「ねえねえ、そこな寝不足の特級二人組! 戦う前にさ、お喋りしようよ!」名古屋の街灯に照らされたシオンは、妖艶なオーラを放っていたかと思えば、一転して無邪気にケラケラと笑い出した。その年齢は、まだ多感な18歳。学校という場所には一度も通ったことがない。彼女はいわゆる「魔女っ子」だった。この世界のどこかに存在する、日本語が標準言語の風変わりな「魔女の国」で生まれ育ったという、極めて異質な経歴の持ち主である。「一将のシオン……! 何の目的で愛知に現れた!」ようまが狂気的な呪力をぎりぎりと絞り出しながら、鋭く問い詰める。しかしシオンは、大きな帽子を直しながら、子供のようにぷいっと顔を背けた。「目的? だからただの散歩だってば! つっけんどんな男だなぁ。そんなんだからモテないんだよ!」その性格は、非常に生意気なガキっぽいものだった。ブラックナンバーの下位や中位のメンバー(きいやクラウン、ミラーなど)からは、その実力を恐れられつつも、裏では「あのクソガキ」と陰口を叩かれるような、わがままでお調子者な一面がある。「ふん。お前がブラックナンバーの一将の器か。……ずいぶんと口の減らないガキだな」けいが冷徹な視線でシオンを射抜くが、シオンはむしろ誇らしげに胸を張った。「ガキって言った? でもねー、私はただのガキじゃないんだよ。なんたって、この私が世界で一番強いんだから! 自称・最強! いや、公認・最強! とにかく私は最強なの!」自らのことを一片の疑いもなく「最強」だと信じ込んでいるシオン。しかし、その生意気な態度とは裏腹に、彼女から溢れ出る呪力は間違いなくレグウィスと同格、つまりこの世界の頂点である『一将』のそれに他ならなかった。『ようま、けい……! 相手のペースに飲まれるな。彼女の術式はまだ未知数だ。お喋りに付き合うフリをして、隙を伺え!』本部の管制室から、神原司先輩の緊迫した指示が二人の脳内に直接響く。司先輩の視野共有を通じて、本部で修行中の私や、動けないたくまの前髪のない顔も、この18歳の「最強の魔女」の姿をじっと見つめていた。喋れないたくまの瞳には、かつてない緊張が走っている。「へえ、最強ね。じゃあさ、その『最強』ってのがハッタリかどうか、俺たちが今から試してやるよ!」ようまが地を蹴り、漆黒の殺意をまとってシオンへと肉薄する。18歳の魔女っ子にして一将の一角、シオンとの、予測不能な愛知の防衛戦が幕を開けた。