あ……っ、が……ッ!!」黒い質量から突き出た、前髪のないたくまの顔が、必死に顎を動かす。しかし、いくら喉を震わせても、そこから言葉が漏れることはなかった。身体の主導権だけでなく、声帯の自由すら私の術式が奪っている。意識はあるのに、恐怖も、私への制止の言葉も、何一つ紡げない。ただ、恐怖に歪むその瞳だけが、私をじっと見つめていた。「ごめん……ごめんね、たくま……。でも、こうするしか……!」私は血が滲むほどに唇を噛み締め、天秤の形をしたたくまの背に飛び乗った。「あはは! 喋れなくしちゃったんだ! 独占欲強すぎじゃない、まい?」きいが下劣な笑い声を上げる。その手に握られているのは、先ほど変形させられた女子大生・あかねだ。あかねの顔が刀身に大きく強調され、恐怖と激痛で涙をボロボロと流しながら「痛い、助けて……」と細い悲鳴を上げている。「あかねちゃん、もっと鳴いてよ。『あかね剣』!」きいは女が嫌いだ。だからこそ、武器や盾に貶めるのは決まって女性ばかり。彼女の歪んだ男好きの裏返しが、この悪趣味な術式に反映されていた。きいは『あかね剣』を容赦なく振り下ろし、迫り来るたくまの首を次々と叩き落とす。「……ッ、きい……ッ!!」私の胸の中で、どす黒い怒りが爆発した。一般人の人生を、肉体を、そして意識すら弄び、道具として消費するその外道さに、視界が真っ赤に染まる。「よくそんな汚い手で、あかねさんを……! 人の命を何だと思ってるのよ!!」「何って、ただの道具だけど? あ、でもね——」きいは社会人・みくの顔が張り付いた『みく盾』でたくまの質量攻撃を受け流しながら、不気味に目を細めた。その視線は、私の足元で自由を奪われているたくまへと注がれる。「たくまだけは別。あの子、顔が良いからさ。本当は私の最高傑作の『武器』にして、一生私が愛してあげるはずだったの。なのに、まいが変な式神にしちゃうからさぁ!」きいの術式が、たくまを狙って狂ったように触手を伸ばす。「返しなよ、私のたくまを! 私のコレクションに相応しいのは、その男だけなんだから!」男への執着と、女への侮蔑が混ざり合ったきいの絶叫。私の怒りは沸点を超えた。「たくまはあんたの玩具じゃない……! 絶対に、指一本触れさせない!!」私は手印を組み、呪力を一気に解放する。意思を持たぬはずのたくまの巨体が、私の激昂に呼応するように、きいへと猛然と突っ込んでいった——
あああ