日本各地に放たれた「名を持つ四体の特級上位呪霊」との死闘は、急転直下の幕引きを迎えた。中野伊織と一級たちの力技により骸喰(むくろぐい)が、アヴィと一級たちの連携により無惨華(むざんげ)がそれぞれ討伐(倒)され、一将クロエの凶刃に怯えた業火(ごうか)と厭魅(えんみ)は完全に戦線を離脱して退散していった。そして、激戦の跡地。伊織たちが、倒した骸喰の残骸から『将システム』の顔写真付き資料を回収することに成功する。翌日、味方本部の作戦会議室。神原司先輩の呼びかけにより、医療班の手当てを終えた特級の先輩たち全員、一級リーダーの中野鈴、そして私と、異形の天秤となったたくまが集合していた。前髪のないたくまの顔は、ついに世界の全貌が暴かれる瞬間に、じっと息を呑んでホワイトボードを見つめている。「……伊織たちが持ち帰った資料の解析が終わった」司先輩が、その皺くちゃの紙をプロジェクターで大画面に映し出す。そこには、レグウィスが自身の基準で格付けした、この世界の最高戦力たちの全序列が残酷なまでに並んでいた。「全員、よく見てくれ。これが世界の理、『一将(いっしょう)の9人』だ」レグウィス(ブラックナンバー・リーダー)シオン(ブラックナンバー)アクア(ブラックナンバー)ヒライ(ブラックナンバー・ボス)デリザスタ(ブラックナンバー)ルカ(ウェアー・殺し屋)クロエ(ウェアー・殺し屋)ここまでは、私たちの知るバケモノたちだった。しかし、残りの二つの枠を見た瞬間、室内の全員が息を呑んだ。そこには、名前すら記載されていない、しかし圧倒的なオーラを放つ「黄色髪の女」と「紫髪の女」の写真が並んでいたのだ。「……この二人は、本部のデータベースにも一切記録がない。名前も素性も完全に不明だ」司先輩の言葉に、特級の先輩たちも表情を強張らせる。「次に、その下に位置する『三将(さんしょう)』の欄だ」画面が切り替わり、そこに映し出された名前に、私は目を見開いた。優斗、リント、アヴィ、伊織、アキラ……そして、中野 鈴(すず)「え……鈴先輩が、三将……!?」私とたくまは驚愕した。鈴先輩は「一級リーダー」という立ち位置だったから、一級術師のトップなのだとばかり思い込んでいた。しかし、彼女はただ役職がそうなっているだけで、その真の実力は本部の並み居る特級をも凌駕し、特級の中でも『上位の強さ』に位置する本物のバケモノだったのだ。いつも通り無口で無表情な鈴先輩は、兄の伊織から「へえ、鈴、俺と同格じゃん。お小遣いち戴戴」と絡まれても、めんどくさそうに無視していつも通りの冷徹な瞳で画面を見つめている。「そして、ここに名前のない残りの特級(麗華、カナト、真白、ようま、けい)は、全員が『四将』だ」睡眠時間を削ってまで強くなろうとしていた麗華先輩たちが、レグウィスの天秤では「最低ランク」に格付けされているという冷酷な現実。そして、黄色髪と紫髪という、まだ見ぬ二人の一将の存在。「あいつら……俺たちをずいぶんと舐めた格付けをしてくれるじゃねえか」包帯まみれのリントが、三将に甘んじている己への怒りと、その上への闘志で呪力をぎりぎりと爆発させる。世界のパワーバランスが完全に可視化された会議室で、二級に上がったばかりの私とたくまは、その圧倒的な神々のポートレートを、ただただ網羅された絶望と野心で見つめ返すことしかできなかった。