ちょっと、シオン。また勝手に一人で遊んでる」夜霧を割って現れたアクアの見た目は、シオンと同じくらいの若さに見えた(彼女の正確な年齢は、後に明かされることになる)。そして最悪なことに、このアクアもまた、シオンと全く同じ種類の「クソガキ」だった。「あ、アクア! 遅いよー! 見てよこの雑魚たち、一発でボロボロになっちゃった!」シオンが生意気な笑顔で駆け寄ると、アクアはくすくすと意地の悪い笑い声を上げながら、血を流して倒れるようまとけいを見下ろした。一将の座にある天才クソガキ二人は、声を合わせて本部の最高戦力である特級を盛大にバカにし始める。「あはは! 特級だってww 特級なんてただの雑魚の集まりのくせに!」「本当それ! 自分たちで『特級』とか大層な名前つけちゃってさ、超ウケるんだけど!」二人はお腹を抱えて笑い転げる。ようまは怒りに顔を歪めて地面を殴り、けいは悔しさに奥歯を噛み締めた。だが、言い返す言葉がない。一将であるアクアとシオンの二人は、生まれながらにして世界の理(ことわり)を超越した「本物の天才」だった。特にシオンは、血の滲むような修行や地道な「努力」というものを病的に嫌っている。「ねえ、寝不足の特級さんたち。いくら努力したって、シオンたちには敵わないって。気づきなよ。この差を」シオンは、傷だらけの二人に向けて、残酷な現実を無邪気な笑顔で突きつけた。「努力は才能に勝てないんだよ。一生懸命睡眠時間を削って練習したんでしょ? でも無駄無駄! 生まれ持った器が違いすぎるんだから。降参しちゃいなよ、雑魚なんだからさ!」その言葉は、愛知の戦場だけでなく、本部の管制室で視野を共有している全員の心に深く突き刺さった。『……っ、二人とも、それ以上喋るな。術式を解いて、這ってでもそこから離脱しろ……!』インカムの向こうで、神原司先輩の声が悔しさに激しく震えている。本部の大画面でこの光景を見ている私、そして隣にいる太一やほのかも、圧倒的な才能の壁を前に言葉を失っていた。「あ……が……ッ!!」自分の意志で動けないたくまの前髪のない顔が、激しい怒りと悔しさ、そして自分の「式神」という異形の身体へのやるせなさで、血の涙を流さんばかりに歪んでいた。努力は才能に勝てない。睡眠時間を削ってまで強くなろうとした先輩たちの想いを、あの18歳のクソガキはただの「無駄遣い」だとあざ笑ったのだ。「さてと、アクア。この雑魚たち、どうする? 殺しちゃう?」シオンが退屈そうに指先で新しいビームの光を灯す。天才二人による無慈悲な嘲笑が、夜の名古屋の公園に響き渡っていた。