「あはは! 次はあかりちゃん、君の番だよ。ほのかに死んで欲しくなかったら、大人しく私の言うことを聞きな!」
巨大な『ほのか盾』の陰から、きいが歪んだ声を響かせた。
人質をとられた私たちは、指一本動かすことができない。
きいは、泣き叫ぶほのかの盾を盾にしながら、じりじりとあかり先輩へと近づいていく。
「あかり先輩、ダメだ、来ちゃダメです……!」
太一が叫ぶが、あかり先輩は、激痛と恐怖でボロボロと涙を流すほのかの顔を見つめ、唇を血が出るほど噛み締めていた。
グループのリーダーとして、後輩を見捨てることなんてできない。あかり先輩は、武器を握る手をゆっくりと下ろした。
「……分かったわよ。だから、ほのかをこれ以上傷つけないで」
「あはは! 話が分かるお姉さん、大好きだよ!」
きいはあかり先輩の目の前まで来ると、その細い手をあかり先輩の身体に優しく、そして冷酷に滑らせた。
バリバリバリ、ギチギチギチッ!!
肉と骨がドロドロに溶け、悍ましい音を立てて再構築されていく。
「いやぁああああああああッ!!」
あかり先輩の絶叫が通路に響き渡る。
きいの呪力が完全に肉体の形を書き換え、完成したのは——あまりにも下劣で、あかり先輩のプライドを完膚なきまでに叩き潰すための、最悪の異形だった。
「ひゃはははは! 見てよこれ! 最高に不細工な『うんこゴーレム』の完成でーす!!」
きいは、その場に新しく出来上がった茶色い肉塊を指差して、お腹を抱えて爆笑した。
全身が不気味にうねる泥のような「うんこ」の形に変形させられ、その不浄な塊の中心から、あかり先輩の顔だけが大きく剥き出しになって突き出ている。
「な、にこれ……嫌……嫌だよお……まいちゃん、助けて……っ!」
あの凛々しかった二級のあかり先輩が、自身のあまりにも屈辱的で悪趣味な姿に、尊厳を全て奪われてボロボロと涙を流し、絶望に震えていた。
「あはは! 超お似合い! 二級呪術師のあかり先輩は、今日からただの不潔な泥人形だね!」
きいの下劣な嘲笑が、最下層の通路に響き渡る。
ほのかに続き、あかり先輩までが肉体を弄ばれ、道具にされてしまった。
太一は怒りと恐怖で腰を抜かしてへたり込み、私はただ、拳を握りしめたまま、その地獄絵図の前に立ち尽くすことしかできなかった。
私の隣に浮かぶ、たくまの天秤。
前髪のないたくまの顔は、大切な先輩たちを次々とバケモノに変えていくきいの圧倒的な悪意に、怒りと悔しさ、そして何もできない己の無力さで、血の涙を流さんばかりに鋭い瞳を激しく見開いていた。
身体を動かせないたくまと、人質を前に呪力を放てない私。
二級に上がったはずの私たちの天秤は、きいのあまりにもエグい暴挙の前に、完全にその動きを封じられ、最悪の泥濘の中でただ凍りついていた。
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