「大阪に到着したね。ここから敵の包囲網を敷く。僕の指示通りにグループに分かれて行動してくれ」安全な本部の管制室から、神原司の声が全員の脳内へ明瞭に響き渡った。大阪の街を包む赤黒い呪詛の霧の中、司の視野共有の術式によって、私たちは味方の位置と戦況を完璧に把握していた。司は間髪入れずに、この大決戦を制するためのグループ分けを告げていく。「まず特級および一級リーダー。中野伊織、中野鈴。君たち兄妹は一緒に行動してくれ。鈴の統率力と伊織の突破力で、中衛ラインを維持するんだ」「はい」「フン、了解だ」一級リーダーの鈴と、その兄である特級の伊織が、鋭い踏み込みで霧の向こうへと消えていく。「前線のバケモノどもを叩く特級ペアだ。麗華はリントと。ようまはけいと。真白はアキラと組んで、レグウィス、シオン、アクアの3トップの足止めに向かってくれ。……優斗、君はアヴィを連れて遊撃に回るんだ」「オッケー、リント、置いてかないでよ!」「あーあ、面倒くさいけど行くか」麗華やアヴィの女性特級陣、そしてリントや優斗たちの規格外の呪力が、それぞれの方向へと一気に弾け飛んだ。「総勢14名ほどいる一級術師たちは、一輝と千代のペアを筆頭に、2人ペアでそれぞれ7つのルートの哨戒(しょうかい)と排除にあたれ。……そして」司の視線の術式が、最後に私たち中堅・下級の術師たちを捉える。「二級から四級は数が多い。個々の実力差を連携で埋めるため、4人一組のグループで動いてもらう」その言葉と同時に、私の目の前に二級のあかり、そして四級の太一とほのかが並んだ。二級の颯斗や大輝たちは、別の4人グループとしてすでに配置に就いている。「まい、たくま。君たちのグループのリーダーは二級のあかりだ。太一、ほのかと連携し、僕の指示をよく聞いて動くんだよ」「了解です! まいちゃん、いくよ!」あかりが武器を構えて私を振り返る。太一とほのかも、恐怖を殺した真剣な表情で頷いた。「あ……が……」私の足元で、異形の天秤となったたくまの前髪のない顔が、あかりたち3人の視線を受け止める。特級との修行を経て、たくまの「動きたい」という意識と私の呪力は完全にシンクロしている。4人グループとしての連携の真ん中に、私たちの「天秤」があった。『ブラックナンバーのミラー、クラウン、そしてきいの3人が、君たちの正面ルートへ向かっている。……作戦開始だ』司の冷徹な号令が脳内に響き、私たちは地を蹴った。それぞれのグループが大阪の街へと散っていく中、私とたくまは、かつての親友を討つための戦場へと突き進む。