俺救2   作:ネネネノノ

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第4話『助けたのは謎の男』

死に損ないのメス犬が。たくま、待っててね」きいが『ひろみ槍』を高く掲げ、私の心臓へと突き下ろそうとした、その瞬間だった。ドォオオオオン!!!校舎の天井が、跡形もなく吹き飛んだ。凄まじい衝撃波と、部屋を満たす圧倒的な「圧」に、きいの動きがピタリと止まる。「——そこまでにしときな、小娘」煙の中から現れたのは、五条悟のような、いや、それとはまた違う、底知れない呪力をまとった特級の呪術師(乱入者)だった。その存在感だけで、空間の空気が凍りつく。「チッ……『上層部』の狗が、もう嗅ぎつけてきたわけ?」きいは忌々しげに舌を打った。目の前の男と戦えば、自分がタダでは済まないことをその本能が察知している。きいは『ひろみ槍』や『さくら弓』、そして盾にしていた『みく盾』をその場に放り捨てた。地面に転がった彼女たちは、今もなお顔だけを歪め、「痛い」「戻して」と泣き叫んでいる。「今日のところは引いてあげる。でもまい、たくまは必ず私がもらうから」きいは闇に紛れ、瞬時にその場から姿を消した。「……あ、あ……」張り詰めていた糸が切れ、私はその場に崩れ落ちた。肩からの出血がひどく、意識が遠のいていく。何とか生き延びた。助かったのだ。這いつくばる私の視界に、黒い塊から突き出た、前髪のないたくまの顔が映る。その瞳から、静かに涙がこぼれ落ちていた。私の術式は、一度式神として定義した肉体を元に戻す術を持たない。たくまは、もう二度と、あの優しい人間の姿には戻れない。「おいおい、ひどい有り様だな」乱入者の男が、私たちの前に歩み寄り、私の傷口に反転術式を施した。温かい呪力が流れ込み、傷が塞がっていく。「あかねさん達を……元の姿に、戻して……」私は消え入るような声で懇願した。しかし、男は冷酷に首を振った。「無理だ。あの小娘の術式で変形させられた肉体は、魂の形そのものが書き換えられている。術師本人が解除するか、死ぬかしない限り、元には戻らない。あそこに転がっている連中は、もう手遅れだ」絶望が、冷たい泥のように私の全身を侵食していく。「……きいは、何者なんですか。どうして、あんな……」私はたくまの天秤の身体にすがりつきながら問いかけた。男は煙草に火をつけ、夜空を見上げながら静かに語り出した。「お前たちが巻き込まれたのは、単なる学生同士の痴話喧嘩じゃない。あいつは『呪詛師集団』の末端、いや、広告塔だ。この世界にはな、人間の肉体や魂を『資源』として扱い、呪術界の転覆を狙う黒幕たちがいる」男の目が、鋭く私とたくまを射抜いた。「あの小娘は、男を狂信し、女を素材として提供するハブ(中心地)として動いている。お前がその少年を式神にして固定しなけりゃ、今頃あいつらの最高傑作の兵器にされていた。……生き残りたきゃ、強くなれ。その異形を引きずってでもな」喋れないたくまが、声をなき震わせるように、ギチリと天秤を鳴らした。失われた日常。異形となった幼なじみ。姿を消した最悪の親友。私はたくまの冷たい頬に手を当て、ただ血の涙を流すことしかできなかった。

 

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