## 一将鼎立(ていりつ)、混沌の頂
カレラが放った『破滅のビーム』が、Kの最高幹部である春樹をその存在ごと塵へと帰した。数階層分が丸ごと抉り取られ、剥き出しになった吹き抜けエリアには、強烈な熱風と火花の粉が舞い散っている。
血の海の中で満身創痍のまま這いつくばる特級の麗華とリントは、息をすることすら忘れて、その黄色い髪の絶対者(カレラ)を見上げていた。睡眠時間を削ってまで鍛え上げた自分たちのすべてが、一瞬で消し炭にされるほどの圧倒的な格の違い。
だが、地獄と化したその戦場に、さらなる「理不尽」が重なる。
「あら。カレラじゃない。あんたもここに来てたのね」
赤黒い呪詛の霧を割って、鈴の鳴るような、しかし冷徹な声が響いた。
上層の崩れた床の縁に立ち、退屈そうに髪を弄りながら現れたのは、ブラックナンバーの誇る『四天王』の一角——アクアだった。強そうな奴を探して迷宮を徘徊していた彼女は、カレラのビームの余波を感じ取ってこの場所へ導かれたのだ。
カレラは黄色い髪を不敵になびかせ、アクアを一瞥すると、傲慢な笑みを崩さずに言葉を返した。
「アクアか。久しいな。お前たちブラックナンバーがこの要塞で何をしてるかは知らんが、私の『破壊』の邪魔をするなよ」
「あはは、相変わらず偉そうだなぁ、カレラは」
アクアがくすくすと笑い声を上げる。
さらに、空間の重力がもう一段階、ねっとりとした禍々しい呪力によって書き換えられていく。
トコ、トコと軽い足取りで、破壊された瓦礫の山を飛び越えて現れた、もう一人の女。
「誰かと思えばアクアじゃん。うわー、カレラもいるし。なんかここ、すっごいバケモノの過密地帯になってるねー」
残虐な光を宿した瞳に、怪しく夜光を反射する紫色の髪。
さきほど西側回廊でようまとけいを一瞬で叩きのめしたばかりの、もう一人の一将——ウルティマだった。
「チッ。ウルティマ。てめぇまで居んのかよ。相変わらず反吐が出るような呪力だな、クソガキが」
カレラが心底忌々しげに舌を打つ。
アクア、カレラ、ウルティマ。
世界のパワーバランスの頂点、わずか9人しか存在しない絶対的な神の領域——『一将(いっしょう)』のバケモノたちが、今、この狭い吹き抜けエリアに同時に3人も揃い踏みしたのだ。
「ねえねえカレラ、さっきのビーム派手すぎ。ボクのいた通路まで崩れてきちゃったんだけど?」
「うるさいぞウルティマ、お前が私の射線上にいるのが悪い。それよりアクア、お前たちのリーダー(レグウィス)はどこにいる?」
「レグウィス? さぁ、どっかで雑魚を潰して遊んでるんじゃない? それよりさー、せっかく一将が3人も集まったんだから、何か面白いことしようよ」
世界の命運を握るトップ3人が、血の海と化した戦場のド真ん中で、まるで放課後のクラスメイトのように当たり前に会話を続けている。
「……な、なんなのよ、こいつら……ッ!?」
その場に倒れ伏したままの麗華は、あまりにも常軌を逸した光景に、恐怖と絶望、そして強い困惑を隠せない様子で顔を歪めていた。
自分たちが命を懸けて戦っていた全面戦争の重みが、彼女たちの軽い世間話によって、ただの「おままごと」のように踏みつぶされていく。
『麗華、リント……! 頼むから応答してくれ……! 嘘だろ、一将が、一将が3人同時に同じ場所に……ッ!?』
インカムの向こう、本部の管制室では神原司先輩が、視野共有を通じて映し出される「世界の頂点たちの鼎立」に、悲鳴のような絶句を漏らしていた。
そして最下層でこの通信を聞いている私とたくま。前髪のないたくまの顔は、あまりにも手の届かない神々の狂宴に、ただただ鋭い瞳を見開いて戦慄していた。
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