俺救2   作:ネネネノノ

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54話『四天王』

「——おい、嘘だろ……。なんだよ、この凄まじい呪力の震えは……!」最下層エリア。ハツカと奏(かなで)の三将上位コンビに完全に防戦一方へと追い詰められ、青い顔で血を吐いていたブラックナンバーの中位、マビキが突如として動きを止めた。彼が怯えたように見上げた遥か上層の天井からは、迷宮全体を物理的に激しく揺らすほどの、規格外の呪力の衝撃波が地鳴りとなって響いてきていた。上層で今まさに火蓋が切って落とされた、魔女っ子シオンと殺し屋クロエの一将同士の激突。そのバケモノたちの交錯の気配を肌で感じ取ったマビキは、ガタガタと歯を鳴らしながら戦慄の声を漏らした。「一将の同士の戦いかよ……。いや、『四天王(してんのう)』同士の戦いかよ……ッ!」マビキの口から飛び出した、聞き覚えのない不気味な単語。それまでマビキを艶やかに追い詰めていたハツカが、中性的な顔の笑みを少しだけ深め、その「ボク」という一人称を響かせながらマビキへ問いかけた。「へえ、四天王? 面白い名前を出すじゃないか。それ、ボクたちにも詳しく教えてよ」ハツカの呪力のプレッシャーに抗いきれず、マビキは隠しきれない世界の真実を吐き出した。「……リーダー(レグウィス)はな、自分以外のこの世界における最強の4人のことを『四天王』と呼んで特別視しているんだ。同じ一将の座に就いている奴らの中でも、レグウィス本人、そして四天王の4人は完全に別格のバケモノなんだよ……!」一将の9人。その中にさらに存在する、絶対的な5人の頂点。マビキの解説によれば、その四天王の面々は——シオン、アクア、ルカ、クロエの4人。「この4人は実力的にほぼ同格だ。まぁ、術式の相性や潜在能力を含めれば、シオンとアクアの二人のほうが、ほんの少しだけ上かもしれないがな……。リーダーは一将の殺し屋であるルカとクロエの二人のことをえらく気に入っているし、何より、ウチのシオンとアクアは、敵であるはずのルカとクロエの二人と普段から少し仲が良かったりもするんだよ」犯罪者集団と、彼らを狩る殺し屋。本来なら絶対に相容れないはずの敵同士。しかし、世界の最高峰に位置する四天王の4人は、お互いの圧倒的な強さを認め合うがゆえに、どこか同じクラスの悪友のような距離感で繋がっていたのだ。「あいつらが本気でやり合うのは、これが初めてじゃねえ……! 巻き込まれたら俺たち中位なんて一瞬で消し炭だぞ……ッ!」マビキが恐怖に絶叫する。その解説を、本部の神原司先輩の通信越しにリアルタイムで聞いていた私、そして隣に浮かぶたくま。前髪のないたくまの顔は、あまりにも手の届かない『四天王』という本物の神々の領域に、ただただ息を呑んで鋭い瞳を凝らすことしかできなかった。「ふふ、なるほどね。一将の上の四天王。……でも、ボクたちの目の前の戦いも、負けてられないよね、まい?」ハツカの言葉が、私の胸の中の怒りに再び火をつける。【最下層エリア】まいグループ vs きい「あはは! 鳴き声が最高だね! いっけー、『女子高生コレクション』!!」引き延ばされ、骨を砕かれた大量の女子学生たちの顔が大きく強調された、悪趣味極まる無数の顔武器(剣、槍、弓、盾)。その泣き叫ぶ軍勢を従え、狂気的な笑顔で突っ込んでくる宿敵・きい。「きい……あんたのその汚い執着ごと、すべて引っくり返してあげるッ!!」私は自分の全呪力を爆発させ、あかり先輩、太一、ほのかと一斉に地を蹴った。自分で身体を動かせないたくまの「まいを絶対に守る」という強烈な防衛イメージが、私の呪力の糸と完璧に同調(シンクロ)する。ズガァアアアン!!!きいが放った無数の女子高生武器の凶悪な連撃を、滑り込んできたたくまの漆黒の天秤の皿が、真っ向からすべて受け止めた。凄まじい衝撃の質量が皿に蓄積され、呪力の輝きとなって倍に膨れ上がる。リント先輩の教え——『天秤とは、二つのものの均衡を測る道具だ』。「新技——『因果傾転・螺旋(いんがけいてん・らせん)』!!」受け止めたきいの攻撃の重さをすべて上乗せし、倍の破壊力へと変換されたたくまの顔が、空間そのものを捩じ切るような超音速の螺旋を描きながら、正面のきいへと向けて正確に射出された。ドガガガガガガガガッ!!!「なっ……あ、あかね剣が……私のコレクションが……ッ!?」きいが誇らしげに掲げていた女子高生武器の群れが、たくまの放った圧倒的な倍返しの質量によって、叫び声を上げる暇もなく次々と粉砕され、肉片となって消し飛んでいく。さらに、その衝撃波の余波が、突っ込んできたきい自身の肉体を容赦なく捉えた。ドゴォオオォン!!!「が、はっ……!? うそ、まい、お前……なんで、こんな……ッ!?」激しい血を吐きながら、きいの身体がコンクリートの壁へと激しく叩きつけられた。二級へと飛び級し、泥臭い努力の果てに掴んだ私たちの新しい天秤の力。その圧倒的な成長の前に、流石の『三将レベル』の怪物であるきいも防戦一方となり、私たちは確実に、かつての親友を激しく押し始めていた。「あ……はは……見たか、きい……! これが、ボクたちの、努力の成果だ……ッ!!」私は荒い息を吐きながら、たくまの冷たい天秤の身体を強く抱きしめた。前髪のないたくまの顔が、宿敵を完全に圧倒した確かな手応えを宿し、鋭い瞳できいを静かに見下ろしている。ゴミ虫と呼ばれたあの夜から、私たちは今、自らの手できいたちのいる高みを完全に凌駕しようとしていた。

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