「そろそろ、あの『秘密』を言っちゃってもいいかしらね」
血の海と化した吹き抜けエリア。一将の三人——アクア、カレラ、ウルティマが他愛のない世間話を続ける中、アクアがふと、倒れ伏す麗華たちを見下ろして妖しく微笑んだ。
「ふん。まぁ、これだけ派手に世界がひっくり返り始めてるんだ。そろそろ良さそうだな」
カレラが黄色い髪を乱暴にかき上げ、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「あはは、そうだね! 本部の雑魚たち、ずっとボクたちの正体を知りたそうに顔を青くしてたしね」
紫髪のウルティマも残虐な瞳を細め、嬉しそうにクスクスと笑い声を上げた。
あまりの異常な空気に、這いつくばる麗華とリント、そして本部の管制室から視野を共有している神原司先輩も、固唾を呑んで通信の向こうで耳を澄ます。
「ねえ、君たち。『女神』って存在を知ってるわよね?」
アクアが青い呪力の霧を漂わせながら、静かに、しかし世界の理を揺るがすような言葉を紡ぎ出した。
「太古の昔、神が世界の調和を保つために作ったとされる、高位の魂を持つ『8人の女神』。……私たちはね、その女神ってわけさ」
「なっ……女神……ッ!?」
麗華が驚愕に目を見開いた。呪術界の古い神話や伝承にのみ登場する、世界のシステムそのものを維持するために生み出された絶対的な調和の権化。それが、目の前にいる一将のバケモノたちの正体だったのだ。
「なんで世界の調和を守るはずの女神が、こんな呪詛師集団や殺し屋の戦いに混ざって、世界を滅ぼそうとしてるかって? ……まぁ、君たちの言う通り、ボクたちの『気まぐれ』さ。神様が作った役職なんて、退屈でやってられないもんね」
ウルティマが残酷な笑顔で、神への冒涜とも言える言葉を軽々と言い放つ。さらに、アクアがその中性的な若さの裏に隠された、生々しい血縁の真実を付け足した。
「なんならね、私たち三人は『三つ子』なの。私が長女、カレラが次女、ウルティマが三女。魂の根源が同じ、完璧な姉妹ってわけ」
一将の該当者9人のうち、正体不明だった黄色髪のカレラ、紫髪のウルティマ、そしてブラックナンバーのアクア。世界の頂点に位置する3人の女たちが、実は神の創り出した三つ子の女神であるという、想像を絶する世界の裏側。
だが、そんな壮大な神話を語り終えた直後、彼女たちの空気が一変した。
「は? アクア、何が長女よ。私の方がどう見てもしっかりしてるし、破壊の規模だって上だろ。お前が次女になれよ」
カレラが黄色い髪をぎらつかせ、ウルティマを突き飛ばしてアクアを睨みつける。
「なによカレラ、ボクを突き飛ばさないでよ! だいたいカレラのビームは派手なだけで大雑把なんだってば! ボクの呪力操作の方が何百倍も洗練されてるもんね!」
ウルティマも紫の髪を逆立て、カレラの胸ぐらを掴み返した。
「あ? てめぇウルティマ、もう一回言ってみろ。その生意気な口、今すぐ破滅のビームで消し炭にしてやろうか!」
「やってみろよ脳筋黄色髪! ボクの呪詛で内側から腐らせてあげる!」
「……はぁ。始まったわ」
長女のアクアが心底めんどくさそうに溜め息をつく。
神の創り出した最高位の女神でありながら、カレラとウルティマの二人は、顔を合わせればすぐに小競り合いを始めるほど、異常に仲が悪かった。
「おいおい……なんだよ、こいつら……」
血の海の中で満身創痍のリントが、一将のバケモノ2人が目の前でギャーギャーと幼稚なケンカを始めた光景に、完全に頭を抱えて困惑していた。
世界を滅ぼしかねない神の力が、ただの姉妹喧嘩の熱量で四方に爆散し、周囲の壁がボコボコと削れていく。
最下層でこの最悪の神話を通信越しに聞いていた私とたくま。
前髪のないたくまの顔は、あまりにも理不尽で、かつ制御不能な『三つ子の女神』という一将の本質に、怒りと焦燥を宿した瞳をただ大きく見開いていた。
あかり先輩とほのかを奪ったきい。その仇のバックには、世界そのものを気まぐれで弄ぶ、こんな絶対的な化け物たちが控えているのだ。私たちはこの狂った神々の迷宮から、必ず大切な仲間を取り戻さなければならない。
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