## 狂瀾の迷宮、引き裂かれる天秤
「——あ、ああ……! 待ってくれ、三級の防衛班、応答しろ! 嘘だろ、一瞬で信号が……!?」
本部の神原司先輩からの通信が、絶望に震えながらインカムを通じて脳内へ直接響く。
東京ドーム3つ分の巨大な円柱要塞の各所で、凄まじい呪力が激突する中、最悪の『運』がいくつかの命を刈り取っていた。司先輩の視野共有の術式が映し出したのは、偶然にもブラックナンバーの頂点——リーダーのレグウィスと正面から鉢合わせしてしまった、本部の三級、四級の呪術師たちの姿だった。
「価値のない有象無象が、僕の視界に入るな」
格付けする価値すら与えられない最強の無関心。レグウィスが歩みを進めた、ただそれだけの一瞬で、圧倒的な呪力の質量が空間ごと彼らを圧殺した。三級、四級の数名が、抵抗の術もなく一瞬で死亡する。
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## 【中層エリア】伊織・鈴 vs まつり
「へえ、本部の特級と一級リーダーか。お前らの命、俺のお祭りの生贄にしてやるよ!」
不気味なお面を被ったブラックナンバーの中位、まつりが放つトリッキーな呪術。それに対し、重度のヤニカス・パチカスである特級の中野 伊織(いおり)が空間を爆裂させるほどの莫大な呪力を解放し、互角の死闘を繰り広げていた。
しかし、その均衡を破ったのは、これまで無口で無表情を貫いていた一級リーダー、中野 鈴(すず)だった。
「……お兄ちゃん、パチスロの話は後。……凍りつきなさい」
鈴が細い指先を突き出した瞬間、要塞の廊下全体が激しい音を立てて凍りついた。
鈴の術式は、絶対零度の冷気を操る氷の術。
実は特級上位(三将レベル)の怪物である彼女が放つ氷の刃は、まつりのトリッキーな身のこなしを物理的に凍結させ、その行動を確実に制限していく。兄の突破力と鈴の絶対的な冷気のコンビネーションにより、二人はまつりを少し押し始めていた。
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## 【西側通路】アヴィ・優斗 vs アクア・シオン
一方、遊撃に回っていた特級のアヴィと優斗(ゆうと)のペアは、最悪の二人生と遭遇していた。
ブラックナンバーの一将、アクアとシオンだ。
「あはは! また寝不足の特級だ! ほらアクア、見てよこの人たち、超ウケる!」
18歳の魔女っ子・シオンが生意気なガキっぽく笑い転げ、同じく若く見える天才クソガキのアクアが意地の悪い笑みを浮かべる。
「本当だ、シオン。前回の愛知の雑魚たちに懲りてないんだね。特級(笑)の集まりなんて、いくら努力したってシオンたち天才には勝てないのにさー」
アヴィの呪力結界も、優斗の空間を歪める術式も、一将の天才二人を前にしては完全に威圧され、発動することすらできない。アクアとシオンは攻撃を繰り出すことすらなく、何も出ない(攻撃を打たない)まま、ただただ特級の二人を「雑魚」「無駄な努力」と激しく煽り続けていた。
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## 【最下層エリア】まいグループ vs きい
そして、最下層の地下通路。
ハツカと奏(かなで)の三将上位コンビが、ブラックナンバーの中位マビキを完全に防戦一方へと追い詰めているその横で、私、あかり先輩、太一、ほのかは、宿敵きいと対峙していた。隣に浮かぶ漆黒の天秤、その体から突き出た前髪のないたくまの顔が、怒りに瞳をぎらつかせる。
「あはは! まい、たくま! 二級に上がったんだって? でも、無駄だよ」
きいが不敵な笑みを浮かべ、自身の周囲の空間を歪めた。
次の瞬間、彼女の背後に、異様な光景が広がる。
「私さ、この戦いの前に、とある女子校を丸ごと一つ襲ってきたんだよね。 ほら、女の子の体って、本当に綺麗な武器の素材になるからさぁ!」
きいの手が空間をなぞるたびに、引き延ばされ、骨を砕かれた大量の女子学生たちの顔が大きく強調された、無数の顔武器(剣、槍、弓、盾)が壁一面にズラリと浮かび上がった。
「痛いよお」「お母さん……」「助けて……」と、意識を保ったまま生生しい悲鳴を上げる女子高生たちの顔武器。
「男好き」でありながら女を激しく見下すきいの、悪趣味を極めた最悪のコレクション。
その地獄絵図のような光景を見た瞬間、私の胸の中で、これまでにない怒りの焔が爆発した。
「あんたは……どこまで人の命を弄べば気が済むのよ……!! きい……ッ!!」
「あはは! 鳴き声が最高だね! いっけー、『女子高生コレクション』!!」
泣き叫ぶ顔武器の群れを従え、きいが狂気的な笑顔で突っ込んでくる。二級へと駆け上がったまいとたくまの、命を懸けた因縁の決戦が、血と悲鳴の渦中でついに始まった——。
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