「あはは! この二人は私の可愛い大切なペットとして、一生可愛がってあげるよ!」
きいは、泣き叫ぶ巨大な『ほのか盾』と、尊厳を壊され絶望に震える『あかり(うんこゴーレム)』を自身の呪力の糸でずるずると引きずりながら、闇の向こうへと消えていった。
「待って……っ! あかり先輩! ほのか……っ!!」
私の悲痛な叫びも虚しく、その気配は乱戦の混沌の中に完全に没していく。
太一は地面に拳を叩きつけて男泣きし、私の隣に浮かぶたくまの天秤も、悔しさと怒りでガタガタと激しく音を立てていた。前髪のないたくまの顔は、去っていった暗闇を、血の涙を流さんばかりの鋭い瞳で見つめ続けている。
「……まい、たくま。今は追えない。僕の指示に従って一度、体勢を立て直すんだ」
インカムの向こうから響く、神原司先輩の押し殺したような声。
私たちは拳を血が滲むほど強く握りしめた。
「……次は、次は絶対に……あのクソ女をぶちのめす。きいを倒して、あの二人を絶対に元の姿に取り戻す……!」
私たちの天秤に、かつてないほどどす黒く、強固な決意の質量が蓄積されていく。ハツカと奏(かなで)も、きいの去った闇を冷ややかな目で見つめながら、私たちの次なる進撃に力を貸すべく、静かに呪力を整えていた。
------------------------------
## 【上層エリア】麗華・リント vs 春樹
その頃、上層の吹き抜けエリアでは、特級ペアの麗華とリントが、Kの幹部である春樹(はるき)と凄まじい死闘を繰り広げていた。
ドゴォオオオォン!!!
春樹の放つ連鎖的な大爆発の術式が、要塞の強固な壁を次々と粉砕していく。熱風と衝撃波が吹き荒れる中、睡眠時間を削ってまで地獄の修行を積んできた麗華とリントは、大阪の時とは完全に違っていた。
「ハッ、この程度の火遊びで、俺たちの首が獲れると思ってんじゃねえぞ!」
リントが爆風を強固な呪力障壁で力技でねじ伏せ、肉体が裂けるのも構わずに前線へと突っ込む。
その死角を完璧にカバーするように、麗華の全方位への高密度呪力攻撃が、春樹の退路を正確に削り取っていく。
「ふん……本部の特級上位、寝不足の割にはずいぶんと硬いじゃないか」
春樹は冷徹な顔に焦りの色を滲ませ、さらに大規模な爆発の術式を練り上げる。
しかし、麗華たちの洗練された連撃はそれを許さない。限界を超えた修行の成果、覚醒しつつある『二将レベル』の呪力のうねりが、春樹の爆発の熱量を少しずつ押し戻していく。
空間が熱と光で白く染まる中、特級二人とKの幹部・春樹の戦いは、まさに息をもつかせぬいい戦い(互角以上の激闘)を展開していた。
------------------------------