俺救2   作:ネネネノノ

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21話『やっほー、きい』

あはは! 何これ、傑作じゃん!」レグウィスが去った赤黒い霧の向こうから、聞き覚えのある甲高い笑い声が響いた。かつての親友、そして私とたくまを地獄に突き落とした張本人——きいが、軽薄な足取りで姿を現したのだ。「特級の麗華とリントが、一瞬で雑巾みたいにされてる! さすがリーダー、容赦ないなぁ」きいは、血の海に沈む麗華とリントを見下ろしてケラケラと笑う。すぐに味方の医療班(手当て担当)が必死の形相で二人の元へ駆け寄り、反転術式による緊急蘇生と後方への搬送を始めた。「……まい、たくま。医療班が二人を避難させるまで、君たちだけで持ちこたえてくれ」本部の管制室から、神原司の焦燥を孕んだ声がインカムを通じて脳内に響く。2級のあかり、4級の太一とほのかも満身創痍の特級二人を庇うように構えるが、レグウィスの圧倒的な圧を浴びた後では、身体がすくんで思うように動かない。「さあて、邪魔者もいなくなったし……遊ぼうか、まい! たくま!」きいが呪力を解放した。その瞬間、逃げ遅れた一般人の女性の肉体が引き延ばされ、苦悶の叫びを上げる『あかね剣』の刃がきいの手に握られる。「たくま、合わせて……ッ!!」私は恐怖をねじ伏せ、特級との修行で得た感覚を呼び覚ました。自分で身体を動かせないたくまの「まいを守る」という強い意識に、私の呪力を完全に同調(シンクロ)させる。たくまの漆黒の天秤が、きいの突撃を寸前で受け止めた。ズガァアアン!!!「天秤の特性」により、受け止めた衝撃が倍の質量となってたくまの皿に蓄積される。「いっけえええ!!」私の脳内命令と同時に、前髪のないたくまの顔が超音速で分裂し、きいへ向けて弾丸のように射出された。「おっと、危ない!」だが、きいはそれを予期していたかのように、軽快なステップで避けてみせる。そこからは、残酷なまでの「遊び」の時間だった。「ねえねえ、修行したっていうから期待したのに、その程度? ほら、次はこっちだよ!」きいは笑いながら、周囲の瓦礫や、武器に変形させた人間たちを次々と繰り出し、私たちの攻撃を軽々といなしていく。太一の放った呪力弾も、ほのかの牽制も、きいにとっては赤子の手をひねるようなものだった。あかりが必死に隙を突こうとするが、きいは私とたくまのコンビネーションをあざ笑うように、絶妙な間合いで私たちを翻弄し、じわじわと体力を削っていく。「あ……が……ッ!!」声を出せないたくまの顔が、自分の無力さと、私に傷が増えていくことへの絶望で激しく歪む。全力で戦っているのに、きいにとってはただの「猫が鼠をいたぶる玩具」に過ぎない。精神的にも肉体的にも追い詰められ、私の膝がガタガタと震え出した、その時——。ピキィィィン……。再び、空間のすべての音が消え去った。きいの顔から笑みが消え、恐怖を孕んだ戦慄がその表情を支配する。「……あ、れ……? リーダー……?」霧の奥から、先ほど立ち去ったはずの圧倒的な質量が、再びこちらへと近づいてくる。地面を揺らす、重い足音。レグウィスが、戻ってきたのだ。彼は血の海も、必死に戦う私たちも目に入らないといった様子で、退屈そうに頭を掻きながら、きいのすぐ後ろで足を止めた。「おい、きい。……一つ、話すことを忘れていた」ブラックナンバーの頂点が放つ絶対的な静寂が、再び大阪の戦場を完全に支配した。

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