俺救2   作:ネネネノノ

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25話『警備中』

「ようま、けい。愛知県一帯の警備担当の時間だ。定刻通り、開始してくれ」本部の管制室から、神原司の冷静な声がインカムを通じて二人の脳内へ響く。呪術師の本部では、二級以上の実力者に「警備」の義務が課せられていた。週に一回、決められた時間に、二人一組のペアで指定された範囲を巡回する。その活動時間は一回につき約六時間。一日を四つのペアで繋ぎ、二十四時間体制で日本各地の主要都市の結界と治安を維持する、極めて重要な任務だった。今日の愛知県担当は、睡眠時間を削って修行を続けている特級ペア、ようまとけい。「けい、あくびすんなよ。寝不足が祟って呪力のコントロールが鈍ってんじゃないか?」「……うるさい。ようまこそ、さっきから足元がおぼつかないぞ。特級が警備中に醜態を晒すな」二人は軽口を叩き合いながらも、その鋭い眼光で名古屋の街の残穢(ざんえ)を追っていた。彼らのような特級ですら、レグウィスの『将システム』の宣告以降、一刻の猶予もないという焦燥感に突き動かされている。下の階級の指導をしながら、自身の限界を超えるための修行を深夜まで行う。肉体はとっくに限界のはずだった。だが、その「限界」を、さらに踏みつぶすような異変が起きる。名古屋のテレビ塔を臨む久屋大通公園。夜の帳が下りた広大な敷地に入った瞬間、けいがピタリと足を止めた。ようまの顔からも、からかうような笑みが完全に消え去る。空間の空気が、ねっとりとした濃密な呪力に書き換えられていく。レグウィスが大阪で見せたあの絶対的な圧とはまた違う、美しくも禍々しい、肌を突き刺すような氷の刃に似た気配。「……あら。本部の特級が二匹。神原って男のチェスの駒かしら?」公園の中央、街灯の光に照らされてぽつんと佇んでいたのは、一人の女性だった。長い髪を夜風に揺らし、退屈そうにこちらの二人を見つめている。ブラックナンバーのトップ3の一角。リーダーのレグウィスと同格の実力を誇り、組織における『一将』の座に君臨するバケモノ——シオン。「ブラックナンバーの一将……シオン……ッ!」ようまが呪力を爆発させ、狂気的な殺気を身にまとう。けいも一瞬で寝不足の気だるさを吹き飛ばし、空間を制圧するための術式を展開した。『ようま、けい……! 嘘だろ、愛知の警備ルートにシオンだと!?』インカムの向こうで、二人の視界を共有している司の声が、かつてない驚愕に跳ね上がる。本部で修行を続けている私や、動けないたくまの前髪のない顔も、司の術式を通じてその「最悪の遭遇」をリアルタイムで目撃していた。「寝不足の顔ね。そんなに焦らなくても大丈夫よ。私はただの散歩だから」シオンは妖艶な笑みを浮かべ、ゆっくりと一歩を踏み出す。その瞬間、公園全体の地面がピキピキと音を立てて凍りつき、圧倒的な一将の呪力が、限界を迎えている特級二人へと容赦なく牙を剥いた。

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