、その身体を壁へと叩きつけた。優斗の追撃がミラーの死角を捉える。戦況は、リントと優斗が若干押し込む形で推移していた。さすがのブラックナンバーといえど、特級上位の二人を相手に、下位のメンバーでは完全に圧倒することはできない。しかし、ブラックナンバー側もタダでは倒れない。クラウンが血を吐きながらも不気味に笑い、ミラーが不吉な巨大な鏡の結界を展開し始める。(これ以上は、お互いにタダじゃ済まない——)空気に走る、特級同士にしか分からない決定的な緊張感。これ以上戦いを長引かせれば、訓練場どころか結界内部が完全に崩壊する。それに、リントたちの目的はあくまで「まいとたくまの保護」であり、きいたちの目的も「たくまの回収」だったが、現状の戦力差ではこれ以上の深追いはリスクが高すぎる。「……クラウン、ミラー。今回はここまでにしよっか」きいが、悔しそうに私とたくまを睨みつけながら言った。「そうだな。これ以上やると、リーダー(レグウィス)に怒られちゃうしね」クラウンが口元の血を拭い、一歩下がる。「フン、異論はない」ミラーも鏡の中にその身を沈めていく。「追うか? 優斗」リントが構えを解かずに問いかける。「いや、やめとこう。神代の治療が先だ。それに……あいつら、まだ底を見せてない」優斗が冷静に周囲の呪力を収束させた。お互いが「これ以上の戦闘は不利益」と瞬時に計算し、同時に引く判断を下した。「まい、たくま。次は必ず、私のコレクションにしてあげるからね……!」きいは最後にそう言い残すと、クラウン、ミラーと共に、夜の闇へと完全に気配を消し去った。嵐が去った訓練場で、私はただ息を切らし、たくまの冷たい身体にしがみつくことしかできなかった。特級上位の二人が来てくれなければ、私たちは今頃死んでいた。ブラックナンバーという絶望の全貌が、少しずつ、しかし確実に私たちの前に迫りつつあった。

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