「——総員、直ちに迎撃に移行してくれ! これより『名を持つ四体の特級上位呪霊』の討伐および防衛作戦を開始する!」神原司先輩の悲痛な叫びが、インカムの視野共有を通じて全員の脳内へダイレクトにマッピングされた。大阪での傷が癒えない特級たちに代わり、今動ける最高戦力たちが、日本各地の防衛ラインで死闘を繰り広げ始める。【愛知・熱田神宮周辺】伊織&一級術師 vs 骸喰大量の白骨を身にまとい、死者の呪念を喰らって無限に肥大化する最凶の質量、骸喰(むくろぐい)。このバケモノの前に立ち塞がったのは、重度のヤニカス・パチカスでありながら、凄まじい呪力を誇る特級の中野 伊織(いおり)。そして、一一級リーダーの中野鈴(すず)の指示のもと、一輝(かずき)や千代(ちよ)を筆頭とする数人の一級術師たちだった。「チッ、パチンコ屋が潰れる前にサクッと祓わせてもらうぜ!」伊織がタバコを投げ捨て、空間を爆裂させるほどの莫大な呪力を解放する。「キシャアアアアッ!」と咆哮し、数万本の骨の槍を降らせる骸喰。一級術師たちが洗練された防衛陣形を築いてその猛攻を凌ぎ、生まれたわずかな死角を狙って、伊織の必殺の一撃が骸喰の核を貫いた。「……無口な妹に怒られねえで済んだな」血を吐きながらも、伊織と一級たちの力技により、激闘の末に骸喰の討伐に成功する。【京都・鴨川上流】アヴィ&一級術師 vs 無惨華一方、美しい大輪の赤黒い花のような姿を持ち、触れた者の肉体を内側から溶かす植物型の特級上位、無惨華(むざんげ)。これに対峙したのは、異国情緒ある独特の呪力を操る女性特級、アヴィ。そして、同じく一級のペアたちだ。「美しい花には、相応の剪定(せんてい)が必要ね」アヴィの放つ呪力の結界が、無惨華の撒き散らす死の花粉を完全に遮断する。一級術師たちが精密な連携で茎や根を切り刻み、無惨華の動きを完全に封じ込めた。その中心へ、アヴィの最大出力の呪力砲が直撃する。凄まじい悲鳴と共に、無惨華は跡形もなく消滅。アヴィと一級術師たちも何とか勝利を収めた。【山梨・富士山麓】業火 vs 呪術師殺し屋しかし、最悪の『運』は、意思を持つ黒い炎そのものであり、あらゆる防御術式を融解させる破壊の権化、業火(ごうか)の前に現れた。「ヒハハハハッ! 全てを焼き尽くし、世界を灰にしてやる!」半径数キロメートルを地獄の炎で包み込みながら進軍する業火。だが、その燃え盛る炎の前に、ひどく冷徹で、かつ圧倒的な呪力の残穢(ざんえ)をまとった一人の男が立っていた。肩より少し長めの灰色の髪を揺らす、美形の青年。人間を激しく嫌悪し、恋人であるルカ以外には決して心を開かない、五大殺し屋組織『ウェアー』の頂点——クロエだった。「……目障りな炎だ。ボクたちの『仕事』の邪魔をするな」クロエはルカを少し慕うような丁寧な敬語のトーンではなく、呪霊に対しては一切の慈悲もない冷酷な声音で呟いた。戦いが始まった、まさにその一瞬。キィィィン……ッ!空間のすべての音が消え去り、銀色の閃光が走る。「ガ、は……ッ!? なに、が……ッ!?」業火の顔から、余裕の笑みが完全に消え失せた。あらゆる術式を融解させるはずの黒い炎が一瞬にして両断され、業火の巨大な肉体が、何が起きたのかすら認識できない速度のナイフによって、ズタズタに切り裂かれていたのだ。たった一撃で、一瞬にして瀕死の重傷を負わされる特級上位呪霊。「……ルカが待っている。こんなゴミ虫に構っている暇はありません」クロエは、瀕死で這いつくばる業火のことなど、最初から興味がないと言わんばかりに、そのまま見逃して、何事もなかったかのようにその場を去っていった。「ハァ……ハァ……化け物、め……! 呪術師の中に、あんな、バケモノが……ッ!」命からがら生き延びた業火は、恐怖に身体を震わせながら、残された最後の力を振り絞って地を這った。このままでは確実に消滅する。業火は、自分と同じく放出された、もう一体の特級上位呪霊——影の姿を持ち、呪詛を操る王『厭魅(えんみ)』のいる場所へと、必死に合流を目指して向かうのだった。──そして。渋谷の『K』の本部で、神原司先輩の視野共有を通じてこのすべての激闘、そしてクロエの常軌を逸した強さをリアルタイムで目撃していた、私とたくま。前髪のないたくまの顔は、特級呪霊すらゴミのように切り裂く「殺し屋の頂点」の理不尽さに、ただただ戦慄の瞳を見開いていた。「あはは! 業火ちゃん、一瞬で消し炭にされそうになってるじゃん!」ハツカが中性的な顔に妖しい笑みを浮かべ、奏(かなで)もその強さに固執する鋭い瞳を細めて、世界のパワーバランスの崩壊を楽しそうに観測していた。